俺は悪くねえ。
いつもみたく、甲板の定位置でチョッパーと昼寝してただけだ。
なのになんで、あんなにあからさまに無視されねえといけねえんだ。
ったく・・・。
そーゆー自分はナミやロビンと、仲良さそうにしてるくせによ。
絶対、俺は謝らねえからな!








俺は悪くねえもん・・・。
いつもみたく、お茶の時間にナミさんやロビンちゃんとちょっと話してただけなのに。
なのになんで、あんなに怖い視線で睨まれなきゃなんねえんだよ。
ちくしょー・・・。
自分だってチョッパーと、仲よく昼寝してたくせに。
絶ー対、俺から謝ってなんかやるもんかっ!!








意地っ張りウォーズ








ごろりと。
大きなベッドの上で、俺は1人寝転がる。
いつもはこのベッドの上で、サンジと一緒に寝るんだが。
今日は違う。
俺はまだ怒ってんだからな。
昼間、いつもみたいに甲板で昼寝をしようとしていたら。
てこてことチョッパーが近づいてきて、俺の腹の上に乗っかった。
『あぁ?なんだぁ?』
『俺も一緒にお昼寝していい?』
『別に構わねえけどよ・・・。なんでそこなんだ?』
『俺ね、昔ドクターとこうやってお昼寝してたんだ♪』
サンジから少しだけ、チョッパーの過去を聴いた。
甘えたい盛りの時期に、甘える事の出来なかったチョッパー。
だからなのか知らねえが、チョッパーはよく俺に甘えてくる。
それを嫌と想うよりも、何故か嬉しいと想う自分に最近気付いた。
『ゾロ・・・・・・、駄目か?』
不安そうに尋ねてくるチョッパーの帽子を、ぱふんと撫でる。
『駄目じゃねえよ』
『ありがとうっ』
そんな訳で、2人で昼寝をしてたんだ。
そしたらサンジの奴、えらく不機嫌になりやがって・・・・・・・・・。
あからさまに無視をするサンジの態度を思い出して、またむかむかしてきた。
「あーっ!!ちくしょー!!!」
それがなんだか癪で、そのまま寝る事にした。
・・・・・・・・・・・・アイツは今頃、見張りか・・・・・・。
この時間帯はいつも、キッチンで酒を飲んでいる。
当然のようにそこにはサンジがいて、俺好みのつまみなんかを作ってくれる。
そのつまみを美味いって言ったら、サンジはすごく嬉しそうに笑う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しまった。
サンジの顔がちらついて離れない。
ごろんごろんと寝返りを打っても、浮かんでくるのはサンジの顔で。
むくりと起き上がり、俺はそうっと部屋を出た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・酒、飲むだけだからな」
誰に言うでもなく、そんな言葉が零れた。








ぼんやりと。
見張り台の上で、俺は星空を見上げる。
いつもならこの狭い見張り台で、ゾロと2人でいるんだけど。
今夜は出来ない。
俺はまだ怒ってるんだからなっ。
昼間、お茶の時間におやつの用意をキッチンでしてたら。
ナミさんとロビンちゃんが入ってきて。
『サンジくん』
『はい?』
『ゾロってえっち上手?』
『なっ・・・!?』
『ロビンがさぁ、お兄さんはえっち上手って自慢するの!』
ナミさんもロビンちゃんも可愛い顔して、なんて会話してるんだろう・・・。
お兄さんって、エースの事か・・・・・・。
『あら、本当の事だもの』
『何よ〜。ルフィだって、えっち上手ですからね!』
・・・・・・・・・そーゆー事は、ここで自慢する事じゃあ・・・・・・。
『で?ゾロはどうなの?』
『是非、聴きたいわね?コックさん』
2人ににじり寄られて焦っていたら、ゾロが入ってきた。
そしたら俺の事、すっごい怖い目で睨んで。
その目を思い出したら、また寂しくなってきた。
「うぅっ・・・。ちくしょ〜・・・・・・」
ずびっと鼻を啜りながら、また夜空を眺める。
・・・・・・・・・・・・アイツは今頃、寝てるんだろうなぁ。
この時間帯はいつも、キッチンで仕込みをしている。
当然のようにそこにはゾロがいて、酒を飲んでいる。
そんで俺が出したつまみを食べて、美味いって嬉しそうに笑う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やばい。
ゾロの顔がちらついて離れない。
ぷかぷかと煙草を吹かすけど、浮かんでくるのはゾロの顔で。
すくっと立ち上がり、俺はそうっと見張り台を下りる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・夜食、食うだけだもん」
誰に言うでもなく、そんな言葉が零れた。








((なんでいるんだよ・・・・・・・・・))
キッチンの扉の前で。
ゾロとサンジは、互いにそう想った。
「・・・・・・何しにきてんだよ」
「・・・・・・てめえこそ、ちゃんと見張ってろ」
「俺は夜食、食いに来ただけだもんっ!!」
「俺だって、酒飲みに来ただけだっ!!」
『う〜』と睨みあって、ぷいっと顔を逸らす。
その隙に、ゾロが先にキッチンに入った。
「あっ・・・!!」
先を越された事がなんだか悔しくて、サンジは唇を噛み締めながら、すごすごとキッチンに入る。
中ではゾロが既に、手ごろな酒を出して飲んでいた。
その姿を気にしながらも、サンジは軽い食事を作っていく。
キッチンに広がるのは、美味しそうなサンジの料理の匂い。
(・・・・・・・・・・・・美味そうだな)
だけど。
謝らないと決めた手前、『くれ』なんて言える訳がなく。
ゾロは少しだけ意地になりながら、酒を煽る。
かちっと火を止めると、サンジはちょこんとゾロの目の前に座る。
1人分の夜食にしては、明らかに多すぎるその料理。
(・・・・・・・・・・・・食べるかな?)
だけど。
謝らないと決めた手前、『いる?』なんて訊ける訳がなく。
サンジは少しだけ意地になりながら、料理を食べる。
深夜のキッチンには、酒を注ぐ音と食器がぶつかる音だけ。
(あーくそっ!!こんなんじゃ埒があかねえ・・・。今日はもう寝るか・・・・・・)
沈黙に耐え切れなくなったのは、ゾロが先で。
瓶を開けると、そのままキッチンを出ようとした。
そうしたら。
「っぅ・・・・・・・・・」
小さな音がして、振り返ってみたら。
「っ!?」
料理を食べながら、ぼろぼろと涙を零すサンジ。
「なっ・・・!?お前、何泣いてっ・・・!?」
いきなり泣いているサンジに驚いて、ゾロは慌てて駆け寄る。
「おいっ」
「うっ、ひっくぅ・・・・・・」
「おいって・・・」
「俺っ、謝らねえもんっ・・・!!」
「はあ?」
「俺っ、悪くないもんっ・・・!なんもしてねえもんっ・・・・・・!」
泣きながらそんな事を言うサンジに、ゾロはもう意地を張り通せない。
「あーもうっ!!俺が悪かった!!!」
がばっとその身体を抱きしめて、頭をぐりぐりと撫でる。
「つまんねーヤキモチ妬いて!お前睨んで!俺が悪かった!!」
「うぃっ・・・、ひっく・・・・・・」
「だから泣くなって・・・・・・」
濡れた頬を両手で挟んで、零れる雫をぺろりと舐める。
「んっ・・・・・・」
「ごめん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺もごめんなさい」
何度も謝ってくれるゾロに、サンジの意地もすっかり溶けて。
ぎゅうぎゅうと顔を広い胸に押し付けながら、くぐもった声で謝る。
(あーあ・・・・・・。謝んねえって決めてたのになぁ・・・)
(あーあ・・・。謝っちゃった・・・・・・)




((でも))




ゾロがちらりと下を。サンジがちらりと上を。
見ればその先には、大好きな人の顔。
視線が絡まった瞬間に、それは笑顔に変わって。




((こいつが笑ってるから・・・・・・・・・・・・いいか))




「いる?」
「くれ」
ゾロはもう一度座ると、膝の上にサンジを乗せた。
「あーんv」
「ん」
「美味い?」
「美味い」
仲直りした2人は、料理がなくなるまでイチャイチャしていた。








そして次の日。
「ゾロの馬鹿ーっ!!!」
「このエロ眉毛っ!!!」
昨日仲直りしたはずの恋人達は、また喧嘩をしていた。
「やーねぇ。まだ喧嘩してる」
「飽きないのね、2人とも」
「昨日はあんなに仲よかったのになぁ」
デッキチェアに腰掛けたナミとロビンの傍で、チョッパーが溜め息交じりに呟く。
「昨日?昨日って2人とも、喧嘩してたでしょ?」
「ううん。夜ね、ジュース飲もうと思って、キッチンに行ったらね」
「行ったら?」
「ゾロがサンジにね、ご飯食べさせてもらってたんだ♪」
とても嬉しそうに話すチョッパーに。
ナミは溜め息を、ロビンは苦笑をそれぞれ漏らす。
「ったく・・・・・・。どうして人目を気にしないのかしらねぇっ!」
「まあ・・・・・・、いいんじゃないかしら?」
「ご飯食べさせてもらうのって嬉しいよな♪」
にこにこ笑顔で無邪気に笑うチョッパーに、ナミもロビンも微笑んだ。








「俺は悪くねえっ!!」
「俺だって悪くねえもんっ!!」




「「絶対、謝らねえからなっ!!」」




意地っ張り同士の闘いは続く。








END.










<コメント>

あゆみちゃまのサイトの60000HITOVER記念SS拉致って来ましたvv
サンジの流す涙は、超強力で、鷹の目の黒刀も、目じゃないですねvv
お互いに、些細なことで喧嘩して、すぐ仲直りして、
とっても格好可愛い二人vv もう大満足vv
こんな素敵で、エリョエリョラブなあゆみちゃまのサイトは、
こちらから、どうぞ〜vv


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