旅立ち 







俺は、自分の夢を捨てたわけじゃねぇ。

俺には、同じくらい大切な物が、捨てられない物が、できちまった・・・・・それだけだ。

そう自分に言い聞かせてきた。

あいつらがくるまで・・・・・・

そう、あいつが俺の前に現れるまでは







「剣士として最強を目指すと決めたときから、命なんて、とうに捨てている。」

そう言い切った、あいつの真っ直ぐな瞳に・・・

俺は、何も言い返すことが出来なかった。

自分を信じて疑わない、揺るぎ無い信念。   

きっと、こいつは、その野望を叶えるためにただそのためだけに、今日まで生きてきたんだろ

う。

俺には出来なかったこと・・・・・・・・

そう、あの瞳が・・・

俺に・・・・

気づかせる.....

駄目だ。

今は・・・・・

まだ・・・・。

俺には夢と同じくらいに、捨てられない物がある。

だから・・・・・早く・・・・

・・・・・・・早く出ていってくれ。

俺に、思いださせるな


俺は、極力あいつと係わらないようにしていた。

なのに・・・・・なのに・・・・・・・。

「簡単だろう?! 野望を捨てることぐらい!!」




そう、簡単じゃねぇか。

そんなこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐらい・・・・・。




気がつくと俺は叫んでいた。

もう、駄目だ。

あんな様を見せつけられて。

見せつけられて心穏やかでいられるほど、俺は、大人じゃ・・・ねぇ。




チクショー。

・・・・・なんだってんだ。

・・・・・・何だって今頃・・・・・・。




俺は、自分の心を落ち着かせようと、たばこに火を付ける手が震える。

は、は・・・・・・・・・・・・・何てざまだ。

だが、絶好のタイミングで、クリーク海賊団との戦いが始まった。




こんな時は、身体を動かすに限る。

何も考えずにいられる・・・・。

そう、俺には、このバラティエがある。




そう結論づけた俺に、クソジジイは、俺の心を見透かしたように言い放った。

「心に1本の槍を持った奴ほど、強い奴はいねぇよ。 なぁ。 ・・・・それが男ってもん

だ! てめえみたいに、過去に捕らわれたクソガキには、とうてい無理だろうがな。」

「何だとぉ?! 俺にだって、それ位・・・・・」

売られ言葉に買い言葉で、俺はクソジジイにかみついた。

だが、最後まで、俺の言葉は続かなかった。

「クソッ!」

俺はそのままクソジジイに背を向けた。




俺にだって、俺にだって、その位・・・ああ、そうさ! 

いつか必ず、叶えてやるさ!

・・・・・ただ・・・・・・ただ、それが、今じゃねぇ。

・・・・・・それだけだ。




クソジジイの言いたいことぐらいわかってるつもりだ。 

だてにずっと一緒に暮らしていた訳じゃねぇ。

だからといって、はい、そうですかって、すぐにあいつらと一緒に出ていけるほど、俺は・・・

俺は、割り切れねぇ・・・よ。

・・・・・やっぱ、ガキかな・・・。



戦闘が終わって、それでも結論を出せずにいた俺に、クソジジイは、クソコック共とグルにな

って、とどめを差しやがった。




・・・・・・仕方ねぇ。

そこまでされちゃ・・・な。


クソジジイ、見てろ!

俺は、てめえが見れなかった、あの海を、オールブルーを・・・・

きっと、必ず見つけだす!!

それまで・・・・・その時まで、くたばるんじゃねぇぞ・・・。




俺は心の中で叫びながら、バラティエを後にした。


そおいやぁ〜、あのクソ剣士は、大丈夫なんだろうか?

いくら馬鹿でも、あの傷は、ヤバ過ぎるだろう。

俺をこの航海に引っぱり出した、あの瞳。

・・・・・・・・・きっかけは、やっぱり、あいつ


「以前どっかで、見たような気がするんだが、気のせいか・・・?」

俺は、いつの間にか、ぶつぶつ独り言を言ってたらしい。

不意に、ルフィが、俺の心を見透かすようにこう言った。

「ゾロなら死なねぇよ。 だって、あいつ、俺に約束したかんな。 それより、なんか、

腹減った!  サンジィー!!  メシィーっ!!」

「ああ、そうだったな。」

そう、これくらいで、こんなことでくたばるような奴だったら、俺がついてきた意味がねぇ。

・・・・意味?? 

何考えてんだ?俺??

そうじゃねぇだろ。 きっかけは、あいつでも、ついていくと決めたのは、俺。

そう、俺は、自分の意志でココにいる・・・・・・・・それは、間違いねぇ。

・・・・・でも、あいつの野望が叶うのを、近くで見てぇとも思う。

・・・・・・・・いや、そうじゃねぇ。

あくまでも、俺の夢が叶う間だの、暇つぶしにだ。

・・・・・そう、暇つぶしに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見てぇな。

いつの間にか、俺は、あいつのことを考えていた。

何でだ???

・・・・・・まっ、いいか。

「ちょっと、待ってろよ! ルフィ。 今、旨いもん食わせてやっから!」

俺は、仕事に取りかかった。




空は、ピーカン。 記念すべき俺の2度目の船出だ。






<END>





<kaizoku−top>    





++++++++++++++++++++


<コメント>

・・・・・すみません・・・・その一言につきます・・・・・
何か、書きたくなって、載せてしまいました。(死)