always for himself







サンジの誕生日が、いよいよ明日に迫ってきた、ゴーイングメリー号の昼下がり。

ナミは、キッチンで夕食を作っているサンジを除くメンバー全員を自室に集め、会議を招集し

た。

「良〜い? 絶対にサンジ君には内緒よ。 それと、ルフィもウソップも、チョッパーも、明日だ

けは、サンジ君にいろいろと用事を言いつけないように。 船の上じゃ、何にも出来ないけ

ど、自分の誕生日ぐらい、ゆったりと平穏に過ごさせてあげたいものね。」

「「「「おう! わかった。」」」

ルフィ、ウソップ、チョッパーは、ナミの提案をすぐに受け入れる。

「・・・・・わかってるわよね? 一番言いたいのは、あんたに、なんだけど・・・・」

ナミは、握り拳をゾロに見せ、そう言った。

「・・・・・なんで、俺がそんな面倒くせえことを・・・・・」

「良いから、言うとおりにして!!」

バキッ!!

「ガッ!!」

一人、壁に寄りかかり、実に面倒くさそうにそう言ったゾロにナミは、問答無用の鉄拳を食

らわせる。

「・・・・・・チョ、チョッパー・・・・・ぜ、絶対にサンジには、手間掛けさせちゃなんねえぞ。」

「お、おう・・・・・わかった、ウソップ・・・・」

ウソップとチョッパーは、頭にたんこぶを作ったゾロに憐れんだ瞳を向け、そう誓い合った。

「ルフィも、良い?? 明日だけは、肉、飯、一切禁止よ! お腹が空いたら、あたしかロビン

に言ってちょうだい。 明日は、あたしたちが、サンジ君に代わってご飯作るから・・・・」

「「「「い゛っ??!!」」」」

ナミの言葉に、男達が、一斉に叫ぶ。

「・・・・・・・なんか、文句有る??」

「「「いいえ・・・・・文句ありましぇ〜ん・・・・」」」

ルフィ、チョッパー、ウソップは、ナミに握り拳を見せつけられて、否応なく同意した。

ゾロだけが黙ったまま、その様子を見て、ため息を吐く。

「・・・・なによ。 言いたいことがあったら、ちゃんと言いなさいよ。」

「・・・別に、なんでもねえよ。 話はもう済んだんだろ?」

ゾロは、それだけ言うと、さっさと一人、部屋から出ていった。

「・・・・本当に、もう・・・・・・相変わらず、冷たい男ね。 サンジ君のこと、なんとも思ってない

のかしら。 好き合ってると言うのは、あたしの思い違い?? だとしたら、サンジ君、可哀想

だわ・・・・」

ナミは、ゾロの背中を見つめながら、小さな声でそう呟く。

ナミは、サンジとゾロが、深夜、密会しているのを知っている。

それは、とても濃厚で普通のカップルそのもので・・・・・

普段の二人からは、想像も付かないような雰囲気で・・・・・・

単に性欲処理だけとは思えない・・・・・そんな情事。

そんな二人を見た翌日から、よくよく注意深く観察してみれば、サンジは、確かにゾロに想い

を寄せているのがわかったものの、普段から感情をあまり表に見せないゾロは、あんな場面

を見たナミでさえ、サンジをどう思っているのか解らなくなってくる。

「ん?? なにが、可哀想なの??」

チョッパーが、ナミの声を聞いてそう尋ねた。

「ううん、別に・・・・・さっ、皆も、協力してねvv じゃあ、解散!」

チョッパーの声に弾かれたようにナミはそう言って、クルー達は、皆、部屋から出ていった。
















翌日。

「さっ、今日は、あたし達が、食事の用意をするから、サンジ君は、ゆっくりしていてねvv」

「大丈夫。 私達に任せといてね。 たまには、料理してみたいのよ。 ダメかしら?」

朝早く、朝食の用意をしようとキッチンに現れたサンジをナミとロビンはそう言って制した。

「いや、ダメってわけじゃ・・・・けど、料理は、俺の仕事だし・・・・・こんな事で、ナミさんや

ロビンさんのお手を煩わすなんて・・・・」

「良いから!! ロビン、サンジ君をお願い!」

「ごめんなさいね、コックさん。 フルール!!」

「おわっ! ナミさ〜ん・・・・ロビンさ〜ん・・・・」

結局、サンジは、ロビンの手によって、キッチンから追い出されてしまった。

「???なんでだ? ・・・・まっ、いいか。 今日は、天気も良いし、溜まってる皆の洗濯で

も、してやるか・・・・」

サンジはそう呟いて、脱衣所に向かう。

「おう、サンジ。 なにしてんだ?」

「サンジ、何処に行くの??」

そう言って、ウソップとチョッパーがサンジに話しかけてきた。

「ん? ああ、天気が良いからな。 皆の洗濯もんでも、洗おうかと・・・・」

「ちょ、ちょっと、待て、サンジ。 洗濯は、俺とチョッパーで今からやるから。 お前は、ゆっく

りとしてろ。 さ、行こうぜ、チョッパー・・・」

「お、おう。 今、やろうと思ってたんだよな。 サンジは、良いから、自分の好きなことやって

ろよ。」

ウソップとチョッパーは、サンジの言葉に慌ててそう言って、そそくさと脱衣所に向かう。

「お、おい、てめえら・・・・・・」

サンジは、二人の行動の早さに、ただただ唖然とするだけだった。

サンジは、一息つくように、タバコを吸うと、船頭に居るルフィの元に向かう。

「よう、ルフィ。 腹減ってねえか? なんだったら、今から何か作ってやろうか?」

「えっ?! 本当か?サンジ!!」

サンジの言葉に、ルフィは、嬉しそうに返事をする。

そんなルフィの様子に、サンジは、ホッとした。

「ああ、本当だ。 今、丁度暇だし、な。 何でも言えよ。 作ってやるから・・・」

サンジは、そう言ってにっこりと笑う。

「んっじゃあ・・・・・・」

そう言ったルフィに、ナミが、握り拳を作って自分を睨み付けている姿が脳裏を掠めた。

「あ・・・・・・やっぱ、良い。」

「ん?? どうした?ルフィ?? いらねえのか? 腹減ってねえのか??」

「いやあ・・・・・腹は減ってるんだが・・・・・サンジのはいい。 俺、ナミに言ってくる!」

ルフィは、サンジにそう言うと、キッチンに走っていった。

「・・・・・ったく、皆して、なんだっていうんだ?? なんで皆して俺のやろうとしてること制する

ように・・・・・ ・・・・・なんか、俺一人・・・・・疎外感、感じる。 ・・・・・俺が居なくても・・・・・・

別にこの船は困らねえって、そう言われてるみてえ。 ・・・・結構、これでも、この船には俺

が必要だって、そう自惚れてたんだがな・・・・・」

サンジはそう呟いて、寂しく苦笑すると、一人、壁にもたれ掛かり、海を見つめる。

「なに一人で黄昏てんだ?? 熱でもあるんじゃねえの?」

そう言って、ゾロが、サンジの顔を見てニヤリと笑った。

「ば〜か。 俺は、てめえと違って繊細に出来てんだよ。 人間はなぁ、些細なことで悩むも

んなんだ。 てめえの様なクソちっぽけな脳みそしか持たねえまりもには、到底わかんねえ

だろうが、な!!」

サンジは、そんなゾロを睨み付けてそう言う。

「まりも、まりもって・・・・・・てめえ、喧嘩売ってんのか?」

ゾロは、そう言って、カチャリと刀を鳴らした。

「あァ? 売ったがどうした!! どうせむしゃくしゃしてたんだ。 やんのか?コラァ・・・」

「・・・・上等だ。 買ってやるよ、その喧嘩!!」

「うぜえ!! てめえなんかに俺の気持ちなんかわかってたまるか!!」

「ああ、全然わかんねえよ、んなもん!!」

「クソ死ね!! この脳無しまりも!!」

「てめえが、死ね! この黄昏ラブコック!!」

ゾロとサンジは、そう言い合って、いつものように戦闘を繰り広げ始める。

そして、その騒ぎを聞きつけて、他のクルー達が集まってきた。

「・・・・・・・ゾローッ!! あんたって・・・・・あんたって奴は・・・・・あれほど、言ったの

に!!」

ドカッ!! バキッ!!

「アガッ!!」

ナミは、そうゾロに向かって怒鳴りつけると、ゾロを天候棒で殴りつける。

一方的に殴られて、甲板に伸されたゾロを見て、サンジは唖然としてナミを見つめた。

「あっ、サンジ君、怪我はなかった?? チョッパー、サンジ君、診てあげて。」

ナミは、サンジにそう言ってにっこりと微笑むと、また、ロビンと共に、キッチンに戻っていく。

「・・・・・・ゾロ、なんで?? あれだけ、ナミが言ってたのに・・・・ さっ。 サンジ、部屋に来

て・・・・」

チョッパーは悲しそうにそう呟いて、サンジを連れて男部屋に向かった。
















「・・・・・・なあ、チョッパー。 今日、皆、俺に対する態度、変なんだけど、なんかあるのか?」

サンジは、傷の手当を受けながら、そうチョッパーに尋ねる。

「え?! べ、別に、な、何でもないから・・・・・」

「チョッパー! 頼む、教えてくれ。 俺になんかあるのか?」

サンジは、真剣な表情でチョッパーの詰め寄った。

「あ、あの・・・・・・ナミから言わないようにって・・・・・・」

「チョッパー・・・・」

「サンジ・・・・今日、何日か・・・・・知ってる??」

チョッパーは、サンジの表情に観念したようにそう告げる。

「??今日は、確か・・・・・・3月・・・・・・・2日。 ・・・・・・俺の誕生・・・・・日・・・・か?」

「・・・・・・うん。 ・・・・だから、俺達、サンジに楽にゆったりとした一日を送って貰おうと・・・・

ゾロも、ナミの言ったこと、ちゃんと聞いてた筈なんだけど・・・・なんで、あんな事・・・・・」

チョッパーは、先程のゾロを思い出して、そう寂しく呟いた。

サンジは、その話を聞いて、一人苦笑する。




・・・・・・それで、あいつ・・・・・・・・あいつ・・・・・らしいな。




「??サンジ? どうしたの?」

チョッパーは、キョトンとした顔をしてサンジを見つめた。

「いいや、なんでもねえ。 せっかくのナミさんのご厚意だから、今日一日、甘えさせて貰おう

かな? じゃ、サンキューな、チョッパー。」

サンジは、そう言って部屋を出ると、甲板にそのまま寝そべっているゾロの傍に行く。

「・・・・ありがとな、ゾロ。 てめえなりに気を使ってくれたんだろ? 皆の意図がわからずヘコ

んでた俺にさ・・・・・・ あのまま、てめえまで皆と同じ態度だったら・・・・・俺・・・・・」

「・・・・・・何のことだ? 俺は、てめえの態度がむかついたから、喧嘩しただけだ。 感謝し

て貰うことなど、なにもしちゃいねえ。」

サンジの言葉に、ゾロはそう言って、むくりと起きあがった。

「へーへー。 そうだったな。 なあ、俺、今日誕生日だから、てめえにして欲しいもんあるん

だけど・・・・・」

サンジは、そう言ってゾロに手を差し伸べる。

「・・・・・なにを?」

そう言って訝しがるゾロに、サンジはふわっと微笑んで、唇をトンと指で示した。

「・・・・・・・ここでか?」

「おう。 誰も見てねえし・・・・・・」

「・・・・・仕方ねえな・・・」

ゾロは、フッと優しい瞳でサンジを見つめ、そっと触れるだけのキスをした。

「・・・・これでいいだろ。」

ゾロは、そう言って、サンジの腕を捕ると、格納庫に向かう。

「ん・・・・えっ?? ゾロ・・・・どこに?? お、おいって!!」

突然ゾロに腕を捕まれ、サンジは、慌ててそう言った。

「・・・・どうせ、暇なんだろ? たそがれる暇ができねえくらい、身体全部で祝ってやる。」

ゾロは、そう言ってニヤリと笑う。

「!!な、ば・・・・阿呆かーっ!! てめえは・・・/////」

サンジは、そう言いながらも、ゾロの腕を払うことなく、一緒に格納庫に入っていった。








「・・・・・・・結局、あいつらって・・・・・ただの馬鹿ップル??」

そう言ってナミが呆れるように呟くのは、その日の夕方、皆が、いなくなったサンジとゾロを大

騒ぎして捜し回り、その騒ぎに慌てて皆の前に姿を現した二人を見た、その時であった。











<END>






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<コメント>

これは・・・・三日ちゃまのサン誕企画に投稿したモノ。
相変わらずな・・・・ゾロでやんすが、これがゾロらしいと言うか、何というか。
ああ、また恥さらしなモノを送りつけている、ルナの神経の図太さに・・・(死)
はいはい、うちのゾロは、お金無いし・・・・サンジにしてやれっるものって
これくらいなんですよ。 けど、愛情は入ってるんですよ、それなりに・・・(笑)
隠された優しさが・・・・・ねvv 好きっすvv
では★