もう、何も聴こえない。
君の声以外―――――――――。




hear


「くはぁ・・・・・・」
ウソップと見張りを交代した俺は、大きな欠伸をしつつ男部屋に戻る。
の前に・・・、一杯酒でも飲むか。
渇きを訴える喉を押さえ、キッチンのドアを開けようとした。
その時。
『っ・・・・・・、はぁ・・・・・・・・・』
キッチンから聴こえてきた、押し殺したような声。
窓から覗いた俺の視界に映ったのは、床に蹲っているサンジ。
あいつ、何してんだ・・・?
キッチンには灯りも点いていなくて、サンジが何しているかイマイチわかんねえ。
何故だか気になって、じぃっと目を凝らす。
『んんっ・・・、あっ・・・・・・』
ぐちゅ、と。
濡れた音がした。
それでようやく、サンジが何しているかがわかった。
まあ、仕方ねえ事だよな。
ここは海の上で、唯一の女であるナミはルフィのだし。
島に着くまでは、マスかくしかねえし。
・・・・・・酒は諦めるか。
あいつだってこんなとこ、俺になんか見られたくねえだろうからな。
仕方なく、そのまま部屋に戻ろうとした。
『あっ・・・、・・・・・・ロ・・・!ゾロっ・・・!』
「っ!?」
突然名前を呼ばれて、足が止まる。
もう一度キッチンを覗くと。
『んんっ・・・・・・、ゾロぉ・・・!ゾ、ロっ・・・』
サンジが俺を呼んでいた。
その顔には汗が滲み、何かに耐えるように瞳は閉じられていて。
何故か―――――――――綺麗だと思った。
『あ、あぁ・・・・・・・・・っ!!!』
びくんと大きくサンジの身体が撓り、荒い呼吸がキッチンに響いていた。
俺には何もわからなかったが、どうしてかサンジから目を離せなかった。
落ち着いてきたのか、サンジの胸の動きが緩やかになる。
そして・・・・・・・・・。
『ふっ・・・、くぅ・・・・・・』
サンジの頬に、涙が流れた。
『ごめっ、なさいっ・・・!ゾロ・・・・・・、ごめんっ・・・・・・』
ぎゅうっと自分を抱きしめながら、サンジは俺に謝る。
その夜から。
サンジの声が。
頭から―――――――――離れない。








『ごめっ、なさいっ・・・!ゾロ・・・・・・、ごめんっ・・・・・・』
苦しそうに謝るサンジの声が離れなくて、昨夜は全然眠れなかった。
だけど起きてあいつを見て、昨夜の事は夢だったんじゃないかとも思う。
「ナミすわぁ〜んvvv紅茶が入りましたぁ〜vvv」
「んんっ。ありがと、サンジくん」
いつもと変わらない様子で、ナミにくっついている。
・・・・・・・・・やっぱ、夢だったのか?
じぃ〜っとあいつを見ていたら、不意に視線がぶつかった。
その途端、あいつは不機嫌そうな顔をして。
「何見てやがる、緑腹巻」
「何も見てねえよ、金色グル眉」
「っか〜!!むかつくなっ!!」
「そりゃ、こっちの台詞だっ!!」
「あんだとっ!?」
「何だよっ!!」
毎日のように繰り返されるこいつとの喧嘩。
こいつは何かにつけて、俺に突っかかってきやがる。
至近距離で睨み合っていたら、不意に昨日の泣き顔が頭に浮かんだ。
そしたら。
「っ!?」
無意識に、サンジの頬に触れていた。
あ・・・・・・、柔らけえ・・・。
触り心地のいい感触にスルリと頬を撫でたら、思い切りサンジに突き飛ばされた。
「んなっ・・・!?なっ、なっ・・・・・・!?」
真っ赤になってどもるサンジを見て。
俺は。
信じがたい事に、―――――――――可愛いと。
マジで思っちまった。
「こっ、こんの変態剣士が―――――――――っ!!!」
ぶあっと容赦ないサンジの蹴りが飛んでくる。
それをひょいっとかわして、もう一度サンジの顔を見る。
相変わらず顔は赤いままで、気のせいか目尻には涙まで滲んでいる。
・・・・・・・・・・・・・・・やばい。
マジで・・・・・・・・・・・・・・・可愛いかもしんねえ。
そんな信じられねえ事を考えていたら。




『ばきっ』




油断していた腹に、サンジの蹴りがまともに入り。
俺は不覚にも気を失った。








「う・・・・・・」
「気がついた?」
目を覚ました時、初めに聴こえたのはナミの声だった。
「・・・・・・おう」
「珍しいわね。あんたがサンジくんの攻撃、まともに食らうなんて」
「ちょっと考え事しててな・・・」
「へえっ。珍しい事もあるのね」
からかうように笑うナミを、じろりと睨んで。
「・・・・・・・・・なあ、ナミ」
「あら、何かしら?」
「・・・それまで何とも思ってなかった奴が、急に気になったり可愛く見えたりするのは・・・・・・・・・何でだ?」
ナミは一瞬、茶色の瞳をぱりくりさせ。
そして意味深に笑った。
「やっと気付いたのね」
「はあ?」
「こっちの話よ。それより、あんたの質問に答えてあげる」
にいっとナミは笑うと、びしっと俺に指を向けた。
「それはね、恋よ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「だから、恋。あんたは彼の事が好きなの」
俺があいつを・・・・・・・・・・・・・・・好きだとっ!?
「ふっ、ふざけんなっ!有り得ねえ!!」
「正直になりなさいよ、ゾロ。あんたが気付いてないだけ」
ナミは椅子から立ち上がると、扉を開いた。
そして振り返り。
「知ってた?あんた、いっつもサンジくん見てたのよ?」
「なっ・・・!?」
「ふふっ。大丈夫よ。好きになったら、性別なんて関係ないでしょ?」
そう言ったナミは、女の顔をしていた。
「じゃね」
静かになった部屋の中、俺は真剣に考えていた。
俺が?
あいつを?
好き?
信じがたい話に唸っていると、また扉が開いた。
いたのはサンジ。
「お、おう・・・・・・」
サンジは何処か居心地悪そうに、部屋の中に入ってきた。
そしてしばらく立ち尽くした後、さっきまでナミが座っていた椅子に腰をおろす。
サンジは黙り込んだまま、何も言わない。
「おい、どうした?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なんだよ、気味悪いじゃねえかよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
次の瞬間。
向けられたのは、ぶすったれたサンジの顔。
あ、また。
今、可愛いって。
「・・・・・・・・・た」
「あ?」
「だからっ!悪かったって言ってんだよ!」
なんだ。
こいつ、さっきの事気にしてたのか?
あー、マジやばい。
そんな顔すんなって。
「じゃ、な!そんだけだ!」
口早にそう言うと、サンジは立ち上がろうとした。
その腕を咄嗟に掴んで、ぐっと自分の方へ引き寄せる。
「う、わっ・・・!」
ぼすん、と。
サンジは体勢を崩し、俺の上に乗っかる。
「ばっ、あっ、危ねえだろうがっ!!」
「おい」
「な、んだよっ」
「俺な、昨夜見ちまったんだ。キッチンでお前の事・・・」
「っ・・・!!!」
すうっとサンジの顔から、血の気がひくのがわかった。
身体は震え出し、今にも壊れてしまいそうな気がした。
「驚いた。お前・・・・・・・・・、俺の事呼んでたから」
「あ・・・」
サンジは可哀想なくらい青くなって、必死に逃げようとする。
だけど強く腕を掴んで。
「それから・・・・・・・・・、お前の事がすっげー気になり出した」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「もう、すっげーお前が可愛くて」
「はいっ!?」
やっぱ・・・、ナミの言う通りだ。
「俺、お前が好きだ」
「すっ、すすすすすっ・・・!?」
青くなったと思ったら、今度は一瞬で真っ赤になった。
なんかマジ・・・・・・・・・、すっげー可愛い。
赤くなった頬をそっと撫でて、俺は小さな口付けをした。
「ゾっ、なっ、おまっ!?」
「・・・・・・何言ってんのかわかんねえ」
「なっ、何してっ・・・!?」
目の前で顔を赤くしながら、ぐいぐいと身体を離そうとするサンジ。
その仕草がたまらなく可愛いなんて・・・・・・・・・、重症だ。
くるっとサンジと身体を入れ替えて、今度は俺がサンジを見下ろす体勢になった。
「ちょっ、何するんだよっ・・・!?」
「んな事決まってんだろうが・・・」
少しだけ声を潜めた後、今度は深く口付けた。
「んんっ!んーっ!!!」
拳で肩を叩かれるが、全然きかねえし。
だがさすがにうるさくなってきて、俺はきゅっとサンジの唇を噛んだ。
「ふぁっ・・・!」
「っ・・・!」
重ねた唇の隙間から零れたサンジの声に、身体の熱が急激にあがっていった。
やべ・・・。とまんねえ・・・・・・。
「んっ、ぁ・・・・・・!」
唇を離さないまま、シャツの裾をスラックスから出して。
その中に掌を滑らせる。
「わっ、ばっ・・・!やだっ、触んなっ・・・!!」
「大人しくしてろ」
「やだって!ゾロっ、やだっ!!!」
ぶんぶんと振り回される手を掴み、じっとサンジを見つめる。
「なんで嫌がる?お前も俺が好きなんだろ?」
「っ!!!」
「好き合ってんなら・・・、いいだろうが」
「・・・・・・・・・って・・・」
ぽろっと、涙が零れた。
それを指で拭ってやったら、また涙が零れて。
どんどんとサンジの頬を濡らしていく。
「おい・・・、なんで泣くんだ?」
「だって俺っ・・・・・・、汚いっ・・・!!」
「汚い?」
「ずっと・・・・・・、ゾロの事考えてっ、1人でしてたっ・・・!もう何回もっ・・・!!」
だから、汚い。
サンジは涙声でそう言った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしたもんか。
こいつ・・・・・・・・・、可愛すぎる。
「サンジ」
「っ・・・!!」
濡れた頬にキスをしたら、サンジの身体が強張ったのがわかった。
「汚くなんかねえ・・・・・・」
「っぅ・・・・・・」
「俺の事が好きだろ・・・?だったら汚くなんかねえ」
「ゾ、ロ・・・・・・」
「だけど、これからは1人ですんな」
「・・・・・・・・・・・・は?」
涙が止まったのを見て、自然に顔が緩んだ。
「これからはずっと・・・・・・、俺がイかしてやる」
ぼけっとした顔が。
ぷしゅうと赤くなった。
「なっ、なっ、なっ・・・・・・!?」
「そーゆー可愛い顔すんなって」
そう言ったら、サンジはもっと赤くなって。
そんなサンジがたまらなく可愛くて。
「好きだ」
そう囁いて、キスをもう1つ。








「あ・・・っあ・・・・・・!」
「・・・・・・・・・痛いか?」
自分の身体の下で苦しげに声をあげるサンジに、不安ばかりが募る。
元々、抱かれるようには出来ていない身体。
負担をかけているとはわかっていても、若い欲望は止まらない。
「へ、き・・・っ!だいじょぶだ、からっ・・・」
ぎゅうっとしがみつきながら、いじらしい事を言ってくれるサンジが。
たまらなく愛しい。
昨日までは、考えもしなかったほどに。
「サンジ・・・、好きだ。むちゃくちゃ好きだ」
「うっ・・・、・・・・・・・・・ロぉ・・・。ゾロぉ・・・!好きっ・・・・・・」
子供みたいに泣きながら、必死にしがみついてくるサンジ。
「もっと・・・・・・、聴かせてくれ。声、聴きてえ」
「あぁっ・・・!ゾロっ・・・、んやぁ・・・・・・」
初めての情事で聴いた声は、昨夜の声よりもずっとずっと。
頭から―――――――――離れない。








ずっとずっと聴かせて欲しい。
君の声だけを―――――――――。








END.









<コメント>

もうね、もうね、なんとあゆみちゃまから、いただいちったのよんvv
それもルナのサイトの10000打記念にvv
も〜、あゆみちゃま、好きだーっ!大好きだーっ!!
はあ・・・・し・あ・わ・せvv
キリリクは、取れなかった(只今チャレンジ中!)けど、もうこれだけで・・・・大満足vv
自分の為だけに書いて貰ったSSは、本当に嬉しいなりよ〜vv
ゾロの台詞の『これからは、俺がイかせてやる・・・』
ええ、もう、どこまでもイかせてやってくださいvv
もう準備万端、いつでもどこでもOKさっ!!・・・・さあっ!!
・・・え?!ルナの事じゃない?? あはは・・・
このお礼は、身体で・・・笑・・・
本当に、ありがとうvv

こんな素敵で、エリョエリョラブなあゆみちゃまのサイトは、
こちらから、どうぞ〜vv


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