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『ゾロの為に作ると思うと、何だか本当に嬉しいだけじゃなく
て
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オレは剣豪を選んだ時から、そんな綺麗な生き方は失くし
てしまったけれど。
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ただ、あのサンジの笑顔をもう一度見たいそれだけの為
に。
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ここの所、夏島の天候のせいか暑い日々が続いていて。
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何かと気にかけては入るけれど、それが気に入らなかった
らしく。
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買出しを頼まれたサンジの、伺うような目を気にしながら
も。
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懐かしい想いが少しよぎって、この幸福な風景を少しでも
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オレの記憶を少しでも、分けてやれたらと本気で思った。
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気がついて、俺は倉庫の奥に隠した物を取りに甲板に出
た。
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太陽は相変わらず、ギラギラと輝いてはいるけれど・・。
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声をかけてやっても、チョッパーの速度は変わらない。
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だったら、手伝おうと船から飛び降りてチョッパーの元に駆
け出した
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「ゾロ・・・大丈夫だよ・・・夏バテが酷くなっただけだか
ら・・・」
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「うん・・・そうして、オレだと揺らしちゃって余計に苦しいだ
ろうから・・・・」
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チョッパーの背からサンジを抱え上げ、そっと抱き上げる。
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「だろうね・・・夏風邪が治りかけてた所に、夏バテだか
ら・・・
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あんなに・・・・最後まで治療させてって言ったのに・・」
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サンジの額に張り付いた、金色の髪をそっと払ってやる。
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「ん・・・・と・・・ちょうど夏島の海域に入った頃に夏風邪にな
って・・・それが治りかけたのが三日前位かな?そのまま
夏バテに突入しちゃったんだよ・・・」
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何故もっと・・・もっと・・・きつく休むように言わなかった?
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額に浮かんだ汗を、何度も何度も冷やしたタオルで拭って
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いつも通り振舞う事なんて・・・わかりきった事だったのに。
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まだ幼かった頃に一度、夏バテは経験しているから・・・
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オレはキッチンへと、極力音を立てないように戻った。
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りんごをいくつか持って、サンジの所に戻る事にする。
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チョッパーのクスリで、先ほどよりは楽そうに息をしている事
を
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起すのは可愛そうだったが、何か腹に入れないと昼の分の
クスリが入れられない。
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「寝てるとこ・・可愛そうだがな・・・何か食って薬入れない
と・・・」
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りんごと一緒に持って来たおろし金で荒く、りんごを摩り下
ろし
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「よかったよ・・・酷くなくて・・本当に良かった・・」
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「食ったら・・・コレ飲んで大人しく寝てろ・・・いいな・・」
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とにかく寝て、食べて・・・体力を付けさせないといけない。
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「いいんだ・・・一人で頑張るな・・・お前は一人で抱え込む
からな・・心配だよ・・・」
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キッチンに微かに茶の匂いがしてきて、くつくつと小さな気
泡が
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大きなベッドに、何だか小さくなったサンジが眠っていた。
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フカフカのベッドに沈んでいるせいか、子どものように幼く見
える。
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何度かサンジの頬を撫でていると、金色の睫が微かに動い
た。
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少しだけ・・・食えるかどうか・・わからないから・・
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「・・・あぁ・・・小さい頃・・オレも夏バテした事があって
な・・・
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『ゾロの為に作ると思うと、何だか本当に嬉しいだけじゃなく
て
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