ナオナオの実...






ゴーイングメリー号のお正月・・・・

ナミ主導の大掃除も、昨日無事に終了して、のんびりと気ままなお正月を迎えたクルー

達・・・・

ナミは、一人、自室でなにやら段ボールの中を整頓中・・・・・

「・・・あれ? これって・・・・・ 以前、通販で買った物の中にこれ、おまけとして入っ

てたのよね・・・・ 確か・・・プチ悪魔の実シリ−ズの一つだったと思ったけど・・・・

まだ腐って無いみたい。 ・・・・・・うふふ、良いこと思いついちゃったvv」

ナミは、そう呟くと、そのフルーツを持って、キッチンへと向かった。




・・・・・サンジ君、いるかしら・・・・・




ナミは、そっとキッチンの窓から中を覗く。

キッチンには、サンジが、お正月だからと、普段より手の掛かった料理の下ごしらえを終え、

シンクで、紫煙を揺らしていた。

そしてテーブルには、無言で酒を飲むゾロの姿・・・・・

二人とも別段会話するわけでもなく、ただ黙りと時間だけが過ぎてばかり・・・・




・・・・・・全く、この二人ときたら・・・・・




ナミは、その光景に頭を抱えてため息を吐く。

「本当に、ゾロもサンジ君も、どうしてそう素直になれないのかしら・・・ ただ黙ってる

だけじゃ、お互いの気持ちに気が付くなんて誰だってできないんだから・・・・・

わかってんのかしら? ・・・・いい加減、ちゃんとくっついて貰わないと、こっちの身が

もたないわ。」

ナミは、一人ブツブツと呟いて、キッチンのドアを開けた。

「サンジ君居る? ・・・あら?なんだ、ゾロもいたの・・・・」

ナミは、入ってきてから気が付いたとばかりにそう言って、ゾロを見る。

「・・・・酒、飲んでただけだ。 居たら悪いのかよ・・・・」

ゾロはそう言って、ナミを睨み付けた。

「・・・・べっつに〜 それよりも、ねえ、サンジ君、暇だったら、ゲームでもしない?」

ナミは、そうサンジに言ってにっこりと笑う。

「はいvv良いですよ、ナミさんvv やりましょうvv ・・・・っで、どんなゲームですか?」

サンジは、ナミの言葉に嬉しそうにそう言ってナミに近づいた。

「簡単よ、ただコインの裏表を当てるだけだから・・・・ っで、外れた方が、この実を食

べるって言うゲーム。 どう?簡単でしょ?」

ナミはそう言って、テーブルに、プチ悪魔の実を置く。

「・・・・ナミさん・・・・それって、単に賭けって言うもんじゃないんですか? 

・・・・それに、そのフルーツ・・・・なんか凄くやばそうな気がするんですが・・・・」

サンジは、ナミの言葉に引きつった顔をして、そう言い返した。

「・・・・まあ、そうとも言うわね・・・・ それに、これ、そんなヤバい実じゃないと思うわ

よ。 通販におまけで付いていたプチ悪魔の実だから。 せいぜい効果も3日程度じ

ゃないかしら? 実を言うと、あたしにも、その効力がどんなものかわからないのよ。

だから、実験したいって訳。 じゃあ、始めるわよ。」

ナミは、サンジの動揺などものともせずに、そう言いきって金貨を一枚取り出して手のひらに

握りしめる。

「ちょっと、待て。 てめえ、またインチキしてんじゃねえだろな。」

そのやりとりを黙って見ていたゾロが、そう言ってナミの持つ金貨を取り上げた。

そして、トリックがないかどうかそのコインを丹念に調べる。

「いやあね・・・・あたしがそんなコトする訳無いでしょ? なに?ゾロ・・・・そんなにサ

ンジ君のことが心配なら、あんたも一緒にこの賭に参加する? 良いわよ、あたし

は・・・・ それに、外れたらあたしも、食べなきゃいけないようなモノに、危険なモノを

用意する訳無いじゃない。」

ナミは、呆れ顔でゾロを見て、そう言い返す。

「何で俺が、クソコックの心配なんてしなきゃならねえんだ。 俺は、自分の目の前で

不正な賭が行われるのが我慢できなかっただけだ。 不正がなけりゃそれで良い。 

俺は、阿呆コックと違って、そんな馬鹿な賭にはのらねえし・・・・」

「あんだと、こらぁ・・・・さっきから聞いてりゃ、うだうだと・・・・ ははあ・・・てめえ、俺

とナミさんが、ラブラブだからってやきもち妬いてやがんのか? 残念だったな、クソ

まりも。 ナミさんは、人間だから、まりものてめえにゃ、つりあわねえんだよ! 

・・・それにてめえ、本当は、ビビって、この賭にも参加できねえんじゃねえのか? 

はぁ・・・だらしねえよな・・・・男ともあろうもんが、このくらいの賭でビビっちまうと

は・・・・」

「・・・なんだと?!ざけんじゃねえ! こんな魔女、こっちから願い下げだ! 

それに、俺が、いつ、ビビったと言うんだ! おもしれえ・・・・のってやる、その賭!」

売り言葉に買い言葉で、いつの間にか、ゾロもその賭にのることになってしまった。




・・・・ふふふ・・・・面白いことになってきたわ・・・・

・・・・けど、ゾロ・・・・あんた、あたしのこと、魔女だって、そう思ってたのね・・・・

・・・・よくわかったわ・・・・・あとで覚えときなさいよ・・・・




「・・・・じゃあ、二人とも、良い? 始めは、サンジ君ね。 あたしが、投げると、またイ

ンチキと言われるのもしゃくだから、ゾロ、あんたが、コイン掴んでね。 投げるわ

よ。」

ナミはそう言って、ゾロの頭上にコインを投げる。

ゾロは、片手でそれを受け取り、もう片方の手の甲にそのコインを置き、手で伏せた。

「・・・・サンジ君から選ばせて上げるわ。 表?それとも裏?」

「・・・・・じゃあ、表!」

ナミの言葉にサンジは、そう言ってゾロの手の甲を見つめる。

「じゃあ、あたしは、裏ね・・・」

ナミもそう言って、ゾロの手の甲を見つめた。

「・・・じゃあ、見せるぞ。」

ゾロはそう言って、伏せていた手をどかし、手の甲を見せる。

「いえ〜いvv やり〜vv はい、サンジ君、試食決定ねvv 次、ゾロよ・・・・」

ナミは満面の笑みを浮かべて、ゾロの手の甲の上のコインを掴んだ。

その隣では、真っ青な顔をして呆然と立ちすくむサンジの姿・・・・

「まっ、仕方ねえよな。 外れたんだから・・・ククク・・・」

ゾロは、いささか同情を禁じ得なかったが、あまりにもサンジの様子が可笑しかったので、

笑いを噛み殺しながらそう言って、サンジの肩を叩いた。

「・・・じゃあ、次、ゾロね。 サンジ君、いくわよ!」

ナミは、そう言ってサンジの頭上に、コインを投げる。

サンジは、気を取り直してそのコインをゾロと同じように受け取った。

「さあ、どうする?ゾロ。 先に言う?」

「・・・・ナミ、てめえが先に決めて良いぜ。」

「・・・そう。 ・・・・・じゃあ、あたしが、表ね。」

「じゃ、俺は、裏だ。」

そう言って、また3人の瞳が、サンジの手の甲の上のコインに注がれて・・・・

「いえ〜いvv 2連勝!! ゾロ、サンジ君、じゃあ、頑張って実験台、よろしくvv」

ナミはそう言うと、テーブルの上のプチ悪魔の実を二つに切って、ゾロとサンジの前に差し出

した。

「さあ、どうぞ、召し上がれvv」

ナミは、にっこりと笑ってそう言う。

「・・・・ナミ、てめえ、本当にインチキとかしてねえんだろうな・・・・それに、これ、本当

に大丈夫なのか?」

ゾロは、この結果に不満げに、そうナミに言った。

「もう・・・インチキも何も、あんな状態であたしに何が出来たというの?ずっと目の前

で、見てたでしょ? 本当に、疑り深いんだから・・・ さあさあぐだぐだと言ってない

で、とっとと食べる! ハズしたのは、あんた達なんだからね・・・」

ナミは、グダグダ言ってなかなか口にしようとしないゾロにそう言って睨み付ける。

実は、ナミは、この実の効力を知っている。

この実は、【ナオナオの実】。

プチ悪魔の実シリーズの一つで、食べると自分の気持ちが、言葉になって聞こえるという代

物だ。

効果は、だいたい3日間。

自分の気持ちを告白できない内気な女性に重宝がられてるらしい。

おまけの箱に付いていた説明書を読んで、ナミが、馬鹿らしいとそのまま箱の中に放ってお

いたのが、そのプチ悪魔の実なのだ。

そう言うわけで、万が一、自分が食べる羽目になっても困らないと判断したナミは、サンジ達

を巻き込んで、賭をしたのだ。

そして、運の神様は、ナミに軍配を揚げた。




・・・・本当に、あたしって、何てついてるのかしら・・・・・

・・・・さあて、これから暫く・・・・楽しめそうね・・・・

・・・・あ〜、早く効き目、現れてくれないかしら・・・・




ナミは、嫌々、口にフルーツを運ぶ二人を喜喜として微笑みながら眺めていた。

「・・・・これで、良いよな! クソッ、もう寝る!」

ゾロは、フルーツを食べ終わると、そう言ってキッチンを出ていった。

「・・・・・あの・・・ナミさん、本当にこれ、身体に変化のあるものとかじゃないんですよ

ね?」

サンジは、食べ終わると恐る恐るナミにそう尋ねる。

「ああ、それは大丈夫よ。 見た目には、影響ないから・・・」

「影響ないからって、ナミさん? ・・・・もしかして、ナミさん、この実の効果、知って

る??」

「え?ああ、あら? いけない、あたしったら、部屋の片づけがまだだったわ。 

じゃあね、サンジ君vv」

ナミは、サンジの追求を逃れるためにそう言って慌ててキッチンを出ていった。

「・・・・・やっぱり、俺達、ナミさんに、はめられた??」

サンジは、誰もいなくなったキッチンで、そっと呟いた。

そして、その効果は、夕食時に現れ始める。









「ナミさ〜んvv お食事の用意、出来ましたvv おい、野郎共、メシできたぞー

っ!!」

夕食の料理をテーブルに並べ、甲板にいるクルー達にそう声を掛ける。

「いやあ、腹減って死にそうだったー。」

「おっ、美味そうな匂いだな。 き、きのこは、入ってねえよな・・・・」

「うわあ、相変わらず美味しそうね、サンジ君vv」

ルフィ、ウソップ、ナミの3人は、サンジに呼ばれてすぐに、そう言ってキッチンに入ってきた。

『・・・クソッ、ゾロの奴、また眠りこけてやがんのか? ・・・・ショウガねえ奴だ。 

起こしに行ってみるか・・・』

「え?!珍しいな、サンジ。 そんなにゾロの事、気にするなんて・・・・」

ウソップが、サンジの言葉にそう言って意外そうな顔をする。

「おい、俺が、あんなクソまりものことなんか、気にするわけねえだろ、何言ってんだ、

この長っ鼻・・・・」

『えっ?! な、なんでいきなりそんなこと言いやがるんだ、ウソップは・・・・

おかげで、マジ焦っちまったぜ。 ・・・・俺、顔に出してたのかな・・・・それよりも、早

く起こしてやらねえと、せっかくの料理が、冷めちまう。』

自分の心の声が、言葉になって聞こえてるとも知らず、サンジは、シンクに寄りかかり、タバ

コをふかせた。

「・・・・・なあ、そんなに気になるんなら、さっさとゾロを起こして来いよ。」

サンジの気持ちが丸聞こえのウソップは、そう言ってサンジの方を見る。

「てめえ、ウソップ、何言って・・・・あちっ!」

ウソップの言葉にサンジは、動揺してタバコを落とし、慌てて火のついた方を握ってしまう。

「ふふふ・・・サンジ君、悪いけど、ゾロ起こしてきてくれる? ・・・それと、ウソップ、

ちょっと・・・・・」

ナミは、サンジの様子に苦笑しながら、ウソップの耳元で、ひそひそと話し始めた。

「わっかりました、ナミさんvv レディの頼みなら致し方ありません。 不本意ながら、

あのクソまりも、起こして参ります。」

『ふぅ〜、ナミさん、ありがとーvv とりあえずこれで、あいつを起こしに行けるぜ・・・・

全く、鋭いよな、今日のウソップ・・・・』

サンジは、そう言ってナミににっこりと笑うと、ゆっくりとキッチンを出ていった。

「・・・・で、わかった? そう言う訳なの。 これから、サンジ君とゾロの心の声が聞こ

えると思うけど、一切無視してねvv」

「おう、それでさっきのサンジの動揺はわかったが・・・・・なあ、ナミ、もしかしてあい

つらって・・・・互いに意識しすぎてて、しょっちゅう喧嘩ばかりしてたのか? 

・・・・それって、やっぱり・・・・・だよな・・・・・」

ナミから、事情を聞いたウソップは、そう言ってナミにゾロとサンジのコトを聞いてみる。

「ええ、そうよ。 なに?ウソップ、わからなかったの? 間違いなくあの二人、好き合

ってるわ。 けど、二人ともあんな性格でしょ? 互いに好きな癖に喧嘩しかできない

んだから・・・・見てるこっちが、イライラしてきちゃうわ。 ウソップだって、これ以上、

あいつらの喧嘩の巻き添えは食らいたくないでしょ? だったら、これをきっかけに、

くっついて貰って喧嘩をさせないようにしちゃおうってそう考えたの。 お互いの気持

ちがわかったら、そうそう喧嘩しないようになると思わない? だから、協力してよ

ね。 これは、ゴーイングメリー号の平穏なる航海の為に、よ。 わかった?ウソッ

プ・・・・」

そう言ったナミの言葉に、反論を許すような余地は残されていなかった。




・・・・・・それで、本当に平穏な航海になるのか?

・・・・・・けど、これ以上ナミに逆らうのは、自殺行為だな・・・




「・・・・おう、わかった。 とりあえず、無視してれば良いんだな。」

ウソップは、ナミの言葉にそう言って納得するしかなかった。

ルフィは・・・・・・別段気にする様子もなく、テーブルの上の料理を食べ続けていた。










『ゾロ・・・・早く起きねえと、俺の料理が冷めちゃうぜ・・・・・』

サンジは、そう心の声を発しながら、船尾で眠っているゾロの側へとやってくる。

『・・・相変わらず、何考えてんのかわかんねえよな。 ・・・・・けど、憎らしいぐらい好

きなんだろうな、やっぱ・・・・ こいつに近づく度に心臓が、バクバクしてやがる・・・

・・・・・ああ、俺、かなり重傷だな・・・・レディみてえ・・・・なんでこんな奴なんかにと

きめいてんだ、俺は・・・・』

サンジは、じっとゾロの前にしゃがみ込んで、ゾロの顔を眺めていた。

「さて、起こすとするか・・・・」

サンジは、そう言っていつものように、ゾロの腹巻きの上に脚を振り上げる。

『・・・・・・サンジ・・・・・』

いきなりサンジの耳にゾロの声が聞こえる。

『え?! ゾロ・・・・今、なんて・・・・』

サンジは、思わず、振り上げた脚をその場に下ろした。

『・・・確かに、こいつ、今、俺の名前、呼んでたよな・・・・俺の・・・名前・・・・初め

て・・・』

サンジは、起こすのも忘れて、またしゃがみこんでゾロの顔をじっと見つめる。

『・・・・寝言だろうが、なんだろうが・・・なんかすっげえ嬉しい。』

知らず知らずゾロを見つめるサンジの表情が、微笑みに変わる。

ふと、ゾロが、急に瞳を開けて目覚めた。

「Σおわっ! ・・・・・なんだよ、クソコック・・・・」

『・・・・いきなり、目の前に本人かよ・・・・勘弁してくれよ。 マジ、ビビっちまった。』

ゾロは、目の前のサンジにびっくりして飛び起きる。

「なんだよとは、なんだ。 人がせっかく起こしに来てやったのに・・・・」

『チェッ、もう起きちまったのか・・・・・もう少し、見てたかったのに、な・・・・』

サンジは、そう言って眉間に皺を寄せた。

「!!!!」

『な、なにをいきなり・・・・ずっと、寝てる俺を見てたのか? こいつ・・・・ それにして

も・・・・いつも思うけど、綺麗だよな・・・・こいつって・・・・夢の中のこいつも綺麗だっ

たけど、やっぱり現実のこいつには、敵わねえよな・・・・・』

ゾロは、自分の心の声がサンジに聞こえてるとも知らずに、聞こえたサンジの心の声に動揺

しながらも、じっとサンジを見つめる。

「!!!!!」

『・・・・綺麗って・・・・綺麗って・・・こいつが言ったのか?? お、俺のこと・・・/////

うわあ、マジかよ・・・・・うっ・・・・照れる・・・・お、俺、男だぜ。 それなのに・・・・

ああ、ダメだ。 頭に血が昇っちまって・・・・けど、ちょっぴり嬉しいかも・・・・って、

おい、俺、何考えてんだ・・・・ああ、どうしよ、こいつがこんなこと言うなんて思っても

なかったから・・・俺・・・・すげえ動揺しまくってる・・・・・いつもの俺らしくしねえ

と・・・・ばれちまう・・・・・俺が、こいつのこと好きだって・・・・・ばれちまう・・・・』

心に動揺が走って、サンジは、真っ赤になって動けずにその場に固まった。

「・・・・・・・・。」

『・・・・なんで、俺の考えたことが、サンジにばれた? ・・・俺、もしかしてさっきの言

葉に出してた? ・・・・それよりも、さっきから、何か変じゃねえか? 

・・・・・こいつ・・・・俺のこと好きなのか? ああ、そうだ。 これは、夢だな。 

さっきの続きか・・・・ああ、俺も、ずっと最初に見たときから好きだ。・・・・・けど、なん

で、そんなこといきなり言うんだ? まあ、俺の夢だから、仕方ねえか・・・・・・・現実

じゃあ、考えられねえから、自分の夢くらい都合のいいように見たってかまいやしね

えよな。 ・・・・夢なら・・・・夢の中なら、言っても良いよな・・・・』

「・・・・・サンジ、俺、てめえのこと・・・・ずっと好きだった。」

ゾロはそう言って、サンジの身体を抱き締める。

ゾロは、現実を認識できず、まだ夢の中にいると思いこんでいた。

「Σʼn∽∇◎■@☆」

ゾロのいきなりの行動は、サンジの思考能力の限界を遙かに超えていた。

頭が真っ白になったサンジは、ただただその場に、立ちすくんでゾロの腕の中・・・・

「・・・・・サンジ・・・好きだ・・・」

自分の夢だと疑わないゾロはそう囁いて、そのままサンジの唇を自分の口で塞いだ。

『・・・・・やけにリアルな夢だよな・・・・・匂いまで、あいつの匂いがする・・・・すげえ

な、俺の夢・・・・』

そう感心しながら、ますます口付けを深くしていくゾロ・・・・

「んっ・・・・んんっ・・・・んーっ・・・」

その息苦しさにやっと現実に引き戻されたサンジは、慌ててゾロの胸を叩いて激しく抵抗し

た。

『止めろ・・・夢じゃねえって! 止めろ! 止めろ・・・・ヤダ・・・・ゾロ・・・・・

止め・・・・』

ポロポロと涙を流して激しく抵抗するサンジに、ゾロは、やっと唇を離す。

「・・・・すまん、悪かった。 謝るから、泣くな・・・・たとえ俺の中の夢でも、てめえに

泣かれるのは、嫌なんだ。 ・・・・すまねえ・・・・」

ゾロはそう言って、優しくサンジの頬に流れる涙を指で拭いた。

「馬鹿・・・ックッ・・・ちげえよ・・・・・これは、夢なんかじゃねえ! ヒック・・・・これ

は・・・・現実だ。 ・・・いい加減、寝ぼけんのもたいがいに・・・・クッ・・・しろよ・・・・

俺・・・・俺・・・・これは、夢じゃねえっ!!」

『・・・・俺は・・・俺は・・・・ゾロの事好きだけど・・・・こんなのは、嫌だ・・・・・こんな欲

求不満の解消に使われるなんて・・・・嫌なんだ・・・・好きだから・・・・・本当に好きだ

から・・・・寝惚けてこんなことされるのは・・・・・・堪んねえんだよ・・・・』

次から次へと沸き上がる涙を、サンジは、隠そうともせずにそう叫んでゾロを睨みつける。

「・・・・・すまねえが、これが夢じゃねえなら・・・・なんなんだ?」

『・・・・夢じゃなきゃ、サンジが、俺のこと好きだって言うわけねえだろ、どうしたっ

て・・・・』

ゾロの頭の中には、?マークで一杯だ。

「・・・・なら、これで痛みが有れば、現実だと解るだろ・・・」

サンジは、そう言ってゾロの腹巻きめがけて蹴りを加えた。

「グハッ!・・・・・・・確かに・・・・痛てえ・・・・・じゃあ・・・・今までのは・・・・現実?な

のか・・・」

ゾロは、確かに痛みを感じる腹を撫でながら、サンジを見つめた。

「・・・・・やっと、わかったか、クソ野郎・・・・」

『・・・・ごめんな、ゾロ。 でもこうでもしねえと・・・・』

サンジは、サッと涙を拭っていつものように横柄に構える。

「・・・・なあ、クソコック。 ・・・・さっきから、俺には、てめえが俺のこと好きだとかそ

んな言葉が聞こえるんだが・・・・・・それは、なんでだ?」

『・・・・そう、さっきから、ずっと好きだ好きだって、聞こえてんだ・・・・』

ゾロは、訝しげにサンジにそう聞く。

「な、なに馬鹿なこと・・・・・/////」

『またいきなりそんな事言って・・・・それじゃあ、俺の考えてること、もろこいつにばれ

てるってか?? ・・・・ありえねえ・・・ありえねえよな・・・・そんなこと・・・・』

「いや、バッチシ丸聞こえだ、クソコック・・・」

「・・・・・ウソ・・・・」

ゾロの言葉にサンジは、青ざめる。

『・・・・本当に、聞こえるぜ。 ・・・・しかし、なんでだ? もしかしたら、俺の考えてる

こともこいつにわかったりしてな・・・・・てめえ、案外泣き虫だな・・・・』

「俺は、泣き虫なんかじゃねえっ!」

ゾロの心の言葉に、サンジはそう言って蹴りを繰り出した。

「!!本当に、聞こえたのか? 今の・・・・」

サンジの蹴りをすれすれで避け、今度は、ゾロが青ざめた表情を浮かべる。

『『・・・・これは・・・・もう、あれしかないな。 あれしか、原因は考えられない・・・・』』

ゾロとサンジは、ナミに食べさせられたあのプチ悪魔の実の効果だとやっと気が付いた。

「「・・・・・はぁ・・・・・」」

お互いにため息を吐く二人・・・・

『・・・・なあ、じゃあ、てめえ、俺のことが、好きなのは、本当なのか?』

ゾロが、いきなりサンジの腕を捕る。

「な、ば・・・/////」

『ああ、そうだよ、チクショーッ! なんでもばれちまうんじゃ隠しようがねえ・・・・

なんで俺ばっか・・・・・』

サンジは、黙って俯いた。

いくら言葉で違うと嘘を吐いたところで、こうなってしまっては、観念するしかない。

「・・・ククク・・・・そうか。 この能力も、なかなか悪くねえな。」

『やっぱ、夢よか現実の方が良いよな・・・・ククク・・・可愛い奴・・・・』

ゾロは、笑いながらそう言って、サンジを抱き締めた。

「可愛いって言うな! 可愛いって! 飯、食うんだろ? ほら、行くぞ!」

『・・・この馬鹿ゾロ・・・・恥ずかしい奴・・・/////』

サンジはそう言って、サッとゾロの腕から身を離すとさっさとキッチンに向かう。

「あっはっは・・・・本当に、面白れえ奴・・・ククク・・・・」

『・・・・・俺も、好きだぜ・・・・・サンジ・・・・・・あっ、やば・・・・聞こえたか?』

ゾロもそう言ってキッチンに向かう。

ふと、キッチンのドアの前でサンジが立ち止まって、ゾロの方を見た。

「ああ、しっかり聞いたからな・・・結局、ラブラブじゃん、俺達・・・・」

『俺も、大好きだぜ、ゾロ・・・・』

「・・・・・そうなんだろうな・・・・」

『・・・あんまり可愛いことばっか言ってると、ここでキスするぞ。』

「!!・・・////ば、馬鹿・・・」

『・・・・やりてえ?』

『・・・まっ、な・・・』

そのまま、二人は、キッチンのドアの前で、軽く触れるだけのキスを交わした。

「もう良いだろ? ナミさん達が待ってる・・・・」

サンジは、そう言ってキッチンのドアノブに手を掛ける。

「・・・・・・・・・。」

『・・・・このまま部屋に行きてえ・・・・』

ゾロは、サンジの手を上から握りしめる。

「ば、馬鹿・・・・てめえ・・・ナミさん達、待ってるんだぞ・・・・」

『・・・・俺も・・・・ああ、いや、ダメだ。 今のは無しだ! ナミさん達が待ってる・・・

ダメだ、ゾロ・・・』

サンジは、慌ててゾロを睨み付ける。

「・・・・ダメか?」

『・・・・二人っきりになりてえんだ・・・・』

ゾロは、そう言って切なげにサンジを見つめた。

「・・・・そんな顔をしても、駄目なもんは、ダメだ・・・・」

『・・・もうそんな顔すんなよ・・・・つい言うこと聞きたくなっちまう・・・・あっ、やばっ。

・・・違う・・・違う・・・今のは違うからな・・・・駄目なモノは・・・・・ダメ・・・・だ。』

「・・・・決まりだな。」

『何と言おうが、部屋に行く!』

「おわっ! ちょ、ちょっと待てって・・・俺の話、聞けよ・・・なあって・・・」

『てめえ、強引すぎ・・・・・』

ゾロは、ニヤリと笑うと、サンジの言葉を無視して腕を引き寄せると、そのままサンジの手を

掴んだまま、男部屋に入っていった。















「・・・・・・なあ、ナミ。 あれでも、無視しろって言うのか?? あれじゃあ、俺達、

拷問じゃねえのか・・・・ヤダよ、俺・・・・・・あんなホモップルの会話・・・・聞きたくも

ねえ!!」

ウソップは、丸聞こえのゾロとサンジの会話に、涙ながらにナミにそう訴えた。

「・・・・ごめん、ウソップ・・・・ここまであいつらが、馬鹿ップルだなんて、知らなかった

の。 許して・・・・あと3日間で終わるはずだから・・・・ ウソップ・・・・・耳栓、頼む

わ、至急作ってね・・・・」

ナミは、自分の予想を遙かに超えたゾロとサンジに頭を抱える。

ふと、床に目を落とせば、お腹をボールのように膨らませて眠るルフィの姿・・・・

「・・・・・これから、この船は、どうなるのかしら・・・・・キャプテンは、コレだし、その双

璧を担う二人は、馬鹿ップル・・・・グランドライン、行けるのかな・・・」

ナミはそう呟いて、今年初の夕日が沈む海を、キッチンの窓から見つめた。






 <END>





<コメント>

今年始めの馬鹿ップル・・・・如何でしたか??
エリョシーンがないって??
ハイハイ、ちょっち間に合わなかったのよんvv
ごめんなさいです。(ペコリ)
本当に言葉と心の言葉と読みにくくなったかな??
ああ、本当に申し訳ない! 全ては、ルナの表現力の無さ!(-_-;)
エリョシーンは・・・・・時間が出来たら・・・書きますです。(汗)
ではでは、今年もよろしくお願いします!

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