Angel Agein


その3






・・・・・クソッ。

・・・・・なにが、こんなに悲しいんだ。

・・・・・たかが、テンと昼寝してただけじゃねえか。

・・・・・でも・・・・・あいつのあんな幸せそうな顔・・・・・・

・・・・・ショックだった・・・・・

・・・・・それが、俺にだけ向けられるんじゃねえのが・・・・・

・・・・・それが・・・・・・わかった・・・・・・

・・・・・ただ・・・・・それだけのこと・・・・・・・

・・・・・それが、頭では、理解できても・・・・・・・

・・・・・心は、悲鳴を上げている・・・・・・

・・・・・身体が・・・・・ついていかねえ・・・・・・

・・・・・馬鹿な俺・・・・・・・・

・・・・・あんなちっぽけなことで・・・・・・

・・・・・俺らしくねえ・・・・・・




サンジは、男部屋のソファーに寝そべって、天井を見上げる。

ボーっとして・・・・・ただ、何も考えずに、ボーっとしていたかった。

そのうち、ドカドカと、近づいて来る靴音が聞こえだした。





!! ・・・・・ゾロだ。

嫌だ、今は・・・・・・・今は会いたくねえ。




サンジは、慌てて、部屋の鍵をかけた。

「おい! サンジ、中に居るんだろ? 開けろよ! おいって!」

ゾロはそう叫んで、ガチャガチャとドアノブを揺する。

「うるせえな! 俺は、今、気分が悪いんだよ! 一人でいてえんだよ! 少しは、気

を使えよ、クソまりも!」

サンジは、心と裏腹な言葉を吐く。

ゾロが、自分を気遣ってきてくれたことは、嬉しかった。

でも、こんな些細なことで、嫉妬している自分を見せるのは、嫌だったのだ。

自分がゾロを想う愛情の方が深いような気がして・・・・・

そんなことにこだわる自分が、嫌だった。

「・・・・・サンジ・・・・・すまねえ。 俺・・・・」

ゾロの言葉に、止まっていたサンジの涙が、また溢れそうになる。

「うぜえって、言ってるだろ! いいから、どっか行ってくれよ・・・・・ 

・・・・・頼むから・・・・」

あとは、言葉にならなかった。

二人の間を沈黙の時間が流れる。

時折、サンジの鼻をすする音と、か細い嗚咽が聞こえた。

「・・・・・サンジ・・・・・泣くなよ。 頼むから・・・・・そんなとこで・・・・・一人でなん

か・・・・・・泣くなよ。」

ゾロは、静かにそう呟く。

こんなに近くにいるのに、触れられない。

一人で泣いているサンジの涙さえ、拭ってあげられない。

入室を拒まれた以上、無理にドアを蹴破ってまでして、側に行くことは、躊躇われた。

サンジの性格からして、ヘタすれば、絶縁にもなりかねないからだ。

ゾロは、部屋の前で、サンジが、ドアを開けてくれるのを、辛抱強く待つことにした。

暫くして、ゾロの前に、テンが現れた。

「あれ? ゾロ、なんで、こんなとこにいるんだ?? 中に、はいらねえのか?」

テンは、キョトンとした顔でそう言った。

「ああ、鍵が中から掛かってるんだ。 ・・・だから・・・・・」

ゾロはそう言って、苦笑する。




・・・・・女々しいな、俺も・・・・・

・・・・・こんなとこにいつまでもいたって、あいつが、鍵を開けるわけねえのに・・・・・・

・・・・・それがわかってるのに・・・・・・

・・・・・それでも、ここを離れらねえ。

・・・・・らしくねえな・・・・・・全然俺らしくねえよ・・・・・




「なんだ、そんなこと・・・・・簡単じゃん。 ほらっ、開いたぞ。」

テンは、サッとドアノブに触ると、ドアを開ける。

「なっ? ・・・・ゾロ、どうしたんだ? ドア、もう開いたぞ。 はいらねえのか??」

ドアを開けても入ろうとしないゾロに、テンは、首を傾げてそう言った。

ゾロはただ黙って、寂しく笑うだけだった。

「??変なの? あっ、サンジ、こんなとこにいたのか? 俺、探したんだぞ。」

テンは、そう言って、部屋にいるサンジの側に近寄る。

「来るなっ! テン。 俺は、今、てめえとも、会いたくねえんだよっ!」

サンジはそう言って、テンに背を向けた。

「なに、カリカリしてんだよ、サンジ。 てめえら、本当、おかしいぞ? 喧嘩でもしてる

のか?」

てんは、ゾロとサンジを見比べてそう言う。

「そんなんじゃねえっ!」

サンジが、間髪入れずにそう答えた。

「まっ、いいけどさっ。 なあ、サンジ、ちょっと聞いてくれよ。 ゾロッてばさっき、俺を

サンジと間違えたんだぜ。 ・・・・全く・・・・・サンジ〜・・・・とか、たまにはな、と

か・・・・・寝惚けてさあ・・・・・・俺、苦しかったんだぜ。 なんで、起こしに来たとき

に、助けてくれなかったんだよっ! おかげで、皆と一緒に、食事できなかったじゃね

えか!」

テンは、サンジに、そうブツブツと文句を言った。

「えっ?! ・・・・俺と間違った??」

「ああ、そうだよ。 ゾロってば、俺とサンジ間違えて、俺に、サンジ、サンジってうる

さかったんだから・・・・ ちょっと、むかつくよな、それって。」

テンは、そう言って、笑った。




俺と、間違ってたのか・・・・・

じゃあ、あの顔は・・・・・俺を抱きしめてると思っての・・・・・・

うわあ・・・・・恥っ!・・・・・・

俺って・・・・・凄く・・・・・馬鹿じゃねえか?

なんで、あんなに思い詰めてたんだろ・・・・・

・・・・・ゾロに、悪いコトしたな・・・・・・




「・・・/////なんだ・・・・・そうなんだ。 そうだったのか。」

サンジは、真っ赤になってボソリと呟く。

「??何か言ったか?」

「いや、何でもねえ。 ああ、さてっと、俺、後片付けしねえと・・・・・・ テン、風呂、

入って来いよ。 ゾロ! てめえも、そんなとこに座ってねえで、キッチンで酒でも飲む

か?」

サンジは、先程までの雰囲気とはがらりと変わって、にっこりとゾロに笑いかけた。

「お、おう!」

ゾロは、サンジの様子にほっと胸を撫で下ろした。

そして、サンジとテンの側に近寄ると、ポンとテンの頭を軽く叩いて、

「ありがとな、テン。」

と、小さな声で、呟いた。

「??なに言ってんだ?ゾロ。 俺、別に感謝されること何もしてねえゾ。 

・・・・・変なゾロ・・・・あっ、それよりさあ、ゾロ。 久しぶりに、一緒に、風呂に入ろう

ぜ。 俺、背中流してやるよ。」

テンは、そう言って、にっこりと笑う。

ビシッと、鋭いサンジの視線が、ゾロに突き刺さった。

『返答次第では、オロす。』と、その瞳は、ゾロに告げていた。

「い、いやあ、テン。 ・・・・それは、止めとく。 ・・・・俺は、あとで、こいつとゆっくり

入るから。」

ゾロはそう言って、サンジの腰を引き寄せる。

「・・・////馬、馬鹿野郎、どさくさに紛れて、なに口走ってんだよ!」

サンジは、真っ赤になって、ゾロの顔を押し返した。

「チェッ。 せっかく、久しぶりにあったから、一緒に、お風呂で、遊ぼうと思ったの

に・・・・・ なあ、ゾロ。 あのアヒルさん、まだ、置いてある? 俺、あれ、結構、気に

入ってたんだ。」

テンは、残念そうにそう言った。




・・・・・・こいつは・・・・・・・・

・・・・・・早く、天界に帰れよ・・・・・




ゾロとサンジは、頭を抱えた。

ふと、ゾロがドアの方を見ると、誰か立っている。

「誰だっ!」

ゾロはそう言って、刀に手をかけた。

「・・・・・・・・。」

その人物は、無言で、部屋に入ってきた。

「ゲッ!! ロロッ!! いつの間に・・・・・」

「あれ? てめえは、確か、あの時の、天使・・・・・」

「!!!!」

入ってきたのは、テンを追いかけて来た、ロロであった。

「すまない、サンジ。 また、こいつが、迷惑掛けたようだな。 ・・・・こいつは、俺が、

連れて帰るから。 本当に、すまなかった。」

ロロはそう言って、ゾロとサンジに頭を下げる。

「いや、俺達は、別に・・・・・なあ、ゾロ。」

「ああ、別に、迷惑なんか・・・・・・」

ゾロとサンジは、ロロに謝られて、顔を見合わせてそう言った。

「ほらっ、ゾロとサンジだって、ああ言ってるじゃねえか。 ・・・・別に、俺は・・・・」

「いいから、一緒に帰るんだ!」

こそこそとサンジの後ろに隠れていたテンが言った言葉を、ロロは、途中で遮ると、テンの腕

を引っ張った。

「じゃあ、ゾロ、サンジ。 俺達、帰ります。 ほらっ、さっさと行くぞ!」

「ああ、ゾロ、サンジ。 また、遊びに来る。 じゃあな。」

そうして、ロロはテンを引っ張るようにして、その場から、消えた。

「・・・・・なんなんだ、あいつは・・・・・・」

「ああ、ゾロは、初めて会ったんだな。 あいつは、ロロと言って、テンをこの間、天界

に連れていった天使だ。 この前は、2枚羽だったんだけど・・・・あいつも、成長した

んだろ。 なあ、てめえそっくりだっただろ。」

サンジはそう言って、笑う。

「ああ、そうだな。 確かに俺に似てた。 ・・・・あいつも、苦労するよな・・・・・」

ゾロは、最後の言葉を、サンジに聞こえないように、ボソリと呟いた。

「ん?なんかいったか?」

「いや、別に・・・・・ それよりも、てめえ、機嫌直ったのか? あんなに、めそめそし

てたのによ。」

ゾロはそう言って、ニヤリと笑った。

「う、うるせえよ。 男は、細かいことをいちいち気にしねえんだよ・・・/////」

「・・・・サンジ。」

ゾロはそう言って、サンジを抱きしめる。

「・・・・なんだよ。」

「たまには、俺と、甲板で、昼寝しような。」

ゾロは、そっと、サンジの耳元で、そう囁いた。

「・・・/////なっ、なに言って・・・・・・・・・全く、真顔で言うな、そんな事!

・・・・・・・・まあ、たまには・・・・・それも、悪くねえ、な・・・」

サンジは、そう言って、ゾロを抱きしめ返した。

「・・・・風呂、どうする?」

「・・・・あとで、てめえが、入れてくれるんだろ?」

「おう! まかせとけ。」

そのまま二人は、側のソファーの上で、重なっていった。








+++++++++++++++++



「「ナミ〜!! 俺達は、何処で寝たら良いんだ??」」

いつまでも、キッチンに戻ってこないゾロとサンジに、ウソップとチョッパーは、涙ながらに、

ナミに訴える。

「あー、うるさい。 格納庫にでも行けば? あそこに、一つだけソファーがあったでし

ょ? ゾロとサンジ君が、いつも使ってるやつ。 たぶん、毛布も二人分あるはずだか

ら。 ・・・・・・全く、あの二人は、場所と時間を選ばないんだから・・・・・ でも、この

状況でも、何処でも寝れるあんたが、やっぱり、大将よね・・・・・」

ナミは、呆れるようにそう言って、キッチンの床で、眠っているルフィを見た。

「サンジ〜、肉くれ〜!!・・・・むにゃ・・・」

キッチンにただ一人残されたルフィの寝言を聞く者は・・・・・・・・・・・・誰も、いなかった。










+++++++++++++++



・・・・・・おまけvv


「なあ、てめえ、何か、怒ってるのか?」

「・・・・・・・。」

天界に戻ってから、ロロは、テンと口をきこうとしない。

「なあって。 黙ってちゃわかんないだろ?」

テンはそう言って、ロロの顔を両手で挟んだ。

「・・・・お前は、あのゾロとか言う人間と一緒に、風呂に入りたかったのか。」

ロロは、低い声でそう言った。

「ああ、そうだよ。 ・・・・・別に、サンジでも、ルフィでも良かったんだけど、サンジ

は、後片付けがあるって言ってたし、ルフィは、その場にいなかったし・・・・・俺、お風

呂で遊ぶの好きだったんだよな。」

テンは、平然と言ってのけた。

「違う! 俺の言ってるのは、そう言う事じゃなくて・・・・・・お前は、誰にでも、自分の

姿を晒すのか?」

ロロは、苦り切った表情で、そう言う。

「はあ? 何言ってんだ、ロロ。 ゾロ達は、俺の育ての親だぞ。 親に恥ずかしがっ

てどうする・・・・・変な事言う奴だな。」

「・・・・じゃあ、俺が、サンジと風呂に入るって言ったら、お前、どうする?」

「うっ・・・・それは・・・・・・・嫌かも・・・・・・・」

ロロの言葉に、サンジは、少しだけ怯んだ。

「だろ? だったら、そんなこと、言うなよな。 風呂なら俺が、一緒に入ってやるか

ら。」

「で、でも、ここには、風呂なんて無いぞ。 人間界だけだからな、あれ。 

・・・・・じゃあさ、今から、人間界の風呂に入りに行こうぜ。 あっ、アヒルもサンジん

とこから、持っていこうぜ。 アレ、結構楽しいんだぞ。 口からピューって、お湯が出

るんだ。」

テンは、そう言って、にっこりと笑った。

「・・・・お前、全然、わかってないだろ・・・・・」

ロロは、思わず、頭を抱える。

いくら身体が大人になって、羽が8枚の大天使といえども、卵から生まれて、まだ、半年しか

経っていないテンの精神年齢は、あまりにも、低かった。




・・・・・・俺、どうすればいい・・・・・・・・




ロロの悩みはつきない。

「ん?なんかいったか?」

「・・・・いや、別に・・・・・」

「じゃあ、ほらっ、行くぞ!」

「あっ、待てよ、テン。」

そう言って、二人は、また人間界に戻っていった。

三日後、二人は、天界の長老達に、嫌と言うほど、ありがたい説教を受けることになる。








  <END>




    
<back>    <kiririku−top>    <index>


 


<コメント>

久しぶりに、エロ無し!さわやかな結末(嘘を付け!・殴)
まっ、たまには、ねvv
だって、これでエロシーン書いたら、もう1ページいっちゃうじゃん。
それだけは・・・・勘弁して下され。(ペコリ)
クミ様のリクエストで、
【ゾロの元にサンジ似の天使が登場!
その天使がゾロにベタベタして、サンジ、やきもちを妬く】
でした。 ・・・これで、良かったのだろうか・・・・
いつもながら・・・・・・ヘタレな文章だ・・・・げふげふ・・・・
どうですか? クミ様vv