LOVE BATTLE


その2.



 




一方、その頃、ゾロはと言うと、反対側の北ブロックでMr.1、Missダブルフィンガーと対峙し

ていた。

「うちの組織のスカウトを蹴ったそうね? しかも、Mr.7を斬ったとか・・・?」

「ァあ?! そりゃあ、俺の条件を呑まなかったてめえらが悪い。 俺は、そいつに、

ちゃんと言ったぜ? ジャ●ーズと組ませろって・・・俺の目指すは、世界最強。 歌っ

て踊れる大剣豪だから、ってな。」

「クスクス・・・・・貴方って面白い人ね。」

「・・・・・散々コケにしてくれるじゃねえか・・・・」

ゾロの横柄な物言いに、Missダブルフィンガーは苦笑し、Mr.1は、凶悪にその顔を歪めた。

「クク・・・・まっ、それは冗談として・・・そいつがいきなり斬りかかってきたから、お仕

置きしてやったまでだ・・・。」




お仕置き・・・・・お仕置き・・・・・・お仕置き・・・か・・・・

ぁあ?!

俺ゃ、何考えてんだ・・・・こんな時に・・・・




思わず、この緊迫した状況にそぐわない煩悩を働かせてしまった自分がちょっぴり恨めしくな

ったゾロ。

それでも、サンジとのお仕置きタイムを想像しては、ボーっとしたり、慌てて頬を叩いたりと独

りその場で浮いていた。

「・・・・・・大丈夫かしら、この人・・・」

「こんなふざけた野郎は、俺が仕留める。」

「それじゃあ、あたしは、あっちのお嬢さんを・・・・」

こうして、アルバーナ北ブロックでのゾロVSMr.1の死闘は幕を切って落された。

しかし、Mr.1の強靭な身体とその圧倒的な強さの前にゾロはなす術も無く打ちのめされる。

「斬れるのに斬れない剣・・・・・か・・・。」

不意に、子どもの頃聞いた幸四郎の言葉を思い出した。

『”最強の剣”とは・・・守りたいものを守り、斬りたいものを斬る力・・・』




俺の守りたいもの・・・・・・野望・・・・・仲間・・・・・そして・・・・・




気を抜けば意識が即飛びそうな脳裏に、笑ってるサンジが浮かぶ。




・・・・・・・・そう。

ここで、俺がくたばれば・・・・・・・あいつは・・・・・・・・

約束したんだ・・・・・・・宮殿で逢おうって・・・・・・

俺はまだ・・・・・・・・死ねねえ。




呼吸を整え、生への執着を試みた。

見えないものが見えるような気がした。

万物の呼吸が聞こえるような気がした。

そして・・・・・・・

気が付けば、身体が動いていた。

確実に今、何かがゾロの中で変化していた。

大岩の下から、和道一文字を拾う。

スッと近くの枝を刀で撫でた。

葉は・・・・・・・・・落ちなかった。

「斬っても・・・・・・斬れねえ剣・・・・。 ・・・・・・あとは・・・・・・俺自身に鋼鉄を斬れる

力があるかどうか・・・・」

迷ってる時間は無かった。

和道一文字をもう一度鞘に収め、柄に手を掛ける。

Mr.1が、ゾロめがけ、最後の攻撃を仕掛けてきた。

「・・・・一刀流居合い・・・・獅子歌歌・・・!!」

和道一文字の柄が一閃する。

勝負は一瞬だった。

「・・・・・・・礼を言う。」

血を吐き倒れたMr1.に、そう言って、ゾロは膝をつく。

「あいつら・・・・・・・全員、無事なのか・・・・」

戦闘要員の自分でさえ、これほどの窮地を味わったのに、そうじゃない仲間の安否が心配だ

った。

しかし、瀕死の重傷を負った身体は、思ったように動いてはくれず、ゾロはその場に蹲る。

スッと意識が遠のいていく。

と、その時。

コツコツと聞き慣れた足音がした。

鼻をつく煙草の匂い。

「・・・・・・・生きてんのか?」

ぼそりと耳元で呟かれた。

「ばぁーか・・・・・当たり前だろ。」

そう言い返して、ゆっくりと瞳を開けた。

瞳の前に、にやりと口角を上げたサンジの顔があった。

「・・・・・・シてえな。」

サンジの顔をマジマジと見つめそう呟く。

「な、ばっ・・・・アホ!! んなとこで何言って!!」

真っ赤な顔をしてサンジが睨みつけた。

「クク・・・・・キスがシてえって・・・・そう言ったんだよ・・・・」

「そうならそうと早く言えーっ!!」

耳まで真っ赤になってサンジがそう叫ぶ。

「ククク・・・・・エロコック・・・・違う事、てめえ。 想像しただろ・・・・・やらしいな・・・・」

「クソッ!! この!!」

口惜しそうにサンジはゾロを睨みつけ、それから、そっと唇を重ねた。

「さてと・・・・・俺はもう、行くぜ? ウソップたちが心配だからな。 んじゃ、後でな、

エロ剣士。」

コツコツと足音が通り過ぎていく。

「「良かった・・・・・・・とりあえず無事だったか。」」

数十メートルの間を開けて、ほぼ同時に発せられた言葉。

「さてと・・・・俺もそろそろ行くか・・・。」

応急的に止血して、ゾロは再び立ち上がり、宮殿へと向かった。

暫くして、それぞれ散らばっていたクルー達が宮殿前に集結。

内乱の終息とアラバスタの崩壊を阻止すべくビビと共に行動を起こす。

そんな最中、ルフィもまたクロコダイルと死闘を演じ、アラバスタ王国はようやく、崩壊の危機

を脱した。

街には雨が降り、人々は歓喜に包まれ・・・・

ルフィ海賊団は、宮殿でビビやその父親のコブラ王からもてなしを受けた。





その夜。

「・・・・・・鋼鉄を斬ったんだってな。 おめでとう・・・・。」

皆が寝静まった深夜、そう言って中庭に現れた人影。

月明かりに照らされた金色の髪の毛が風に揺れる。

「ん? ああ・・・・俺はまだまだ強くなれる。」

死闘で昂ぶった感情を持て余し中庭で瞑想していたゾロがそう言って口を開いた。

「また一つ野望に着実に近づいたって訳だ。」

淋しそうにサンジがそう言って、ゾロの隣りに腰を下ろす。

「・・・・・今回は、確実に差がついちまったな・・・・・認めたくねえけど・・・・」

「あ? 差?? てめえと俺の、か?」

サンジの言葉に疑問符を浮かべた表情でゾロがそう聞き返した。

「ああ・・・・・・そうだ。」

「馬鹿か、てめえは。」

「あん? 喧嘩売ってんのか?!てめえ・・・・」

キッと表情をこわばらせ、サンジがゾロを睨む。

「ったく・・・・・てめえの負けず嫌いは知ってるがな。 俺とてめえでは、見据える未来

が違うだろが。 それにてめえは、コック。 剣士を生業とする俺と比べるのがおかしい

ぞ、どう考えても。」 

「そ、そりゃあ、そうだけど・・・・・・・」




俺は、てめえといつまでも対等でいてえんだよ・・・。

たとえ目指す未来が違うってわかっててもよ・・・・・

俺だけ・・・・・・置いてけぼり食ったみてえじゃねえかよ。



サンジはそう返事したまま口を噤んだ。

「てめえだって、この国へ来て新しい料理の作り方とか覚えただろ? それは、てめえ

がてめえの夢に一歩近づいたって事じゃねえのか?」

「ゾロ・・・・・」




クソッ・・・・・・そういうとこが・・・・・・やっぱ、俺、てめえに負けてるよ。

けど・・・・・・・悔しいから、ぜってえ、言ってやんねえ。




「うっせーよ。 てめえなんぞに慰められて堪るか。 てめえだって、まだまだだなんだ

からな。」

苦々しい表情でサンジはそう言うと、そっとゾロの肩口に額を付ける。

「・・・・・・あんま、くっつくな。」

「あ? 別に良いだろが。 誰も居ねえし・・・」

自分の頭を押しやられて、サンジはそう言って唇を尖らせる。

「誰も居ねえから、まずいんだよ。」

「ほぇ??」

「あー・・・・だから・・・・・こうしたくなるって言ってんだよ!!」

一瞬キョトンとしたサンジにゾロはそう言って腰を引き寄せた。

「ぅあっ!! ったぁ・・・・・」

急激に引き寄せられ、サンジは堪らず顔を顰め、胸を押さえる。

「てめえ・・・・・ちょっち見せろ。」

「えっ?! や!」

ゾロはサンジの静止する手を振り切って、シャツを肌蹴させた。

「2本・・・・・いや、3本は、いってるな、こりゃ・・・・」

熱を持った胸を手で擦り、ゾロはサンジを睨みつける。

「なんで黙ってた! んなとこに居る場合じゃねえだろ!! さっさと寝ろ!!」

「ヘッ、こんなの、屁でもねえ。 俺ゃ、そんなに柔じゃねえぜ?」




だって・・・・・・傍に居てえじゃねえか。

そのくらい、気付けよ、このニブチン剣士。




怒鳴りつけるゾロにサンジはそう言い返して口角を上げた。

「ふ〜ん・・・・そうか。 なら、遠慮しねえ。」

ゾロはそんなサンジの態度に憮然として地面に押し倒す。

「ぅわっ!! 痛っ!! グァッ!!」

あまりの激痛に、サンジは堪らずゾロを押し戻そうとした。

「ホレ・・・・・見てみろ。 ったく、我慢するのも大概にしろ。 ほら、さっさと戻るぞ。」

ゾロはそう言うと、サンジを横抱きにしてそのまま部屋へと歩き出す。

「オ、オイ! 止せ! 誰かに見られたらどうすんだよ!」

所謂お姫様抱っこされたサンジは、慌てて周りをキョロキョロと見渡した。

「別に見られたからって、どうもしねえよ。 黙って抱きついとけ、プ・リ・ン・ス。」

「ぐわぁ、てめえ!! てめえから言われたかねえ!! つーか、降ろせ! 離せ!」

平然と自分を抱き抱えて歩くゾロに、サンジは顔を真っ赤にしてジタバタと暴れる。

「ヘイヘイ・・・・・一緒に眠りゃ良いんだろ? ずっとついててやっからさ・・・・」

「・・・・・・・本当だな?」

「ああ。」

ゾロの言葉に、サンジはようやくゾロの首に腕を回した。

こうして、ゾロとサンジは部屋へと姿を消した。

 

 

「・・・・・・ビビ様、眠れないのですか?」

「ええ。 私・・・・・出歯亀が、癖になってしまって・・・・」

「ビビ様・・・・・なんとおいたわしい・・・」

「けど、うふふ・・・・イガラムもどう? 結構楽しいわよ。」

「ビビ様・・・・」




別な意味でも、変わられてしまった・・・・・ビビ様は・・・。




ビビの部屋の窓から中庭を眺めていたイガラムは、少しだけ、ルフィ海賊団にビビ王女を頼ん

だ事を後悔したのであった。







<END>


 


 


<コメント>

良いですか?皆さん。
あたしは、ロロスキーです。(笑)
アラバスタ編、一応、これで終わりかなぁ。
まっ、気が向けば、お風呂編、後程追加するかもvv
それでは☆

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