Gift・・・







・・・・俺には、生まれた日が・・・・・ない。

いや、正確には、生まれた日を知らねえんだ。

だって・・・・・・俺には、家族と呼べるモノがなかったから。

誰一人・・・・・・俺の生まれた日なんて・・・・・・教えてくれた奴もいない。

俺は・・・・・・俺の生まれた日は・・・・・・忘却の彼方・・・・・

店にいるときは、それこそ忙しくてそんな日なんか構ってられなくて・・・・・

荒くれコック達の間でそんなことなんか話題にもならなくて・・・・・

一人子供だった俺も・・・・・それが当たり前だと思っていたし・・・・・

まあ、もうこの年になると・・・・・・・関係ねえ・・・・・・か。

誕生日なんか無くても・・・・・・・年は勝手に取るからな。

そろそろ、ウソップの誕生日かぁ。

まっ、盛大にお祝いしてやるか・・・・・・














サンジは、キッチンの壁に掛けられたカレンダーに瞳を向け、過ぎ去った2月のカレンダーを

破り捨てる。

2月は、新しく仲間になったロビンの誕生日があった。

その前は、チョッパーの誕生日。

それから、その前は・・・・・ゾロの・・・・

皆の誕生日を盛大に祝いたいと思う気持ちは、自分の誕生日を祝えないから。

その時だけは、自分も誕生日気分を少しだけ、味わえるから。

だが、カレンダーをめくる度、皆の誕生日が近づく度に、こみ上げる淋しさは隠せない。







「おい! なに、ボーっとしてんだ? 仕込み、もう済んだのか?」

ゾロが、カレンダーを握りしめたまま立っていたサンジに、そう声を掛ける。

どうやらサンジは、ゾロがキッチンに入ってきたのも、わからないくらい、ボッーっとしてたらし

い。

「ああ、もう済んだ。 ・・・・飲むか?」

サンジは、そう言って酒とグラスをテーブルに置いた。

「・・・・・そうだな。 貰おうか。」

ゾロはそう言ってテーブルに着く。

「・・・・・そろそろ、ウソップの誕生日だぜ。 てめえは、なにをプレゼントするんだ?」

「・・・・もうそんな時期か? この前、あの女の誕生会しなかったか?」

「あの女なんて言い方失礼だぞ。 ロビンさんって言えよ。 ったくもう、そんなんだから、レデ

ィに相手にされねえんだよ。」

「別に、女なんか必要ねえし。 俺には、てめえがいるから。」

ゾロはそう言って、サンジの腰を抱き寄せた。

「ばっ、馬鹿か、てめえは! 本当に、臆面もなく、よくそんな台詞が言えるな・・・・/////

ったく、言われるこっちが恥ずかしいぜ。」

サンジは、ゾロの言葉に真っ赤になって俯く。

「ククク・・・・照れんなよ。 別に、本当のことだろ?」

ゾロは、そんなサンジに苦笑してそう言うと、顎に手を掛け顔を上げさせた。

それから、ゆっくりと二人の唇が重なって・・・・・サンジは、ゾロに身体を預ける。

いつものように繰り広げられる深夜のキッチンでの睦事。

性急な愛撫と押し寄せる快楽の海に流されて・・・・・ゾロとサンジは、互いに熱を分かち合っ

た。

そして、その余韻に浸るように、互いに身体を抱きしめ合う二人。

「・・・・・なあ、てめえの生まれた日は、いつだ?」

不意に、ゾロがサンジにそう尋ねた。

「なんだ、急に・・・・・そんなのいつだって良いじゃねえか・・・・」

サンジは、そう言ってゾロから離れると、ジャケットの中からタバコを探す。

「いいから、教えろよ。」

ゾロは、サンジに近づき、尚も尋ねた。

「・・・・・・・・・無え。」

「はぁ?」

「・・・・・・だから・・・・・・・・無えんだよ。 俺は・・・・・・・・知らねえんだ。 自分の生まれた

日・・・・・・誕生日は、俺には無えんだよ。」

サンジは、タバコに火を点け、ゆっくりと紫煙を吐きだし、ゾロにそう告げる。

「・・・・・・俺には、家族が無かったから。 そう言ったことを教えてくれる人もいねえ。 あっ、

でも、同情なんかするなよな。 俺は、別になんとも思わないし、それで困ったこともねえ。」

「・・・・・・すまねえ。 悪いこと聞いた。」

ゾロは、そう言ってサンジの背中を抱き締めた。

「ばーか。 俺が全然気にしてねえ事をてめえが気にしてどうすんだよ。 らしくねえ事、考え

るな。 頭、禿げるぜ。 未来の大剣豪が、禿げてりゃ格好悪いぞ。 ククク・・・」

サンジはそう言うと、ゾロの方を振り向いて肩口に顔を埋める。

ゾロには、心なしかサンジの肩が震えたような気がした。

「・・・・・サンジ・・・・・・・」

ゾロはそう呟いて、ポンポンとサンジの背中をあやすように触れる。

「・・・・・俺は、ガキか? ・・・ったく、それより、ウソップのプレゼント、どうする? 一緒にや

るか??」

サンジは、少し困ったような顔をしてゾロにそう言った。

「・・・・・・・・いや、ウソップの誕生日の前に一つ、誕生日、追加だ。 パーティーは後だな。

今日が、てめえの誕生日だ。 誰も教えてくれないのなら、俺が、てめえに教えてやる。 

今日が、てめえの生まれた日。 忘れるな、良く覚えておけ。」

ゾロは、ニヤリと口の端を歪めるとサンジにそう言う。

「んなっ。 ・・・・・・阿呆だろ、てめえ。 どこに生まれた日を勝手に決める奴がいる。 

始めから馬鹿な奴だとは思っていたが、ここまで馬鹿だとは思わなかったぞ。」

サンジはそう言って、呆れるようにゾロを見つめた。

「・・・・・・・俺に決められるの、嫌か?」

「・・・・・・・・別に、嫌じゃねえけど・・・・・・・」

「じゃあ、問題無えな。 今日がてめえの誕生日だ。 誰にも文句は言わせねえ。 

・・・・・・ところで、今日って、何月何日だ?」

「てめえは・・・・・・・んなことも知らねえで、俺の誕生日決めたのかよ。 ・・・・・・・本当

に・・・・・馬鹿だな、てめえ。 今日は・・・・・・・・・・・嘘だろ?? ・・・・・・・・・今日は・・・・・

3月・・・・・・・・・・・2日・・・・・・だ。」

サンジは、午前0時を回った時計とカレンダーを見つめてそう呟く。

「なんだ、ビンゴじゃねえか。 うっし、てめえの誕生日は、3月2日。 サンジで32か。 

我ながら、良く思いついたもんだ。 これじゃあ、誰も忘れねえな、てめえの誕生日。 

んじゃあ、てめえ、今から、すぐ料理を作れ。 俺は、皆を叩き起こしてくる。」

「はぁ?? ちょ、ちょっと、待てって!! 皆、もう、寝ちまってるって! それに・・・・・・・・

陽が昇っても、3月2日なんだから、これからパーティーする必要はねえって!! 

俺が、ちゃんと用意するから・・・/////」

サンジは、今にもキッチンから飛び出していきそうなゾロを捕まえて、そう言った。














「おはよう、サンジ君。 あら? サンジ君、今日は・・・・・どうしたの? 何かとっても嬉しそ

う。」

翌朝、ナミがキッチンに来て、サンジを見つめ不思議そうにそう言う。

「あっ、おはようございますvvナミさんvv 実は・・・・・・・今日、俺の誕生日なんです。」

サンジは、にこやかにそう言って、ナミの前にコーヒーを置いた。

「えっ?!なにそれ?? サンジ君、なんでそんな大事な事、今まで黙ってたのよ!! 

お人好しにも程があるわ。 もう!!今からじゃ何も用意できないじゃない! 本当に・・・・・

今度こんなコトしたら、怒るからね!」

ナミは、呆れたようにサンジを見つめ、出されたカップに口を付ける。

「はいvv これから気を付けま〜すvv それで・・・・・今晩は、少しだけ豪勢な食事を用意し

ても宜しいですか?」

サンジは、ナミに睨まれても、全然にこやかな表情を崩さなかった。

「・・・・・少しだけ、ですって?? 冗談じゃないわ。 盛大にパーティーするに決まってるじゃ

ない! 料理はね・・・・サンジ君にお任せするとしても・・・・・後のセッティングぐらい、あたし

達でさせてちょうだい。」

「ありがとーーーっvv ナミさんvv 俺・・・・・幸せですvv」

サンジは、満面の笑みを浮かべて、朝食をテーブルに並べる。

直に、他のクルー達がキッチンに集まってきて・・・・・・・・

皆、ナミ同様、いきなりの誕生日発言に驚き、慌ただしく朝食を済ませ、サンジの誕生パー

ティーの用意をし始めた。













「・・・・・・ゾロ。 ・・・・・・・本当に、ありがとう。 てめえが、一番に俺にプレゼントくれた。

俺・・・・・・一生、忘れねえ。 この世界広しといえども、誕生日をプレゼントされた奴は・・・・・

俺だけだろうな。 てめえが、馬鹿で良かったぜ。 俺・・・・・最高に幸せだ。」

サンジは、甲板でパーティーを楽しむクルー達を眺めながら、ゾロに向かってにっこりと笑う。

「「「「「サンジ!! 誕生日、おめでとう!!!」」」」」

「おう!! サンキュー、みんな!! 最高の誕生日だぜ!! 皆、今日は、飲もうぜ!!」

「「「「「「当然!!」」」」」」

サンジの嬉しそうな声と皆の楽しそうな声が甲板にこだました。








3月2日・・・・・・ゴーイングメリー号に新たな誕生日が生まれた日だった。








<END>








         
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<コメント>

はぁ・・・・・これで、2本目。 ・・・・なんだけど、ね。
いまいち、甘くないと言うか・・・・これで、サンジは、幸せなのか??(殴)
うぅ〜・・・・・イチャラブが・・・・・書けない。(泣)
次回こそ・・・・・さて、次は・・・・・どうするかな・・・・・・・(思案中)