Sweet Darling


 




俺の名前は、サンジ。

かつて、巷で騒がれた天才カリスマ料理人。

そりゃあ、芸能人並に騒がれたんだぜ。

女の子にはキャーキャー言われてさ・・・。

が、しかし、現在・・・

普通の商社に勤めるサラリーマン、ロロノア・ゾロの最愛のワイフvv

なんでこうなったのか、それはなぁ・・・

えへへ・・・ダメダメ、勿体無くて他人なんか話せるかよ。

ともかく、俺は、今、めっちゃくちゃにハッピーなのだ。

やっぱ、人間は、金や名誉や地位じゃねえよな。

愛だぜ、愛・・・。

朝は、真っ先に起きて、愛する旦那様、ゾロの寝顔をチェック!

30分ぐらいゴロゴロと爆睡中のゾロにじゃれ付いて、ゾロの大好きな食事の用意。

それから二人で、ラブラブな朝食vv

そして、俺の見立てた服を着せて玄関まで一緒についていく。

「じゃあ、行って来る。」

「ゾォ〜ロvv 忘れ物v」

俺は、玄関先で、チューのスタンバイ。

「ば、馬鹿! なにしてんだよ! こんなとこでできるかよ。人が見てる・・・。」

・・・ったく、本当、照れ屋さんなんだから。

近所が見てたって全然俺は構わないのにさ・・・。

だから、こっちから強引にチューして・・・・真っ赤になったゾロを手を振って見送った。

「あらあら、ご馳走様。いつみても仲良くていいわねv」

「本当、羨ましいわ。」

なんて隣りの奥さん達にいわれちゃってさ。

「いやぁ、これはお美しい奥さん方vv どうですか?うちで美味しいお茶でもvv」

なんていってコミュニケーション。

「あ、じゃあ後で伺うわねv サンジさんのお茶って、本当美味しいのよね〜。」

なんて、ご近所付きあいもバッチシだ。




あー、俺は幸せだーーっ!!

なっ?

あんた達もそう思うだろ?




っで、いつものように、井戸端会議を済ませ、買い物に出かける。

今日は、ちょっと電車に乗っていつもとは違うデパートだ。

なんたって、今日は、愛するマイダーリン、ロロノア・ゾロの誕生日だからな。

結婚して初めて迎える旦那様の誕生日とあっちゃあ、ワイフの俺としては、張り切らないわけ

にはいかねえだろ?

前菜は、白魚の味噌酢和えと水菜の御浸し。

スープは、ハマグリの澄まし汁。

メーンは、ゾロが大好きな合鴨のソテーと京野菜の煮物とぶりカマの粗塩焼き。

後は、たこわさと鯛めしをプラスして・・・

「うっし、完璧だ。」

俺は、長年の料理人として培われた瞳を如何なく発揮して、食材を選別する。

シンプルな調理だけに、素材の鮮度と味が重要なのだ。

たくさんの食材の中から最高級のものだけを、値段に関係なく買い揃える。

多少の赤字は、俺の貯金で賄うとしよう。

満足いく食材を買った俺は、その足で、行きつけの酒屋に入る。

「マスター、例の物、ちゃんと届いてる?!」

「オウ!サンジ。 ちゃんと届いてるぜ。 本当、苦労したんだからな、これ手に入れるの

は・・・・。 500mlなら、少しは市場に出回ってるんだが、一升となるとな・・・。」

そう言って、店のマスターは店の奥から一升瓶を取り出した。

「へへへ・・・・わかってるって! 顔の広いマスターだから、分けてもらえたんだよな。 けど

さ、俺、絶対、これ欲しかったんだ。 なんたって、今日は・・・・」

「愛するダーリンの誕生日!だろ?」

俺の言葉を遮って、マスターがそう言ってにやりと笑う。

「へへ・・・バッチシ、だ!」

俺はグッと親指を立てて、マスターに笑ってそう言った。

「じゃあ、俺、早く帰って下ごしらえしねえと・・・。 ありがとな、マスター。 後でちゃんとお礼

するから。」

「オウ、楽しみにしてるぞ。」

俺は金を払って、いそいそと家に帰る。

それから、丁寧にいつもの数倍の時間を掛けて、夕食作りに精を出した。

「よし、これで準備はバッチシだ。 後は、ゾロが帰ってきて・・・・二人で食事して・・・・・ゾロ

は甘いの食べねえから・・・・・・・デザートは、俺な? ・・・・なんちって・・・・あー、何言ってん

だ!!俺は!! さっさと帰ってきやがれ!こんチクショー!!」

バシバシとソファに置いてあるラブクッションを叩きながら、俺は、ゾロが帰宅してからの事を

いろいろと空想する。

時刻は、午後7時。

そろそろ、ゾロが戻ってくる時間。

「さてっと・・・・そろそろぶりカマ焼いておこうかな・・?」

そう呟いて、シンクに立った俺。




なんか、忘れてるような・・・・・・・気がする。




どうにも、心になんか引っかかてるような気がして腕組みして考えた。




朝からいつものように、井戸端会議・・・・これは、OK!

その後、デパートに買い物をして・・・・・・・・・買い物。

これも、O・・・・・

ちょっと待て!!

俺は、デパートで、何を買った?!

・・・・・・・・・・・食材・・・・・・だけだったような気が・・・・・・




スーッと血の気が引く。

「プレゼントはどうしたんだ!!俺ーーーッ!!!」

ガツンと後頭部を殴られたような衝撃を覚えた。

そう・・・・・・・俺は、ゾロへのプレゼントを買うの・・・・・・

すっかり忘れていた。

慌てて、コートを羽織り、外に飛び出す。

タクシーを拾うのももどかしい。

俺は、猛ダッシュで駅に向かった。

腕時計の針は、午後7時15分。

デパートの閉店時間まで、後15分。

イライラしながら、電車が来るのを待つ。

やってきた電車に飛び乗って、デパートまで休み無しに走った。

「・・・・・・・本日の営業は終了致しました。 またのご来店をお待ち致しております。」

無常に流れるさよならの音楽。

「ちょっと待って!! その閉店、ちょっと待った!!」

俺の叫びも虚しく、瞳の前でガラガラと音を立てて、デパートのシャッターが降りていく。

何たる失態。

結局、俺は、ゾロへのプレゼントを買えなかった。

「ッ・・・・・・・・最悪。」




・・・・・なにやってんだよ、俺・・・・。

せっかく・・・・・・せっかく、ずっと計画立てて・・・・・

この日の為にって・・・・・ずっと・・・・・




自分の情けなさに涙が出てくる。




どんな面して、ゾロに言い訳したら良い?

最愛の人の誕生日にプレゼントも用意できなかった間抜けな俺・・・・。




駅を出て、トボトボと家に向かう。

「オイ!サンジ? どうしたんだ?」

急に後ろから声を掛けられた。




ゾロだ。




「な、なんでもねえ・・・」

俺は、慌てて袖口で涙を拭って、振り向く。

「・・・・・何があった? 何でも無い訳ないだろ? ん・・・?」

そう言って、そっと頭を引き寄せられた。

何気ないそんなゾロの優しさが心に沁みる。

「ゾォロ〜・・・・・俺・・・・・俺・・・・・・」

ギュッとゾロにしがみついて泣いた。

「よしよし・・・・・・とりあえず、家に入ろう。 ここじゃあ・・・・なんだから・・・・」

一斉に周囲の視線が泣きじゃくっている俺に注がれたのを感じて、ゾロが俺を抱えるように

家に連れて帰った。

「・・・・・・で、どうした? 何があったんだ?」

玄関のドアに鍵を掛けて、ゾロが俺に再度聞く。

「あのな・・・・・俺・・・・・・今日・・・・プレゼント・・・・用意出来なかった。 ゾロの・・・・誕・・・」

「なんだ、そんなことか・・・。 俺はまた、なんか重要な事かと・・・・」

俺の言葉を最後まで聞かず、ゾロはそう言って苦笑した。

「そんなことじゃねえ!! ゾロの誕生日だぞ!! 一年に一度しかねえんだぞ!! それ

も、結婚して初めての・・・・・なのに、俺・・・・・」

そこまで言って、また自分に悔しくて涙が出てくる。

「クク・・・・ごめん、ごめん。 サンジが、そこまで俺の誕生日覚えてくれていたのは凄く嬉し

いんだけどな。 もう一つ重要な事、忘れてないか?」

相変わらず優しい瞳で俺を覗き込んで、ゾロが俺にそう尋ねた。




?????

重要な事?!

ゾロの誕生日よりも??




「・・・・・なんだよ、俺が覚えてたのに、肝心のお前が忘れてるんだ。」

何度も首を傾げる俺に、ゾロはそう言って溜息を吐く。

「・・・・・・・ごめん、ゾロ。 それって、てめえの誕生日より重要な事か?」

「ああ。 少なくても俺にとっちゃ、な・・・。 『普通は、結婚した日を記念日にするけど・・・・

俺達は、今日を、その記念日にしよう。』 ・・・・・・もう忘れたのか? 一年前の今日の出来

事を・・・。」

そう言って、ゾロは俺の頭を優しく撫でた。

その台詞を聞いて、俺の頭の中に一年前の記憶が鮮やかに甦る。

一年前、初めて、ゾロの部屋で夜を過ごした。

その時に、ゾロは俺に言ったんだ。

『結婚して欲しい。』って・・・・・・

ゾロに、プロポーズされた日・・・・・。




俺達のプロポーズ記念日。




「あっ。 ゾロ、ごめん・・・・・俺、ごめん。」

そう謝って、ギュッとゾロに抱きついた。

「本当、ごめん、だよなぁ。 せっかく俺、覚えてたのによ。 まっ、良いか。 俺も自分の誕生

日って事、すっかり忘れてたんだから・・・・」

ゾロはそう言って、ゴソゴソと内ポケットから何かを取り出す。

「親愛なる奥様に、俺からの感謝を・・・」

そう言って細長い箱を手のひらに乗せられた。

「ゾロ・・・・・これ・・・・」

「ん・・・・」

ゾロに促されて、その箱を開ける。

中には、アクアマリンのネックレスが入っていた。

キラキラと光る俺の誕生石。

「ゾロ!! ゾロ!ゾロ!!」

俺は、ゾロの名前を連呼して力一杯しがみつく。

「オイオイ・・・・わかったから、そんなにしがみつくなよ。 それより、俺、腹減ってんだ。 

サンジ、飯は?」

「うん! すぐに用意する!! 今日はさ、ゾロの好きなものばかりだぞ。 待っててな。」

ゾロの言葉に俺は、そう返事していそいそとキッチンに向かう。

「ほぅ・・・・・本当、豪勢だな、今日は・・・。」

出来上がった料理に、ゾロはそう言って席に着いた。

「エヘへ・・・・・今日は、特別だから・・・・・。 けど、ごめん、俺・・・・・」

そう言って謝ろうとする俺の唇に、ゾロがスッと指を置く。

「こうやって、俺を一番に考えてくれるサンジが、傍に居てくれる。 それが一番のプレゼント

だよ。」

そう耳元で、囁かれた。




あー、俺ってすんげえ良い旦那様GETしたよなぁvv

今夜は、俺、頑張るから!




それから、俺達は、ラブラブな食事をして・・・・・

一杯一杯愛し合った。










「ゾォロ〜・・・・・んv いってらっしゃいvv」

今日も、ゾロにチューをして笑顔で会社に送り出す。

「クスクス・・・今日もご馳走様v 本当、素敵な旦那様よね〜。」

「エヘへ・・・・・でしょ?! 最高なんですよvv俺のダーリンvv」

隣りの奥さんにそう話をして、俺は、そっと胸に光るペンダントに触れる。




本当に素敵な旦那様だよなぁ。

あんたらだって、そう思うだろ?

ダメダメ、ゾロは俺の、だから・・・・・・何があったって手放さないぞ。




愛してるぜ、素敵な俺のスイートダーリンvv













<END>


 



<コメント>

サンジ・・・・・壊れてます。(笑)
これは、日記のSSSに登場した新妻サンジのロロ誕バージョン。
っつうか、サン誕っぽい気がするのは、ルナの気のせい?!(爆)
いえいえ、サンジが傍にいる事が、
ゾロにとっての幸せなのです。(こじつけ)
こう言うのは、サクサクと書ける!
・・・けど、サンジスキーからクレーム来そうだ。(滝汗)
では☆