Unexpected Day







「ハイ、あんた、今日、誕生日でしょ?」

そう言ってあいつに差し出した小さな箱。

らしくなくドキドキして・・・心臓の音がバクバクして・・・

あいつにまで聞こえそうで凄く恥ずかしかったあの日。

「おう、サンキューな、ナミ。」

ニシシと笑ったあいつの笑顔に、ひときわドクンと心臓が鳴った。

「良いのよ、ついでだったから。 それに、あたしの誕生日は3倍返しだからねv」

なんて、ごまかす為にそう言って笑った。

「・・・・三倍返しかぁ・・・。 おう、ナミの誕生日、忘れないようにする!!」

あいつは、真顔でそう言って・・・。

その言葉に、頭がクラクラした。

忘れないようにって・・・それって・・・・嬉しい。

凄く嬉しいよ・・・どうしよ、涙が出そう。

「期待しないで待っててあげる。」

あたしは、それだけ言ってあいつから離れた。

何処までも可愛げのないあたし・・・。

けど、あのルフィが、あたしの誕生日なんて覚えるのは奇跡に近い。




・・・・これ以上、期待しちゃいけない。

・・・・これ以上、求めちゃいけない。

そう思わないと・・・・やっていけないわ。




そうこうしているうちに、とうとう明日はあたしの誕生日。

クルー達の話に耳をそばだてても、全然あたしの誕生日の話なんて聞こえてこない。




・・・・そうよね・・・?

たった一回だけ、それもずっと前に話しただけだもの。

・・・・・覚えてるわけなんて無いじゃない。




ちょっぴりセンチになった自分に、らしくないとはっぱをかけて、明日着く筈の島での予定を立

てる。




久しぶりの街だもの。

年に一度なんだもの。

少しぐらい自分にご褒美上げても良いわよね・・?




だったら、とびっきりのお洒落をして・・・

とびっきりのお店で・・・・

皆と一緒にパーティーしよう。

何でかと聞かれたら、その時にさらりと言うのよ。

「なんだ、皆。やっぱり忘れてたのね。だと思った。今日はあたしの誕生日なんだからね。」

そう言って笑い飛ばしてやるわ。




それが・・・・あたしらしいやり方・・・よね?




さて、そうと決まれば、明日は忙しくなるわ。

着いたらすぐに船を下りて、ショッピングして、店の予約して・・・・・。




・・・・・・・・なにやってんだろ、あたし・・・。




明日はあたしの誕生日・・・なのに。

なのに、こんなにあたしの心は・・・。

ああ、ヤメヤメ、もう、寝ようっと。

そうして、あたしは、一人ベッドに潜り込んだ。








「おっす!ナミ!!起きろーっ!! 島に着いたぞ、島に!!」

身体を大きく揺さぶられて、聞こえた声に、驚いて身体を起こす。

瞳の前には、嬉々としたルフィの顔。

ドクンと心臓が震えた。

「ちょ、ちょっと、ルフィ。 あんた、ノックぐらいしなさいよ! びっくりするじゃない!!」

「だってよ、早く街に行きてえんだ。 もう待ちきれなくてさ・・・。」

照れ隠しに不機嫌を装って言ったあたしの声に、ルフィは、本当に見惚れるほどの笑顔を向

ける。




なんだ、そういうこと・・・。

つまりは、冒険したくてしたくて、ウズウズしてるのね。

なんで、あたしったら、こんな冒険馬鹿に惚れちゃったんだろ・・・?




「・・・・わかったわよ。 皆を甲板に集めといて。 着替えたらすぐに行くから。」

あたしは頭を抱えてそう言って、ルフィを部屋の外に押しやった。

バタバタと着替えを済ませて、甲板に出ると、他のクルー達も集まっていた。

「ログが溜まるのは、2日後。 だから、それまでは、いつものように自由行動で、良いわ

ね? えっと、今日の船番は・・・?」

「あ、俺がやりま〜すvv 買出しは、明日で良いのでv」

いつものように、サンジ君が船番を名乗り出てくれて・・・

「あ、そう。 じゃあ、ゾロとサンジ君、船番よろしく。」

二人の顔を見て、そう返事する。

「なんで、俺まで・・・・」

「あらぁ? ゾロ、違うの??」

ぼそりと呟かれたゾロの声に、わざとにっこり笑ってそう声をかけると、ゾロは、ばつが悪そう

な顔をした。




本当、羨ましくて、やになっちゃう。




「だったら、良いじゃない。 じゃ、そういうことで。 それと、今日・・・・」

「あ、ナミさん、今日、夕方には、船に戻ってきて貰えませんか? 大事なお話があるんで

す。」

今日の予定を皆に言おうとした矢先、サンジ君が、あたしの言葉を遮るようにそう言う。

「あ、そう。 ・・・・わかったわ。 じゃあ、解散!」

なんだか出鼻をくじかれて、今日の予定、皆に話しそびれた。

意気揚々と、ルフィを先頭にクルー達が船を下りていく。

その後姿を見つめてると、なんだか、むなしくなってきた。




なにやってんだろ・・・・あたし・・・?

言えばよかったじゃない・・・・・・今日は、夕食は外でねって・・・・

ただそれだけのことだったのに・・・・




暗い気分のまま、船を下りようとはしごに手を掛ける。

「おい!ナミ!! 何やってんだよ!! 早く!早く!!」

そう叫ぶルフィの声と腰に回ったあいつの腕・・・。

「えっ?! やだ、なに??」

ふわっと身体がはしごから浮いて・・・気が付いたら、ルフィの胸の中・・・。

あまりの出来事にただただ驚いて・・・・。

間近に見るルフィの笑顔に、まぶしくて視線を逸らした。

抱きしめられた腰が熱い。

あいつの腕が触れているところに神経が集中していく。

ドキドキが・・・・・・・溢れそう。

そんな自分をごまかすように、わざとなんでもない風に言葉を紡ぐ。

「一体、なんだって言うのよ! 何でこんなまねを・・・。」

「あ? だってさ、今日、ナミの誕生日だろ? 俺さ、金無えし、プレゼント買う事もできねえ

から、せめて、ナミの買い物の荷物持ちしようと思ってさ。」

意外なルフィの一言・・・・。

「嘘・・・・・。」

思わず、泣きそうになる。




そんなの・・・・・・反則・・・。

だってあたし・・・・・・・・・そんなの予想してなかった・・・。

やだ・・・・・・泣きそう。




「やっぱ、そんなんじゃ、ダメかぁ?」

がっかりとしたようにルフィがあたしを覗き込む。

その顔を見た途端・・・・

ダメ・・・・・涙が、抑え切れない・・・。

「ルフィ・・・ルフィ・・・・!!」

あたしは、ルフィの首にしがみついて、泣いた。

「ナ、ナミ!! どうしたんだ! 俺、なんか悪い事言ったのか?!」

事情がわからないルフィは、慌ててそう叫ぶ。

「ううん・・・・違うの。 嬉しかったの・・・・ルフィが、覚えててくれたから。」

らしくもなく、素直にそう言えた。

「なんだ、そうか。 ニシシ、俺、覚えとくってそう言ったろ? だから、ナミの誕生日だけは、

忘れない。 それに・・・ナミは、特別だから・・・。」

さらりと言われたルフィの言葉に、耳を疑う。




あたしは・・・・・・・特別・・・?

それって・・・・・・

それって、どういう・・?




 

「特別・・・?」

もう一度確かめるようにそう呟いてみる。

「おう! ナミは、特別だ! さ、行こうぜ・・・!!」

そう言って、はにかみがちに笑って手をとられた。




もう、馬鹿・・・。

どういう意味の特別かを聞いてみたかったのに・・・。

そんなにさらりと手を繋がれたら・・・・・

そんな事、どうでも良くなるじゃない。




「うん・・・。」

そう小さく返事して、真っ赤な顔を隠すように俯いてルフィと並んで歩き出す。

さっきまでの暗い気分が嘘のよう。

予想外の一日が、始まる。

きっと、今までで一番の素敵な・・・・誕生日。




少しだけ・・・・・素直でいてもいいよね・・・?




夕方、たくさんの買い物をルフィに持たせて、船に戻る。

はしごを上って、甲板に顔を覗かせたら・・・

「ナミさん!! お誕生日おめでとう!!」

パンとクラッカーの音が鳴り響き、サンジ君の声が聞こえた。

「「「「誕生日、おめでとう!!!」」」」

その後に、次々にクラッカーのなる音と、クルー達の声。

「嘘・・・・・。 皆、覚えていてくれたの?!」

今日、二度目の予想外の出来事・・・。

「当ったり前じゃないですか!! クソ腹巻の誕生日は忘れてもナミさんの誕生日は忘れる

わけありませんvv」

「って、おい!!」

いつものような、サンジ君とゾロの掛け合いに思わず笑ってしまった。

「ありがとう、みんな!! 凄く嬉しいわ!!」

そう言って乾杯の音頭をとる。




今日は、本当に、予想外の事ばかり・・・。

ふふ・・・・・・こんなに嬉しい誕生日なんて、早々無いわね。

けど・・・・・今夜、予約してた店のキャンセル料・・・

きっちり、皆に払って貰わなくちゃ・・・。




密かに、魔女の微笑を浮かべたナミに気が付いたものは誰もいない。

「じゃあ、あたしの誕生日に、かんぱ〜い!!!」

「「「「「「かんぱ〜い!!!」」」」」」

ゴーイングメリー号に、明るい声が響き渡った。








<END>



 



<コメント>

・・・・・・・ナミ誕です。
こっちの方が、お祝いらしいので、日記から改めて書き足して
UPしちゃいましたv(殴)
結構、書けるじゃん、ルナミ!!
けど、しょぼい?(笑)

では☆脱兎!(鉄拳)


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