Body language




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これで、何度目だろう・・・。

こうやって考える事。

互いに、身体だけと割り切って、繋がるだけの関係。

終われば、余韻に浸るわけでもなくすぐに風呂へ向かうあいつ。

そんなに身体に残る俺のが嫌なら、抱かれなきゃ良いのに・・・。

全然あいつの意図がわかんねえ。

男なら・・・・・・・・抱かれるよか抱く方が良かねえか、普通・・・。

なのに・・・・・

なんで、あいつは、俺に抱かれるんだろう・・・?

あいつが言うように、ただの性欲解消なら・・・。

なんであいつは、求めるんだ・・?

その声で・・・・・その仕草で・・・・・。

・・・・・・・・わかんねえよ、あいつの・・・・・・真意。






「・・・・・面倒臭。 止め、止め。 んなの考えたって、人の気持ちはわかんねえよな。 

まぁ、あいつがああ言うんだから、俺がどうこう言う事でもねえし・・・・」

ゾロはそう呟いて立ち上がると、シャツを着て格納庫のドアを開けた。

熱く湿った室内の空気が、ゾロと共に夜風に当たる。

もう先程までの淫猥なシーンも、ドアを開けた途端に嘘のように消え失せた。

サンジの甘い声も仕草も、もうそこにはない。

10日ほど前、飲んだ勢いで、サンジと関係を持った。

それから、度々関係を続けるようになった。

誘うのはいつもサンジから・・・。

サンジは、ゾロにこう言った。

これは、性欲の解消だと。

決して好きだとかそう言う甘い感情からじゃないと。

『だから・・・・・・決して自惚れるな。 俺は、てめえが好きで抱かれるんじゃねえ。』

サンジは、初めてゾロに抱かれた後、背中を向けてそう言って、そのまま部屋を出て行った。

生来、物事を深く考えるのが苦手なゾロは、そんなもんだろ、位にしか思ってなかった。

己の騎士道精神を振りかざし、女性にめっぽう甘い料理人にその気があるなんて到底思えな

い。

大方、船内のクルー達の中で消去的に選ばれただけなのだろうと。

それが証拠に、キスは・・・・・一度もしていない。

しかし、誘われて抱く度に、サンジの声はゾロを求めて、その身体はゾロに応える。

まるで、恋人を抱いているような錯覚に陥りそうになる。

サンジの艶のある表情に、その姿態に、我を忘れて貪る様に抱く自分がいる。

自分は、ホモではないとゾロは思う。

今までも、女性を相手にしてきたし、好みの女性がいれば、それ相応に興味はある。

だが、最近感じるこの違和感は一体なんだと言うのだろう。

釈然としないのは、サンジの行為なのか、自分の気持ちなのか・・・?

ゾロは、今日もまた一人、男部屋に戻り、ハンモックに横たわった。






数日後、船は、久しぶりに上陸を果たす。

やはり、皆、陸が恋しかったのか、意気揚々と船を下りて行った。

ゾロもまた、久しぶりの街へ刀を研ぎに船を下りる。

途中、買出し途中のサンジの姿を発見した。

派手な金髪のサンジは、遠目にもよくわかる。

ふと、瞳が合った。

「よう! どうした? もしかしてもう迷子とか?」

そう皮肉って、ゾロに近づいてくるサンジ。

「・・・・・別に? 刀研ぎを探してるだけだ。」

「ふ〜ん・・・。 なら、こっちの方に鍛冶屋があったぜ。 あ、てめえ、今夜はどうすん

だ?」

「どうするって? てめえは、宿とらねえのか?」

「ああ、俺はどうにも船でねえと落ちつかねえから。」

「じゃあ、俺も船で寝る。」

「あ?・・・・」

そうびっくりしたような顔をして、サンジの足がピタリと止まった。

「なんだ? どうかしたのか?」

ゾロは怪訝そうな顔でサンジを見る。

「・・・・・・いや、別に・・。 へへ・・・そうか・・・・そうなんだ。 じゃあ、俺、買出しの途

中だから。 せっかくだから、てめえの好みそうなもん作ってやるよ。 じゃあな、後

で・・・。」

サンジは上機嫌でそう言うとゾロと別れ、意気揚々と市場の方に歩いていった。

「・・・・・変な奴。 いきなり機嫌良くなりやがった。 どうにも、あいつの考えてる事は

良くわからねえ。」

ゾロはそう呟いて、教えられた鍛冶屋に向かう。

鍛冶屋の店主は、3時間後にまた来るようにゾロに告げた。

「さてと・・・・一旦船に戻って、出直すとするか・・・。」

ゾロは、そう一人呟いて港に向かう。

「あら、勇ましい格好のお兄さん、良かったら遊んで行かない?」

そう言って、女性が声をかけてきた。

ふと周りを見渡すと、いつの間にか花街を歩いている。

「・・・・・・・参ったなぁ、どうやらまた迷ったみてえだ。 港はどっちだ?」

ゾロは、そう呟いて頭をガシガシと掻いた。

「クスクス・・・・面白い剣士さんね。 気に入ったわ。 ただで良いから寄っていかな

い?」

その女性はそう言ってにっこりと笑う。

ハニーブロンドに、蒼い瞳。

整った顔つきにスレンダーな身体。




・・・・・・・あのクソコックが女ならこんな感じか・・・?




ゾロは、マジマジとその女性を見つめた。

「・・・・・どうする? 付き合ってくれたら、港への道教えてあげても良いわよ。」

その女性はきわどいドレスに身を包み、魅惑的な微笑を浮かべ、ゾロを誘う。




どうせ、船に帰っても寝るだけだし・・・・時間潰しには丁度良いか。




「・・・・・わかった。」

「・・・決まりね。 こっちよ・・・。」

そう返事したゾロの腕を捕り、女性が部屋に案内した。

ワンルームに、セミダブルの質素なベッドが真ん中に置いてある。

「・・・・シャワー浴びてくるわ。 貴方も一緒にどう?」

「いや、俺は良い。」

「じゃあ、冷蔵庫に飲み物があるから、それ飲んで待っていて。」

女性はそう言うと、バスルームに向かった。

ゾロは、言われるままに、冷蔵庫からビールを取り出しベッドに腰掛け、女性が出てくるのを

待った。

暫くして、女性がバスタオルを巻いてバスルームから姿を現す。

それからベッドに座るゾロに口付けて、跪いた。

「じっとしてて・・・・・・お互い楽しみましょう・・・。」

女性はそう言うと、ゾロの前をはだけて、ゾロの雄を口に含む。

ジュブジュブと淫猥な音が部屋に響いた。

金色の髪が、サラサラと揺れる。

さすがは商売としているだけあって、女性はツボを心得ていた。

刺激を与えられ、ゾロの性欲も身体も昂ぶりを示し始める。

「ふぁ・・アン・・・凄いわ・・・・もっと・・・もっと気持ち良くなって・・・」

女性はゾロの雄を手淫しながらそう囁き、ゾロに口付けた。

女性のつけた甘い香水が、ゾロの鼻を擽る。

女性の赤い唇が、濡れてやたらといかがわしく感じた。




・・・・・・・・何かが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う。




そう思った途端、あれ程昂ぶっていた欲望が急激に萎え始める。

「えっ?! なに?どうしたの?」

手の中のゾロの雄が萎えていくのを感じて、女性がゾロにそう尋ねた。

「・・・・・・・すまん。 あんたじゃダメみてえだ。 わりい、俺、帰るわ・・・。」

ゾロは、その女性を身体から離し、そう告げる。

「やだ、嘘・・・。 なんで? あんたじゃって・・・・・・・貴方、誰か好きな人がいるの

ね・・・?」

女性は、驚いた表情でゾロを見てそう言った。

「ん? なんで?」

「だって・・・・・この状況で萎えるなんて・・・・・好きな人と比較したからじゃないの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

女性からそう言われ、ゾロは自分の気持ちを改めて考える。

なんで、この期に及んであのサンジを想い浮かべてしまったのか。

それに反応するように、この魅惑的な女性を瞳の前にしてどうして身体と心が萎えてしまった

のか。

全て思い当たるのは、その女性が言った言葉。

「あー、ショック! こんな事初めてよ、私・・・。 今まで、私に誘われて落ちなかった

男はいなかったんだから。」

女性は、ゾロの顔を見てぷーと頬を膨らませた。

「・・・・・・わりい、本当にわりいな。 けど、ありがとう。 おかげですっきりした。」

ゾロはそう言って、その女性に笑顔を向ける。

「してもいないのに、すっきりだなんて・・・・・・本当に、憎たらしい位、いい男ね。 

さっ、さっさと出て行ってよ。 港へは、ここを出て右に行けば着く筈よ。」

その女性はそう言って、ゾロを部屋の外に押し出した。 

「サンキューな、あんたは、いい女だぜ?」

ゾロはそう言って、女性に言われるまま、右の方へ歩き出す。

「ばぁか、そんなのわかってるわよ。 私としたことが、あんな鈍い奴に惚れそうになる

なんて・・・・。 少しぐらい意地悪しても良いわよね・・・。 港はあっちだけど・・・。」

その女性は、ゾロの背中にそう呟いて、部屋の中に戻って行った。

「あ、ありゃ?! ここは・・・・・・・鍛冶屋じゃねえか。 俺、聞いたとおり歩いてた筈

だが・・・? まっ、良いか。 少し早いが、どうせ来なきゃならなかったし・・・。」

ゾロはそう呟いて、鍛冶屋のドアを開ける。

「おう、早いな。 たった今仕上がったところだ。」

鍛冶屋の店主はそう言って、ゾロに刀を手渡した。

ゾロは金を払い、挨拶をして鍛冶屋を出ると船に向かう。

あちこちで迷い、ゾロが船についたのは、真夜中に近い時刻だった。

キッチンにはまだ明かりがついている。




あいつ・・・・・まだ起きてやがんのか?




ゾロは、とりあえずキッチンに向かった。

「ただい・・・」

「遅え!! なにしてんだよ! こんな時間まで!!」

ゾロの言葉を遮って、サンジがそう言って食って掛かる。

「・・・・わりい、道に迷って・・・」

そう謝るゾロの身体から、甘い香水の匂いがした。

一瞬、サンジの顔色が変わる。

「・・・・・・・・・まぁ、俺が怒るのは筋違いだよな。 ハハ・・・そうだよな、色々あるよ

な・・・・・・・男だしな・・・・。」

サンジは、握り締めていた襟首からそう言って手を離した。

良く見ると、首筋にも赤い口紅の痕。

それを見止めたサンジは、どうしようもなく感情が抑えきれなくなった。

自分が言った言葉が重く圧し掛かる。

『俺は、てめえが好きで抱かれるんじゃねえ。』

始めて抱かれた夜にゾロに告げた言葉は、そのまま自分に向けた言葉。

そう言わなければ、自分が保てなかった。

せめて一度だけでも・・・・

そう思いつめて、あの日、酒の勢いを借りてゾロを誘った。

断られても、一度きりでも、酔ったの上での戯言と一笑ににふしてしまう為に・・・・

逃げ道を用意して、抱かれた筈だった。

しかし、先しか見えてないと思っていたその瞳に自分の姿を映した時、サンジの中で何かが

崩れた。

自分の身体に叩きつけられる熱に・・・・

自分と共に、達するその表情に・・・・

もう、後戻りできずにいた。

抱かれる度に、心が、身体が、ゾロを求めて止まない。

ゾロが、自分に好意を持ってないことはわかっていた。

キスは・・・・・・・・・・・・出来なかった。

唇が触れ合えば、感情が流れ込むから。

口に出来ない想いならば・・・・

自分が言った性欲処理に付き合っているだけの・・・・・存在で良かった。

しかし、それも、船の上だけのもの。

こうやって陸に上がれば、ゾロは自分ではなく、女性を抱く。

わかっていた現実をまざまざと突きつけられ、サンジは、ギュッと唇を噛み締める。

「・・・・・とにかくその香水を、洗い流しとけよ。 明日になれば、ナミさんも戻って来る

んだ。」

サンジは、いたたまれずにそう言って、キッチンの扉を開けた。

「あ? ・・・・・そんなに匂うか?」

ゾロはサンジの言葉に、クンクンと匂いを嗅ぐ。

「ああ、さそかしたっぷりといい思いしてきたんだろ? ・・・そのまま、そこに泊まって

くれば良かったんじゃねえの?」

サンジは振り向きもせずに、吐き捨てるようにそう言った。

「なに怒ってんだよ?」

サンジの怒気を含んだ声にゾロはそう言って、その腕を掴む。

「離せ!! 俺に触るな!!」

ヒュンと空気が唸る音と共に、サンジの蹴りがゾロを襲った。

その蹴りをゾロは紙一重で、サッと避けた。

「・・・・・・・サンジ?」

「・・・・・・・もう終わりだ。 もう付き合わなくて良いから・・・・・・俺もさ・・・・・やっぱ、

女性の方が良いもんな。 だから・・・・・一人で船番やってくれ。 俺も、楽しんでくる

わ・・・・。」

そう言って、サンジは自嘲気味に笑うと、踵を返しキッチンを出て行こうとする。

ポタッとサンジの足元の床にシミが出来た。

ゾロはそのシミに気付き、強引にサンジを振り向かせる。

「なんで、泣いて・・・・?」

ゾロはサンジの顔を見てギョッとした。

そこには、はらはらと涙を流し、自分の顔を見つめるサンジ。

「ごめっ・・・・・ごめん、俺・・・・」

そう言って、サンジは慌ててゴシゴシと顔を擦る。




・・・・・・・・そうか・・・・・・こいつも・・・・

・・・・・・・・・そうだったんだ。




「・・・・・・・・わりい。」

全てを察したゾロはそう言って、サンジを抱きしめる。

「なんで謝んだよ。 わかってんだ、てめえの気持ちは・・・だから・・・・・初めから、叶

うなんて思っちゃなかったんだから・・・・・だから・・・・謝るな・・・・・・これ以上・・・・惨

めにするなよ・・・。」

自分の想いを拒絶した言葉と勘違いしたサンジは、そう言ってゾロの身体を押し退けようとし

た。

「違う!! そうじゃねえんだ!! そんなんで謝ってんじゃねえ。 てめえの気持ち見

抜けなかった事を詫びたんだ。 それと・・・・・・泣かした事・・・。」

ゾロは、抱きしめる腕に力を入れながら、そっと右手でサンジの頬に流れる涙を拭う。

「ハハハ・・・・そんなことするなよ。 俺・・・・自分の良いように勘違い・・・・」

「・・・・・・・好きだ、サンジ。」

サンジの言葉を遮って、ゾロはそう告げた。

「・・・・・・好きだ、サンジ。 だから・・・・何処にも行くな。 俺以外相手にするなよ。」

「・・・・見え透いた嘘つくんじゃねえよ。 てめえだって、俺よかレディの方が良かった

んだろ? だから・・・・・」

ゾロの言葉に、サンジの涙が一層溢れてくる。

「・・・・・・・萎えた。」

ボソリとゾロがそう呟いた。

はぁ??」

「確かに金髪碧眼の綺麗な女だった。 初めは、そこそこ気持ち良かった。 けど・・・・

てめえの事、頭に浮かんだ瞬間、その気にならなくなっちまった。 あんないい女を瞳

の前にして勃たねえなんて、俺はどうにかなっちまったらしい。 そう考えたら、気が付

いた。 俺はてめえに惚れてしまってると。 なぁ、俺、自惚れちゃいけねえか? 

こんなにぐしゃぐしゃになるまで泣くくらい、俺の事、好きだって・・・」

ゾロは、はにかみがちにそう言って笑った。

その笑顔に、サンジの涙がピタリと止まる。

「ッ・・・・自惚れんな、このクソ剣士・・・・・・俺は、てめえなんか・・・てめえなんか・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好き・・・・・・・・好きだ、ゾロ・・・・・。」

そう言ってサンジは、ギュッとゾロの背中に腕を回した。

「キス・・・・・するぜ?」

ゾロはそう囁きながら、サンジの唇を塞ぐ。

「・・・・・・・もう一回。」

「ああ。」

「もう一回・・・」

「おう・・・。」

「・・・・・・もう・・・一回・・・。」

そうサンジにせがまれるまま、ゾロは、何度も唇を重ねた。

「ごめんな、サンジ。 もう・・・・泣かさねえ。」

そう言ってクシャッとサンジの髪に触れれば、

「当ったり前だ。 誰がてめえの為になんか泣くかよ・・・・。」

にっこりと笑って、そう憎まれ口が返ってきた。

昨日までと同じ表情で・・・・・

今日からは違う感情で・・・・・






切ない想いをさせた分だけの口付けを・・・・・

そっと君に返そう・・・・。


言葉に出来ない想いを込めて・・・・・

この身体で表そう・・・・。


全ては、心のままに・・・・・

Let’s body language.








<END>


 

 


<コメント>

こちらは、あけみ様のリクエストで、【サンジに謝るゾロのお話】でした。
詳しくリク内容を教えていただいたおかげで結構リクに沿ったかと・・・
えっ?! 違いますか??あけみさん?!(汗)
はぁ・・・・久々に、乙女ってるサンジです!
甘ったるい・・・(笑)
ゾロ・・・・・女性とやっちゃうかどうか迷ったんですが、やっぱ嫌だったので(笑)
では☆

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