Photo






今日、なにげに部屋の片づけをしていたら、雑誌の間から、1枚の写真が、出てきた。

「・・・・ゾロ・・・・・」





















それは、1年前、ゾロが、俺を撮ったもの・・・・

キッチンで、朝食を作って、ゾロを起こしに部屋に入ったところを、いきなり、撮られた・・・

『何、撮ってんだよ! 現像すんなよな!』

って、あの時、俺は、大声で、怒鳴ったけど、ゾロは、ただ、黙って笑ったままだった。

あの時の、ゾロの瞳には、俺は、どういう風に映ってたのだろう・・・

俺は、本当に、愛されてたのだろうか・・・

そして・・・今も・・・・・

写真の中の俺は、とても幸せそうで・・・・

・・・ゾロも、幸せだったのだろうか・・・・

ゾロは、その頃、まだ駆け出しのカメラマンで・・・・

俺は、雑誌や写真集のモデルをやっていた。

たまたま、俺の写真を撮るはずのカメラマンが、都合が悪くなって、急遽、ゾロが、俺を撮るこ

とになった。

本当に、最初は、いけすかねえ嫌な奴だと思った・・・

態度は、でかいし、自分の考えを率直に言う・・・

モデルでそこそこに売れていた俺は、何度となく、あいつと衝突した。

『てめえは、それでも、プロのモデル、か?』

『ちゃんと、真剣に、素直に自分を出せよ!』

『俺は、てめえの遊びに付き合ってる暇はねえんだよ!』

こんなに、俺の事をボロクソに言う奴は、初めてだった・・・・

簡単にスカウトされて、簡単にお金が入って・・・・

名前もそこそこに売れて・・・

俺は、心の中で、楽に金が入ってる、モデルという仕事を、簡単に考えていた。

それを、奴に見透かされたようで・・・

・・・凄く、恥ずかしかった・・・・

『なあ、てめえは、なんで、カメラマンになったんだ?』

俺は、あいつにそう言ったことがある・・・

そしたら、あいつは、

『そんなの、好きだからに決まってるだろ? やりたいと思ったから・・・それ以外に理由があ

るのか?』

こともなさげにそう言った。

同じ年のハズなのに・・・・

・・・俺は、悔しかった・・・・

・・・・それからだ。

俺が、真剣にモデルをやっていこうと・・・・

・・・モデルという仕事に、真剣に取り組んでいこうと・・・

ゾロに負けないように、自分に精一杯、やれるところまで、やってみようと・・・

撮影の最終日、ゾロは、最後の写真を取り終わると、俺にこう言った。

『やれば、できるじゃん。 これ、てめえの最高の作品になるぜ。 俺にとっても、な。 

お疲れさん。』

そう言って、ゾロは、ポンと俺の頭を軽く叩いた。

俺は、嬉しかった・・・・

ゾロに認められたような気がして・・・・

モデルとして認められたような気がして・・・・

触れられたところが、熱くて・・・・

『気が、向いたら、電話して・・・・』

俺は、ゾロに、携帯の電話番号を教えた。

ゾロは、驚いた顔をしていたが、

『じゃあ、てめえも、気が向いたら、電話しろ。』

そう言って、俺に、携帯の番号を教えてくれた。

それから、俺達は、急速に仲良くなって・・・・

気が付いたら、一緒に暮らしてた・・・・

俺は、ゾロに撮って貰った写真集がきっかけで、テレビに出るようになって・・・

なかなか二人の時間がとれなくなっていって・・・・

・・・・それでも、俺は、俺達は、うまくいってるって・・・・

・・・・そう思ってた・・・・

・・・・・でも、そう思ってたのは、俺だけだった・・・らしい・・・・

半年前、あいつは、急にニューヨークに行くと言いだした。

理由は、いくら聞いても、言ってはくれなかった。

『・・・・待ってても、良いのか?』

そう言った俺の言葉に、寂しげに笑って、

『・・・お前は、待たなくて良い・・・・待つ必要は、ない・・・ お前は、前だけを見て生きろ。』

ゾロはそう言って、一人、旅立っていった。

この広い部屋に、俺を・・・俺だけを残して・・・・

俺は、ゾロを・・・・ゾロへの未練を断ち切るように、仕事に励んだ。

慣れない役者という仕事もした。

俺の心と裏腹に、人気だけが・・・・高まっていった。

テレビの中の虚像の俺・・・・

モデルの仕事をやってるときだけが、俺が、俺を取り戻す時間だった。

後は・・・何も残らない、空っぽの俺が・・・・いるだけ・・・・



























雑誌に挟まっていたその写真を、俺は、テレビの上に飾った。

片づけも一段落して、何となく、テレビのスイッチを入れる。

・・・何処のチャンネルを見ても・・・・

・・・・俺のCMが、流れてる・・・・・

・・・・虚像の俺の・・・・

・・・・ダレだ? これ・・・・

・・・俺じゃない・・・・・でも・・・・・これもひとつの俺なんだろう、な・・・・

・・・・つまらねえ・・・・

何をやっても・・・・誰と話しても・・・・

・・・・つまらねえ・・・・・

俺は、いつまでも、ゾロへの思いを断ち切れずにいる。

・・・・馬鹿みてえ・・・・

ゾロは、あの時、俺に、待つなと言った・・・・

・・・それって・・・・・それって、もう一緒にいる気はない・・・・・そう言われたのと同じ事・・・・

つまり、俺は・・・・・・・捨てられたんだ・・・・・・・

・・・・・・あいつに・・・・・・ゾロに・・・・・・・・

・・・なのに・・・・俺一人引きずってて・・・・・・

・・・しっかりしろよ・・・俺・・・・・・・





「えー、番組の途中ですが、嬉しいニュースが飛び込んできました。 世界でフォトグラフィック

界の最高の栄誉とされる、フォトグラフィックオブザイヤーに、この国初の受賞者が出ました。

名前は、ロロノア・ゾロ氏。 半年前までは、無名のフリーカメラマンでしたが、ニューヨークに

渡米後、めきめきと実力を付け、今回、最年少で、この輝かしい栄光を手に入れました。

今、ニューヨークと中継が繋がっています。 中○さん、そちらの様子はどうですか?」

「はい、ニューヨークのロロノア氏のアパート前に来ています。 たくさんの報道陣が詰めか

け、お知り合いの人たちでしょうか、ゾクゾクとロロノア氏のところへ、お祝いに駆けつけてい

ます。」

「・・・中○さん、ロロノア氏本人とは、お話しできたんでしょうか?」

「いえ、まだ、ロロノア氏は、一度もカメラの前に姿を現していません。 たぶん・・・中にいると

は、思われますが・・・窓は、カーテンが閉められ、ここからは、全く、確認は出来ません。 

このテレビを見ていて、お話が聞けると良いのですが・・・」

「・・・・わかりました。 では、ロロノア氏本人がカメラの前に出てこられたら、すぐに、知らせて

下さい。 では後ほど・・・・ニューヨークから、中継で、お送りしました。」

俺は、テレビのニュースに、釘付けになってた。

・・・ゾロ・・・お前、凄いよ・・・・・

・・・・やったな、ゾロ・・・・

・・・俺と別れたこと・・・・無駄じゃなかったんだ・・・・・

俺は、自分の事、いやそれ以上に、ゾロの成功を誰よりも喜んだ。

・・・さあ、俺は、こっちで、てめえの成功を祝福してやるぜ・・・・

ゾロ・・・おめでとう!

「乾杯だ、乾杯・・・えっと、とっておきのワインが、まだどっかにあったよなあ・・・・」

俺はブツブツ言いながら、ワインを探す。

「あった、あった、と。 えへへ。 ゾロと俺が暮らし始めた年のワインだ。 ・・・後何年か経っ

て、それでも、一緒にいたら、ゾロと飲もうと思ってたとっておきのワイン。 ・・・ゾロと飲むこと

は、できなくなったけど・・・今日は・・・いいよ、な。」

俺は、急いで、グラスを用意すると、栓を開ける。

ピンポ〜ン

玄関に誰か来たみたいだ。

誰だ? こんなときに・・・

マネージャーかな?

まっ、いいや、一緒に、飲んでくれる奴、いたほうがいいよなあ・・・

俺は、いつもなら、相手の顔を確認してからしか、鍵を開けないのに、その時ばかりは、浮き

足だってて、確認もせずに開けちまった。

「マネージャー??」

そう言って開けたドアの向こうには、帽子を深く被り、サングラスを掛けた得体の知れない男

が、立っていた。

ゲッ・・・こいつ・・・見るからにやばそうな・・・感じがする・・・

俺は、慌ててドアを閉めようとする。

しかし、男の足が、わずかに早く、ドアの間に割り込んだ。

「て、てめえ・・・誰だ・・・・け、警察、呼ぶゾ・・・・」

俺は、震える指で、携帯を探す。

その男は、ツカツカと俺の側に来て、俺の携帯を取り上げた。

・・・・ああ、もう駄目だ・・・・

俺の人生は・・・・長かったようで・・・・短かったよなあ・・・・

最後に、一度で良いから、成功したゾロに会って、おめでとうって・・・・言いたかった・・・・

・・・ああ、明日の紙面のトップに、ゾロの受賞と並んで、俺の死亡記事が載るんだろうな・・・

・・・・何か、嫌だなあ・・・・

そんなんで、一緒に載せられても・・・・

まっ・・・俺には、もう、関係ねえか・・・・

俺の頭の中は、パニックで、再起不能・・・・

思考能力は、皆無に過ぎなかった。




「・・・サンジ・・・・俺だ、俺・・・・もう、忘れっちまったのか?」

その男は、帽子とサングラスをはずすと、俺をぐらぐらと揺すった。

俺は、その揺さぶりで我に返り、その男の顔を見る。

「!!!ゾロ!! な、なんで・・・ここに??? はあ???」

俺は、また、頭の中が、真っ白になっていった。

・・・何で、ゾロが、ここにいるんだ???

・・・だって、今、テレビで、アパートの前にいるって・・・・

知り合いとかが、お祝いを言いに来てるって・・・・

・・・・・・・・はああ?????

俺は、半ば放心状態で、立っているのもやっとだ。

「・・・サンジ・・・・会いたかった。 ・・・俺・・・お前と同等になりたくて・・・ ニューヨークでの仕

事の依頼を受けるとき、俺、このチャンスしかねえと、そう思ったんだ。 ・・・お前は、だんだん

人気が出てきて・・・・俺をどんどん追い越していって・・・・俺だけが、一人取り残されそう

で・・・・ 嫌だったんだ。 俺は、いつまでも、お前と同等でいたかったから・・・・・・だから、何

も、言わなかった。 成功するかしないかもわからねえ俺を、待たせることは、させたくなかっ

た。 いつまでも、そこで留まっていられたくなかった。 お前には、常に成長していって欲し

かったから・・・今度会うときは、せめて同等になったとき・・・そう決めてたから・・・・ 

お前のことは、テレビで見ていた。 逢ったときの何十倍も成長していくお前を見て、負けられ

ねえ、そう思って、がんばった。 そして、昨日、大賞の内示が届いたんだ。 ・・・これで、俺

は、サンジと同等になった。 ・・・これで、サンジに堂々と会える。 真剣にそう思った。 

俺は、向こうで知り合いになった仲間に頼んで・・・・・・ ちょっと、携帯、借りるぞ。」

ゾロは俺にそう言って、携帯で、どこかに電話していた。

・・・嘘だろ? ・・・ゾロ・・・そんなこと、考えて・・・・たなんて・・・

・・・水くせえよ・・・・俺・・・ゾロだったら、何十年でも待つ覚悟あったのに・・・・

・・・でも・・・でも、嬉しいや・・・・

俺・・・俺、捨てられたわけじゃなかったんだ・・・・

俺の瞳からは、ポロポロと涙が勝手に零れてきて・・・止まらなかった。

「・・・・Yes、Are you ready? OK? Now、Open the windows、It’s start!

 Comm’on!! サンジ! テレビを見てくれ!」

ゾロは、携帯に向かって、英語でそう話して、俺にテレビを見るように言った。

「・・・あっ、ニューヨークで、何か起こった模様です。 ニューヨークの中○さん? ロロノア氏

が出てきたんでしょうか??」

「はい、こちら、ニューヨークです。 いえ、依然としてロロノア氏の姿は、何処にも見えませ

ん。 あっ、ちょっと待って下さい。 今、アパートの窓が開いて・・・・人が、何かしています。

何か、横断幕みたいですね。 カメラさん、ちょっと、ズームで、あの窓に寄れますでしょう

か?」

記者の言葉に、現地のカメラマンが、窓をズームアップする。

窓には、横断幕が広げられ・・・

【 DO YOU MARRY ME ? SANJI・・・】

テレビの画面上に、でかでかと映された。

「!!!・・・/////馬、馬鹿じゃねえか・・・・/////」

俺は、もう、びっくりして・・・・恥ずかしくなって・・・・・・・顔から火が出るかと思った。

・・・全く・・・いきなり姿現したかと思ったら・・・

・・・こ、こんな・・・世界中が見てる前で・・・・

・・・・プ、プロポーズするなんて・・・・・

・・・どういう神経してんだか・・・・・・

俺は、呆れるやら、嬉しいやら、恥ずかしいやらで、ボーっとしたまま固まってしまった。

「・・・ダメか? ・・・・返事は? サンジ・・・」

そう言ってはにかんだ笑顔が凄くドキドキして・・・・

ゾロは、固まった俺を抱き寄せて、そっと頬に手を添える。

「ちくしょー!! こんなに大勢の前で、言われて、ダメなんていえねえじゃねえか!」

俺は、照れ隠しにそう言うと、ゾロにチュッと口付けた。

「・・・こんなもんじゃ、足りねえよ。」

ゾロは、にっこりと笑って、俺の唇を塞いだ・・・・



翌日の新聞は、ゾロの受賞と、サンジとの電撃婚約の記事が、一面を飾った。







<END>



   
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<コメント>

突発駄文!
はあ・・・・やっぱり、悠樹サンのイラストって素晴らしいわvv
本文中のイラストは、高島悠樹様からルナが、頂いた物。
著作権は、悠樹様のモノです。 勝手に持っていかないように・・・(^_^)
久々に、サンジ語りの駄文となりました。
ゾロサイドで書くより難しいですぅ。 なぜだ??
如何ざんしょ?? ・・・でも、この壁紙にいったい何の意味が・・・(-_-;)
ただ、使いたかったのさっ!
では★