LOVE RAIN




 




ユバに着き、尚一層、その目的達成の為、結束を強めたルフィ海賊団ご一行は、次なる目的

地、クロコダイルの本拠地レインベースを目指し、旅をしていた。

「うおぉぉ!! 水だ、水ーーっ!!」

「水だー!! 飲ませろーッ!!」

そう叫び声と共に、ルフィとウソップが真っ先にレインベースの街に入る。

既にバロックワークスの手下が潜入していると思われ、騒ぎは起こしたくなかったのだが、

運悪く海軍に追われ、クルー達は一旦千々に離れる事となった。








「ん? あれは、確か・・・・・・・・・・・・・・ゾロを追って来たのか、やっぱ・・・」

逃げる途中、サンジは見覚えあるレディを見つける。




ローグタウンで一度だけ見掛けた・・・・・・たしぎさんって言ったけか。




あの時の胸の痛みは、まだサンジの心の奥底に潜んでいる。




ゾロは・・・・・・関係ねえと、そう言った。

別に・・・・・・昔の親友に瓜二つの・・・・・・

それだけだと・・・・・・そう言った。

別にゾロの言葉を疑うわけじゃねえ。

けど・・・・・・・・・・

ゾロはそうだとしても・・・・・・

この娘は・・・・・?

そうじゃねえと・・・・・・・誰が言い切れる・・・・?




今の段階で、それが恋かどうかは別として、この街にゾロを追って来た以上、ゾロに対しなん

らかの感情をたしぎが抱いている事は確かだと感じた。




それが・・・・・・恋だとしたら・・・・・

それを、彼女が自覚したら・・・・・・・

俺は・・・・・・・・




好きだと言ってきたのは、ゾロの方。

強引過ぎるくらいのアプローチにいつの間にか絆されて・・・

けど・・・・・いつの間にか、ハマってしまっていたのは、自分の方で・・・・・

付き合えば付き合うほど、幸せも大きくなって・・・

その反面、抱える不安も大きくなった。




本当に・・・・・・・俺で良いんだろうか・・・?

ずっと初めから抱えてきた疑問。

この世に男女という生命の理があるというのに・・・・

それに逆らってまで、傍にいて良いのか・・・。

男なら・・・・生き物なら・・・・・子孫を残したいって思うことは当然であって・・・・

それが世界一になろうって程の男なら・・・・・なおさら・・・・




彼女の姿を目の当たりにすると、ますますその疑問が大きくなる。




同じ剣士を志す彼女なら・・・・・・・・ゾロの相手には申し分ない訳で・・・・

海賊と海軍だろうと・・・・・そんなもんはどうにでもなる事だし・・・・

いや・・・・・・それよりも、俺のこの不安を煽るのは・・・・

いつも傍に携えているあの白鞘の・・・・・

失った親友に瓜二つだって事・・・・。




親友だなんて言っているが、その話をするゾロの表情は、凄く優しくて穏やかで・・・・

どんなにその娘が大切だったか・・・・・愛していたのか・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・思い知らされる。

死んだ彼女に敵うわけないと・・・・・・・・心が叫ぶ。




表面上、笑って受け流している俺だけど・・・・・その心はずっと雨が降り続けてて・・・・・

降り止まない雨・・・・・・・・。

ゾロに言える筈のない・・・・・・・心。

言える訳がない・・・・・・・こんな女々しい想いなど・・・・・

だから・・・・・・・・・

もし、彼女が・・・・・俺の予想通りの展開を迎えたとしたら・・・・・

俺は・・・・・・・・・・・

潔く身を引こう・・・・・・・・それが・・・・・・・

なけなしの俺のプライドだから。




「サンジ、どうした?」

「あ? なんでもねえよ。 ワニ野郎のとこ、急ごうぜ。」

黙ったまま、彼女を見つめてるサンジにチョッパーがキョトンとしてて・・・

サンジはそう返事して、チョッパーと一緒に目的のレインディナーズへと急いだ。















「クソッ!! なにやってんだ、俺は!! ・・・・俺に鋼鉄を斬れる位の剣の腕前があ

れば・・・・・。 リトルガーデンの二の前じゃねえか・・・・・んなとこ、あいつに見られた

ら・・・・・情けねえ・・・・」

クロコダイルの罠に自ら掛かった事態に落ち入っているゾロは、斬れない鉄の檻にそう言って

溜息を吐く。

リトルガーデンの件といい、今回の事といい、まるっきりいいところ無しの自分にいささか呆れ

さえ覚えてくる。

他の誰にどう思われようと知った事ではないが、やはりサンジに能無し呼ばわりされるのは

絶対に避けたいところで・・・・

好きな奴の前で格好付けたいと思うのも、ゾロの本音と言ったところだった。

そんな時、クロコダイルに掛かってきた一本の電話。

人を小馬鹿にするような横柄な物言い。

すぐにサンジだとわかった。

しかし、一発の銃声と共に、その声は受話器から遠のいて・・・・・ゾロは愕然とする。




ハハ・・・・・まさか、な?

あいつに限って・・・・・・雑魚相手に遅れをとるなんて・・・・・

絶対に有り得ねえ・・・・・




何度頭の中でそう否定しても、電伝虫から聞こえる声はサンジの声ではなくて・・・・

「あの野郎、生きてんだろうな・・・。」

思わず、声に出してしまった自分が居た。




何馬鹿な事言ってやがんだ、俺は・・・・。

まだそうだと決まったわけじゃねえ。

この瞳でちゃんと見るまでは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対に認めるもんか。




じっとクロコダイルが持つ電伝虫を睨みつける。




あいつが居なくなったら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対に俺にはわかる。

これは・・・・・・・・・・希望なんかじゃねえ。

・・・・・・・・確信だ。




クロコダイルはゾロ達を見てにやりと笑うと、席を立つ。

「サー・クロコダイル・・・・どちらへ?」

「ん・・・・そのプリンスとやらの面を見にな・・・・・」

クロコダイルの表情に好色な色が浮かんだのをゾロが見逃す筈もなく。




こんな奴に、俺のサンジを見せて堪るか!!




クロコダイルの勝ち誇った後姿に、ゾロのイライラはますます募る一方だった。

水はますます激しい勢いで部屋の中に流れ込み、クルー達に焦りの色が浮かぶ。

そんな時、待ち望んだ声・・・。

「食事中は、極力・・・・音を立てませんように・・・。 アンチマナーキックコース!!」

その声と共に、瞳の前のバナナワニが吹っ飛ぶ。




やっと来やがった、あの馬鹿・・・・・・・遅えんだよ。




「・・・・・待たせたな・・?」

そう格好付けてサンジが登場し、ちらっとこっちを見た。

にやりと笑う口元が、なにがゾロに言いたげで・・・・ちょっと癪に障る。

しかも、ラブコック丸出しで、ナミに最初に声を掛ける始末。

「・・・・・・・馬鹿だな、あいつ・・・。」

そう呟いて、溜息を大げさに吐く。

しかし、その姿にホッとしたのは事実で、妙にプリンスと名乗ってはしゃぐ姿にも・・・・・

まぁ、可愛いかなぁと思ってしまう、ロロノア・ゾロ、若干19歳であった。

それから、一行は、無事レインディナーズを脱出し、一路、アラバスタ宮殿を目指す。

「・・・・なぁ、てめえ、いつ着替えたんだよ・・・。」

蟹に乗り、砂漠を移動中、何気にゾロがサンジにそう尋ねた。

「あ? そりゃあ、チョッパーとあの作戦を実行する時に・・・・・」

「てめえ、チョッパーと一緒に着替えたのか?!」

ゾロの上げた声に、手綱をとっていたチョッパーがびくりと身体を震わせる。

ゾロの持っていた鞘がカチリと鳴った。

「あっ・・だっ・・・シィーッ!!」

慌てて、サンジがゾロの頭を押さえつける。

「痛ぇ・・・・いきなし何すんだよ、てめえ・・・」

「それはこっちの台詞だ、この馬鹿・・・んなとこで、大声上げて・・・・しかも抜刀しよう

としてただろ。 何考えてんだ、てめえは・・・」

頭を押さえつけながら、コソコソとゾロに耳打ちするサンジ。

「てめえの裸見てたなら・・・・・斬る!」

「・・・・・アホ、死ね。」

やたら真面目にそう言い放ったゾロに、サンジは呆れるようにそう呟くと、その後頭部に踵を

落とした。

ゾロは火のようだとサンジは思う。

荒々しくて・・・・・激しくて・・・・一瞬のうちに燃やし尽くしてしまう・・・・劫火。

自分の心に降る雨でさえ、一瞬にして渇きに変えてしまう・・・炎。

そして・・・・・・その温かさを知ったら・・・・・・・・手離せない・・・灯火。




その時が来たら、俺は・・・・・・・・・・・こいつを本当に手離せる・・・・?




「なぁ・・・・・ゾロ。」

「あ? なんだ・・・?」

「ずっと・・・・・・・・このままで居れたら、良いな・・・。」

そっと穏やかな口調でゾロにそう呟いてみた。

「アホか、てめえは・・・。 このままで良い訳ねえだろ。 早くこの国を元に戻して・・・

・・・早く強くなって・・・・・早く野望を達成して・・・・」

ゾロはサンジの言葉に、そう言うとジッとサンジの顔を見つめる。

「な、なんだよ・・・・」

その視線に居た堪れなくなって、サンジは俯いた。

「それから・・・・・・ずっと、てめえと一緒に居てえ。」

そう囁かれたゾロの言葉にハッと顔を上げる。

そこには、優しく笑うゾロの顔。

「ば、ばっかじゃねえの・・・・」

慌ててそう言い返したものの、サンジは顔がにやけるのを止められなかった。

「ハイハイ・・・・それくらいでお話の方は済んだかしら・・・?」

サンジの後ろから、ナミの冷ややかな声がする。

「あー・・・・砂漠は本当暑いわね〜。 けど、砂漠だけが原因じゃないみたいだけ

ど・・・。」

ナミは、そう言いながらチラリとサンジとゾロに視線を移し、わざとパタパタと手で仰いだ。

クスクスとビビとウソップの忍び笑いもする。

「何笑ってんだ?ウソップ・・・」

「ヒッ!! べ、別に・・・・」

ドスの聞いた声でウソップを牽制し、サンジはいそいそとナミの元へご機嫌伺いに行った。




今は何も考えねえ。

ただ・・・・・・・今日もあいつと居られるのなら・・・・・

それだけで・・・・・・・・・・・・・・十分だ。

雨が降っても・・・・・・・・・・・・・すぐに渇く。

だから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




そっとゾロを盗み見て、サンジはそう想い直す。




「雨が降るから・・・・・・・晴れた日のありがたさがわかるってもんよ・・・。」








<END>


 


 


<コメント>

ああ・・・・今年最後のシリーズは、なんともなぁの終わり方。
要所要所はうら覚えなのvごめんしてちょvv(蹴)
くいなの事はサンジにとって永遠の課題って感じかなぁ。(苦笑)
いやぁ、別にルナはサンジスキーじゃないから
さほど、プリンスには萌えなくて、内容的に・・・素通り?!(蹴)
アハハ☆ 次はね・・・・どこら辺から始めようかなぁ・・・・(殴)
希望は来月、またお逢いしたいです!(笑)
では☆

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