Reward



その1






「頼みます、ナミさん。 この通り!」

「・・・・・・わかったわ、サンジ君。 けど、この貸しは、大きいわよ。」

「はい、ありがとうございます。 俺、それまで精一杯、お世話させていただきますか

ら。」

サンジは、ナミにそう言うと、嬉しそうに、キッチンに戻っていく。




・・・・・明日は、ゾロの誕生日・・・・・

・・・・・ナミさんに頼んでみて、本当に良かった。

・・・・・これで・・・・・今日中には、街に上陸できる。

・・・・・絶対に、絶対にゾロの気に入るようなプレゼント、贈ってやるぜ。

・・・・・去年は、ただの仲間だったけど・・・・・・・

・・・・・今年は・・・・・・もう違うから・・・・・・

・・・・・俺の・・・・・俺の大切な奴だから・・・・・・・

・・・・・他の皆が思いつかねえような・・・・・・なんかすげえもん・・・・・

・・・・・待ってろよ・・・・・・・ゾロ・・・・・・













+++++++++++++++++++++



「サンジ君、喉、渇いちゃった。」

「はい、ナミさんvv ホットレモネードですvv」

「サンジ君、夕御飯、あたし、パエリア食べたいわ。 ・・・それと、マリネも良いわ

ね。」

「はい、ナミさんのおっしゃるとおりに・・・」

「サンジ君、そろそろ蜜柑、収穫しておいてね。」

「はい、ナミさんvv」

サンジは、ナミの言われるまま、バタバタと忙しそうに走り回っている。

「・・・・何だ、サンジの奴・・・・いつにもまして、ナミの世話に余念がないな。 

・・・・なあ、ゾロ、お前もそう思わねえか?」

ウソップは、そう言いながら、横でトレーニングに励んでいるゾロを見た。

「・・・・ゾ、ゾロ?」

ウソップは、その姿を見て、思わず、2、3歩後ずさる。

こめかみをヒクつかせ、身体から不機嫌なオーラをまき散らし、それでも、ハンマーを振る腕

は、休めない。

まさに、魔獣・・・・・・こんなゾロに、近づく者は、誰一人としていないだろう。




ひえぇぇ〜、おっかねえ・・・・・

・・・・・本当に、こいつってば、サンジのこととなると、見境ねえんだから・・・・

・・・・・はあ・・・・触らぬ神に祟り無しっと・・・・・

・・・・・どこかに非難しとかねえと・・・・・とばっちりだけは、やだかんな・・・・・




ウソップは、そのハンマーが、自分めがけて振り下ろされる錯覚を覚え、そろそろと、その場

を後にした。




「クソッ。 ・・・・サンジの野郎・・・・・なんだって、今日に限って、ナミの世話ばかり、

やいてやがるんだ。 ただでさえ、最近、一緒にいる時間少なくなってるっていうの

に・・・・・ 俺だって、甲板に居るんだぞ。 ・・・俺だって、喉、渇いてんだ。 

・・・・・・むかつく。 ナミさん、ナミさんって・・・・・・てめえは、ナミの奴隷か?

・・・・・あとで、覚えとけよ・・・・」

ゾロは、一人ブツブツと呟いて、トレーニングを終え、キッチンに向かう。

その途中で、ナミのおやつを運ぶサンジを見つけた。

「なあ、喉、渇いた。 なんか、飲み物、くれ。」

ゾロは、サンジの腕を捕り、そう言う。

「あっ、ごめん、ゾロ。 キッチンに、飲み物用意してあるから、自分で、飲んでくれる

か。 俺、今、手が離せないんだ。」

サンジは、そう素っ気なく言って、ゾロの腕を振り払った。

これには、ゾロも、プツンときた。

「ああ、そうですかい。 そりゃ、ナミの召使いしてりゃ、俺なんかに、構う暇なんかね

えよな。 わりい、もう頼まねえ・・・・・」

バタンッ!!

ゾロは、皮肉たっぷりにそう言うと、キッチンに入り、勢い良くドアを閉めた。

「・・・ゾロの奴・・・・なに、カリカリしてやがるんだ? カルシウム、足りてねえのか

な・・・・・
 おおっと、こうしてる場合じゃねえ。 あと少しの辛抱だ・・・・」

サンジはそう呟いて、ナミの元に急いだ。

「ナミーッ! なんか、島が見えてきたぞーっ!!」

メリーの頭の上にいたルフィが、ナミにそう告げる。

「ふふふ、計算通りね。 サンジ君、約束通り、あの島に上陸するわよ。 

・・・・・でも、気を付けて。 あの島には、海軍が駐屯してるらしいから、おおっぴらに

は、上陸できないわ。 どこか、わからないような入り江を見つけて、そこから上陸す

るの。 だから、絶対に、問題は、起こさないでね。 ルフィも、今回は、上陸させない

ようにするわ。

サンジ君、あなたも、買い物が済んだら、すぐに戻ってきてちょうだい。 夜までに

は、出航したいから。」

ナミは、上陸にあたっての注意を、サンジに伝える。

「わかりました、ナミさん。 俺、プレゼント・・・・いや、買い物済んだら、すぐに戻って

きますから・・・・本当に、無理言って、どうもすみません。」

サンジは、ナミにそう言った。

「ふ〜ん・・・・プレゼント、ねえ・・・・・ ・・・・・そう言えば、明日あいつの誕生日じゃ

ない。 サンジ君、よく覚えてたわね。 ・・・・さすが、愛しい人の為ならば・・・・

ってとこかしら?」

ナミはそう言って、にっこりと笑う。

「・・・・ナ、ナミさん・・・・・そ、そんなんじゃ・・・・・」

サンジは、動揺して上手く言葉が出てこない。

「ふふふ、良いのよ、隠さなくったって。 この狭い船の上だもの。 あ〜、あたしもそ

んな恋人が、欲しいわ〜vv」

ナミはそう言ってサンジをちゃかした。

「いるじゃないですか、そこに・・・・」

サンジは、そう言って、ルフィを指さす。

「あ、あいつは、ダメよ・・・・・そう言うタイプじゃ・・・・/////」

今度は、ナミがどもってしまった。

「・・・・・ナミさん、顔、赤いですよ。」

すかさず、サンジがそう言い返す。

「・・・もう、サンジ君、そんな事言うなら、素通りするわよ!」

「ええっ?! それだけは、ご勘弁を・・・・・・・・・・・   くっ、くっ、くっ・・・・

あはは・・・・」

「うふふふ・・・・・・」

ナミとサンジは、お互いの顔を見て楽しく笑いあった。

その様子を、キッチンから見ている人物が一人・・・・・




・・・・・サンジの奴・・・・・・・

・・・・・クソッ・・・・・あんなに楽しく笑いやがって・・・・・・

・・・・・そんなにナミと居るのが嬉しいのか・・・・・・

・・・・・あー、もう・・・・・・・・

・・・・・むかつく・・・・・むかつく・・・・・むかつく・・・・・・




「ウガーッ! なんだって、俺は、こんなにイライラして、やきもち妬いてやがるんだ。

・・・・少し、頭、冷やさねえと・・・・・・もう、馬鹿みてえ・・・・・情けねえ・・・・・」

ゾロは、一人、そう呟いた。

島が近づくにつれ、ゾロのイライラも募っていく。

今まで、他人のことには、関心を寄せたことがないゾロも、サンジのこととなると、些細なこと

まで、気になって仕方がない。

逆に言えば、今までそう言う気持ちになったことがないために、感情の押さえがきかず、

自分では、どうしようもないのだ。

そんなゾロの心境も知らず、サンジは、いそいそと、上陸の用意を始める。

今回は、ルフィも、ナミの言うことを聞いて、船で、留守をすることになった。












「じゃあ、ナミさん、行ってきます。」

サンジは、そう言って、船を下りようとした。

「ちょっと、待てよ。 ・・・・・俺も、一緒に行く。 荷物持ち、必要だろ?」

ゾロがそう言って、サンジの後に続いた。

「あっ、いや、いいんだ。 今日は、いい。 ・・・俺、一人で、充分だから・・・・・・

てめえは、来るな。 いいな、絶対に、船に居ろよ。 てめえは、ただでさえ、目立つ

んだから・・・・」

サンジは、そう言って、さっさと一人で船を下りていく。

「チッ・・・」

ゾロは舌打ちをして、甲板に腰を下ろした。

「あらあら、サンジ君に振られちゃったわね。 元海賊狩りの魔獣、ロロノア・ゾロも、

ただの恋する男って訳ね。」

ナミは、ゾロの様子に楽しそうにそう言った。

「うるせえ! とっとと、どっかにいきやがれ・・・・・」

ゾロは、ナミを思い切り睨み付けそう言い返す。

「おお怖っ! はいはい、魔獣に、斬られる前に、退散しますわ。」

ナミは、大げさに怖がって見せて、キッチンに入っていった。

それからどれくらいの時間が経過したのか、ゾロは、身体に冷気を感じて、ふと瞳を開ける。

夕日は、大きく傾きかけ、夜の帳が、静かに下り始めてきた。

「・・・・遅いわねえ、サンジ君。 何かあったのかしら・・・・ ウソップ、悪いんだけど、

街まで行って、サンジ君、見つけてきてくれない?」

いつまで経っても戻ってこないサンジを心配して、ナミが、ウソップにそう頼む。

「おお、いいぜ。 じゃあ、俺、ひとっ走り、行ってくる・・・・」

ウソップはそう言って、船を下りていった。

「・・・・・・・・・・。」

ゾロは、その様子を見て、のっそりと立ち上がる。

そして、ナミに気付かれないように、こっそりと船を下りていった。




















「ナミさん、遅くなって申し訳有りませんvv 今戻ってきましたvv」

サンジは、そう言って、船に戻ってきた。

ゾロが、船を下りて、1時間経った頃だった。

「もう、サンジ君、遅いじゃない。 何かあったんじゃないかと、心配したんだか

ら・・・・・」

ナミはそう言ってサンジを睨む。

「本当に、申し訳なかったです。 さっ、食事の用意、しますね・・・・・」

サンジは、そう言って、夕食の準備をしに、キッチンに向かった。

その手には、ゾロへの誕生日プレゼント用に買った吟醸純米酒が、あった。




・・・・・・・へへへ・・・・・・・やっと見つけた。

・・・・・・・米だけの酒って、なかなか手にはいらねえんだよな。

・・・・・・・あとで、二人だけの時に、渡して、びっくりさせてやるぜ。

・・・・・・・ああ、早く、明日になんねえかな・・・・・・・




サンジは、その酒をシンクの下に隠すと、てきぱきと、料理を作り出した。

「さてっと・・・・・これで、終了・・・・・・あいつ、また、寝てるのかなあ・・・・・・・

いい加減、起こしに行ってやるか・・・・」

サンジはそう呟いて、ゾロがいつも眠っている船尾へと向かった。

しかし、何処を探しても、ゾロの姿はない。




・・・・・・・・あいつ・・・・・・・何処で、眠ってんだ?




「・・・・・・ナミさん、あいつの姿が、見えないんですが、知りませんか?」

サンジは、ナミにそう聞いた。

「えっ?! 知らないわよ。 そこらへんで、眠ってるんじゃないの?」

「いや、俺もそう思って、探してみたんですが、何処にもいねえんですよ。 

おかしいなあ・・・・・何処に居るんだろ・・・・・・そう言えば、ウソップも見当たらないん

ですよ・・・・・・」

「あっ、忘れてた。 ウソップは、サンジ君を探しに行ったのよ。 サンジ君が、あんま

り遅かったから、ウソップに、街に行ってくれって頼んでたの、すっかり、忘れてた

わ・・・・・・」

ナミは、ウソップに言った自分の言葉を思い出し、ため息を吐いた。











「ナミーッ! サンジ、何処にも居なかったぞーっ!」

そう大声で叫びながら、ウソップが、暫くして戻ってきた。

「ごめんね、ウソップ。 サンジ君なら、とっくに帰ってきたわ。 ・・・・・ところで、あん

た、ゾロ見かけなかった?」

ナミは、ウソップに、謝りついでに、ゾロの事を聞く。

「ゾロ? いいや、会わなかったが・・・・・なんだ、あいつも、街に出かけたのか?」

ウソップは、首を傾げてそう返事した。

「・・・・・そう。 ゾロの姿がね、夕方から見えないのよ。 寝てるとばっかり思ってた

から・・・・・ ・・・・・・なんか、嫌な予感がするわ。」

ナミは、そう言って、サンジの居るキッチンを見つめた。










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<コメント>

新しいサーバーで、心機一転、捧げモノぐらいは、1ページにしようと思っていた
にもかかわらず・・・・・これです。(-_-;)
いつもより、ゾロのやきもち妬き度が、若干高めです。
けど、サンジのことが心配で、結局探しに行ってしまいましたね・・・・・
これが、あんなことになるなんて・・・・・・
・・・・・やっぱり、ゾロは・・・・・ゾロなんだ。
・・・・・・そんな感じです。(笑)
はてさて、ゾロは、何処にいるのやら・・・・・・
どこにしようか・・・・・・(汗)