いつものように、食料と物資補給のために立ち寄った島の。
少し古めいた、とある宿の1室で。
ゾロは1人で、煽るように酒を飲んでいた。
本来ならこの部屋には、ゾロとサンジが止まるはずだったのに。
些細な事がきっかけで始まった喧嘩のせいで、サンジは船に戻ってしまった。
ゾロはというと、サンジと顔を合わせるのが出来なくて。
1人で宿に泊まる事にした。
「はぁ・・・・・・」
宿の外は、すっかり夜の闇に覆われていて。
人通りもほとんどない。
いつからか、雨も降り始めている。
予定通りいっていれば、今頃はサンジと2人で酒を飲んで。
その後は、久々の情事となるはずだったのに。
「なぁにが原因だったけか・・・・・・」
船を港に停泊させた後、ゾロとサンジは2人で買出しに出た。
いつものように。
可愛らしい笑顔で買い物をするサンジに見惚れつつ、周りの視線を牽制する。
「ゾロっ、こっち来いって!早くっ!!」
頬を少しだけ紅潮させて、子供みたいにはしゃぐサンジ。
ゾロの頬は無意識に緩み始める。
「はしゃぐなって。店は逃げねえだろうが」
「時間が勿体ないだろ?」
「時間?」
「ん、と・・・・・・」
少し俯きながら、とてとてとゾロの傍に来ると。『早く2人で・・・・・・・・・な?』
そっと耳元で囁かれた言葉。
サンジを窺えば、首まで真っ赤に染まっている。
サンジだって、若い男だから。
恋人と久しぶりに2人きりになれるのだから、欲情しない訳がない。
そんなサンジの気持ちを悟ったゾロは、緩んだ頬をさらにだらしなく緩ませて。
今度は自分から、サンジに囁いてみる。
「そうだな・・・。さっさと宿に戻って・・・・・・」
『可愛いお前、見せて貰わねえとな』
初な恋人はそれだけで赤くなって、恥ずかしそうにゾロを睨む。
「えろまりもっ!!」
「はいはい。ほら、行くぞ」
「う〜〜〜」
照れるサンジに微笑みながら、ゾロはサンジの隣りを歩く。
その横をサンジは少し早歩き。
頬はまだ熱いまま。
(ちくしょうっ!えろ魔人め〜)
恥ずかしいゾロを恨めしく思いつつも、そこまで求められてるかと思うと。
正直、嬉しいのだ。
(俺ってば、マジ重症だよな・・・)
そんな自分に笑って、サンジはスパイスの店に入った。
荷物を抱えたままのゾロは、店のすぐ脇でサンジが出てくるのを待っていた。
その時。
「あの〜、お1人ですかぁ?」
女が2人、ゾロに話し掛けてきた。
鼻につんとくる香水の匂いに、少しばかり眉間に皺が寄る。
「いや、連れを待ってる」
「よろしかったら一緒に、お茶でもしませんかぁ?」
一向に引く気配のない女達に、ゾロは頭を悩ませる。
(さて・・・。どうしたもんか・・・・・・)
言い寄ってくる女達に、少しばかり辟易していると。
どかっと。
後ろから突然、蹴り飛ばされた。
荷物を慌てて持ち直し、背後を振り返ると。
目の据わったサンジ。
「おう、終わったのか?」
「うるせー!!このはげまりもっ!!!」
「はあ?お前、何言って・・・?」
「俺、帰るっ!!」
何故か激怒しているサンジは、ゾロの腕から荷物を奪うと。
よろよろとふらつきながら、港へ向かい出す。
「ちょ、待てって!今夜は宿に・・・」
ふらつくサンジを助けようと、手を差し出したら。
「触んなっ!勝手に1人で泊まってろっ!!」
これにはゾロもかちんときた。
ずっと前から約束していた。
『次の島では、2人で一緒に過ごそう』と。
それなのに、勝手に怒って約束を反古にするサンジ。
「ああ、そうかよっ!!勝手にしやがれっ!!!」
がんっと近くの壁を殴りつけ、ゾロはそのまま宿屋に向かった。
「・・・・・・・・・・・・なんであんなに怒ってたんだ?」
一連の出来事を思い返してみたが、自分達が喧嘩をする理由など、何処にも見当たらない。
「・・・・・・訳わかんねえぞ・・・」
ふうっと溜め息をついて、ごろんとベッドに寝転がると。
扉の外から。
ぽたり、ぽたりと。
水が床を打つ音がする。
(雨漏りか・・・?)
どちらかといえば、古い木造の宿屋。
雨漏りの1つや2つ、あってもおかしくはない。
だけど何故かその音が、酷く耳についてしまって。
ゾロは起き上がると、扉を開けた。
「っ・・・!?」
そこには。
全身びしょ濡れのサンジが、立ち尽くしていた。
「おまっ・・・!!何やってんだっ!!早く入れっ!!!」
今にも水に融けてしまいそうなサンジに。
ゾロは喧嘩していた事も忘れ、部屋の中に促す。
「・・・・・・・・・・・・さい」
「あ・・・?」
「ごめっ、なさいっ・・・!」
頬を伝う雨に混じって、涙がサンジの頬を濡らす。
「俺っ、やだったんだ・・・・・・。ゾロが女の子に声かけられてるの・・・」
「サンジ・・・?」
「ゾロ、かっこいいからっ・・・。いっつも女の子、いっぱい見惚れてるからっ・・・!」
想いを口にする間も、サンジの瞳からはどんどん涙が溢れていた。
「だからヤキモチ妬いて・・・・・・、ゾロに八つ当たりしてっ・・・・・・・・・」
そんなサンジが、たまらなく愛おしいと。
ゾロは、心から想った。
「サンジ」
「っ・・・・・・!」
優しい声に勇気を得て、恐る恐るゾロを見上げる。
おどおどした瞳に苦笑して、ゾロは逞しい両腕を、サンジに向かって広げる。
「おいで?」
「ゾ、ロ・・・・・・」
「身体、冷えてるだろ?あっためてやるから・・・・・・な?」
「ふえっ・・・、ゾロぉ・・・・・・」
泣き止んで欲しくて差し出した腕は、余計にサンジの涙腺を刺激したみたいで。
ゾロの腕の中で、サンジはさっき以上に泣き出してしまった。
「ゾロっ、ゾロぉ・・・・・・」
「サンジ・・・。お前がヤキモチ妬いてくれて嬉しいって・・・・・・・・・、言ったら怒るか?」
「っ・・・!!」
サンジの頭が動くたび、濡れた髪が頬を打ったけど。
「怒ん、ないっ・・・!」
その言葉だけで、少しも気にならない。
「愛してるよ」
濡れたスーツや下着は、ゾロの手ですべて脱がされて。
冷えたサンジの肌は、ゾロの愛撫ですぐに熱を取り戻す。
「ん、ふやっ・・・」
顔を真っ赤に染めながら、敏感に反応を返すサンジ。
「やぁ・・・、ゾロ、も、やぁんっ・・・」
「嫌じゃねえだろ?ん?」
つんと尖った乳首に触れれば、すぐさま可愛らしい声が返ってくる。
「もっ、そこばっか・・・!」
「じゃ、どこがいいんだ?」
にやにやといやらしい笑みを向けてくる男に、サンジはぷうっと頬を膨らませる。
ゾロは本当にえろい。
普段のストイックさは何処へやら、サンジが恥ずかしがるのを楽しそうに見ている。
だけど。
ゾロがそうなる原因が自分だと想うと、酷く嬉しくて涙が出そうになるなんて事は。
ゾロには絶対言えないけど。
「もっと・・・・・・、いっぱい触って・・・?身体全部・・・・・・」
大きな手をとって、ちゅうっと指を吸う。
「全部・・・・・・・・・、ゾロでいっぱいにして・・・」
何処か幼く見える誘う仕草に、酷く欲情して。
ゾロはすでに濡れて柔らかくなっていた蕾に、つぷんと指を挿れた。
「んふっ、あ、くぅんっ・・・」
「サンジ・・・」
「ひ、や・・・・・・、ゾロぉ・・・」
くちゅくちゅと響いてくる音が恥ずかしくて、サンジは頬を真っ赤に染める。
そんな顔がいっそうゾロを煽っている事を、サンジは知ってるんだろうか。
「んな可愛い顔してんじゃねえよ・・・。たまんねえ・・・・・・」
「や、やんっ・・・!」
熱っぽい声でそんな恥ずかしい台詞、ずるいと想う。
「馬鹿ぁ・・・・・・」
「・・・・・・も、挿れるぞ?」
くちゅん、と。
熱いゾロが宛がわれる。
「っ・・・・・・」
「好きだ・・・・・・、愛してる」
囁きと共に深く口付けられ、そのまま貫かれた。
「んっ、んんっ・・・!」
「痛え・・・?」
「痛、くないっ・・・・・・」
繋がった部分から拡がる、たまらない快感と愛おしさ。
「好き・・・・・・、大好きっ・・・」
しがみついてくるサンジの髪は、まだ冷たくて。
火照った身体に、その冷たさが心地いい。
「動くぞ」
「ん、あぁっ・・・!!」
細い身体を強く抱きしめながら、ゾロは激しく動き出す。
「い、あぁんっ・・・!や、ゾロっ・・・・・・」
「愛してる・・・・・・。すっげえ好きだっ・・・」
「ああっ、あんっ・・・!ゾロっ・・・」
律動の中で、視線が絡み合う。
そのまま惹かれるように、唇が重なった。
「もっ・・・、んんっ・・・・・・!!」
「サンジっ・・・!!」
「ひゃっ、あぁんっ・・・・・・!!!」
どくどくと、注がれるゾロの熱。
力の抜けた身体で抱きしめあって、小さなキスをする。
「・・・・・・・・・寒いか?」
「ううん・・・・・・。ゾロがあっためてくれたから・・・」
「そっか・・・」
「俺・・・・・・、すっごい淋しかった・・・」
「・・・?」
ぎゅうっとしがみついてくるサンジの目尻には、じんわり涙が滲んでいた。
「船で1人でいると・・・・・・、すごく心細くて・・・。気がついたら、ここまで来てた」
「サンジ・・・」
「俺・・・・・・、ゾロと離れたくないっ・・・」
「俺もだよ」
この熱を知ってしまった以上、もう離れてなんて生きていけないから。
いつまでも。
2人で熱を共有しよう。
だからロンリ・ロンリー 切なくて
END.
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