恋人の定義


  恋人らしいってどんな風だろう・・。
  昨夜の王様ゲームで、思ってた事をぶちまけて。
  今でも、考えるのはその事・・。
 
 
 
  あの王様ゲームの後、俺達は色々話しをしたんだ。
 
 
  こんな事したい
  こんな事して欲しい
 
  どんな風にして欲しい?
  どんな風にしたい?
 
 
  夜が明けるまで・・語り合って・・
  俺は朝食の準備をしなくちゃいけなくて・・・
  楽しかった時間はおしまい。
 
  ゾロも、じゃあ。
  って言って、自室に帰って行った。
  二人語り合った時間が・・・懐かしくて・・
  なんとか涙が出るのをくい止めながら、俺は仕事をこなしていく
 
 
  全然眠っていないのに、頭は冴えていた。
  ゾロの事で
  ゾロの為に・・
 
  恋人ってどんな事?
 
  俺の疑問は止まないけど・・
  そのうち分かるのかな?
 
 
 
  ふんわりフレンチトーストに、ピリ辛のマスタードを添えた自家製ウィンナー。
  鴨肉の燻製に、ソースをかけて・・これは船長に。
  ベリー系をふんだんに使った、ベリージャムはウソップ。
  チョッパーは色取りどりの、サラダスティック。
  オレンジとレモンの香りをつけた、クリームはナミさん。
 
  それぞれに一つずつ、違ったモノを添えていく。
  これは、毎朝の習慣。
  少しでも、皆を特別にしてあげたいから・・
  そして、今度はゾロの朝食。
 
  ゾロはいつも遅れてくるからな・・
  皆とまったく違う物でも、そんなに苦労しない。
  朝は米がいい・・と何かの折に言っていたから・・
  それ以来・・毎朝ゾロには特別メニュー。
  まぁ・・自分の楽しみもあるのだけれど・・・。
 
  ゾロの朝食の準備をする頃、皆が起き出して来る。
  騒がしいけれど、楽しい朝ごはんの始まり。
 
  ナミさんが、新聞片手に紅茶を飲んで俺に言った
  「そういえば・・サンジ君・・二日酔いは大丈夫?」
  二日酔い?
  不思議そうな顔をしたんだろう俺に、ナミさんはふふと笑ってカップをソーサーに
戻す。
  「だって・・みんなの前でアンナ事したんだもの・・相当酔ってたのかと思って・・」
  あ・・・・・
  俺の微かな記憶の中で、ゾロにキスした場面が浮かび上がる
  意識がはっきりしたのは・・・
  ゾロに『側にいたい・・甘えたい』って言った時・・
  それまでは・・・あんまり覚えてないけど・・
  皆がまだいたのは、微かに記憶に残っていて・・
  俺は顔が紅くなるのを、必死で抑えながら・・
  ナミさんに頭を下げる。
  「わわ!!すいません・・あんまり覚えてないんですけど・・
  俺・・・うわ・・本当・・・皆もごめん・・俺・・」
  「ゾロとは仲直りできた?」
  ほへ?
  今なんて・・・?
  まさか、ナミさん知ってる・・・・????
 
  「今更よ?皆知ってるわ。ゾロと付き合ってるんでしょ?」
  俺の目の前は真っ暗・・。
  そんな、俺・・必死で隠してきたのに・・
  バレバレ??
  「イマサラだよなぁ〜」
  何て、全員が・・チョッパーまでもが・・言う。
 
 
  「・・おはよ・・」
 
 
  パニックになった俺は幻聴まで聞こえてきたらしい。
  こんな早くにゾロの声がするなんて・・
 
  「あら・・早いわね?」
  「おはよ〜」
  「ぼばびょ!!!!ぼろ!!」
  「おはよう、ゾロ」
 
 
  よう、と何気なくゾロは手を上げて皆に挨拶を返していく。
  ・・・・・???
  目の前で、ゾロは俺の顔を覗き込む。
  不思議そうな顔をして、
  「どうしたんだ?サンジ???」
 
 
 
  それはこっちのセリフだと、言葉にしようとしてやめた・・・
  なんだか、もう本当。
  疲れた・・・。
  皆にはゾロとの事バレてるし・・
  ゾロは訳もわかんないほど・・早起きだし・・
  何?
  今日俺って厄日かよ・・・って・・思っちまう。
  「サンジ・・腹減ってんだけど・・・」
  なんだよ・・俺は今、一人孤独に悩んでんだよ・・
  ほっといてくれよ・・
  「なぁ?サンジ?」
  あんまりシツコクなぁなぁと声をかけてくるから、ニッコリ笑って
  「早起きしたんなら、皆と同じでいいな?」
  って言ってやった。
  米は炊いちまったけど・・・まぁ・・いいさ・・
  せっかく昨日の甘い流れで・・二人で朝飯と張り切っていたのに・・・
  なんで、こんな日に限ってさ・・・
  早起きなんだよ・・・
 
 
  ゾロのバカ・・・
  デリカシーのなさにも程があるぞ・・
  バァカ・・・・
  もう・・知らないんだからな・・・
 
 
 
  カチャ カチャ
 
  朝食の片付けをしながら、流れる水に想いをはせる。
  本当・・・
  なんだって言うんだよ・・
  ゾロの奴・・。
  あの後、俺がもう一度
  『皆と同じだぞ・・・』
  って言ったらさ・・、テーブルをグルッと見回して。
  一言。
  『こいつらとか?』
  俺はコクンと頷くと、
  『なら、イラねえ』
  って言って、さっさとキッチンを出て行った。
 
 
  ガチャンと皿を置いて、洗い物を中断する。
  水が出しっぱなしだけど・・
  もう・・・そんなのどうでもいいんだ。
  だって、さ・・・ゾロ俺のメシいらないって言った。
  あいつ、俺のメシは何でも好きなんだって
  ずっと、思ってなのに。
  そうじゃないんだ、ただ俺がたまたまアイツの好物を作るから食うんだ。
  もう、本当泣きたくなってきた。
  今まで、俺のメシが好きだと思ってたのに。
  ぼやけた視界を袖口で拭う。
  「・・・ぃてっ!」
  腕に洗剤が着いていたのか、
  目がチクチクと痛い
  俺の胸もチクチク・・・
  痛い・・イタイ・
  いたいよ・・・う・・・
  ボロボロ零れる涙に、目をゴシゴシ擦る。
 
 
 
  フト、擦っていた腕が誰かに掴まれた。
  あったかい
  大きな手の感触。
  「コラ・・こすんじゃねえ・・・酷くなる・・」
  ゾロ・・・
  ゾロ・・・
  この涙は洗剤のせいなんだから・・
  お前のせいでなんか・・・泣いてないんだから・・
  優しくしないでくれよ・・
  「来い・・」
  ゾロに手を引かれて、俺は外に出たようだ。
  いつの間にか、ゾロの手は俺の手を握っていて・・。
  なんだか・・より一層涙が流れてきた・・・
 
 
  太陽と潮の香り。
  目を閉じていても、太陽がサンサンと輝いているのがわかる。
  この時間はたいてい、片付けに追われているので
  外がこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
  この、優しい空気を伝えたくて
  ゾロの手をキュッと握った。
  指を絡めていたから・・ゾロの反応が顕著に感じられる。
  「いい天気だ・・サンジ・・ちと、我慢な?」
  そう言われて、突然俺の身体は中に浮く。
  背中と膝の裏に、逞しいゾロの腕の感触。
  これは・・・お姫様抱っこ!!!!????
  「うわ・・!!ゾロ!!ヤメロ!!」
  ジタバタと暴れると、ゾロの厳しい声が返って来た。
  「コラ!!動くな!!あぶねえだろうが・・船尾に行くんだよ・・
  途中の階段は目ぇつぶってたら危ないからな・・我慢しろ」
  そう言われたら・・暴れられないじゃん?
  俺の事、気遣ってくれるんだなぁ・・・とかさ・・
  つい嬉しくて・・・・ぎゅうって、ゾロの首にしがみついた。
  ゾロは何も言わなかったけど・・。
  ただ、少しさっきより力を込めて抱いてくれた。
  嬉しかった。
  本当に・・嬉しかったんだけど・・さ・・・さっきの事が頭から離れないから
  本当には素直になれないんだ・・・
  それが悲しい・・本当に・・
  それだけが・・悲しいんだ・・
 
 
  ふんわりみかんの香りがして、俺はそっと地面に降ろされた。
  土の温かな匂いと、ナミさんの大事なみかんの香り。
  ほのかに甘くて・・・優しい香り・・。
  ゾロが隣に腰掛けたのが、動く気配でわかる。
  「ほら、横になれ」
  言うのと同時に俺の身体が傾いて、頭の下に硬いものが当たる。
  「目・・あけられるか?サンジ?」
  穏やかなゾロの声に、俺はほだされちゃって。
  そっと目を開いていく。
  同時に痛さがぶり返してきて、涙が溢れて来た。
  ボロボロ零れる俺の涙を、優しい仕草で拭うゾロ。
  不器用な剣士の指で・・
  まるで大切な陶器を扱うように。
 
 
  何度かその行為を繰り返して。
  やっと、俺の視界が元に戻ってくる。
 
 
 
  目の前に、いっぱいの空とゾロの顔。
 
  大好きなゾロ。

風に揺れる緑の髪も。
  淡い不思議なダークグリーンの瞳も。
  精悍な顔に、浅黒い肌も・・。
  みんな大好きなのに・
  なのに・・こんなに好きだよ・・
  例えさ・・お前が俺の事・・・和食の上手いコックだと思っても
  それでもいい・・・・
  こうして・・・出会えたんだから・・その事だけでも本当に
  本当に俺は嬉しいんだ・・・
 
  だって・・出会わなければ・・こんな後悔や悲しい気持ちにもならなかったし・・・色
んな楽しかった事も知らないままだったんだから・・・
 
 
  「大丈夫か?目・・赤くなっちまったな・・」
  俺の目元を穏やかに、撫でながら・・ゾロは俺に言ってくる。
 
 
 
  そして、気がついた。
  俺の今に状況に・・
  俺・・俺・・・
 
 
  ゾロに・・
  ゾロに・・・・・・
  膝枕・・されてる・・・!!???
 
 
  「こう・・したかったんだろ?」
  そう言った、ゾロの瞳は悪戯が見つかった子供のように澄んでいて・・・
  何だか可愛らしかった。
  「今の海域はこの時間が一番気持ちいいんだ・・でも、お前はこの時間はいつも
片付けに忙しくて・・キッチンから出てこないから・・・・」
  そう、言ってゾロはボリボリと自分の後頭部を掻く。
  照れている時や、何か考えてる時のゾロのクセだ。
  俺は珍しく自分から行動に移してきたゾロに、何だか興味があったし
  何より・・すこし硬いけどさ・・この頭の下の暖かさが気持ちいいから・・
  様子を見ることにする。
  「だから・・・俺が皆と同じ時間に起きればいいかと思った」
  ん?
  それって・・今朝の事だよな?
  「朝キッチンを出て・・・寝ないようにして・・そのままキッチンに戻ったら・・・
  そしたら・・お前・・あんな事言うし・・」
  「あんな事?」
  又ゾロはボリバリと頭を掻き、今度はウーウー唸り出した。
  「めし・・皆と同じだぞって・・」
  俺はゾロの顔を真下から覗き込む。
  真っ赤になってるゾロなんて初めてで・・
  俺の悪戯心が動き出す。
  「皆と同じモンの何が嫌なんだよ?」
  そうだぞ・・洋食だって俺のメシは美味いんだから・・
  それなのに食わないなんて
  いらないなんて・・・なんで言うんだよ・・
  「・・・『同じ』は嫌だ・・・・オレはお前の『特別』になりたいし
  お前の『特別』が欲しいんだ・・」
  ?????
  今俺の頭は真っ白で・・・
  ゾロ・・・何て言った???
 
  「どんな些細なことでも・・・特別がいい。
  お前と同じ物を食べたいし・・・一緒に食って欲しい・・・
  皆と同じって事は・・・お前は俺にも給仕するんだろ?・・・今まで見たいに一緒に
メシ食えない事になるだろうが・・・別に飯は同じでもいいさ・・・お前が俺の為に
作ってくれるんなんら・・・・
  何でも美味いと思う・・・
  でも、一緒に食えなくなるのは・・・・嫌だ・・・・」
 
 
  嬉しくて・・
  うれしくて・・
  また視界が曇った・・
  でも今回に関しては・・涙を流してやる事にする。
  だって・・これは・・幸福の涙だから・・
  俺の涙をみて、ゾロは慌てている。
  拭おうと伸ばされた手を、俺はそっと掴んで、頬に当てた。
  暖かい・・
  あったかくて・・・
  大きくて・・・
  いつかこの手は・・大剣豪を手に入れるんだろう・・
  その時まで・・どうか・・その時まで・・
  この人の側にいられますように・・
  「はは・・俺・・ゾロが俺のメシ・・・和食でないと食ってくれないのかと思った・・・」
  「何・・?」
  「俺が和食作れるから・・・・側にいてくれんのかと・・・
  認めてくれてないんだと・・だから、皆と同じのは嫌なのかと
  思ったんだ・・・」
  「はぁ・・・そんな事あるわけないだろう?ちゃんと晩メシは食ってんだから考えろ
よ・・・」
  「あ・・・・」
  「それに、オレは『皆と同じ』がイヤだって言ったんだぞ?
  『同じメシは嫌だ』何て言ってねえ・・・」
  「・・・・・」
  俺は朝の会話を思い出す。
 
  ゾロは盛大にため息をついて、俺の髪を髪を撫でる。
  ゾロは俺の髪を撫でるのが好きだ・・・
  何かあると、必ず俺の髪に触る。
  そっと、触れるだけだったり・・・
  梳くように指に絡めたり・・
  今見たいに・・・ただ・・・ゆっくり撫でるだけだったり・・
  どの仕草にも・・ゾロの一杯の気持ちが・・
  隠されてるのがわかるから・・・
  俺は・・・嬉しくなる・・
 
  昨日・・俺が膝枕してくれっていた事・・
  ちゃんと覚えててくれた事。
  この頭の下の、ゾロを感じる度に俺の心に響いてくる。
  俺の為にいっぱいいっぱい考えて・・・
  そっとゾロの足に触れる。
  筋肉質で・・・女の子みたいに・・柔らかくなんてないけれど。
  これがゾロなんだって思える。
 
  温かさ
  大きさ・・・
  そして・・何より・・
  ゾロの匂い。
  微かな風に、運ばれて俺にゾロの、
  太陽にような
  海のような・・
  優しい心安らかになる・・・匂いを運んで来る。
 
 
 
  「膝枕・・・して欲しかったんだろ?」
  大人しくなった俺に、心穏やかなゾロの声が響いてくる。
  低音の優しい音達。
  ゾロを構成する者達・・。
  その声すら愛しくて・・・俺はゾロの膝にそっと頬擦りをする。
  大好きだ・・
  こんなに・・
  昨日もあんなに沢山触れ合ったけど。
  こんな風に何度も確かめたけれど・・
  それでも、全然足りないくらい・・
  ゾロが好きだ・・
 
 
 
 
  クークーと
  穏やかな寝息がオレの膝から聞こえて来る。
  まるで、子どものように何もかもオレに委ねて・・・。
  サンジは眠る。
  オレのズボンをしっかり握って・・
  本当に愛らしい程のその仕草に・・・
  オレは少し安堵する。
 
 
  昨夜。
  ナミの提案でオレ達は『王様ゲーム』をした。
  その後、サンジの奴が酔って言った事。
 
  『側にいたい・・・昼間でも・・ゾロと・・一緒にいたいのに』
 
 
  嬉しくて・・嬉しくて・・・
  つい浮かれて・・・その申し出を受けたけれど・・
  今朝・・部屋に戻って・・・すこし考えた。
  もし・・酔った勢いで言っただけなら?
  サンジが何も覚えていなかったら?
  拒絶されたら・・?
  怖くなった。
  正直・・オレはサンジに嫌われるのが・・・
  それだけが怖い。
  やっと・・・お互い・・好意を持ってると告白して・・
  世間的に言う恋人になったけれど・・・
  サンジは・・コックで・・・・
  この船のコックで・・・
  いつかは・・離れる時も来るかもしれない・・
  あのおっさんや・・・
  あの店・・・
  アイツには大切で守りたいと思う物がたくさんあるから・・
  オレには・・・大剣豪しか荷物はないけれど・・・
  アイツはたくさんの荷物を持って乗船してるから。
  夢が叶って・・・奇跡の海が見つかったら。
  どうするんだろうとか・・・
  オレはどうしたいんだろうとか・・・
 
 
  今を大事に生きて・・・今のサンジを感じて・・・
  いつかの話を考えないようにしてきた。
  すると・・・昼でも・・・どこでも・・・サンジを確かめたくて・・
  しかたないけれど・・・あいつは昼間、忙しいから。
  側にいて・・・抱きしめて・・・感じて・・・触れて・・・
  夜の行為を強いたら・・。
  サンジはこの船にいる・・・その理由を失ってしまう。
  アイツは、コックだから。
  オレのモノであってほしいけれど・・・。
  そうあってくれたら、どんなにいいかわからないけれど。
  けれど、それはサンジの存在意義を壊してしまうから。
 
 
  昼間は極力避けていた。
  あんまり意識しないでも・・・オレがキッチンに近づかなければ・・・
  お互い会う機会があまりないんだけれど。
 
 
  昨夜の申し出を・・・どう解釈すればと・・・
  考えた。
  皆が朝食に行った後も、考えた。
  そして結果は・・・当たって砕けろ。
  ・・・・サンジが怒ったら・・昨日の会話を話して聞かせて・・・
  わかってもらおう・・・
  そう思った。
  なら、行動は早い。
  いつもは忙しいサンジ。
  それはオレが遅れてメシを食うからで、もし皆と同じ時間に食べれば。
  サンジの朝の片付けは早く終わるはずだ。
  そうしたら、二人で甲板で昼寝をしよう。
  約束どおり、お前に膝枕して・・・。
 
 
 
 
 
  サンジの寝顔を見ながら、ウトウトしていると。
  「あら・・よく眠ってる・・・もう少ししたら、お昼の準備に入る時間だから、サンジ君
起してね・・・ゾロ・・・」
  ナミが、そう言って軽やかに去って言った。
 
 
  楽しかった時間もおしまい。
  残念だけれど、こいつはコックだから。
  コックのサンジは皆のモンだから。
  しかたない・・・・
  「サンジ・・・サンジ・・・」
  そっと肩を揺らして、サンジに声をかける。
  穏やかだった、規則正しい寝息が一度乱れて。
  サンジの蒼い瞳が姿を現す。
  オレの大好きな・・・澄んだ瞳。
  今は擦ったせいで紅くなってる目元が・・・なんとも艶かしくて。
  オレは少し・・・動揺する。
  「オハヨ・・サンジ・・・・そろそろメシ・・つくんだろ・」
  「・・・ふあ・・・んふ・・んん・・・そっかお昼・・・」
  ゆっくりとした動作でサンジが起き上がる。
  オレの膝からも、同時に重みが消えて行く。
  その感じが、少し悲しかったけれど・・・
  「ふあ・・ん・・ゾロ・・ありがと・・」
  「あぁ・・かまわい・・眠れたか?」
  「ん!!ばっちし!!へへ・・・・」
  サンジが照れたように、頬を桜色に染めて笑う。
  こんなに穏やかな時間は・・・何日ぶりだろう。
  こんなに近くで、
  こんなに嬉しそうに笑うサンジを・・・
  離したくはないけれど・・・
  「また・・・してな・・・オレも出来るだけさ・・・時間作って・・・
  ゾロに膝枕してあげるvv」
  「あぁ・・・楽しみにしてるよ・・・」
  じゃあな!!
  っていって、サンジがキッチンへと戻っていく。
  短い時間だけでも。
  昼間に側にいただけで、あれだけ喜んでくれるなら。
  もっと、もっと・・・
  こんな時間を作ろうと・・・・オレは決心した。
 
 
  身体を繋げることも・・・
  愛を感じてとても気持ちいいけれど
  こんな風に・・・
  ただ、側にいて
  何もない時間を過ごして・・・
  それも、大事なんだ・・・・
  恋とか・・・恋人とか
  オレにはまだどんなものかはわからないけれど・・・
  ゆっくりゆっくり・・・
  この船のように・・・
  この海のように・・・
  ゆっくり歩んで行こう・・・・
  そうすれば、近い未来も
  遠い未来の事も上手く解決するんじゃないかな・・・
  そう思う・・・・。
  まだ、まだこれから、二人で恋人になろうな・・・
 
 
 
 
 
 
  少しして、ルフィの歓声と。
  いい香りが、甲板の方から漂ってくる。
  天気もいいし、今日の昼食は甲板でらしい。
  オレは、ゆっくり立ち上がって、甲板に向かおうと歩き出した。
  階段の手前で、ニコニコと微笑んだサンジに会った。
  手に布巾のかかった、大きな皿。
  もう片方にには、大きなバスケット。
  サンジは、オレに目で船尾を示し階段を上って来る。
  不思議に思いながらも。
  オレはサンジについて、また船尾のみかんの根元までやってきた。
  大きな布を引いて、サンジがバスケットの中身を広げていく。
 
  大きな水筒。
  玉子焼き。
  肉団子。
  から揚げ・・・
  ポテトサラダ
 
  いわゆる、『お弁当』の中身達。
  そして、最後に。
  布巾のかかった大皿。
  布巾を取ると、ホカホカと湯気を立てたお握り・・・・。
  サンジは海苔をオレに渡して、
  「海苔は食べる時に巻いてな?パリパリの方が美味いからさ」
  オレは呆然として、引かれた布に座り込んだ。
  「朝飯・・・ゾロの為にさ・・ご飯炊いてたんだ・・・」
  オレに小皿と箸を渡して言う。
  「・・・・ナミさん達にも断ってきたから・・・これ全部ゾロの為に・・・・
  ゾロの為だけに作ったんだ・・・・」
  「・・・・サンジ・・」
  「へへ・・・ナンカさ・・・ゾロの言うとおり・・・特別にゾロだけに作るって思うと
  凄く楽しくて・・・幸せだった・・・・」
  「そうか・・・ありがと・・・美味そうだ・・」
  「うん!!美味いぞ!!食えよ!!」
  お握りに海苔を巻いて、サンジが渡してくれる。
  サンジは急須で緑茶を入れて、水筒から味噌汁を注いで。
  オレ達は二人だけの・・・・
  楽しい昼食にありつくのだ・・・。
 
 
 
 
 
 
  そして、この日から。
 
  約束どおり、ゾロはおやつの時間に現れるようになった。
  ただ、お茶を飲むだけだったり。
  ゾロ用に作られた、サンジのおやつを食べたり。
  サンジは花のように微笑んで。
  それはそれは楽しそうに・・・
  ゾロとおやつを楽しむ。
  ゾロも。それは、それは幸せそうに・・・
  穏やかに、綺麗な恋人を見て笑っていた。
 
 
  <END>





 

<コメント>

茜色の雷様 第2弾!!
茜様のサンジって、どうしてこう可愛いのかしら・・・
うちのサンジと大違い・・・やはり、書き手の性格がでるのかな・・・
可愛くて、食べちゃいたい・・・茜様!!ブラボー!!
こんな可愛いサンジがいる素敵サイトは、
こちらよ〜んvv


<treasure>