Saudade |
「オールブルーって知ってるか?」 そう言って振り向いたあいつの顔が、ずっと頭から離れない。 「・・・いや、知らねえな・・・」 俺は、それだけ言うと、また酒を飲んだ。 「ったく、てめえは、俺よりいろんなとこ旅してた癖に、知らねえのかよ。 いいか、オールブル あいつは、そう言って俺にとくとくと話をし出した。 「まっ、興味のねえてめえに話しても、意味ねえよな。 悪かったな、時間の無駄して。」 あいつは、そんな俺の気のない返事に、ため息を吐くとそう言ってキッチンに入っていった。
「ナミすわ〜んvv ロビンちゅわ〜んvv 今日のデザートは、クランベリーのゼリーだよ〜vv」 いつものように、サンジがいそいそとテラスにいるナミとロビンにおやつを差し出す。 「なぁ、なぁ、俺達の分は?」 「あ? てめえらの分は、ほれ、落とすんじゃねえぜ。」 ルフィに急かされながらも、サンジは笑顔で皆にゼリーの入ったグラスを渡す。 「んめえ!! うめえよ、サンジ。」 「本当、すっきりして凄く美味しいわ。」 皆、口々にそう言いながら、サンジの作ったおやつを堪能していた。 「ほら、てめえの分。 あんま甘くねえから・・・・。」 そう言って、ゾロにグラスを差し出す。 「あ、ああ・・・。」 「ちゃんと食えよ。」 サンジは、そう言ってにっこりとゾロを見て微笑んだ。 「あれ? ゾロ、食わねえの? だったら、俺、食ってやろうか?」 先程から、食べる素振りを見せないゾロに、ルフィがそう言って近づいた。 「ルフィ!! それはてめえの分じゃねえだろ!! それは、そいつの・・・」 「いいよ、やる・・・・。」 ゾロは、サンジの言葉を遮って、ルフィにグラスを差し出す。 「本当か? いいのか??」 嬉々として、グラスを受け取り、ゼリーを口にしようとしたルフィ。 「なに勝手言ってんだよ!! あれはてめえの分・・・」 「・・・・別に良いだろ。 食いてえ奴が食えば良い。 俺はいらねえ・・・。」 ゾロはサンジの言葉を遮るようにそう言うと、立ち上がり、船尾の方へ一人歩いていった。 「クソ・・・・・野郎・・・・。」 ぼそりと呟かれたサンジの言葉が、震えていたのをゾロは知らない。 「・・・・・・本当、馬鹿なんだから・・・・」 そのやり取りを見ていたナミは、溜息を吐いてゾロの背中を見送った。 「・・・・・・クソッ!!」 ゾロは、甲板の縁に拳を叩きつける。 「・・・・・・・・・もう限界なのかも、知れねえな。」 ゾロの呟きは、誰にも聞かれることもなく、海に消えていった。 いつものようにメリーさんの頭の上で釣り糸を垂れているルフィに、サンジはそう声を掛ける。 「あ? どうしたんだ?サンジ??」 ルフィは、らしくない表情のサンジにそう言って近づいた。 「・・・・・・・・船を・・・・下りる。」 サンジは、静かな声でそれだけ言う。 「な? なっにぃーーーーっ?! なんで?なんで?なんで??!!」 ルフィは驚きの声を上げ、サンジの胸倉を掴み揺すった。 「・・・・・・・ごめんな、ルフィ。 てめえが海賊王になる姿、見れなくてよ。」 そっとルフィの手を払い、ポンと麦藁帽子に手を添えにっこりと笑うサンジ。 「・・・・・・・・あいつが、原因なのか?」 ボソリとルフィが呟く。 「あ? あいつ?? 何のことだ?」
「・・・・・・・・・しらばっくれてもダメだ。 俺は知ってんだからな!! あいつは、いつも特別 グッとルフィが拳を握った。 「・・・・・・ルフィ・・・。」
「俺は!! 俺は、サンジが好きだ!! ずっとサンジと旅をしたい! ずっとずっと海賊王に ルフィはそう叫んで、サンジの身体を抱きしめる。 「なにわけのわかんねえ冗談・・・」
「冗談じゃねえ!! 俺、ずっと見てた。 サンジだけをずっと。 だけど、サンジは・・・・・・気 「それは・・・・・・・あいつが、嫌いで、気に入らねえから・・・・むかついて、喧嘩してただけ
「違う!!違う!! 違うだろ!!サンジ!! 嫌いなら、傍に行かねえ! 瞳になんか映さ 凛として、何もかも見透かすようなルフィの瞳の力強さに、サンジが深い溜息を吐く。 「ルフィ・・・。 良いか? これは、あいつは関係ねえ。 俺がそう決めたんだ。 あいつ そう言ってサンジは、もう一度、笑った。 ルフィは、麦藁帽子を深く被り直すとサンジの横をすり抜け、船尾に向かう。 「ゾーーーーロォーーーーーッ!!」 そう大声を上げ、ゾロの顔めがけて腕を振り上げた。 「グハッ!! ッ・・・・・てめえ、いきなり何しやがる・・・。」 口の端から流れる血を拭い、ゾロはゆらりと立ち上がった。 「俺と勝負しろ!!」 ルフィはそう言いながら、機関銃のようにブンブン腕を伸ばしゾロに向かっていく。 「なんなんだよ! 一体?! ルフィ!!理由を言え!!理由を!! なんでお前と勝負しな 和道一文字の鞘で、ルフィの攻撃をかわしながら、ゾロはルフィに尋ねる。 「理由? 気に入らねえから・・・・。」 「オイオイ・・・・。 何が、だ。 何が気に入らねえ・・・。」 ルフィの理由の意味わからず、ゾロは溜息を吐く。 「とにかく、全部だ!!」 ルフィはそう言い切るとまた、拳を振るった。 「ったく・・・・・本意じゃねえが、仕方がねえ。 売られた喧嘩は買うぜ・・?」 さっと鞘から刀を抜くと、ルフィめがけて斬りつける。 「ちょっと、ちょっと!! なにやってんのよ!二人とも!! 止めてよ!!」 そう叫ぶナミの声も、二人には届いていない。 「止めろ!! ルフィ!!ゾロ!!」 慌ててサンジが止めに入る。 「サンジには、関係ねえ!!」 ヒュンとルフィの腕が伸びた次の瞬間、サンジの胸にルフィの拳がめり込んだ。 「グッ!!」 受身を取らずまともにルフィの拳を食らったサンジは、そう呻いて床に蹲った。 「サンジーーッ!!」 思わずゾロがそう叫ぶ。 「ヘッ・・・・大丈夫だ、このくらい・・・。」 そう言って笑うサンジの口のから、血が滴り落ちた。 「ルフィ・・・・。 なんで・・・・・・・こいつを・・・・・・・こいつを・・・・殴ったーーーーーッ!!」 ゾロの全身から狂気に似た殺気が迸る。 「あ、悪い。 邪魔だったから・・・。 けど・・・なんでゾロが、そんなに怒るんだ? いつも喧嘩 ルフィの言葉は、ゾロの胸に突き刺さる。 ルフィの拳が、ゾロの腹めがけて伸びた。 「止めろ!!ルフィ!!」 ヒュンとサンジの脚がルフィの拳を弾いた。 「こいつは・・・・こいつは、関係ねえと言った筈だ。 俺が、俺が勝手に・・・・・だから・・・・こい サンジはそう言って、ゾロとルフィの間に割って入る。 「・・・・・・・サンジ・・・。」 ゾロは力なく呟いて、その背中を見つめた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・止〜めた。」 長い沈黙の後、ルフィはクルッと踵を返すとスタスタと船頭のメリーの頭に向かい歩き始め 「ったく・・・・いい加減にしなさいよ、あんた達。」 ナミは、それだけ言って部屋に戻る。 「お、俺も・・・・・・・・じゃ、じゃあ・・・・。」 ウソップもそう言って部屋に戻っていった。 「・・・・・わりい。 ルフィの奴、どうかしてたんだ。 俺が急に船を下りると言い出したから・・。 サンジはそう言って、ポンとゾロの肩を叩くとキッチンへ歩き出す。 そう呟くようにその背中に問いかけた。 「あ? ・・・・・・・・・・・てめえにゃ、関係ねえだろ。 てめえもせいせいするだろ? これでイラ サンジはそう言って、いつものようにおどけて笑う。 「なっ? なんだ??」 唖然とした顔つきで、ゾロを見上げるサンジ。 「・・・・・・行くな。」 ゾロの振り絞った声に、サンジの身体がビクッと震えた。 「・・・・・・・・行くな。」 「・・・・・・なんでだよ。 なんでこんな事するんだよ・・・・・・・なんで・・・・・そんな事言うんだ もう一度聞こえた言葉に、サンジはギュッと歯を食いしばり震える声でそう呟く。 「・・・・・サンジ・・・?」 「てめえは!! てめえは、俺の事嫌ってる癖して、なんで・・・・・なんで、こんな事を・・・・・・・ ゾロの顔を睨みつけていたサンジの瞳から涙が溢れた。 「せっかく・・・・・・せっかく、最後まで隠し通せると思ってたのに・・・・・・馬鹿野郎・・・・・・・ ポロポロと涙を雫して、サンジが言葉を続けた。 「ッ・・・・・好きなんだ。 好きなんだよ、ゾロ。 わかってる・・・・馬鹿げた想いだってわかって サンジは袖口で涙を拭い、ゆっくりとと立ち上がる。 言葉ももどかしげに、ゾロはサンジをギュッと抱きしめた。 「ッ・・・・・馬鹿野郎・・・・遅えんだよ。 なんで早く言わねえんだよ・・・・・俺・・・馬鹿みてえじ サンジは、ゾロの背中に腕を回し、バシバシと背中を叩いた。 「・・・・・・・・そうだな。 俺もてめえも、十分、馬鹿だ。 だから・・・・・・似合いだろ、俺達は。」 そう言って、ゾロは笑う。 見惚れた自分が悔しくて、サンジは涙を拭うとそう言ってゾロの腕をすり抜ける。 「オイ! 何処に行くんだよ!」 そう言ったゾロの言葉に、サンジは笑顔で振り向いて・・・ 「やっぱ、てめえを扱えるコックは、俺しかいねえみてえだから・・・・船長に、気が変わったと そう照れくさそうに言って、船頭に向かっていった。 そっとその背中にもう一度呟いてみる。 「あ? なんか言ったか?」 サンジはすぐに振り向くと・・・・・・・・・・・そう言ってにっこりと笑った。 |
<コメント> こちらは、こずえ様のリクエストで、【片想いから両想いになるまで】でした。 日記を読んでた方はあれ?と思われたかも。 そう、始めの語りは、日記のSSSから持って来ました。 サンジの気持ちって書くことが多いので、敢えてゾロのと言う事でv ゾロサン←ルフィって、久々だなぁvv ルフィって、やっぱ好きだーっ! こんなもので・・・・・ごめんなさい、こずえさん。(汗) 少しでも幸せ気分になっていただければ、それでOK! では☆(脱兎) <kiririku−top> |