The judge |
「・・・・・・もう一年経ったんだな・・・」 そう呟いて、そっと卓上カレンダーに触れる。 「少佐! ご報告に上がりました。」 くぐもった声が、部屋の外から聞こえる。 「ん? なんだ、こんな時間に・・・・・・・入れ。」 「ハイ、失礼します。」 そう言って、部下が部屋に入ってきた。 軍服に身を包み変装しているゾロの胸倉を掴み、俺は、そう怒鳴った。
俺とゾロは、親友・・・・・・・・・・・・いや、恋人だった。 「サンジ! 早く逃げろ!!」
敵の切っ先を避けながら、俺を抜け穴から先に脱出させようとしたゾロの胸に血飛沫が散る。 「ゾローーーーッ!!」 「は・・・やく・・・行け・・・・・俺は大丈夫・・・・だから・・・・」 たどたどしい言葉を話しながらも、いつものように不敵に笑みさえ浮かべて俺を見つめるゾロ。 「嫌だ! てめえを置いて行けるか!!」
そう必死でゾロの元に駆け寄った。 「サンジーーーッ!!」
それが、俺の聞いた最後のゾロの声だった。 「どうやら、峠は越したようだな。」 黒髪の男は呟くようにそう言って、近くに居た将校らしき人物に話をし始める。 「てめえは誰だ! ゾ、ゾロは!! っう・・・!!」
そう叫んでガッと身体を勢い良く起こし、蹲る。 「オイオイ・・・・せっかく拾ってやった命なんだぜ。 無碍にすんなよ。」
そう言って黒髪の男は俺の肩をベッドに押し付けた。 「グワァ!!」 あまりの痛みに声も出ない。
「おっ、悪かったな。 けど、騒ぐおめぇさんがいけねえんだぞ。 俺の名は、エース。 この一 エースと名乗る男は、そう一方的に話をしてにっこりと笑った。
「ふざけんな!! 好き勝手してる残虐非道なてめえらに俺が手を貸すとでも思ってやがんの
胸倉を掴みたくても、俺にはその力さえ残っていない。 「 」 「エッ?!」 俺は耳を疑った。
「おめぇさんが、ここで死ぬならそれでも良し。 けど・・・・・人間、最後まで何が起こるかわか
エースの言葉を何度も頭の中で反芻する。
「俺がてめえらの犬になるのは、てめえらに屈したわけじゃねえ。 まして命が惜しくなったわ そう言って、キッとエースを睨みつける。
「良いねぇ〜、その瞳。 だが、容易に俺達は倒せねえぞ。 ミイラ取りがミイラにならねえよう エースは不敵に笑うと、俺の髪をひっぱり、そっと唇を落とした。 「俺に気安く触るな!」 「ハハハ・・・・その元気がありゃ、すぐに良くなるな。 待ってるからな、サンジ。」
俺に叩かれた手を擦りながら、エースはそう言うと病室を出て行く。 「誕生日・・・・おめでとう。」
回想していた俺の耳に懐かしいゾロの声が聞こえた。 「ここが何処だかわかってんのか? 一体、てめえは何しに来たんだよ・・・」 「当然、わかってる。 てめえを助けに来た。」 俺の質問に全然緊迫感なく答えるゾロ。
「だからと言って・・・・・・無謀にも程がある。 てめえ自身が捕まったら、どうやって俺を助ける
本当は、一緒に逃げ出したかった。
ゾロはそう言うと、ひょいと俺を抱かかえてドアを蹴破った。 「少佐殿! 如何・・・・あっ! 貴様は!!」 その騒ぎを聞きつけて、数名の将校が駆けつけて来た。 「クスクス・・・・君がロロノア・ゾロ君だな。 わざわざのご来場、ご苦労さん。」 そう言って、将校たちの間を割って、エースが現れた。 「エース! てめえ、まさか・・・わざと・・・・」 「ネズミを捕まえるには、それなりに餌を用意しねえとな。 それに・・・全ては、計画通りだ。」 俺の言葉を遮って、エースはそう言ってにやりと笑った。 「捕らえろ!」 「「「ハッ!!」」」 エースの号令に将校たちが俺達を取り囲む。 「エース・・・・・てめえ、初めから・・・・」 俺はゾロから離れると勢い良くエースに飛び掛った。 「・・・・・・悪いな・・・・サンジ・・・・」
少しだけ淋しげなエースの声が意識のなくなる直前に俺の耳に届いた。 はっきりとしない頭の中で、そう声が聞こえる。 「ただいまから、公開処刑を執り行う。 狙撃手、構え!!」
「閣下、これが、反逆分子、『赤い牙』の主要幹部と思われるロロノア・ゾロです。 こいつを処 「うむ。 よくやったぞ、エース。 君には特別勲章を授与しよう。 肩書きも大将に特進だ。」 「・・・・・ありがたき、光栄・・・」
言葉ははっきりと聞こえるのに、意識がしっかりと保てない。
言葉が出ない。
「ハハハ・・・・これで、余も安心して眠れるというもの。 今夜は、ここに泊まり、明日の朝、 「では、極上のワインを用意させましょう。 サンジ、行くぞ。」 「ハイ。」
俺の意思とは反して、身体はエースの言葉に反応する。 「あの世で、ゾロに詫びれ・・・」
そう言い放って、引き金を引く。 「いよう・・・・・早かったな。」
のっそりとエースが身体を起こす。 「オイオイ、待てったら・・・・」
俺が引き金を引くより早く、エースがそう言って拳銃を払い落とした。 「クソッ! コノやっ・・・・んっ・・・!!」 「シッ! 黙って・・・・せっかくの計画が全ておじゃんになるだろ・・・・」
暴れる俺の口を手で塞ぎ、エースはそう耳打ちした。 「・・・・・・いよいよ待ち望んだ瞬間がやってくる。 おめぇも一緒に来いよ。」 俺の拘束を解き、エースはそう言って部屋を出る。 「話してる間も惜しいんだ。 早く来いよ。」
ニッといつもの人懐こい笑顔とともにそう言うエースに、俺は渋々従った。 「エース殿。 閣下は、既にご就寝なされています。 用件は明日の朝、お願い致します。」 寝室を守る二人の近衛兵が、そう言って俺達を遮る。 「はぁ・・・・そうしたいのは、山々なのですが・・・・・こちらも、事情がありまして・・・・・」
そうのらりくらりと近衛兵に話をしながら、エースが俺に目配せした。 「てめえは・・・・・一体・・・?」 「まっ、話は作戦を成功させてからゆっくりとしようや。」
そう返事してポンと俺の肩に手を置いたエースとともに、俺は総督が眠る寝室に入っていっ 「・・・・・閣下。 総督閣下。 重要なお話があります。」 エースが、眠っている総督にそう声を掛け、身体を揺する。 「ん・・・・・なんだ、余はまだ・・・・・・眠い。 ・・・・・・話なら、明日、聞く・・・・。」 寝惚け風情でそう話す総督に、エースはにっこりと笑って、その額に銃口を当てた。 「なっ、なにを、馬鹿な!! エース!貴様!! 誰か!! 逆賊ぞ!! 誰か!!」 冷たい銃口の感触に飛び起きた総督は、慌ててそう叫ぶ。
「ジ・エンド・・・・・・この時を、ずっと待ってたぜ? せっかく起こしたのに、悪いな? おやす エースの冷酷な微笑とともに銃口が火を噴く。 「待て!! エー・・・」
総督の言葉は最後まで続く事はなかった。 「閣下!! 如何されました!! 閣下!!」 総督の声を聞きつけたらしく、部屋の外が急に騒がしくなる。 「任務完了。 さて、長居は不要だ。」 「エース・・・・・・てめえは・・・・」 事の成り行きを呆然と見ていた俺の耳に、突然物凄い爆発音が響いた。 「おっ! あっちも始まったようだな。 サンジ、全力で逃げるぞ!」
エースは、そういうや否や、ドアを蹴破り、敵兵の中を突っ切る。 「こっちだ!! サンジ!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。 「ゾローーーーーッ!!」
ジープの運転席に居る人物を見とめて、そう叫ぶ。 「急げ!! エース! サンジ!!」
差し伸べられた手を捕まえるように、俺は、ジープに飛び込んだ。 「うっひゃあー・・・・壊滅だな、ありゃ・・・・・」 後ろを振り向きながら、エースが他人事のようにそう呟く。 「あんなもん、あいつらが俺たちの国にした事を思えば、微々たるもんだ。」
ふんと鼻であしらうように、俺の隣で声が聞こえる。 「ん? どうした?サンジ・・・・・間抜けな顔をして・・・・」 そう言って、ゾロが俺の顔を覗きこむ。 「てめえ・・・・・てめえ、本当に・・・・・・ゾロか? いや、ゾロは俺の前で確かに・・・・・」 瞳の前に見える顔をまともに見返す事も出来ず、俺はブツブツと言葉を繰り返した。 「エース!! てめえ、サンジに何も言わなかったのか?!」 そう叫びながら、急ブレーキを掛け、ゾロが後ろを振り向く。 「いやぁ・・・・悪い、悪い。 言う暇もなくてさ・・・・・つい、うっかり・・・」 ヘラヘラと笑いながら、エースがゾロに謝った。 「ったく・・・・てめえ、わざとだろ。 わざと伝えなかったな・・・。」 呆れたように、ゾロはエースを見つめると、俺に視線を向ける。 「悪かったな、サンジ。 俺、てっきりてめえも知ってるものと・・・・」 「ゾロ・・・・・・俺に、わかるように説明してくれ。 俺・・・・・・頭がクラクラして・・・・」 「ああ、わかった。 ったく・・・・この馬鹿エースが・・・・」
俺の言葉に、ゾロはそう返事して、これまでのいきさつを俺に説明してくれた。 「このクソエース!!!」 俺は怒りに任せて立ち上がると、エースめがけて蹴りを放った。
「アヤヤ・・・サンジ君、すっごくおかんむりのご様子。 んじゃ、俺は一足先に、シャンクスに
ひらりと身を翻し、エースはジープから飛び降りると、後ろに続いていたジープに乗って去って 「クソ・・・・なんて野郎だ・・・・・」 ブツブツと文句を言う俺に、ゾロはククッ・・と喉を鳴らす。 「てめ!! 何がおかしい!! てめえが死んだと思って、俺は!!」 俺の怒りの矛先は、隣に居たゾロに向かった。
「クク・・・・・まぁまぁ・・・・こうしてまた逢えた訳だし・・・・・俺も、あん時にてめえが死んだと思 そう言って、ゾロが俺の唇に触れる。 「・・・・・・服・・・・脱げよ・・・」 そっと耳元で囁かれるゾロの言葉に、俺の怒りは何処かに飛んでしまってて・・・ 「ばっ、なっ!! こんなとこで、なにを言って!!」 思わず恥ずかしくて俯いた。
「クク・・・・ばぁーか。 なに期待してんだよ? その軍服はてめえにゃ、似合わねえって、そう 「うるせぇー!! だったら、最初からそう言えーーーーっ!!」 ニヤニヤして俺を見ているゾロに、俺はそう叫んで、その後頭部に踵を落とす。 「ったぁ・・・・・・クク・・・・全然変わってねえのな?てめえ・・・・」 俺の蹴りを食らっても、笑っているゾロに俺はムッとしながらも、こう声を掛ける。
「だったら、さっさと服を脱げる場所まで、連れて行きやがれ!!」 |
<コメント> サン誕第一作は、軍服物だったりする・・・(苦笑) ええ、これは企画に間に合わなかった代物。 使い回しだなんて・・・・そのとおり。(殴) しかも、トイレで発想したと言ういわく付の・・・ ・・・・・・しぃましぇん・・・(脱兎) 閉じてお戻りください。 |