SPIRIT OF THE SWORD


その1.



 




ここは、中世、ラフテル王国のとある街。

腐敗と一方的な権力が渦巻く街。

人々は、私腹を肥やし、桁外れの武力で街を支配しているクロコダイルの圧政に苦しめられて

いた。

クロコダイルに機嫌を取り、気に入られた一部の者だけが優遇された街・・・。

人々の間には貧富の差が歴然とし、力有るものが、力無き者を虐げる一種の無法地帯となり

つつあった。

そんな中、唯一の救いは、弱者の危機に忽然と現れては救い出す、ヒーロー。

軽やかな身のこなしと足技、流れるような剣裁きと優雅な仕草・・・。

全身黒尽くめの装束に、黒いマスク・・・。

余興と称して公開される、処刑台に送られる罪無き人々を救う為、100名の兵隊もものともせ

ず、敢然とクロコダイルの前に立ちはだかる英雄。

その英雄は、去り際にアルファベットの【Z】を刻む事から【ゾロ】と呼ばれ、民衆から絶大な支

持を受けていた。







「チビナス! ほら、さっさとしねえか! いつまでちんたらしてやがる!」

厨房に入ってきたゼフがそう言って、サンジを怒鳴りつける。

「うるせえよ、クソジジイ!  てめえはさっきどっかに行っちまって、俺に全部後片付け

押し付けて・・!! 俺は、ちゃんとやっている!!」

「ハン、どこが、だ? 口ばっか達者になりやがって・・・さっさとそのゴミを出してこね

えか!」

ゼフはそう言うなりサンジの頭に踵を落とし、ゴミ箱を顎でしゃくった。

「痛えな!! このクソジジイ!!」

サンジは、蹴られた頭を撫でながら、ゴミ袋を外に持っていく。

そこへ、クロコダイルが兵を率いて乗り込んできた。

「フフフ・・・・まさか、こんなところに潜んでいたとはな・・・。 年貢の納め時だ、

ゼフ・・・・・・いいや・・・・【ゾロ】。 そう言ったほうが良いだろう・・?」

そう言って、クロコダイルは、にやりと笑う。

「おやおや、総督自ら、こんなしょぼい店までご来店とは・・・? さぞかしお暇なんで

すね。 言っている意味がさっぱりわかりませんが? 申し訳ありませんが、本日は店

じまいにつき、明日またご来店ください。」

ゼフは、さも驚いた表情をして、丁重に応対した。

「ククク・・・しらばっくれてもダメだぞ。 これが・・・・・証拠だ。」

クロコダイルは、そういうが早いか、ゼフに近づき、シャツの袖を引き裂く。

一瞬、ゼフの顔が苦痛に歪んだ。

そこには、真新しい銃弾の痕。

縛ってある布が赤い血で滲んでいた。

「これは、さっき、私が撃った弾の痕だろ? ・・・・・・言い訳は聞かないぞ。 さあ、

大人しく来てもらおうか・・・。」

クロコダイルはそう言って、ゼフに拳銃を突きつける。

「て、てめえ、クソジジイになにしやがる!!」

そう叫ぶサンジの声と共に、クロコダイルの腕に小さな足が振り下ろされた。

不意をつかれ、クロコダイルの手から拳銃が地面に落ちる。

「サンジ!! 馬鹿野郎!! 隠れてろ!」

ゼフはそう叫んで、クロコダイルからサンジを守ろうと手を伸ばした。

「ほう・・・・。 見上げた度胸だ。 この私に躊躇なく飛び込んでくるとは。 貴様の子

供か? なかなか可愛い顔をしている。 先が楽しみだ・・・。」

クロコダイルはそう言って、ゼフより先にサンジの首を掴み上げる。

「グッ! 離せ・・・・馬鹿・・・野郎・・・。 てめえなんか・・・・・クソジジイの蹴りで・・・

一撃・・・クッ・・・!!」

じたばたと抵抗するサンジの首にクロコダイルの手が食い込む。

「さて・・・・・・【ゾロ】、どうする・・? このまま、こいつの首、へし折る事もできるんだ

ぜ?」

クロコダイルは、ヘラヘラと笑いながら、ゼフにそう詰め寄った。

「・・・・・・・・俺が素直に捕まれば、チビナスには手を出せないか?」

「・・・・・まあ、貴様次第だ。」

「クソジジイ!! 俺のことなんか構わねえで・・・!!」

「うるせえ! チビナスは、黙ってな!! 約束は守れよ、総督閣下・・・。」

サンジの言葉を遮って、ゼフはそう言うとドカッと床に腰を下ろす。

「・・・・・・連れて行け!」

クロコダイルは兵士にそう命令し、ゼフの両足の自由を奪い、拘束した。

「クソジジイ!! なんで抵抗しねえんだよ!! なんで俺なんかの為に・・・・!!」

サンジはそう言って、クロコダイルの腕の中で必死に暴れる。

「・・・・・・ばぁか。 親が子を守るのは、当然の事だ。 ・・・・・店はてめえに任せた

ぜ、サンジ・・・。」

ゼフは、サンジの方を見ながら笑ってそう言った。

いつも、チビナスとしか言った事のないゼフが、初めてサンジの名を呼んだ。

「・・・・・・・父さん・・・。」

サンジの方も感極まって言葉に詰まる。

「フフフ・・・・感動の別れの最中で悪いんだが・・・・・店は、これで永久に閉店だ。 

こいつは、私が世話してやる。 成長するにつれ、さぞかし私を楽しませてくれるだろ

う・・・。」

クロコダイルはそう言って、卑下た笑いをゼフに向けた。

「この下衆野郎!! どこまで腐れてやがるんだ!! 約束も、守らねえのか!!」

怒りに任せ兵士を引きずって、ゼフが叫び声を上げながら、クロコダイルに詰め寄る。

「約束? ああ、守るぜ・・? 今は手を出さずに、大切に育ててやるさ。 連れて行

け!」

クロコダイルは、勝ち誇った顔つきで、ゼフにそう言うと、兵士に顎で命令を下した。

「くそう!! 離せ!! 父さん!! 父さーん!!」

ゼフの乗った檻の馬車とは、正反対のクロコダイルの馬車に乗せられ、サンジは必死でそう

叫ぶ。

「覚えていろ!クロコダイル!! 俺は必ず、チビナスを取り返しにてめえの元に現れ

る!必ずな!! チビナス!てめえは絶対死ぬな! どんなことがあっても、絶対に

死ぬな! 俺が絶対に助け出すから!! 俺を信じて待ってろ!」

ゼフも、離れていく檻の中でそう叫んで、馬車と共に夜の闇の中に消えていった。





ゼフの奴、なんともないと言ってたが、本当に大丈夫か・・?

とりあえず様子を見に行ってみるか・・・。




「オッス! ゼフ!チビナス!!遊びに来たぞ〜!!」

シャンクスが、そう言いながら店のドアを開ける。

それは、ゼフとサンジが連行されて数時間後のことであった。

店の中は、雑然としていて争った形跡がある。

そして、いくら呼び声を上げようが、ゼフとサンジが現れる気配はなかった。

「ん・・?あれは・・・」

シャンクスは、床に付いたシミを見つけ、指で触れる。

指先に赤い色がついた。

「・・・これは、血! もしや、あいつら・・・!!」

シャンクスは血相を変えて店を飛び出すと、来た道を急いで戻る。

シャンクスは、店で起きたであろう事を理解した。

ゼフが、クロコダイルに捕まった事・・・。

【ゾロ】の正体がばれたという事・・・。

「待ってろ・・・・絶対に助け出すから・・・!!」

シャンクスは決意と共に、数時間前まで着ていた黒装束に着替え、クロコダイルの屋敷に向

かう。

そして闇に紛れ中庭に忍び込み、木の上から注意深くあたりに瞳を向けた。

東の庭の警備がやたらと物々しい。

また、二階の端の部屋に子供らしき影とクロコダイルらしき影が映った。

「・・・・・さしずめ、ゼフは、あの庭の奥か・・・。 チビナスは・・・・あの部屋だな。 

先に、ゼフを助け出してからだな。 見てろよ、クロコダイル・・・。」

シャンクスはそう呟くと、ひらりと宙を舞い、東の庭に忍び込む。

見張りの兵士達を一人、また一人と音もなく地面に転がし、庭の奥の牢の前までやってき

た。

牢の奥にゼフらしき人影が見える。

「ゼフ・・・・助けに来た。」

シャンクスはその人影にそう声をかけ、鍵を壊した。

暗がりから、ゆっくりと人影が近づく。

「さっ、早く、チビナスを助けに行こうぜ?」

シャンクスがそう言って、踵を返した次の瞬間、その人影がいきなり斬りつけてきた。

「なっ・・・!!」

ゼフと信じて疑わなかったシャンクスの左腕が、携えていた長剣ごと地面に落ちた。

「ククク・・・・相棒じゃなくて残念だったな、【ゾロ】。 どうだ? 利き腕を失った感想

は? お前の相棒は、ここには、いねえよ。」

ニヤニヤと笑いながら、剣から流れ出る血を舐め、クロがシャンクスにそう言う。

「クソッ! あいつは・・・ゼフは何処だ!!」

落ちた腕から長剣を引き抜き、シャンクスは構えた。

「フッ・・・・今から死ぬ人間がそんな事を聞いてどうする? 利き腕を失ったお前が俺

の相手になると思うのか? まっ、もう一人の【ゾロ】は、あの子供を手懐ける餌として

生かしておくとは言っていたが・・・・どの道、あの足を封じられちゃ、歩く事も侭ならね

えな。 今のお前のように・・・。」

クロはそう言い終らないうちに、シャンクスに斬りかかる。

「てめえら!! ゼフの足も斬りやがったのか?! 許せねえ! 絶対に!!」

シャンクスの身体が、赤い怒りのオーラに包まれる。

眼光が一際鋭く光り、閃光が一瞬差した。

シャンクスの周りの空気が揺らいだと思った次の瞬間、クロの身体が血に塗れ、地面に沈

む。

「ガハッ!! 一体・・・・・何が・・・・起こっ・・・た・・・?」

クロは自分の身に何が起こったかわからないまま、その場で息絶えた。

「ばぁか・・・超一流の剣士は、利き腕なんかに頼ってねえんだよ。 クッ・・・・・今日

は、引く。 だが、必ずまた・・・・俺は来る・・・。」

シャンクスは、クロの骸にそう吐き捨てるように呟くと、クロコダイルの屋敷から離れる。

「クソッ! 血が・・・・・流れ過ぎだ・・・。」

馬に乗り自分の屋敷に戻る途中、シャンクスは落馬し、そのまま気を失ってしまった。

クロコダイルはこの一件を知るやシャンクスを恐れ、一時的に街を離れ身を隠す。

ゼフの行方はようとしてわからなかった。







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<コメント>

蓮しゃ〜ん・・・・・・こんなのでごめんね。(汗)
どうしても、先代のゾロ役、ゼフに剣士のイメージが掴めなくて
シャンクスを相棒にしちゃったの。
っつうか、ゼフがおまけっぽいんだけどさ・・・。(;一_一)
そう、先代ゾロは二人組なのv
【ゾロ】は、二人の名称の頭文字【S】と【Z】を重ねて書くと
映画上の【Z】になるかなぁって☆
だいぶん端折ったんだけど、これでも無駄に長いよね・・。(;一_一)
どう??(ビクビク)