SNOW DROP GARDEN





・・・・・このせつなさは・・・・・

・・・・・・この雪のように・・・・・・・・・

・・・・・・・降りつもるのだろうか・・・・・・・・

・・・・・・・・降りつもって・・・・・・・・・いつか・・・・・・・

・・・・・・・・・心が、真っ白になったら・・・・・・・

・・・・・・・・・・俺のこの想いも・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・消えて、何も感じなくなるのだろうか・・・・・・・










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身体に感じる冷たい寒気に、俺は、眠っていた身体を起こした。

どうやら、俺は、また、寝過ごしたらしい。

日はとうに暮れ、夜空には、星が見える。

見上げた俺の上に、雪が、降ってきた。




・・・・・・道理で寒いはずだぜ。

・・・・・・・昼間は、あんなに暖かかったのに、さすがは、グランドライン。

・・・・・・・・何が起こるかわかんねえとこだな。

・・・・・・・・・こんな時は、身体の中から、温めるに限る。




俺は、寒さに身を震わせて、慌ててキッチンに向かう。

灯りのついたキッチンに入ると、いつもはいるはずのあいつの姿が見当たらない。




・・・・・・この時間だと、明日の仕込みをしているハズなんだが・・・・・

・・・・・・・何処に行ったんだ?

・・・・・・・・まあ、いいか・・・・・・

・・・・・・・・・でも、黙って持っていくと、うるせえからなあ・・・・・




「酒、持って行くからな。」

俺は、誰もいないキッチンで、一応、一言、言ってから、酒棚に置いてある酒を1本、手に取

る。

そのまま、甲板で、雪見酒としゃれ込むつもりだった。

しかし、甲板に出た俺は、目の前の光景に目を奪われる。


さらさらと、流れる金色の髪に、寄り添うように、雪が優しく、あいつに降りつもる。

黒いスーツに身を包み、夜の闇に消え入りそうなその背中に・・・・肩に・・・・・雪は、優しく降

りつもる。




・・・・・・・・まるで、雪に祝福されてるみてえだな・・・・・・・

・・・・・・・・・雪も・・・・・・・・・・・・あいつのことが・・・・・・・・

・・・・・・・・・・あいつに・・・・触れたいのか・・・・・・




俺は、手のひらに雪を掴み、じっとあいつの背中を見つめる。




・・・・・このせつなさは・・・・・

・・・・・・この雪のように・・・・・・・・・

・・・・・・・降りつもるのだろうか・・・・・・・・

・・・・・・・・降りつもって・・・・・・・・・いつか・・・・・・・

・・・・・・・・・心が、真っ白になったら・・・・・・・

・・・・・・・・・・俺のこの想いも・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・消えて、何も感じなくなるのだろうか・・・・・・・



・・・・・・・言えない想い・・・・・感情・・・・・・そして・・・・・・・・

・・・・・・何度、夢見たことだろう・・・・・

・・・・・この腕に・・・・・この唇に・・・・・・・・

・・・・けどそれは・・・・・・・絶対に叶わない・・・・・・夢・・・・・・・・・

・・・この雪のように、触れては消える・・・・・・運命・・・・・




俺の視線に気が付いたのか、あいつは、振り返った。

「なんだよ、てめえ、今頃、起きやがって・・・・・・・・飯・・・・・もう、ねえぞ。」

サンジは、俺を睨み付けてそう言った。

「・・・・・別に・・・・俺は、これさえ有れば、良い。」

俺は、そう言って、酒を持って、船尾に向かった。

しんしんと降り積もる雪・・・・・・・




・・・・・・俺は、雪になりたかった・・・・・・・

・・・・・・・雪になって・・・・・・あいつに触れたかった・・・・・・

・・・・・・・・それが、たとえ・・・・・・・・

・・・・・・・・・一瞬で消え去る事だとわかっていても・・・・・・・・

・・・・・・・・・・俺は、あいつに触れる雪になりたかった・・・・・・・・・








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・・・・・・・・・・・・・このせつなさは・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・あの花のように・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・降りつもるのだろうか・・・・・・・

・・・・・・・・・・いつか・・・・・・・・降りつもって・・・・・・

・・・・・・・・・真っ白な心になったら・・・・・・・・・

・・・・・・・・また、新しい想いに出会えるのだろうか・・・・・・・











+++++++++++++++++



今日も、あいつは、夕食に起きてこなかった。

いつものことと諦めてはいるものの、俺の存在が、無視されたようで・・・・・心が痛い。

明日の仕込みで、夜遅くまでキッチンにいた俺は、身に感じる寒さに、ふと、窓の外を見る。

すると、暗い夜の空から、ひとひらの雪・・・・・

俺は、思わず、甲板に飛び出す。

「へー、寒いと思ったら、雪かよ。 全く、えれえとこだぜ、グランドラインは・・・・・」

俺は、船の縁に肘をつくと、タバコに火を付けた。

ヒラヒラと舞い落ちてくる雪が、手の甲に触れ、溶けていく。




・・・・・・・まるで、あの時の花のようだ・・・・・・

・・・・・・・・あいつに触れる・・・・・・・・花・・・・・・・

・・・・・・・・・ほのかに香る・・・・・・銀木犀の・・・・・・花・・・・・・・




ここに来る少し前だった。

俺とあいつは、秋島で、食材の買い出しで、初めて一緒に街に行った。

・・・・・俺は、嬉しかった。

たとえ、ナミさんに強制されたからって、俺と一緒に、来てくれるなんて、思ってもみなかった

から。

・・・・・そう、俺は、あいつに惚れている。

いつからかなんて覚えていない。

・・・・・気が付いたら、そうだったのだから・・・・

それを知っているナミさんが、気を利かしてくれたのだ。

けど、あいつは、案の定、俺とはぐれて、どっかに消えちまった。

俺は、慌てて町中を探した。

風の中に、金木犀のいい香りが、俺に届く。

俺は、その匂いに誘われるように、丘の上の1本の大きな木の元にやってきた。

・・・・・そこに、あいつは、眠っていた。

大きな木にもたれ掛かり、いつものように、頭の後ろに腕を組んで・・・・・

風が、そよそよとそよぎ、あいつの上に、白い小さな花が、降る。

「・・・・これは・・・・・銀木犀・・・・・・」

あいつの上に降る花は、金木犀ではなくて、銀木犀の花・・・・・・

あいつの緑の髪の毛に・・・・自分の存在に気付いてと・・・・・・降りつもる・・・・

あいつは、その花の香りに包まれて・・・・穏やかな表情で眠っている・・・・・

銀木犀は、あいつを優しく包み込む・・・・・・

俺は、銀木犀の花に誘われるように、そっとあいつの唇に触れる。

・・・・・・・あいつは、気付かない。

それから、あいつを起こして、一緒に、船に帰った。




・・・・・・・・この白い小さな花になりたい・・・・・・

・・・・・・・あいつを包み込むように降る・・・・・・・花になりたい・・・・・

・・・・・・たとえ、それが、一瞬で、終わる命だとしても・・・・・・

・・・・・あいつに残る・・・・・・・・香りをつけたい・・・・・・・・




「・・・・・・もう、潮時だな。 ・・・・・自分の気持ちに、区切りをつけないと・・・・・・」

俺は、降りつもる雪を手にとって、ギュッと握る。

暖められた雪が、滴となって俺の手を伝った。

ふと、背中に視線を感じて振り向いた。

そこには、あいつの姿があった。

俺は、あいつに、食事が無いことを告げる。

あいつは、別に気にすることもなく、酒を持って、船尾の方に歩いていった。

しんしんと降り積もる雪・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・このせつなさは・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・あの花のように・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・降りつもるのだろうか・・・・・・・

・・・・・・・・・・いつか・・・・・・・・降りつもって・・・・・・

・・・・・・・・・真っ白な心になったら・・・・・・・・・

・・・・・・・・また、新しい想いに出会えるのだろうか・・・・・・・






 



       
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<コメント>

高島悠樹様のサンジ中心イラストサイトの開設を祝して、
サイト名の【SNOW DROP GARDEN】をイメージして作らせていただきました。
繊細な詩を想定してたのですが、微妙に、辛い・・・・・
よくもまあ、こんなモノを送りつけたモノだと、押し付けた後で、そう思いました。(-_-;)
嫌がらずに、受け取っていただいて、悠樹さん、ありがとうvv

このまま、終わらせるのも、なんなので、なんとか、続きを書いて、
すれ違いが無くなるようにしたいなあと思っては、いるのですが・・・・・・
な、なんとか・・・・したいです。(汗)