BORDER LINE


その1





「・・・・じゃあ、3日後。 ふふふ。 本当に、出来るのかしら・・・・・」

「ああ、男に二言はねえ。 ・・・・・必ず、守る。 てめえも、忘れるなよ。」

「まっ、せいぜいがんばりなさい。」














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・・・・あれ、あそこにいるのは、ゾロと・・・・ナミさん。

一体、何の話してんだ?

・・・・・ナミさん、ずいぶんと楽しそうだな・・・・・よしっ!

「ナミすわ〜んvv 紅茶が、入りました〜vv 今日のは、オレンジとハーブをブレンドしてみま

したvv ・・・・・・・・・・・・・なんだ、てめえもいたのか。」

そう言って、俺は、ナミさんとゾロのいるところに、お茶を持っていく。

本当はさっ、ゾロにもちゃんと、キッチンに日本茶、用意してんだけど・・・・・ナミさんの手前、

わざと、知らなかったふりをする。

「・・・・てめえのは、持ってきてねえゾ。 ・・・・・・ところで、ナミさん、こんな筋肉マリモと何、

話してたんですか?」

俺は、テーブルにお茶を置いて、なにげに、尋ねてみた。

・・・・・・そう、さっきから、気になってたんだ。

ゾロとナミさんが、楽しそうに話をしているのが・・・・・・・・

まあ、ナミさんが、一方的にゾロのことちゃかしてた様だったけど・・・・・

それに、真っ赤になって、何か言ってるゾロに、ちょっと、むかついた。

俺には、あんな顔、見せてくれないから・・・・

一応はさっ、恋人同士だから、もっと、俺の前で、いろんな表情見せて欲しいわけよ。

いつも、しれっとしてて、同じ年なのにさっ、俺なんかよりずっと、大人みたいな顔してる。

元々、ゾロは、『剣士たるもの、いつ何時も冷静に対処できるように・・・』なんてのが口癖

だから、クールなのは、わかるけど・・・・・

確かに、クールなゾロも、好きなんだけど・・・・・

それなのに、俺に見せないあんな表情を見せるなんて、たとえナミさんでも、嫉妬してしま

う。

夜だって、あいつは、いつも余裕かましてて・・・・・・

俺には、あいつがどういう表情して、俺を抱いているのかさえ、わかんねえぐらいに余裕なん

てねえのに・・・・・

・・・・・・よしっ。 今夜こそ、絶対に、あいつの余裕無い顔、見てやるぜ。

「・・ジ君、サンジ君。 どうしたの? ボーっとしちゃって。 じゃあ、ゾロ。 約束、忘れないで

ねvv」

「・・・・・・てめえもな。」

そう言って、ゾロは、席を立った。

「あっ、ゾロ! ちょっと、待てよ。 なあ、おいって!」

俺は、慌ててゾロを追いかけた。

「・・・・・・本当に、アレで、約束、守れるのかしら・・・・」

そう呟くナミの声は、快晴の空に消えていく。










「・・・なあ、ゾロ。 おいってば・・・・」

ゾロは、俺の言葉を無視するように、いつもの場所に腰を下ろし、昼寝の体勢に入る。

「なあ、ゾロ。 さっき、ナミさんと、何、話してたんだ?」

俺は、ゾロの前に座り込んで、聞いてみた。

「・・・・・・・別に。 ・・・・・・・言いたくねえ。」

ゾロは、そう返事して、さっさと目を閉じる。

・・・・・なんか、ゾロ。 素っ気なくねえか?

さっき、気付かなかった振りしたの、怒ってるのかな・・・・・・

「なあ、ゾロ。 さっきのことで、怒ってるのか? アレは、ナミさんの手前、ああ言ったまで

で・・・・・ゾロの分、ちゃんと、キッチンに用意してあるんだぞ。 なあ、ゾロ。 機嫌直して、

俺と一緒に、お茶しよ?」

俺は、そう言って、ゾロの額に自分のおでこを付ける。

「うっ・・・・別に、怒っちゃいねえよ。 あんなの、いつものことだろ? ・・・・・それよりも、

サンジ。 ・・・・・てめえ、邪魔だ。 ・・・・・・・離れろよ。 ・・・・・・俺は、眠てえんだ。」

そう言って、ゾロは、俺の身体を押しのけた。

・・・・・・う・・・・・そ・・・・・・・ゾロが・・・・・・・・俺を・・・・・・・押しのけるなんて・・・・・・・・・・・

・・・・・・・なんでだ?

いつもなら、ギュって、痛くなるくらい抱きしめてくれるのに・・・・・

・・・・・・・こんな事、一度も、なかったぞ・・・・・・・一度も・・・・・・・

・・・・・・やっぱり、ゾロ、怒ってるんだ。

理由は、わかんないけど・・・・・・・・なんとか、しなくちゃ・・・・・・・・

俺は、慌てて、夕飯の仕込みに取りかかる。

考えていたメニューは、取りやめだ。

今日は、ゾロの好きなモノ、たくさん作るゾ。

俺は、コックだからこれくらいしか思いつかないけど・・・・・・・

・・・・・・これで、ゾロの機嫌が直るんなら、いくらだって、作ってやるぜ。

「さてと・・・・仕込みは済んだ。 ・・・ん? なんか、騒がしいな。 なにやってんだ?」

俺は、キッチンを出て、騒がしい甲板を、テラスから見下ろす。







「うわっ!! 馬鹿、冷てえ! ・・・・・お返しだ、この野郎!!」

「ひ〜、ゾロが追いかけてきた〜!! 何で、俺、追いかけんだよ! お前に、水、かけた

の、ルフィじゃんかよ〜!」

「うるせえ、同罪だ、同罪!」

ゾロが、笑って、ウソップ達と一緒に、騒いでる。

・・・・・・・もう、機嫌直ったみたいだ。

・・・・・・よかった。

「ばっかじゃないの、てめえら・・・・・」

俺は、タバコに火を付けて、笑いながら、ゾロを見る。

ウソップを追いかけるゾロと目があった。

俺は、ゾロに、にっこりと笑った。

でも、ゾロは、何も見なかったかのように、そのままウソップを追いかけている。

・・・・・・・あれ???

今、確かに、目・・・・・あったよな??

・・・・・・なのに、なんで、無視した???

・・・・・・いや、そんなわけねえよな。

・・・・・見えてなかったのかもしれねえ・・・・・

・・・・俺の、勘違いか・・・・・・

「ウソップ! 覚悟っ!!」

「うおっ!! サンジ、助けてくれ!!」

そう言って、ゾロが、ウソップめがけて、水をかけたのと、ウソップが、俺の背中に隠れるの

と、ほぼ、同時だった。

びちゃっ!!

俺は、思いっきり、頭から、水を被った。

ジャケットを着てなかった俺は、シャツがビチョビチョになって、ズボンの中まで、水が浸み

た。

「てめえ・・・・・・・ウソップ!! 何で、俺の後ろに隠れるんだ!! あん?! てめえのせ

いで、シャツ、びしょ濡れじゃねえか! ゾロ! てめえも、いい加減にしろよ!! 今度は、

俺が、てめえをびしょ濡れに・・・・・・・」

「・・・・・すまねえ。 ・・・・早く、着替えてこいよ。 俺、鍛錬の時間だから・・・・

悪かったな・・・・・俺、一抜けるわ。」

ゾロは、ビショビショになった俺を、一瞥しただけで、そのまま、格納庫に入っていった。

えっ?! ・・・・・・・なに? 今のリアクションは??

・・・・・いつもなら、『そこに突っ立ているてめえが悪い。』位言い返して、俺と、喧嘩になると

ころなのに・・・・・・・

・・・・・・・なんでだ?

なんで、さっきから、そんな素っ気ない態度を取るんだ??

ウソップ達とは、いつもの通り、何ら変わりない態度なのに・・・・・・

・・・・・・・・俺だけ・・・・・・・俺にだけ・・・・・・・・

・・・・・・・なんでだ??

・・・・・・・・こんなの・・・・・・俺・・・・・・・

「・・・・・サンジ、ごめんな。 ・・・・・・でも、サンジ、ゾロの奴、おかしくねえか?

お前ら、喧嘩でもしたのか??」

「いや、別に、したおぼえはねえ・・・・・・」

ウソップも、ゾロの態度がいつもと違うのに気付いたらしい。

・・・・・・でも、それをすぐに、俺との喧嘩に結びつけるなよ、な・・・・・・

・・・・・けど、これで、はっきりした。

ゾロは、明らかに、俺に対する態度を変えた。

・・・・変わったのは・・・・・・たぶん、俺が、ナミさんにお茶を持っていった時・・・・・・

・・・・・・その時からだ。

・・・・・だとしたら、鍵は、ナミさんが、握っている。

俺は、素早く着替えると、ナミさんの元に急いだ。

「ナミさん・・・・・ゾロと、何、話したのか、俺に、教えて下さい! お願いします!」

俺は、ナミさんに、頭を下げた。

「・・・・・サンジ君。 ごめんね。 いくらサンジ君の頼みでも、こればっかりは、話してあげら

れないわ。 ゾロとの約束の期限は、あさってだから・・・・・ どうしてもっていうなら、夜、

二人っきりの時にでも、ゾロに直接、教えて貰ったら?」

ナミさんは、そう言って、結局、教えてくれなかった。

・・・・・そうか、その手が、まだあった。

夜になったら、直接、ゾロに聞いてみよう。

昼間は、他のクルー達がいるから、話せないだけかもしれねえ。














「・・・・・・今夜、なっ。」

それは、ゾロと俺だけ解る言葉・・・・・・・

夕飯も済んで、それぞれクルー達が、部屋に戻り始めたのを確認して、俺は、ゾロに近づい

て、そっと、耳打ちした。

・・・・・・・でも、ゾロの言葉は、意外で・・・・・・・

「・・・・・・悪りい、サンジ。 ・・・・・疲れてんだ。 俺、先に、寝るわ・・・・・・」

そう言って、ゾロは、他のクルー達と一緒に、部屋に戻っていく。

????な、なんですと?!

俺は、自分の耳を疑った。

・・・・・・・・ゾロが・・・・・・・・・・あのゾロが・・・・・・・・・・

・・・・・・・俺からの誘いを断った・・・・・・・・

・・・・・・今まで、こんな事、なかったのに・・・・・・・・・

・・・・・いつもは、俺が疲れてるって言っても、全然聞いてくれなくて・・・・・・

・・・・それこそ毎日、しない日はなかったのに・・・・・・・・・・・

・・・・そのゾロが・・・・・・・・・・

俺は、誰もいなくなったキッチンで、ボーっと立ちすくむ。

「チクショーッ!! ゾロの奴・・・・・ゾロなんか、もう知るか・・・・・・ゾロなんか・・・・・・・・」

俺は、一人、キッチンで、やけ酒を飲んだ。







 
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<コメント>

今回は、サンジ視点で、お届けしてます。
だから、ゾロの態度が、今ひとつ、不可解??なんですけど・・・・・・
ナミは、魔女です・・・・・やっぱり、裏海賊王は、ナミだと・・・・・(笑)
次で、ゾロの不可解な態度の理由とか、わかるかなあ・・・・・・
・・・・・・けど、サンジ視点だけのお話って・・・・なんか、辛いなあ・・・・・(笑)