Disturb







夏島が近いのか、ゴーイングメリー号の海域は只今夏真っ盛り。

年中分厚い毛に覆われているトナカイであるチョッパーでなくてさえ、このところの猛暑にク

ルー達は、バテ気味であった。

「ふぅ・・・。 今日も暑そうだな。 ・・・サンジ、キッチンにいるかな?」

朝から燦燦と照りつく太陽に寝てもいられず、チョッパーは、早朝のキッチンに向かう。

しかし、未だキッチンの主は見当たらず、チョッパーはきょろきょろと船内を探し始めた。

すると、バスルームのほうで水音が聞こえる。

チョッパーは、バスルームのドアノブに手を掛けた。

「サンジ? いるのか?」

そう一応声をかけて、ドアを開けるチョッパー。

バシャッと物凄い水音と共に、バスタブの中で赤い顔をしたサンジが、慌てた様子でチョッパ

ーの方を振り向く。

「チョ、チョッパー?! な、何か用か?」

「あ、ううん。 キッチンにサンジ、いなかったからどこかなぁと思って・・・・。 おはよ、

サンジ。」

サンジの言葉にチョッパーは、にっこりと笑ってそう言った。

「あ、ああ・・・んっ・・・おはよ、チョッパー・・・。 もうすぐあがるから、先にキッチンに

行ってて・・・ッ・・・」

サンジは何かを堪えるような声でそう言って顔を伏せる。

さすがにチョッパーもサンジの異変に気が付いた。

「サンジ?? どうしたんだ? 具合悪いのか?」

「良いから!! さっさと行け!!」

心配してそう声をかけるチョッパーに、サンジは大声を上げる。

「・・・・・サンジ・・・。」

サンジの怒声にビクッとチョッパーは身を震わせた。

「わ、わりい。 な、なんでもねえ。 本当になんでもねえんだ。 頼むから行ってく

れ・・・・ックッ・・。」

そう言ってにっこりと笑うサンジに、チョッパーは、こくんと無言で頷いてキッチンに戻ってい

く。

サンジは、チョッパーがいなくなったのを確認すると、バスタブに潜っているゾロに鉄拳を振る

った。

「痛えーっ!! いきなし殴ることねえだろが!!」

そう言って水の中から隠れていたゾロが身体を起こす。

「クソ、馬鹿野郎!! だから、一緒に入りたくなかったんだ!! おまけに、人の身

体散々弄びやがって!! チョッパーが気付いたらどうすんだよ! わかったら、さっ

さと退け!! このエロ剣士!!」

羞恥心と怒りで真っ赤になったサンジの口から機関銃のように罵声が飛ぶ。

「ごちゃごちゃとうるせえな。 てめえこそ、俺を水の中にいきなり押し込めやがっ

て・・・別に見られても構わねえって言ってるだろ、俺は・・・・。」

「俺が、構うんだ!! この無節操男!!」

ドカッ!!

サンジの罵声も全然堪えてないかのように振舞うゾロに、サンジは踵をその後頭部にお見舞

いすると、スタスタと風呂を出て行った。

ゴゴゴ・・・と、水が流れる音がバスタブの底から聞こえる。

「・・・・・・・後でぜってえ、啼かしてやる・・・。」

ゾロは、突き抜けたバスタブの底から起き上がるとそう呟いて、風呂を出た。







キッチンでは、サンジがクルー達の朝食作りに追われている。

その周りをちょこまかと、チョッパーもお手伝いに奔走中。

「オイ!クソコック・・・なんか飲み物・・・・」

そう言ってキッチンを開けたゾロに、もわーっと熱い空気が纏わりついた。

「あん? 俺は時間無くて忙しいんだ。 てめえで取れよ・・・。」

「あ、ゾロ。 飲み物ね・・・・ちょっと待ってて・・・。」

そう言ってつれないサンジとは対照的に、チョッパーがそう言ってゾロに飲み物を手渡す。

ゾロは、飲み物を受け取るとテーブルに腰掛けた。

「サンキュー、チョッパー。 しっかし、暑いなぁ、今日も・・・。 チョッパー、お前平気

なのか?」

そう言って飲み物を飲みながら、チョッパーにそう声を掛けるゾロ。

「あ、うん、大丈夫。 俺・・・・・サンジの手伝いしたいんだ。 俺・・・・こうやってサン

ジと話すの好きだから。」

チョッパーは、はにかみがちにそう言うと、帽子を深く被り直す。

「おっ?! いい心掛けだな、えらいぜ、チョッパー。 どこぞの寝腐れ馬鹿とはえれ

え違いだな。」

サンジはゾロを見てニヤリと笑うと、ポンと軽くチョッパーの帽子に触れた。

「エヘッ。 ば、馬鹿野郎・・・・ちっとも嬉しくなんか・・・・ない・・・・ぞ。」

言葉とは裏腹に照れ臭そうに帽子を触り、身体中で喜びを表すチョッパー。

「ククク・・・・えらい、えらい。 後でご褒美に冷たい物作ってやるからな。」

サンジは、チョッパーの目線にしゃがみこむとチョッパーの帽子を撫でた。

「本当?! えへへ・・・・やったぁ!! サンジ、大好き〜vv」

そう言って、しゃんがんでいたサンジにチョッパーは、抱きつく。

ガタッとゾロが座っていた椅子が鳴った。

「ん? なに怖い顔してんだよ、てめえ。」

抱きつかれた格好のまま、ゾロに視線だけ移すサンジ。

「うるせえな! 俺は初めからこの顔だ。」

そんなサンジを忌々しげに見つめ、ゾロはグッと拳を握る。




相手は、お子ちゃまチョッパーだ。

別にあの言葉に、深い意味がある訳でもなし・・・

こんなことで、一々むかついてどうするよ。

らしくねえぞ、俺・・・・。




ゾロは、そんな些細な事で嫉妬する自分を振り払うように瞳を閉じた。

「うらぁ、んなとこで眠るんじゃねえ! さっさと皆を起こして来いよ!!」

しかし、瞑想する間も無く、そう叫んだサンジの踵が後頭部にめり込む。

「痛え!! なにすんだよ、この阿呆コック! 口で言えば済むじゃねえかよ!」

「いいから、さっさと呼んで来い!」

立ち上がって頭を擦るゾロに、サンジは再びそう言い放つ。

「あ、サンジ、俺が呼んでくるよ。」

一触即発状態になったゾロとサンジに、チョッパーが慌ててそう言ってキッチンを出て行っ

た。

「・・・・ったく、使えねえ奴だな、てめえは。 ・・・・・ちっとは、チョッパーを見習えっち

ゅうの!」

呆れたような口調でそう言うサンジに、ゾロはヒクッと眉を吊り上げる。

「てめえなぁ、さっきから、チョッパー、チョッパーうるせえんだよ!!」

「あ? 逆切れしてんじゃねえよ。 使えねえから使えねえと言ったんだ。 悔しかっ

たら、言われなくても手伝い位してみろってんだ。 万年身体鍛えるしか脳の無い剣

士が!!」

ゾロの怒気を含んだ声に、サンジは平然とそう言い返した。

「なんだと、コラァ・・・・!!」

「やんのか、馬鹿侍・・・!!」

カチャリとゾロの鞘が鳴り、サンジの脚がトントンと小気味よくリズムを取る。

その時、キッチンのドアが勢い良く開いた。

「おはよ〜vvサンジ君vv 今朝も暑いわね〜vv」

「おはよう、コックさん。」

そう言ってキッチンに入ってきたロビンとナミを見て、

「はぁいvvナミさんvv ロビンちゃんvv おはようございま〜すvv」

サンジは笑顔でそう挨拶して、いそいそとシンクに戻っていく。

ゾロはその後姿を睨みつけて、ドカッと椅子に座り直した。

そうこうしているうちに、クルー全員が席に着き、キッチンは一見、和やかな雰囲気に包まれ

る。

「エヘッ、今日ね、俺、サンジに褒められちゃった。」

チョッパーが、そう自慢げにウソップに話しかけた。

「そうそう、朝早くから俺の手伝いをしてくれたんだよな。 おかげで凄く助かった

ぜ。」

サンジもそう言って、にっこりと笑顔をチョッパーに向ける。

「・・・・・ご馳走様。」

そんなサンジを尻目にゾロはそう呟くように言って、キッチンから出て行った。

「・・・・・なんかあったのか?ゾロ・・・顔、怖かったぞ。」

「そういえば珍しく朝からちゃんと起きてたわね・・? 相変わらず不機嫌そうだったけ

ど・・・」

ひそひそとウソップとナミが囁く。

「なぁ、サンジ・・・・」

「あ?! なんか言ったか、ウソップ!!」

「あ、いや・・・・・・なんでもありません。」

サンジに事情を尋ねようとしたウソップだったが、サンジのあまりにも不機嫌な声に黙るしか

なかった。

「・・・・どうしちゃったのかなぁ、ゾロ・・・。 あ、サンジ、俺、お昼も手伝うからね。」

「あ、ああ。 ありがとうな、チョッパー。 けど、無理しなくていいから・・・。」

「別に無理してない。 俺、好きなんだ、サンジのお手伝い。」

「そりゃあ、どうも・・・」

ニコニコ顔でそういうチョッパーに、サンジもにっこりと笑顔を返す。

「・・・・・・なんとなく不機嫌な理由がわかった気がするわ。」

「・・・・・・俺も、同感だ。」

「ふふふ・・・・結構やきもち妬きやさんだったのね、誰かさんは・・・。」

朝食を食べるのに夢中のルフィは別として、ウソップとナミとロビンは、テーブルでそう囁きあ

った。












「あー、イライラする。 ったく、なんであいつは、ああ口が悪いんだ。 二人きりの時

は殊勝で、可愛い仕草して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ヤベ・・・・

今朝のあいつ思い出しちまった。 もう少しでって時にチョッパーの野郎が邪魔したか

ら・・・・クソッ!! ええい!鍛錬だ、鍛錬。」

頭に浮かんだサンジの妄想一直線な艶のある表情を振り払うため、ゾロは必死の形相でハ

ンマーを振るう。

その表情は凄まじく真剣で、朝食を終え甲板に出てきたクルー達を近づけさせない迫力を伴

っていた。

そんなゾロの耳に、今一番聞きたく無い会話が飛び込んでくる。

「なぁ、サンジ、これ、何処に干すんだ?」

「ん・・・・そうだな。 とりあえず船尾にでも干すとするか。 これ干したら、休憩

な・・?」

「うん、なぁ、サンジ。 後でさ、サンジのいた店の話をしてよ。 この前の話、とっても

面白かったよ、イカ野郎の話とか・・・。」

「ああ、あれな。 よし、じゃあ、とっとと片付けて冷たい飲み物飲みながら話してやる

よ。」

「うわい、楽しみだぁvv サンジ、早く干そうよ!!」

「オイオイ、そう急かすなよ。」

「だって、サンジの話、面白いんだもん!」

声の調子だけで、にこやかに会話するチョッパーとサンジの表情がゾロには手に取るように

わかった。

聞く限りには何の変哲も無いほのぼのとした会話なのだが、ゾロは内心穏やかではない。

自分にはあまり向けない満面の笑みを、サンジはきっとチョッパーには惜しげもなく晒してる

に違いない。

そう思うと、落ち着いていたゾロの不快指数が、また徐々に上がっていく。

ゾロは振るっていたハンマーを床に置くと、その声がする船尾に歩いていった。

「デカッ・・・」

ゾロは、二人の姿を見た途端、思わず声を上げる。

そこには、すっぽりとサンジの痩躯が収まって余りある人型に変形したチョッパーの姿。




・・・・・お子ちゃまだと思って油断していたがとんでもねえ。

コイツ・・・・立派な大人じゃねえか。

コイツに押さえつけられたら、とてもじゃねえがサンジなんか・・・

・・・・・・危険すぎるだろ、コイツは・・・・。




妄想は不安を呼び、不安は妄想を呼ぶ。

「あ? クソ剣士、どうした? トレーニングはもう済んだのか? 飲み物なら、キッチ

ンの・・・うっぷっ!!」

ゾロに気がついてそう言って近づこうとした途端、干していた洗濯物が顔につき、サンジは

ぐらりとよろめく。

「あっ、危ない!サンジ!!」

そう言ってチョッパーが、がっしりとその腕にサンジを抱きとめた。

すっぽりとチョッパーの腕の中に収まるサンジの痩躯。

「あ、サンキュー、チョッパー。 転ばずに済んだ。」

サンジもそう言ってにっこりとチョッパーに微笑む。

「・・・・・・・チョッパー×サン・・・・・?!」

その光景を目の当たりにしたゾロは、呆然としてそう呟いた。

「ん・・? オイ、どうした? 飲み物ならキッチンの冷蔵庫の中に入ってるぜ?」

微動だにしないゾロに、サンジはそう言ってまた、洗濯物を干し始める。

「・・・・・もう、いい・・・。」

ややくぐもった声でゾロがそう呟いた。

「あ?」

「もう良いって、言ったんだ!!」

急に張り上げられたゾロの怒声に、サンジはきょとんとしてゾロの顔を見た。

チョッパーも、訳がわからず元の姿に戻って、ビクビクとゾロの様子を窺っている。

ゾロは苦虫を潰したような顔をすると、そのまま踵を返してキッチンに向かっていった。

「・・・・・・ゾロ、どうしちゃったのかな・・・?」

「・・・・・・さぁな・・? さっ、良いからさっさと片付けちまおうぜ?」

サンジはおびえるチョッパーににっこりと笑って、洗濯物を干す。

「おっし! 一丁上がり!! ありがとな、チョッパー。」

洗濯物を一通り干し終え、サンジはポンとチョッパーの帽子に触れた。

夏の日差しに洗濯物がはためく。

「うん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サンジ・・・・・・・・・・俺・・・・・・」

そう言ったかと思ったら、チョッパーがばたんと甲板に倒れこんだ。

「オ、オイ!チョッパー!! 大丈夫か?! しっかりしろ!!」

慌ててサンジが駆け寄ってチョッパーを抱かかえる。

「ん・・・・暑くて・・・・・やっぱり・・・もうダメ・・・。」

チョッパーは、そう呟いてぐったりとした。

「馬鹿だなぁ。 だから無理するなと言ったのに・・・。」

サンジは、チョッパーを蜜柑畑の陰に連れて行き、急ぎキッチンへ向かう。

キッチンには、頭を抱えてテーブルに伏したゾロの姿。

「なにやってんだ、こんなとこで・・?」

「別に・・・。」

急に後ろから声をかけられ、ゾロはそう言って席を立つ。

「ふ〜ん。 ・・・・・ほらよ。」

サンジは冷蔵庫を開け氷と飲み物を取り出し、ゾロに差し出した。

「・・・・・・・要らね・・・。」

ゾロは見向きもしないでそう返事する。

「いいから飲めよ。 喉渇いてんだろ・・・?」

「・・・・・・・・うるせえ、俺に構うな。 チョッパーにやればいいだろ。」

ゾロはそう言い放つと、そのまま席を立ち、キッチンを出ていった。

「・・・・・・なにむくれてんだ、あいつは。 おっと、いけね、チョッパー、チョッパー。」

サンジは冷蔵庫に飲み物を入れ直すと、急いで氷をタオルで巻いて、キッチンを出る。

途中、甲板の縁にいたゾロと瞳が合った。

なんか言いた気な視線を感じたが、サンジは気にも留めずチョッパーのところに急いだ。

「チョッパー、ほら、これ持ってろ。」

そう言って氷入りのタオルをチョッパーの上に置く。

「あー・・・・気持ち良い。 ありがとう、サンジ・・・。」

チョッパーはそう言って、にっこり笑って瞳を閉じた。

「暫くこうしててやるから、ゆっくり休め。」

サンジは、チョッパーの頭を抱えると自分の膝にのせる。

ガサッと葉っぱが揺れる音がした。

ふと視線を向けると、不自然に視線を逸らしたゾロ。

「・・・・・・なんだよ。」

「・・・・・・・別に? 邪魔したな・・・。」

ゾロはそう言うと踵を返し、鍛錬を始めた。

「・・・・・本当にあいつも、良くやるよな。 雨が降ろうが、雪が降ろうが一日も欠かさ

ずだもんな。」

サンジはゾロの姿を見つめながら、そう呟く。

一心不乱にハンマーを振るい、先だけを見据えるゾロの瞳が、サンジは好きだった。

しなるように伸びる腕・・・・・無駄の無い鍛え抜かれた身体・・・・

ジジシャツに腹巻というダサい格好なのに、それを補って尚余りあるタクティクスがその身体

から溢れている。

「・・・・・・あの腕に・・・・あの瞳に、囚われちまったんだな・・・・・・俺は。 さてと、

飲み物でも差し入れてやろうかね・・・。」

サンジはそう呟くと、起こさないようにそっとチョッパーの傍を離れ、キッチンへ向かった。

ゾロの好みを考え、身体に必要な栄養分を配慮した飲み物。

なんだかんだと喧嘩した日も一日だって欠かさずに、これだけは作ってきた。

公だって出来るサンジの精一杯の・・・・・証。

冷蔵庫から取り出したそれに氷を浮かべ、弾む心を抑えながら、ゾロの元へ持っていく。

丁度、ゾロが一息ついた頃を見計らい、わざと靴音を響かせて近づいた。

「この暑い中、よくやるな、てめえも・・・・。 ほらよ、俺様が作ったスペッシャルな飲

み物だ。」

わざと呆れたような表情を浮かべ、さっとグラスを差し出す。

しかし、不機嫌な顔で返ってきた言葉は、一言。

「・・・・・・要らね。」

これに、サンジはキレた。

「なんだと?! この俺様がわざわざ作ったモノを要らねえだと?!」

そう叫び、眉を吊り上げキッとゾロを睨みつける。

「要らねったら、要らねえんだよ! 俺に構うな!! てめえは可愛いチョッパーの傍

についてりゃ・・・!!」

ゾロはそう言い淀んで、口を噤んだ。

「・・・・怒鳴って悪かったな。 わりい・・・・。」

ゾロは呟くようにそう言うと、サンジの横をすり抜け、バスルームに向かう。

「・・・・・・てめえって結構お子ちゃまなんだな・・?」

溜息とともに、サンジがボソリとそう呟いた。

「あ? なんて言った? 誰が、お子ちゃまだ?!」

サンジの言葉にゾロの動きがピタリと止まる。

「お子ちゃまだから、お子ちゃまだとそういったんだ。 だって、そうだろ? 何がどう

気に入らねえかわかんねえが、てめえの今の態度は、思い通りにいかねえ子供が拗

ねてひねた態度と同じだろうが! 急に怒鳴ったかと思えば、シュンとして引きこもる

しよ・・・・わけわかんねえよ。」

サンジは非難めいた視線で、ゾロにそう言う。

「・・・・・・・・わりい。」

なにも言い返せないゾロは視線を外し、サンジにそう詫びた。

「だったら、その面やめろ。 慰めたくなっちまうだろが・・・。」

サンジは照れ臭そうにそう呟くと、ゾロの前にもう一度、飲み物を差し出す。

ゾロは、無言でその飲み物を受け取るとマジマジとサンジを見つめた。

「・・・・・これは、俺がてめえ仕様に考えて作った飲み物なんだよ。 強いて言えば、

俺の愛情が詰まってる。 そんなものを他の誰かにやれる訳ねえだろ。 心して飲む

ように。」

サンジは、ビシッとゾロの額に指を当て顰めっ面でそう言うと、踵を返す。

「あ、あと、飲んだら、ちゃんとグラスはキッチンに持ってくるように!!」

キッチンへの角を曲がる直前、そう言って振り向いたサンジの笑顔は、照りつける太陽よりも

眩しかった。

「・・・・・・・参った。」

ゾロは、そう呟いて一人苦笑する。

一口喉に流し込む度に、さっきまでのイライラが嘘の様に消えていった。

「あれえ? ゾロ、サンジは??」

眠りから覚め、蜜柑畑から出てきたチョッパーが、そうゾロに声をかける。

「あ? クソコックなら、キッチンにいるぞ。 これ、持って行ってくれねえか? 『ご馳

さん。』と伝えてくれ。」

ゾロは笑顔でそう言うと、チョッパーにグラスを渡した。

「あ、うん・・・。」

さっきまでと違うゾロの表情に、チョッパーはきょとんとしながらも、言われたとおりグラスを持

ってキッチンに向かう。

「うっし!! またやるか!」

ゾロはそう言って、また鍛錬を再開した。

キッチンでサンジと楽しそうに話しているチョッパーの声も、今度は気にならない。

気分は、頭上に広がる青空の如く澄みきっていた。

「・・・・・・・・なんかまたあったのかしら・・・? あれはあれで不気味よね・・?」

「・・・・・あったに決まってるだろ、あの顔は・・・。」

テラスで、ナミとウソップがにやけた面でハンマーを振るうゾロを見て、ひそひそと囁きあって

いる。

「ねぇ、サンジ。 今日はさ、一緒に寝ても良い??」

ウキウキと弾んだチョッパーの声が、クルー達のところまで聞こえてきた。

ドカッと物凄い音を立てて、ウソップ特製ハンマーが甲板に穴を開ける。

「チョッパー!! それはダメだ!! ぜってえにダメだ!!!」

その声に慌てたように、ゾロがそう叫んでキッチンに駆け込んでいった。

「ふふふ・・・・愛よね、やっぱり。」

先ほどの二人の様子を盗み見ていたロビンが、そう呟いてにっこりと微笑む。








「なんで?? なんで、ゾロがダメなの??」

「そんな事どうでも良い。 ダメなものはぜってえにダメなんだよ!!」

「えーっ?! ねぇ、サンジ・・・・良いよね?? ねっ?サンジ・・・」

「ダメに決まってるだろ!! なっ、クソコック!!」

「ゾロに聞いてないだろ?! なっ、サンジ、いいよね??」

「良くねえ!!」

サンジを挟んで、ゾロとチョッパーが言い争う声が船内に響く。

当のサンジは、二人に詰め寄られ困惑中。

「・・・・・・サンジ君が、チョッパーの可愛さに負けて一緒に寝るに2万!!」

「俺も!!」

「ダメよ、ウソップ。 それじゃあ、賭けにならないじゃない・・・。 寝ないに賭けなさい

よ。」

「んな強制的な賭けがあるかよ!!」

テラスでは、そんな会話が続いてる。

「・・・・・じゃあ、私は、寝ないに5万!」

「ヘッ?!」

「ロ、ロビン?!」

驚くウソップとナミを尻目にロビンはそう言って微笑んだ。





ゴーイングメリー号、只今平穏な航海中で、ある・・・・。








<END>


 



<コメント>

あやめ様のリクで、
【チョッパーにサンジをとられやきもちを妬いて拗ねるゾロ】なのですが・・・。
す、拗ねるって・・・・難しい!
リクに沿っていますでしょうか? あやめさん??
それとも、周りが引くぐらいに拗ねたくったゾロが良かったかな?
いや、それはルナも引くから☆(笑)
【Disturb】は、邪魔をするの意味。(そのままやん☆)
チョッパーは、天然なのが良いですねvやっぱ☆
乙女なサンジの方が良かったのでしょうか?
ごめんなさい、野郎なサンジで・・・・しかもサンゾロ臭い・・・(;一_一)
それでは・・・・・・(こそこそ・・)

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