彼の上機嫌、彼氏の不機嫌

その5





「ふーっ。 ゾロ。 良い奴だっただろ? シュウ。」

「・・・・・・」

「なに、てめえ、さっきから、仏頂面してんの? 何か、気にいらねえ事でも、あった

か?」

「・・・あいつ・・・気を付けろ・・・」

「はあ? 何、言ってんだ? てめえも会って、わかっただろ? あいつが、俺達に、

危害加えるわけねえじゃんか。 本当、てめえ、昨日から、何か変だぞ?」

「・・・あいつ・・・てめえのこと、好きみてえだった・・・」

「は、は、は。 てめえ、本当に、ばっかだなあ。 好きったって、家族みてえにだろ。

そういうんなら、俺だって、好きということになるぜ? それに、言っちゃあ悪いが、

シュウって、昔から、レディには、俺の次くらいに、もててたんだ。 

何たって、あの面に、あの性格だしよ。 そんな奴が、俺なんか、そんな目で見るわ

けねえだろが。 そんな変態野郎は、この世界探しても、てめえくらいなもんだ。 

わかったか、この煩悩マリモ!」

サンジは、そう言って、ゾロに抱きついてきた。

(このボケ! わかってねえのは、てめえの方だ! だいたいどれだけの男が、てめ

えの姿見て、煩悩膨らませていやがると思ってんのか? 俺が、これまでに、何人、

牽制してきたと思ってるんだ! 両手足じゃ足りねえんだよ! 少しは、自覚しろよ

な。) 

ゾロは、サンジを、きつく抱きしめ返した。

「うわっ。痛てえよ、そんなにきつく抱きつくな! 全く、その筋肉、少しは、脳の

方・・・んんっ」

ゾロが、サンジの口を塞ぐかのように、口付けをしてきた。

「んんっ・・・んーっ・・・んんっー・・んーっ、んーっ!!」

サンジは、ドンドンと、ゾロの胸を叩いて、抗議する。

そのうち、あまりにしつこい抗議に、ゾロが、渋々と唇を離した。

「なんだ? てめえから、誘っといて、いまさら、じらすな・・・」

「違〜う!! 俺は、そんなつもりは、ねえ! それより、今から、シュウと飲みに行く

予定なの!! てめえの煩悩に付き合ってる暇はねえ。 さあ、わかったら、放しや

がれ!」

サンジは、ゾロの身体から離れようと、ジタバタともがいた。

「嫌だ!! 絶対に、行かせねえ!!」

ゾロは、そう言うと、サンジを強引にベッドにねじ伏せた。

(ゲッ! マジやばい。 こいつ、実力行使してきやがった・・・)

「ゲッ!! ちょ、ちょっと、落ち着け!ゾロ!! 良いか、よく聞け・・・」

「聞かねえ!!」

「話、聞かねえなら、てめえとは、今後一切、ヤらねえ!!」

サンジは、ゾロが、唇を塞ぐ前に、最終手段を持ち出した。

最終手段とは・・・

そう、サンジが、『ヤらない』と言う言葉・・・

始まってしまえば、主導権は、いつもゾロが握るのだが、始める前までは、サンジの方に主

導権がある。

つまり、ヤる、ヤらないは、サンジ次第なのである。

さすがのゾロも、これには、逆らえない。

この前も、無理にヤって、怒ったサンジが、1週間、手も握らせてくれなかった。

そのせいで、精神的にも肉体的にも、よれよれになった、経験が、ゾロの記憶には、しっかり

と刻まれていた。

「・・・っで、話って、何だ?」

ゾロは、サンジの上からどくと、話を促した。

(やれやれ、やっと、話を聞く気になったか・・・)

サンジは、はだけたシャツをきちんと直して、ゾロの瞳を見て、言った。

「いいか? もし、てめえが、街で、昔、お世話になった、師匠に、ばったりと会ったと

する。 そして、再会を祝して、飲みに行こうと誘われる。 明日には、街から出なくて

はならない。 さて、ゾロ。 お前なら、どうする?」

「・・・当然、飲みに出かけるだろうな・・・」

「だろ、だろ?! 俺も同じなんだよ。 じゃ、そういうことでv」

「ばっ、サンジ!! それとこれとは、全然違・・・」

「同じだよ! じゃあ、ゾロ、いい子でいろよv あとで、何でも言うこと聞いてやっから

vv」

「あっ、てめえ! 待ち・・・」

「ばたんっ。」

サンジは、ゾロが言い終わらないうちに、早々に、部屋を出ていった。

「あの馬鹿・・・」

そう言いながら、部屋で、うろうろしたり、酒を飲んだりと、1時間が過ぎた。

「まだ、1時間か・・・はあ・・・」

ゾロは、大きくため息を吐いた。

(サンジがいない、この1時間が、何て、長く感じるんだろう・・・)

「・・・はあ・・・」

ゾロは、また、ため息を吐いた。

不意に、ドアをノックする音が聞こえた。

(サンジか??)

ゾロは、急いで、ドアを開けた。







「・・・何だ。ナミか・・・」

「何だとは、何よ!! 相変わらず、失礼な男ね!! でも、その様子じゃ、サンジ

君、誰かサンとデートなのかしら?」

「デートなんかじゃねえ!!」

ゾロは、ナミの言葉に、青筋を立てて怒鳴った。

「クス、クス。 いやあねえ、嫉妬深い男は、これだから・・・サンジ君も、こんなのよ

り、シュウさんの方がずっと素敵なのに、本当、物好きなんだから・・・」

「っで、何しに来たんだ。」

「あらあ、忠告よ、忠告! サンジ君、あの手のタイプに弱いから、酔わされて、迫ら

れたりしたら・・・ってね。 あんたも気付いてたんでしょ? シュウさんがサンジ君見

る瞳・・・あれって、あんたと一緒じゃない? それに、あんたとシュウさんって、似て

いるわ・・・フラフラに酔った状態で、サンジ君が、あんたと間違ったりしたら・・・」

ガタッ、ダダダダーッ

ゾロは、ナミが言うより早く、宿屋を飛び出していった。

(全く、世話が焼けるわ・・・それにしても・・・ここに、とびきりのいい女がいるというの

に、何で、どいつもこいつも、サンジ君なの?! 世の中、絶対に、間違ってるわ!)

ナミは、信じる物は、やはりお金だけ!と、固く、心に誓った。








「はあ、はあ。・・・サンジ・・・どこだ? どこにいる・・・」

ゾロは、ナミの言葉にはじかれたように、街に出た。

昨日から感じた漠然とした、嫌な予感・・・

それは、サンジにじゃなかった・・・

それはゾロの身に起こる予感だったのだ・・・

サンジを失う、そう、一番ゾロが怖れる要因・・・

嫌な予感は、その要因が、近くにあることを、ゾロの本能が、教えてくれていたのだ。

(シュウ!! てめえには、指1本、サンジに触れさせねえ!!)






ゾロは、この街で、3件目のバーに入った。

「!!!????」

どうやら、様子がおかしい。

テーブルは、めちゃくちゃに壊され、数十人もの男が、地面に倒れている。

カウンターの奥で、がたがたと震える、店主と思われる男が、こっちを、凝視していた。

「おい! ここに、金髪の黒服の男と、長身で、黒髪の男、来なかったか?」

「ひゃあ!! た、助けて!! ・・・あんた・・・あの人達と、知り合いか?」

「ああ、一人は、連れだ。」

ゾロは、殺気を押さえて、店主にそう言った。

「な、なら!! 助けてやってくれ!! 金髪の兄さんが、痺れ薬飲まされて・・・

あの人、うちの娘の身代わりに、捕まっちまって・・・黒髪の男が、あわてて、追いか

けてったんだが、あんな100人モノ連中の相手してたら・・・お願いだ! あの人達を

助けてくれ!!」

「そいつらは、どこにいった!!」

「確か、丘の上の屋敷を根城にしてるって・・・」

「わかった!!」







ゾロは、道ばたに転々と転がっている男達を目印に、迷わず、屋敷まで着いた。

屋敷の庭には、無数の死体が転がっていた。

道ばたの転がっている男達の傷は、明らかに、急所をはずしてあった。

だが、ここの男達には、それがない・・・

つまり、斬った人物が、急所をはずす余裕のない程追いつめられているということだ・・・

ゾロは、急いで、屋敷の中に入った。

「サンジ!! どこだ!! いたら、返事しろ!!」

「ゾロー!!」

奥の部屋から、微かに、サンジの声が聞こえた。

「サンジ!!」

掛け声と共に、中に入ったゾロが、最初に見たモノは・・・

屈強な男に、後ろ手に羽交い締めされ、首にナイフを突き立てられた、サンジの姿。

側に目を向けると、立っているのもやっとの感じで、切り傷でボロボロになったシュウが、い

た。

部屋には、約30名ほどの、屈強な男達が、下衆な笑いを浮かべていた。

「ゾロ!!」

サンジが、叫ぶ。

その顔に、斬られたと思われる傷がつき、そこから赤い血が流れて、サンジの頬を伝った。



ゾロの中の魔獣が、目を覚ます・・・

「・・・どいてろ・・・」

ゾロは、バンダナを頭に巻くと、シュウにそう言って、三代鬼徹を手に、サンジにナイフを突き

つけている男の腕を一瞬にして切り落とした。

そして、そのまま、部屋にいた男達を、鬼徹一本で、瞬殺した。

辺りに立ちのぼる鉄のにおい・・・

返り血を浴び、近づくことさえ許さないオーラを身に纏って立つゾロ。

屈強な男達は、自分に、何が起こったのかさえ知ることもなく、絶命していた。

(・・・この男・・・腰に3本の刀・・・ そうか、こいつが、あの海賊狩りのゾロか・・・

そうか・・・こいつが・・・こいつが、サンジを海に連れだした男・・・ ・・・格の違い・・・

か・・・)

シュウは、フッと寂しげな笑いを浮かべると、ドカッと腰を下ろした。

「ゾロ!!」

サンジは、痺れる身体を動かして、ゾロに抱きついた。

サッと、ゾロを取り巻く魔獣のオーラが、サンジが抱きついた途端、嘘のように、消えた。

「サンジ!! 大丈夫か! てめえ!!」

「ああ、平気だ。 それより、良く、ここがわかったな。」

「ああ、シュウが道標、残してくれてたからな・・・」

「???道標???」

「ああ、帰りにわかる・・・ それより、顔・・・傷がついちまったな・・・」

ゾロは、優しく、サンジの傷に、口付けた。

「んっ、平気だ、こんなの・・・ すぐに治るさ。 ・・・でも、ゾロ・・・もし、傷が残った

ら・・・ゾロ・・・嫌か?」

「気にすんな。 傷が残ったら、俺が、てめえを嫁に貰ってやる。」

「ば、馬鹿野郎//// 俺は、レディじゃねーんだぞ! 顔に傷がついたからって、

嫁に貰われてどうする!!」

「嫌か?」

「////・・・嫌じゃ・・・ねえし・・・」

「サンジ!!」

「ゾロ!!」

二人は、シュウがいるのも忘れ、しばし、自分達の世界に酔った。







「もしも〜し!! お取り込みのところ、誠に申し訳ないが・・・俺、ここ、早く出たいん

だけど・・・」

シュウの言葉に、やっと我に返った二人・・・

「ご、ごめん! シュウ。 忘れてた・・・」

「・・・すまん・・・」

「いや・・・良いんだよ・・・別に・・・俺なんか・・・もう、帰っても・・・良いか?」





「本当に、ごめん!」

サンジが、帰り道、ゾロにおぶさり、シュウに言った。

「いや、その格好で謝られても・・・ はあ・・・お前ら、本当に、デキてたのな・・・俺、

言う前に玉砕かよ・・・」

「まあな。」

「////って、ゾロ!! そこで、認めんな!! 全く、恥ずかしい奴・・・」

「ヘイ、ヘイ。」

「返事は、『ハイ』だ!」

「ハイ、ハイ。」

「『ハイ』は一度で良い!!」

「プーッ!! ア、ハッ、ハッ、ハッ。 おまえら、本当、良い夫婦になるぞ。」

シュウは、二人のやりとりに、堪えきれず、笑い出した。

「ふ、夫婦になれるわけねえじゃん! 俺、男だぞ?」

「さっき、嫁になるって言った!」

「言ってねえ!!」

「嫌じゃねえって言った!」

「!!//// こ、この馬鹿ゾロ・・・////」

「ひゃはっ、はっ、はっ。 お前の負けだ、サンジ!」

シュウは、ポンとサンジの頭を軽く叩いた。

「・・・俺も、早く、誰かいい人見つけようかな・・・そうだ! お前んとこの、あのオレン

ジの髪の可愛い子がいるじゃねえか!」

「ナミさんは、絶対駄目だ!」

「じゃあ、あのショートボブの綺麗なお姉さんはどうだ?」

「ロビンさんは、お前なんか相手にしないぞ。」

「・・・お前、昔っから、好きなモノは、全部、独り占めする癖、いい加減、止めろよ

な・・・」

シュウは、ゾロと顔を見合わせると、大げさに、ため息を吐いた。







翌日。

買い物も無事、船に積みこんで、サンジ達は、船を出す。

「じゃあ。 また、遊びに来いよ〜!!」

「ああ、オールブルー、見つけたら、知らせに来てやるよ!!」

「絶対な!! 待ってるから!!」

そう言って、シュウとサンジは、お互いの友情を確かめあった。

「・・・それと、ゾロ〜!! あと、よろしく頼む!!」

そう言って、シュウは、岸壁から、手を振った。





「なあ、ゾロ。 あとって、何だ?? シュウに、何、頼まれたんだ?」

サンジが不思議そうに、ゾロに聞いた。

「まあ、色々とな・・・ それより、サンジ。 てめえ、昨日、『後で、何でも言うこと聞

く。』って、言ってなかったか?」

そう言って、ゾロは、サンジににじり寄った。

「さ、さあて、メシの用意でもするか・・・」

「メシは、さっき、シュウの店で食った。」

「じゃ、じゃあ、洗濯しようか・・・」

「・・・洗濯物は、ねえ! ・・・いい加減、観念しな・・・ 2日も、てめえに触ってねえ

んだ。その分、今からみっちり、身体で、払って貰おうか。」

「じょ、冗談じゃね・・・・あっ、馬鹿ッ! 降ろせ!! 放せ!! ウソップ! 見てね

えで、何とかしろ!! ぎゃああ!! ナミさ〜ん!!助けて〜!!」

サンジの叫びもむなしく、ゾロは、サンジを肩に担ぐと、格納庫に消えていった。

(ごめん、サンジ君。 私・・・命、一つしか持ってないから・・・)

(頼むから、そんな始めから無理なこと、俺に言わないでくれ・・・)

ナミとウソップは、サンジのこれからに、同情しながらも、素知らぬふりを決め込んだ。

それから、次の日の夕方まで、サンジの姿を見かける者は、誰もいなかった・・・・






   
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<コメント>
どおっすか?どおっすか?
かなり、壊れてきた私・・・
やっぱり下書きしてないと、内容が、かなり、デンジャラス
最後は、アホモノになってしまった・・・
ごめんなさい・・・茜様・・・こんなもんで、許してチョvv

『リクエストは、港町で、ばったり知り合いにあったサンジに、嫉妬するゾロ』
でした・・・へにょ・・・