Be Friends






「うぅ〜、寒っ。 よしっ!じゃあ、マリン、散歩行くか!」

そう言って、俺は、近くの公園まで、マリンと一緒に、散歩に出かけた。

俺は、サンジ。

只今、青春真っ盛りの高校2年生。

マリンというのは、ハスキー犬で、その薄い蒼い瞳の色が、海に似ているところから、俺が、

名付けた。

俺の口からいうのもなんだけど、マリンって本当に、綺麗なんだ。

すれ違う人たちが、皆、マリンを振り返って見とれてる。

ほら、今だって、『素敵ね。』、『格好良いな。』なんて声が聞こえる。

本当に、毛並みといいスタイルといい、一緒に散歩している俺としては、凄くいい気分

で・・・・・・まるで、美人の恋人を連れて歩いてる感じ。

「よしっ、マリン。 まだ誰の足跡の付いてないところだぜ。 思いっきり、遊んでこ

い!」

俺は、公園に着くと、足跡のない広い原っぱを見つけ、マリンの鎖を解いてやる。

マリンは、訓練も行き届いた犬なんで、絶対に、人に危害を加えるような駄犬とは違う。

辺り一面の雪景色の中で、マリンは、陽気にはしゃいで駆け回る。




・・・・本当に、可愛い奴だよな。




俺は、その様子を暫く瞳を細めて見ていた。

「うわっ、馬鹿! こっち、くんな! くそっ! あっちに行けって! 馬鹿野郎、ぶん

殴るぞ!!」

急に近くで、若い男の声がする。




・・・・・・雪の中にしゃがんで・・・・・・・? 何してんだ、あんなとこで・・・・

・・・・・・犬嫌いなのかな・・・・・




俺は、そいつのことをただじっと見た。

「お前の犬か? だったら、俺の半径3m以内に近づけさせるな!」

そいつは、俺に向かってそう怒鳴る。

「・・・・大丈夫ですよ。 そいつは、人を噛みつくような奴じゃないですから・・・・・・」

「そんな問題じゃねえんだよ! いいから、こいつをどっかに、連れて行けよな

っ!!」

そいつは、俺の言葉を遮って、また俺を怒鳴りつけた。




・・・・・ざけんなよ。

・・・・・人が下手に出てりゃ、いい気になりやがって・・・・・




俺は、そいつのあまりの言いぐさにプチンとキレる。

「ああ? ここは、てめえの庭か? ざけんなよ! 何様のつもりだ。 そんなに犬が

嫌いなら、てめえが、どっかに行きゃあ良いだろうが! ここは、公園だ。 てめえに

そう言う風に文句言われる筋合いはねえ!」

俺は、そう言ってあいつを睨み付けた。

「・・・・・・・・・。」

あいつは、黙って俺を見ている。




・・・・・勝ったな・・・・・やったね。

・・・・・ざまーみろ、正義は必ず、勝つ!




俺は、小さく拳を握りしめ、ガッツポーズした。

「・・・・・・それはそうなんだが・・・・・悪かったな。 ・・・・・けど、今は・・・うわっ! 

げっ!」

あいつが、そう愁傷に、俺に謝ってるとき、よりにもよって、はしゃいでいるマリンが、あいつ

にじゃれついた。




・・・・・あちゃー・・・・マリンの奴・・・・・




俺は、頭に手を置いて、顔を顰めた。

「ば、馬鹿野郎・・・・くんなって言っただろ・・・・わっ、コンタクトが・・・・・買ったばか

りの・・・」

「えっ?!」

俺は、あいつの声に驚いて声を上げた。

そして、慌ててマリンの鎖を付け、あいつから離す。




・・・・・・今・・・・こいつ、コンタクトがどうたら、言ってたよな・・・・・・




「・・・・・コンタクトって・・・・・」

「ああ、そうだよ、ついな、買ったばかりのコンタクトレンズ、この辺に落っことしたらし

い。 ・・・・・ついてねえよな。」

「あっ、それで・・・・・ごめん、俺・・・・・」

「・・・・別に、もう良いんだ。 ・・・悪かったな、怒鳴ったりして・・・・試験勉強とバイト

が忙しくて、ついイライラしてたものだから・・・・もう、良い・・・・落とした俺が、悪いん

だから・・・ごめんな、怒鳴ったりして・・・」

そいつは、そう言ってその場を後にする。

「・・・・なんだ、結構まともな奴じゃん。 ・・・・・悪かったかなあ、なあ、マリン・・・・

れ???」

俺は、マリンの身体を撫でながら、マリンの鼻の先に光るモノを見つけた。

・・・・・それは、紛れもなく、コンタクトレンズ・・・・

「・・・・・これって・・・・あいつの・・・・・」

俺は、慌ててあいつを追いかけたが、その時にはもう遅くて・・・・あいつの姿は何処にも無

かった。











+++++++++++++++++++



「・・・・おいって・・・・なあ、サンジ、聞いてるのか? なあ、サンジ・・・・」

「えっ?! あっ、なんだったっけ、ルフィ・・・・・」

「チェッ・・・・やっぱり聞いてなかったんだな。 最近、おかしいぞ、サンジ。 

・・・・何かあったのか?」

「あっ・・・・いや、別に・・・・なんでもねえよ・・・・・」

学校の帰り道、俺は、ルフィにそう言われ、慌てて取り繕う。

・・・・・そう、あの日、あいつに逢ってから、どうにも俺は、おかしいんだ。

あいつのことが、気になって気になって・・・・・学校の帰り道でも、マリンと散歩してるときで

も、ずっと・・・・・あいつの姿を探してる・・・・・

・・・・・ずっと・・・・一日中・・・・・あいつのことを考えてる・・・・・

たった一度だけ逢っただけなのに・・・・・

・・・・・もう二度と逢うことないかも知れないのに・・・・・

・・・・・それでも、俺は、あいつのコンタクトレンズを肌身離さずにずっと、持ってる・・・・・




・・・・・・・あいつに会いたい・・・・・・もう一度・・・・・・

・・・・・・最近、そればっかり考えてる・・・・

・・・・・それって・・・・・恋・・・・・に似てる・・・・・・

・・・・・・?!恋??

・・・・・・ちょっと待てよ、おい・・・・・いくらなんでも・・・・・それは・・・・・

・・・・・相手は、男だぞ・・・・それに・・・・俺だって・・・・男だ・・・・

・・・・・・ありえねえ・・・・絶対にありえねえ・・・・・




「・・・・俺は・・・・俺は、きっとコンタクトのことが、気になって・・・・・そう、それだけ

だ!」

「?・・・・何が、それだけなんだ? コンタクトがどうとか・・・サンジ・・・お前、やっぱ

し、変。」

再度、ルフィにそう突っ込まれて、俺は、自分がブツブツ呟いていたのを知った。




・・・・・・・やっぱり・・・・・俺・・・・変だ・・・・・・




俺は、深いため息を吐いて、目の前を見ると、ちらりとあいつの姿が、目に飛び込んで来た。




・・・・・あいつだ。




「ルフィ、悪い。 俺、用事思い出した。 じゃあ、明日な。」

「ちょっ・・・・おい・・・・サンジ! サンジってば!」

ルフィの言葉にも耳を貸さず、俺は、あいつの後を追いかける。

あいつは、凄く歩くのが早くて・・・・・・そのまま繁華街のとある店に消えていった。

「・・・・・ここは・・・・ホスト・・・・クラブ???」

俺は、その店の看板を見て、固まった。

確かに、外見的にかなり格好良いとは思ったけど、こっち方面で働いている奴とは、思っても

見なかった。

「いらっしゃいvv 君、可愛いねvv だけどね、ここは、18歳未満の子は、入店禁止

なんだ。」

如何にもって感じの格好良い男が、俺にそう言う。

「ち、違う。 俺は・・・さっきの奴に用があって・・・・」

「・・・・最近は、知り合いだだの身内だのって言って来る奴、多いんだよな・・・・

悪いんだけど、決まりだから・・・・」

「違うって! 俺は、本当にあいつに用があって・・・・」

「・・・・どうした? 店の前で、騒がしいぞ・・・・」

そう言って、俺達が、店の前で言い合いをしているとあいつが、やってきた。

「おう、ゾロ。 お前の知り合いだって言ってるけど・・・・」

店の男があいつにそう言う。

あいつは、きっちり着こなした黒いスーツに身を包んで、じっと俺を見つめてる。




・・・・・・やっぱり、格好良いよな・・・・・

・・・・・・あんまりそうじっと、見ないで欲しい・・・・・・




俺の心臓は、さっきから心拍数上がりっぱなし。

ドキドキが止まらない・・・・・

「・・・・ふぅ。 ・・・・こっちにおいで・・・・」

あいつは、そうため息を吐いて、俺を店の中に案内した。

店の中は、俺が知らない世界が広がってて・・・・俺は、キョロキョロと辺りを見渡す。

「・・・・・あのなあ、ここは、君みたいな子が来る場所じゃないんだよ。 もっと大人の

女性になってから、遊びにおいで・・・・それとも、結構遊んでる女の子なの?」

あいつは、俺に、ため息混じりでそう聞いた。




!!・・・・・女?? 女だと?!

・・・・・・・人がせっかく・・・・・せっかく持ってきてやったのに・・・・

・・・・・・俺の何処が、女に見えるってんだ!!

・・・・・ふざけんじゃねえ!!




「ふざけんじゃねえっ!! 人がせっかく親切で届けてやろうってやって来たの

に・・・・それを・・・・それを、よりにもよって、女だと?! なめんなよ! クソッ、後生

大事に持ってて損した! 馬鹿野郎!!」

俺は、あいつにそう怒鳴って、持っていたコンタクトの入った袋をあいつの顔に投げつけて、

店を飛び出した。






・・・・・一方、ホストクラブでは・・・・・

「おい、ゾロ、さっきの子、どうしたんだ?」

「ああ、なんか逆ギレして出ていっちまった。」

「なんだ、そりゃ? てめえのファンじゃなかったのか?」

「ああ、俺もそうだと思って相手してたんだが・・・・・・・・あれ? ・・・・・・・これ・・・

・・・・・このコンタクトレンズ・・・・・あの子・・・いや、あいつ・・・・・・そうだったのか

・・・・悪いコトしたよな。 俺、完全に見当違いのことあいつに言っちまった・・・・・

まずいな・・・」

「ん?なにが、まずいんだ?」

「いや、なんでもない。」

ゾロは、店の仲間にそう言うと、慌ててポケットにその袋を隠した。









++++++++++++++++++




・・・・・あいつは、所詮ああいうところで働いてる男なんだ・・・・

・・・・・女の人に媚びうって・・・・金もらって・・・・・

・・・・・あの時は、そう言う風には、見えなかったんだけどな・・・・・

・・・・・あー、眠れねえ・・・・・クソッ、なんだってあいつのことばかり・・・・・・

・・・・・あいつは・・・・俺のことなんか、全然覚えてもいなかったんだぞ・・・・・

・・・・・それなのに、それなのに・・・・なんで、俺ばっか・・・・

・・・・・俺ばっか、いらいらして、むかむかして・・・・・

・・・・・俺が、こうやってる間も、あいつは、きっと、女性相手に・・・・・・

・・・・・あー・・・・・ダメだ・・・・・眠れねえ・・・・・




その夜、俺は結局一睡も出来ずに・・・・・気晴らしに、マリンを散歩に連れていくことにした。

「そらっ、マリン、行って来い!」

俺は、そう言って公園でマリンの鎖を外す。

さっと木の陰から誰かが飛び出してきて、マリンが一目散にそいつのところに走っていった。

「あっ、マリン!」

俺は、慌てて止めようと走り出す。

「・・・・・オス・・・・やっぱり、ここ、散歩コースだったんだな。」

そう言って現れたのは、あいつで・・・・・俺は、またドクンと心臓が跳ねる音がした。

あいつは、立ち止まってる俺の側に来ると、ズイッと顔を寄せる。

俺の心拍数は、また上昇した。

「昨日は、本当にごめん。 言い訳がましいけど、俺、このくらいじゃないと、相手の

顔、わかんねえんだ。 それに、昨日は、店の中暗かったし・・・・本当に、ごめん。

・・・・・コンタクト買ったばっかしで、金無いし、新しいコンタクト買わなきゃいけなかっ

たんで、暫くの間だけと言うことで、あそこでバイトしてたんだ。 まさか、あんたが、

店まで届けに来てくれるなんて、思っても見なかったから・・・・本当に、ごめんな。」

あいつは、本当にすまなそうに、俺にそう言った。

「・・・・べ、別に良いよ。 俺が勝手にしたことだし・・・・ まっ、今度からは、コンタク

ト落とすなよ。 さあ、行こうぜ、マリン・・・・・」

俺は、そう言ってマリンに鎖をはめる。

俺は、心臓の音がうるさくてあいつに聞こえそうで、それが嫌で早くそこから逃げ出したかっ

た。

「・・・・待てよ。 ・・・・・なあ、本当に、コンタクト返すつもりだけで、店まで来たの

か? ・・・・本当に、それだけのために?」

急にあいつは、そう言って、俺の顔を覗き込んだ。

「っ・・・/////ば、そ、そんなの当たり前じゃねえ・・・か・・・・」

俺は、瞳の前のあいつの顔に焦ってうろたえてしまった。

「・・・・・そうか。 ・・・・なあ、今から言うこと、嫌なら聞き流して貰っても構わない。

今言わないと、もう二度と逢えないような気がして・・・・・だから・・・・・・ 

・・・・・俺、落としたコンタクトを、寒い中必死で探してくれたり、それを店まで持ってき

てくれるような優しい奴の事が、何故か忘れられないんだ。 ・・・・友達に・・・いやそ

れ以上になりたいと、本気でそう思ってる・・・・・」

あいつは、真剣な瞳で俺にそう言った。




・・・・・はあ??

・・・・・必死で誰も探してなんかない・・・・だってあれは、マリンの鼻についてただけだし。

・・・・・店に届けたって言うのも・・・・てめえの事見つけて勝手に追いかけていっただけだし。

・・・・・ククク・・・・なんか、こいつ、すげえ勘違いしてやがる・・・・

・・・・・面白れえ奴・・・・・・けど・・・・・・・

・・・・・こんなのも、良いかも知れない・・・・・・

・・・・・こんなつき合い方も・・・・・そう悪くねえ・・・・




「・・・ククッ・・・・・俺、サンジって言うんだ。 よろしくな。」

「・・・・俺は、ゾロだ。 付き合ってくれるか?サンジ・・・・」

「ああ良いぜ、まずは、お友達から、な?」

「ああ、初めは、それでかまわない。 ・・・・けど、いつまでもそのままにする気はな

いからな。」

「すっげえ、自信だな・・・・さすがは、ホストでバイトするだけあるじゃん・・・・」

「・・・・そう言って、なんだかんだ言って、お前、俺に惚れてるだろ?」

ゾロは、俺の言葉にそう言って笑った。

「・・・・・一人で、言ってろ・・・・」

俺は、呆れたようにそう言い返す。




・・・・・・・本当は、俺の方が、先に惚れてたんだぜ・・・・・

・・・・・・・けど、それは、しゃくだから・・・・・言ってあげない・・・・









 <END>




    
<parallel−top>    




<コメント>

なにげに今年パラレル最終作は、ほのぼのと・・・いってみましたvv
とりあえず、ゾロは、大学生と言うことで・・・・(^_^)
ホストねえ・・・・ルナも二人がホストだったら、全財産叩いて通うな、きっと・・・(笑)
久々に、サンジ・・・乙女??な駄文だなあ・・・
まっ、たまには、こんな駄文も良いでしょ??
コンタクト・・・ルナもそうなんですが、本当にはずすと全く見えない!
人の顔なんて裸眼じゃ50cm位近づかないと判別不能ですね・・・(苦笑)
それでは、皆さん、良いお年を!!