Steady






俺は、サンジ。

イーストブルー高等学校一年生。

只今、青春真っ盛りで・・・・・

彼女は、いない。

けど・・・・・・幸せ真っ只中。

なんでかって?!

それはなぁ・・・・エヘヘ・・・。

彼女はいなくても、彼氏がいるからだ!

入学式の部活紹介でその話す姿に一目惚れv

それ以来、ずっと片想いしてて・・・途中いろいろあって・・・・

でも、こうしてめでたく付き合うことができるようになったんだ。

だから・・・・・・・・・・・滅茶苦茶に幸せな高校生活を満喫してるのだ。




「あ、ヤバ・・・もうこんな時間。 急がねえと・・・」

俺はそう呟いて、慌てて体育館に急いだ。

パシンパシンと小気味良い竹刀の弾ける音が体育館にこだましている。

そう、ここは、俺の恋人、ロロノア・ゾロが所属している剣道部。

皆、同じ防具をして面を被っていて、誰が誰だか一見見分けがつかない。

・・・・が、しかし、俺はすぐに見つけることが出来るんだ。

それくらい出来なくちゃ、恋人として失格だろ?




あ、いる、いる・・・。 

えへへ・・・やっぱ、ゾロが一番格好良いよなぁ。

さすが俺のゾロv




「ゾォロ〜!!」

俺は、そう叫んで手をブンブンと振った。

ゾロは、ちらっとだけこっちを見て、また練習に没頭する。

「チェッ!・・・冷てえ奴。 ちょっとぐらい手を振るなりしてくれりゃあしてくれればいい

のに・・・。 けど、そんなとこが好きだったりするんだよなぁ・・・・。」

俺は邪魔にならないように、体育館の端っこで稽古を見学。

クラブで作ってきたモノを潰さないように、両手で抱えて・・・

俺は、趣味と実益を兼ねた料理クラブに所属してて、剣道部よりかはずっと早く終わるから、

これが、俺の日課。

部活を終えたゾロとその日作ったものを分けっこして、仲良く食べるんだ。

ちなみに、今日は、肉まん。




今だとふかふかで温かいんだけどなぁ。

冷たくなっちゃうよ・・・・・・・よぉし・・・。




俺は、シャツをたくし上げて、肉まんの入った袋を中に仕舞った。

「これで、よし! 俺も温かいし、肉まんも俺の体温で保温されるし、俺って頭良いv」

なんか、誰かがこけた様な音がしたけど、俺は気にもせず、またゾロを見つめる。

それから約一時間後、やっとゾロの部活が終わった。

「お疲れ〜vゾロ!!」

俺は、留守番をしてた犬のようにゾロの傍に猛ダッシュ。

「・・・・・・・・・・・ああ。」

ゾロは、それだけ言ってさっさと着替えに行っちゃった。




あれれ?

なんか・・・・・・・・不機嫌だ。

部活でなんかあったのかなぁ・・・?

それじゃあ、俺が元気付けてやらなくちゃな。

だって俺、ゾロの恋人だもん。




俺は、ゾロがロッカーから出てくるのを今か今かと待つ。

暫くして、ゾロが出てきた。

「ゾォロv 今日さ、俺、クラブで肉・・・・・」

「サンジ、ちょっとこっちに来いよ!」

俺が、そう言って肉まんをシャツから出そうとしたら、ゾロが怒った口調で俺の腕を引っ張る。

「えっ?! あ、なに? 痛い!痛いよ、ゾロ!! 離して・・・あ、落ちちゃう・・・離し

て!!」

俺は肉まんが落ちそうになったので、慌ててゾロの腕を振り払った。

ゾロは無言で俺をじっと見ている。

ううん、見ているってもんじゃない。

睨みつけてる・・・・・・・・物凄く・・・・・怒ってる。

「ゾロ・・・・・・俺、なんかした?」

恐る恐るゾロにそう聞いた。




だって・・・・・・・・・俺、別に機嫌損ねるような事やってないよ。




ゾロは、そんな俺にハァーッと深い溜息を吐く。

「あのなぁ、無意識だからってあんな事二度とするなよな!」

そう言ってプイッと横を向いた。

「・・・・・・・あんな事?」

俺は、意味がわからなくて首をかしげて、ゾロにもう一度聞く。

「だから・・・・・・・・肌見せんな。 皆が見てたじゃねえかよ!!」

ゾロは、そう怒鳴った。

「俺・・・・・・俺、そんな事してねえもん・・・。」

ゾロから怒鳴られて、俺の声が震える。

何をそう怒っているのかわからなくて・・・・怒鳴られたのが悲しくて・・・・

鼻の奥がツンとした。




・・・・・・・・・・・・ゾロの顔、怖くて見れない。




俺は俯いたまま、シャツの中で温めていた肉まんの袋の端をギュッと掴んだ。

「まだわかんねえのかよ! お前、さっきこうして・・・!!」

ゾロはそう言って、グイッと俺のシャツを掴み上げる。

「あっ!!」

その拍子に、お腹に入れてた袋が地面に落ちた。

中の肉まんも・・・・・・・地面に転がって、泥で汚れた。

その肉まんを見てたら、なんだか悲しくなってきて・・・・

「・・・・・・・酷いよ。 酷いよ、ゾロ。 俺・・・・・俺、一緒に食べようって・・・・・・冷たく

なったら美味しくなくなるからって・・・・・・・ずっとずっと温めてたのに・・・。 

ゾロの・・・・・馬鹿!!」

俺は、その袋をゾロに投げつけて、学校を飛び出した。

その後、どこをどう歩いたのか覚えてない。

気が付けば、辺りは真っ暗で、繁華街の裏路地。

いかつい怖そうな大人達が俺を見てニヤニヤしてる。




早く帰らなきゃ・・・・・。




俺は涙を拭って、急いで明るい方に向かう。

「お兄ちゃん・・・・どうした? 失恋でもしたか?」

そう言ってその中の一人がニヤついた顔で、俺に近づいてくる。

俺は口を利くのも怖くて、黙って駆け出した。

凄く怖かった。

後ろからその人たちが追って来ないのを確認した俺は、ホッと胸を撫で下ろす。

と、同時に、ゾロが傍にいないのがとても寂しくて・・・・・辛い。




世界中でたった一人ぼっちになった気分・・・。




また怖い思いをするのは嫌だから、トボトボと家に帰る。

「・・・・・・・ゾロ、きっと怒ってる。 明日・・・・・どんな顔して逢えば良い?」

また、涙が溢れそうになった。

家の前に誰かがいる。

俺は、さっきの怖い人たちを思い浮かべて、身が竦んだ。

「・・・・・・待ってたんだ。」

そう声をかけて、俺に近づいてきたのは、ゾロだった。

「ゾロ・・・・・ヒック・・・・ゾォロ〜・・・・ふぇっ・・・・・」

ゾロの顔を見たら、どうしようもなくて・・・・・・俺は声を上げて泣いた。

「・・・・・ごめん、サンジ。 俺が悪かった。 俺が一方的にイライラして怒ったから・・・

ごめん。」

ゾロはそう言って、俺をギュッて抱きしめてくれた。




やっぱり・・・・俺、ゾロが好きだ・・・・

この腕が・・・・・・・・好きだ。




「ううん・・・・俺の方こそ、袋投げて、ごめん。 痛くなかった?」

俺は涙を拭って、そっとゾロの顔を見上げる。

「ああ、あんなの全然・・・・・あっ、そうだ、これ・・・・」

ゾロはそう言って、シャツの中からゴソゴソと何か取り出した。

「・・・・・・・せっかく、サンジが作ってくれたんだから・・・・捨てたら罰が当たると思っ

てさ。 ・・・・・・・・・・・・・・俺も、温めてみた。」

そう言ってはにかみがちに取り出したのは、肉まんの袋。




こんなとこが、俺のゾロ。

そんなこと、普通しないよ・・・・・・・・してくれないよ・・・。

その優しさが・・・・・・・・・・・・・・大好き。




俺はなんかジンときちゃって・・・・・けど、あの時、落としちゃったし・・・

それが気になってゾロに言った。

「ゾロ・・・。 あっ、でも、もう落っことして汚れちゃったし・・・・」

「そうか? あれな、ちゃんと食えたぞ。 美味かった、ご馳走さん。」

「えっ?! 食べたのか? あんなに真っ黒に泥だらけだったのに・・・・・」

俺の言葉に平然とそう言ってのけるゾロに俺はびっくりして・・・・・・

けど、嬉しくて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・顔がにやけた。

「ほら、こっちは袋の中だったから綺麗だぞ。」

そう言ってゾロは、俺に肉まんを手渡してくれる。

「えへへ・・・・・じゃあさ、半分こ、な?」

俺はそう言って、肉まんを半分こしてゾロに渡す。

それから、俺達は、家の門の前に仲良く座り込んで一緒に食べた。

その肉まんは、とっても温かくて・・・・・・心にジンと沁みた。

「じゃあ、サンジ、もう遅いから、帰るな・・・・。」

「うん・・・ゾロ、今日はありがとう・・・。」

それから、俺達はいつものように軽くチューをした。

いつもは、それだけでゾロは帰るのに、今日はまだ俺を抱きしめてる。

「・・・・・・ゾ・・・ロ?」

「あのさ・・・・・・・今度は・・・・・・肉まんじゃなくて・・・・・・俺を・・・・温めてくれよ。」

そう耳元で囁かれた。

ゾロが意図してることがわかっちゃった。

かぁっと耳まで赤くなる俺。

ドキドキして、恥ずかしくて、ゾロの顔がまともに見れない。




そりゃあさ、付き合っていれば、そうなるのは当然の事だし・・・。

高校生だし・・・・興味ない事は絶対にない。

っつうか、ゾロとなら・・・・・・・・・・・・・・したい・・・かな・・?

けど・・・・・・・・・・・怖い。




「・・・・・・ダメか?」

「ううん、そんなことない。 俺も・・・・・けど、もう少しだけ待って、な?」

ゾロの言葉に、俺はそう返事した。

「・・・・・・・わかった。 けど、今日みたいにあんな事されると・・・・・俺、我慢できなく

なるかも・・・」

「・・・・ん・・・・・大丈夫。 そんなに待たせないから・・・・・」




なんて大胆な事、言ってるんだろ、俺・・・・




恥ずかしくて死にそうになった。

「じゃあ、約束だ。 この印が消えたら、な。」

ゾロはそう言って、俺の首筋に唇を寄せる。

チクンと痛みがした。

「さぁて、どれ位で消えるんだろうな・・・・・・楽しみだ。」

ゾロはそう言ってニヤリと笑う。

俺が大好きな不敵な笑顔で・・・・・・・。

「もう・・・・・馬鹿!!」

「ククク・・・・・じゃあな、サンジ。 また明日!」

ゾロは、笑顔で俺の頭を撫でて、帰っていった。

「ただいま〜。」

俺は、家に入って急いで洗面所に飛び込んだ。

鏡の中の俺の首筋に浮かぶ赤い痕・・・。

「ゾロには、ああ約束したけど・・・・・・・・俺が覚悟できたら、消えたってことにして良

いよね・・? それまでは、これでごまかしちゃおうっと・・・。」

俺はそう呟いて、首にペタリと絆創膏を貼る。




これが消えたら、俺・・・・・・・・

うっわぁ・・・・・・・今頃になって恥ずかしさが倍増してきた。

と、とにかく・・・・・・・まだまだ先だから・・・・。




そんな事を考えてて、俺、なかなか寝付けなかった。











「おはよう、ゾロ。」

「オッス、サンジ。」

翌日から、またいつものように、ゾロと仲良く登校。

けど、ゾロは、その日から俺に印が消えてないかどうか、必ず確認を入れてくる。




ヤバイ・・・・・ヤバいよ、俺・・・・・・




俺、サンジ。

只今青春真っ盛りの16歳。

恋人はもちろんいる。

だから、幸せなはずなんだけど・・・・・・・

自分の言った事に、ちょっぴり後悔中だったりする、今日この頃なのである。







<END>


 



<コメント>

mai様のリクエストで【パラレルでほのぼのとした幸せなものを】
というリクエストだったのですが・・・・
ほのぼのしてますか?(;一_一)
な〜んか違うような気がするのは、ルナの気のせい??
いんや、あんたの才能の無さ☆(笑)という突っ込みは置いといて・・・
本当にごめんなさい、maiさん。
肉まんだけがほのぼのとしてる・・・(笑)
せっかくリク頂いたのに、こんなしょぼいもので・・・(滝汗)
宜しければ、貰ってやってくださいませ☆

<パラレル>