DEAR LADY







7月3日、快晴の天気。

ゴーイングメリー号は、とある島に停泊中。

その船から金色の髪に蒼い瞳、黒のキャミソールとベージュの膝丈のフレアースカートをヒラ

ヒラと風に遊ばせ街に向かう人物が一人・・・。

その隣りには、それを眺めては、一人ほくそ笑んでいる緑髪の剣士・・・。

見た目には、極普通のカップルに見えるのだが・・・。




・・・・・何処で、どう間違ったのか・・・?

俺は・・・・・・なんで、こんな格好を・・・・?

いくら、ナミさんの為とは言え・・・・・・




「何で、俺が、こんな格好をして街を歩かなきゃならねえんだよーっ!!」

サンジの絶叫に、通りすがりの人々が一斉に、二人の方へ瞳を向ける。

「・・・・おい、サンジ。 ここまで来て往生際が悪いぜ。 ただでさえ目立ってんだ。 少しは、

大人しくしろよ。」

そう言って、並んで歩いていたゾロは盛大に溜息をついて笑いを噛み殺すと、サンジの腕を

引っ張ってその場からスタスタと歩き出した。









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7月3日といえば・・・・・

いわずと知れた、ゴーイングメリー号の天才航海士ナミの誕生日。

そこで、クルー達は、ナミに何をプレゼントしたら良いか一週間前から相談しあった。

しかし、海賊とは名ばかりの貧乏なクルー達に高価なプレゼントは用意できそうにない。

しかも、船の金銭的なものは全てナミが取り仕切っている。

ルフィ・ゾロ・ウソップ・サンジの中で、お金を持っているのはウソップとサンジだけ・・・。

「う〜ん・・・。 なんかねえかなぁ・・・?」

とウソップが腕を組んで考え込めば、

「肉やろうぜ、肉!」

と、すかさずルフィが、口を挟む。

「んなの喜ぶのはてめえだけだ、ルフィ。 別にパーティーだけで良いんじゃねえか? ナミ

だって金の無え俺達からプレゼント貰うなんて考えてもねえだろからな・・・。 だから、自分

の誕生日が近づいているというのに、何も言わねえじゃねえか。」

眠たそうにあくびを堪えてゾロがそう言うと、

「本当、女心のわからねえクソまりもだな、てめえは。 良いか? レディと言うのはだな、

記念日には形あるものを贈ってもらうと嬉しいものなんだぜ。 それが、思いもかけないところ

からなら、嬉しさも倍増するってもんだ。 『えっ?私に? ありがとう、サンジ君v大好きよ〜

vv』なんて言ってくれてお礼にチューなんかしてもらえちゃったりしてvv ああ、ナミさん、待っ

ててくれますか〜v 俺、絶対に貴方に似合うような素敵なプレゼントをvv・・・・」

隣りに座っていたサンジが、そう言い返して、一人盛り上がっていく。

「まりもって言うな、まりもって。 ハイハイ、てめえはいいんだよ・・・。」

何処までもナミ崇拝者のサンジに、ゾロは呆れ顔でそう言ってサンジの頭をポンと軽く叩い

た。

「痛えな! 人がせっかく良い気分でいるのに・・・。 ははん、もしかしてジェラシー・・?」

サンジは口角を上げ、冗談めいてそう言ってゾロの額を指で突付く。

「・・・馬鹿だろ、てめえ・・・。」

「またまたぁ〜、照れちゃってv さあ、この胸にいつものように甘えて良いんだぜvv」

呆れるように自分を見つめるゾロに、サンジは追い討ちを掛けるように両手を広げて、そう言

っておどけて見せた。

「いつものように?? ・・・・・・・・・・・ゾロ、いつもサンジに甘えてたのか・・・?」

「そうだったのか・・。 ・・・・・・・・・・知らなかった。」

ウソップとルフィが、サンジの冗談を真に受けて真剣にゾロを見つめる。

ヒクッとゾロの眉が動き、その額にくっきりと青筋が浮かぶ。

「叩き斬る!!」

カチリと柄のなる音と共に、サンジの頭上に和道一文字が振り下ろされた。

「うわっ! 危ねえな! いきなりなにすんだよ!!」

サンジは、その切っ先を持ち前の俊敏さでサッと避けると、ゾロの後頭部めがけて足を振り

下ろす。

ゾロは、それを見越したようにニヤリと笑い、その振り下ろされた足をしっかりと掴んで、床

にサンジの身体を叩きつけた。

「・・・・勝負あったな、このクソコック・・・。」

「痛え!! おら、離せよ! この筋肉馬鹿!!」

ゾロに馬乗りにされ、身動き取れないサンジは、それでも何とか逃れようと必死で身体を捩

ってもがく。

ゾロは、そんなサンジを見下ろして口角を上げると、スッとサンジの顔に近づいた。

「いつものように、黙らせてやろうか・・・?」

「う゛・・・・・・・・・。」

耳元で囁かれるゾロの声に、サンジは、ピタリと動きをを止める。

そっとゾロの表情を伺い見れば、まさしく、獰猛な獣が獲物を捕らえた時の瞳・・・。

ゾクンとサンジの背中に甘い痺れが走った。

「もしも〜し。 お取り込み中、誠に申し訳ないんだが、まだ俺達いるんですけど・・・。」

見詰め合ったまま動かないゾロとサンジに、ウソップはいたたまれないという風に声を掛け

る。

「あ、わりい、そうだった。 つい・・・。」

「・・・・・そう思うなら退けーっ!!」

ウソップの言葉で力の緩んだゾロの一瞬の隙をついて、サンジは膝でゾロの腹部を蹴り上げ

立ち上がった。




いや〜・・・・危ねえ、危ねえ。

思わず、流されちまうところだったぜ。




サンジは、緩んだネクタイを締め直しながら、椅子に腰掛ける。

「・・・・・・・・・後で、覚えてろよ・・・。」

ゾロも蹴られた腹を擦りながら、サンジの隣りに座り直した。

「・・・で、結局どうすんだ? なんか良いもんねえかな? あっ、これなんかどうだ?」

ウソップが、さっきの騒動で床に落ちた紙に目を留め、テーブルにその紙を広げる。

『年に一度のレディースデー開催。 店内、全商品50%から80%OFF!!』

それは、今度上陸する予定の島のブティックの広告だった。

「おっ! 良いじゃん、これ!! これだったら、ナミさんもきっと喜んでくれそうだし・・・ここに

行ってナミさんに似合いそうなプレゼント見つけようぜ。」

値段的にも余裕の無い自分達にはうってつけだとサンジは、皆にそう言う。

「俺は、こう言うのはよくわかんねんから、てめえらに任せる。」

「うん、俺も金無えから、サンジに任せる。」

ゾロとルフィは、興味なさそうにそう返事をした。

「じゃあ、決まりだな。 まぁ、てめえらの服装を見ても、俺が選ぶのが妥当だろうな。 食材

の買出しもあるし・・・俺が、買ってきてやるぜ。」




バーゲンといえば、素敵なレディがたくさん集まってよなぁvvきっと・・・

凄え美味しい展開じゃねえ?これってvv

いわゆる一つのハーレムv

・・・・・・ぜってえに、行く!!




サンジの頭の中は、その店で溢れかえる女性に揉みくちゃにされながら、ナミのプレゼントを

選ぶ自分の姿・・・。

サンジのやに下がったその表情とタバコからあがるハート型の煙に、ゾロは人知れず頭を抱

えた。

「けどよ、サンジ・・・・」

「あん? 俺が行くって事に文句でもあるのかよ?」

「い、いや、別に文句なんて・・・」

「だったら、つべこべ抜かすんじゃねえ! 俺が行くってったら絶対行くんだよ!!」

広告とサンジを見比べ、自分に何かを言いたそうなウソップに、サンジは、この役目は譲らな

いとばかりにそう言い切る。

「・・・・・・わかった。 サンジがそこまで言うのなら、俺もこの件は、全面的にサンジに任せ

る。 良く、決心したな、サンジ。 お前のナミを想う気持ち、凄えぜ、立派だ、サンジ!!」

ウソップはそう言うと、サンジの手をしっかりと握った。

「おう、任しとけ、ウソップ! 俺のハイソなセンスでナミさんに素敵なプレゼント用意してやる

ぜ。」

サンジもそう言って、ウソップとがっちりと握手を交わす。

ゾロは、ウソップのあまりのオーバーなリアクションに不可解さを覚えて、その広告を手に取

った。

『当日は、レディースデーにつき、女性のみの限定でございます。 女性以外の方のご来店

はご遠慮ください。 但し、ご同伴の男性は入店可。』

ニヤリとゾロの口元が歪む。

「ククク・・・・じゃ、そういう事で、クソコック、てめえが責任持って買うんだぜ。」

「何笑ってんだよ、てめえ。 てめえに言われなくてもちゃんと買ってきてやるさ。」

「ククク・・・・・そりゃあ、楽しみだな・・・。」

ゾロは苦笑しながら、サンジにその広告を手渡した。

「なにへらへら笑ってやがんだよ、気色悪い・・・。」

そう言いながら広告に再度目を通すサンジに、ゾロはその注意書きを指で指した。

「んなっ!!! な、な・・・・なんだとぉ??!!!!」

その文字を見た瞬間、サンジの口元からタバコがぽとりと床に落ちる。

サンジの紅潮した顔が、真っ青に変わっていく・・・。

「んじゃあ、サンジ。 後はよろしく頼むな。 俺達、もう遅いから寝るわ・・・。」

「んじゃあなぁ〜。 サンジ頼んだぞぉ〜。」

火の粉が我が身に掛からぬ内にと、ウソップはルフィと共にそう言うと足早にキッチンを出て

行った。

残ったのは、灰のように燃え尽きたようなサンジと、それを見て笑いを噛み殺しているゾロの

二人・・・。

「ククク・・・・結構似合うかも知れねえぞ、てめえ、細えから・・・。」

ゾロは苦笑しながら、呆然とするサンジの腰を抱く。

「うわっ!! 何しやがんだ、このエロまりも!! てめえ、離せ!! 俺は、今、そういう気

分じゃねえんだよ!! 勝手にサカってんじゃねえ!! このクソまりも!!オヤヂ発言して

んじゃねえよ! クソッ! そのにやけきった面を止めろ! 誰も、まだ女装するとは言って

ねえ!!」

「・・・・・・うるせえよ。 てめえが言い出したことだろ? 男に二言はねえ筈じゃなかったの

か? それに・・・・もう誰もいねえんだ。 さっきのお仕置きもまだだしな・・・。」

次々と機関銃のように捲くし立てるサンジの罵声も構わず、ゾロはもがくサンジをしっかり抱

いて、そのまま唇を自分ので塞いだ。

「えっ、おい・・・・あ・・・・んっ・・・・・んん・・・・んーっ・・・!!」

塞ぐだけの口付けから深い口付けへと移行する頃、サンジの身体から抵抗感がなくなる。

ゾロは、それを心得たようにサンジを抱き上げ、壁際のソファーにサンジの痩躯を横たえた。

「ククク・・・次の上陸が楽しみだな。 俺が付き添ってやるからな・・・。」

「このエロ剣士・・・!!」

そう言ってゾロの言葉にきつい瞳を向けたサンジに、ゾロは苦笑して、もう一度唇を塞ぐとゆ

っくりとその痩躯に愛撫を加え始める。

「あっ・・・・・んっ・・・・ヤァ・・・・ゾ・・・ロ・・・・!!」

いつしか、サンジの唇からは嬌声しか漏れ聞こえなくなって・・・・・

それから、いつものように二人の睦事は、翌朝まで及んだ。







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「ほら、さっさと行って来いよ。 俺は、ここで待ってるから・・・。」

店内に溢れかえる女性達にうんざりとした表情を浮かべ、ゾロはそう言って壁際に凭れた。

「おう。 そんなに時間は掛けねえから、そこで待ってろ・・・・・・・・・・お嬢さ〜んvv」

サンジは、自分の状況も忘れて、嬉しそうに女性達の中に駆けて行く。

「てめえも、今、見てくれは女なんだよ・・・・阿呆だな、あいつ・・・。」

ゾロは、そんなサンジの背中にぼそりとそう突っ込みをいれ、溜息を吐いた。

くるくると忙しなく店内を動き回るサンジ・・・。

その手には、数種類の洋服がしっかりと握り締められていて・・・・。

こんなに女性がたくさんいるにもかかわらず、その中からサンジを見つけ出す事が容易に出

来る自分にゾロは、苦笑する。

「あんたも付き合い? 女って言うのは、どうしてこうセールが好きなのかな・・・。」

不意に、隣りからそう声をかけられ、ゾロは、同じように壁際に立っている男を見た。

「そう思わね・・・?」

20歳過ぎのその男は、そう言ってゾロに笑い掛けた。

「あんたもか? ククク・・・・そうだな。」

ゾロもそう言って苦笑する。

事情を知らないこの男は、自分と同じ境遇だとゾロに親近感を持ったらしい。

「あ、ほら、あそこ! あの娘、見てみろよ。 凄え美人だよなぁ。 一人かな? 妹に連れら

れて嫌々来たんだけど、こりゃ、思わぬラッキーだな。 後で、声かけてみるか・・・。」

そう言って男が指した先には、サンジの姿。

ゾロの眉が、ひくっと動く。

「ああ、そう言えば、あんたの彼女はどれなんだ? ここから見えるのか? 美人?それとも

可愛い系? うちの妹もなかなか可愛いんだけどな。」

ゾロの表情に気付かず、その男はサンジを見つめながら話を続けた。

「けど、あの女の子には負けてるな。 ん? あ、あの娘、こっちに来る。 チャンスだ。」

呟くようにそう言って、男は、身だしなみを整え、ゆっくりとサンジの方へと向かう。

「あ、あの・・・・・・」

「ゾロ、待たせたな。 さ、帰ろうぜ。」

その男が自分に話しかけたと気が付いてないサンジは、満足のいくプレゼントを手に携えて

ゾロにそう言って微笑んだ。

「・・・・・・もう済んだのか? じゃあ、行くか。」

ゾロはそう言うと、呆然と見つめるその男ににやりと笑ってから、サンジの腰を引き寄せる。

「ちょ、ちょっと、馬鹿、なにすんだよ! くっつくな!」

「いいから、早く出ようぜ。」

ゾロは、焦りまくっているサンジに苦笑しながら、サンジの手を繋いでその店を出た。

「なんだよ! いい加減に離せよな!」

「断る。」

「ったく、ガキじゃねえんだから・・・。 おい、手、離せよ。」

「なんで?」

「なんでって・・・・・・・・恥ずかしいだろうが!」

「俺は、恥ずかしくねえし・・・。」

「てめえがそうでも、俺は恥ずかしいんだよ! わかったら、手を離せ!早く!!」

「・・・・却下。」

「・・・ったく、そんなに手繋ぎてえのかよ。 あ、もしかして、俺のこの姿にメロメロとか・・?」

いつものように、またサンジが、ゾロをからかうようにそう言って笑う。

「・・・・そうかもな。 このままホテルにでも連れ込んでやりてえところだ。」

ゾロはニヤリと笑い返してそう言うと、グッと握る手の力を強めた。

予想外のゾロの反応に、サンジの表情に焦りが浮かぶ。

「冗談じゃねえぞ!! おい、こら!離せ!! 魔獣!! いやあ、ケダモノ〜!!」

そう言って暴れるサンジに周囲の人の視線が集まる。

「うるせえな! それ以上騒ぐと、本当に連れ込むぞっ!!」

ゾロはそう一喝すると、サンジの唇を一瞬のうちに奪った。

それを見ていた周囲からどよめきが起こる。

「ひ、人前で・・・・・な、な・・・・」

あまりの恥ずかしさに目の前がクラクラしてくるサンジ。

「・・・・・・ほれ、皆が待ってる。 早く帰ろうぜ。」

そんなサンジにゾロは苦笑しながら、そう言って手を繋いだまま船に向かって歩き始めた。












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「「「誕生日、おめでとう!!ナミ!!」」」

「ナミさんvv これ、俺達からの心ばかりのプレゼントですv」

「ありがとう、皆!! すっごく嬉しいわ。 本当に・・・ありがとう!!」

その日の夕方、ナミの誕生パーティーは盛大に執り行われた。

「・・・・・・ゾロ。 あんた、今日はなんだかとっても楽しそうね。 まぁ、あたしの誕生日にかこ

つけて、今日一日、色々と楽しんでたんだものね・・・うふふvv」

甲板の縁で飲んでいるゾロに近づいて、ナミは意味深な笑みを浮かべる。

「別に、関係ねえだろ、放っとけ!」

それ以上突っ込まれたくないゾロは、そう言ってグラスの酒を飲み干した。

「あらぁ、せっかく、サンジ君に貸していた洋服の貸し賃、チャラにしようと思ったんだけど、

止めたわ。 ゾロ、あんたの借金、プラス5万ベリーね・・・。 あ、あの服、返さなくて良いか

ら。 サンジ君に伝えといてね。 じゃあ、おやすみv」

そう言って、ヒラヒラと手を振って自分の部屋に戻るナミに、

「5、5万だと?! ・・・・・クソッ、やっぱ、あいつは魔女だ・・・。」

ゾロはそう呟いて、ナミの背中を睨みつける。

「ん・・・?どうした?エロ剣士・・・? ナミしゃんは??」

そこへ、ほろ酔い気分で上機嫌のサンジが現れた。

「ナミなら、部屋に戻ったぜ。」

「なんだ、ナミしゃん、戻っちまったのか・・・・しゃーねぇ、てめえで我慢するか。」

サンジはそう言うと、ゾロの隣りに腰掛けて酒を飲む。

「・・・・・・・・・まっ、今日みてえのも悪くねえな・・・・。」

ゾロは、そんなサンジの顔をじっと見つめて、そう呟いて酒を飲んだ。










「・・・ったく、これじゃあ、誰の誕生日か、わかったもんじゃないわね。 けど・・・・・こんな

誕生日も、まんざら嫌じゃないわ。」

ナミは、そう呟いて、皆からのプレゼントをそっと抱きしめた。





HAPPY BIRTHDAY DEAR OUR FAIR LADY!!









<END>


 



<コメント>

・・・・・・・ナミ誕です。
誰がなんと言おうとナミ誕です。
・・・・・・ナミ姉さん、これがうちのサイトの祝い方。
ごめんよ〜、ただ、ナミ姉さんの誕生日にかこつけて
書きたかっただけなのさ〜。(死)

では☆脱兎!(鉄拳)


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