HAPPY SWEET BIRTHDAY







「ハイ、OKです! 皆さん、お疲れさまでした!」

A.Dの声が、スタジオに響いた。

「サンジ、お疲れさん! 最近、いつにも増して忙しそうだけど・・・・・疲れ溜まってんじゃ

ねえか? 程々にしとかないと身体、壊すぜ。 まぁ、サンジが出てくれるおかげで、視聴率

は良いから、俺達は、万々歳なんだけどサ・・・・・」

収録が終わったスタジオで、ディレクターのエースが、心配そうにサンジにそう声を掛ける。

「あっ、お疲れさま。 うん、ちょっと、ここのとこハードだけど、もう少しの辛抱だしね。 

・・・・・大丈夫だから。 俺、そんなに柔じゃないし・・・・・」

サンジは、やや疲れた表情を見せたものの、すぐににっこりといつものように微笑んで、

エースにそう言った。

「なら、良いんだけどサ・・・・・」

「サンジ君、急いで! この後、雑誌のグラビアが4本、その後の対談が、3本、FBNテレビ

の収録1本、その後ラジオの生番組が1本入ってるんだから・・・・・」

エースと話しているサンジの元に、ナミが急ぎ足で駆け込んで来る。

「あっ、じゃあ、そう言うことだから。 エース、じゃあな、また・・・・」

「さあ、急いで!!」

サンジは、エースへの挨拶もそこそこに、ナミに引っ張られるようにスタジオを後にした。

「・・・・ねぇ、サンジ君。 本当に、身体の方、大丈夫なの? ここ一ヶ月、ずっとこんな状態

で、あまり眠ってないんじゃない? いくらサンジ君でも、身体壊すようなことになったら・・・・

あたし、マネージャーとして失格だわ。」

ナミは、次の撮影先に車を走らせながら、サンジにそう言う。

「ううん、全然平気だよ。 忙しいのわかっていて、どうしても明日、丸一日、お休みが欲しい

って言ったのは、俺の方だし。 ナミさんを困らせるようなことは、絶対にしないから。 

それに、俺、見た目より全然頑丈なんだよ、こうみえても。 さっ、仕事、仕事・・・・」

サンジは、助手席でナミににっこりと笑って、そう言い返した。

「あ、そうだったわね。 明日、サンジ君の誕生日だったよね? うふふ、あいつと二人っきり

でお祝いするの? 良いなぁ・・・・彼氏持ちは。 ところで、あいつの方は、大丈夫なの? 

最近、あいつも俳優として人気出てきて、何処の番組にも引っ張りだこじゃない?」

「えへへ。 その点も、大丈夫。 ちゃんと一ヶ月前から約束してたんだ。 あいつ、約束破る

ような奴じゃないから。」

「あらあら、これは、ごちそうさま。 独り身には、とっっっっっても、羨ましいお話をどうもあり

がとう・・・」

サンジの言葉に、ナミはわざと大げさに呆れた声でそう言うと、にっこりと笑った。

ナミが、あいつと称するのは、サンジの付き合っている人物、ロロノア・ゾロ。

今から、ちょうど一年前。

ちょっとしたきっかけで知り合い、ゾロとサンジは付き合い始めた。

ナミは、当初、付き合い始めた事をサンジから聞いて、猛反対した。

この恋は、サンジを芸能界から、いや、社会から追放されかねないと。

相手が、異性ならまだ、芸能界の中でも、社会的にもどうとでもなる。

そう、女性なら・・・・・

ナミの手腕でどうとでもなったに違いない。

しかし、相手が、同性。

・・・・・・男。

しかも、駆け出しの新人。

人気絶頂のバラドルのサンジにとって、これほど似つかわしくない相手はいない。

それこそ、水面下で色々な美人タレントやアイドル達からラブコールを受けている身なのに。

まぁ、それらは、全てナミの手によって本当に水面下から浮上したことはなかったのだが。

そのサンジが、よりによって・・・・である。

そして、サンジはナミに言い切った。

ゾロと付き合いが出来ないので有れば、きっぱりと芸能界を辞めると。

これまで、一度たりとも自分に逆らったことのないサンジが、売れるかどうかもわからない駆

け出し新人の為に、今の生活を捨てると言うのだ。

仕事以上にサンジの才能に惚れ込んでいるナミには、ショックだった。

それ故に、その恋の真剣さを認めざるを得なかった。

ナミは、観念するしかなかった。

しかし、ゾロとも接触するうちに、サンジが惹かれた理由がわかる気がした。

この男は、物事の本質を見極めることが出来る奴だと。

それと、妙に惹かれる不思議な魅力が、ゾロにはあった。




本当に、サンジ君、とっても嬉しそう。

まっ、あいつと付き合い始めてから、初めて迎える自分の誕生日ですものね。

それも、二人きりで、だし。

初めは、なんであんな奴と?なんて思ってたけど。

今では、人気急上昇の新人俳優だし。

さすが、あたしのサンジ君。

見る目だけは確かね。

でも、気を付けなくちゃ。

仕事は、お互いが今一番大切な時期。

決して、他の人やマスコミに悟られるだけは、避けなくちゃ。

そこが、あたしの腕の見せ所よね。




「さっ、サンジ君、着いたわよ。 一発で終わらせて、残りの仕事終わらせちゃいましょう。」

「りょーかい! ナミさん!!」

ナミとサンジは、そう言って次の仕事場に駆け出して行った。

スタジオに入る途中、廊下でサンジは、ゾロに会う。

「あっ、ゾロ。 偶然だな。 これから、仕事?」

「ああ、今、週刊誌の表紙撮影が終わって、これからドラマ撮りで移動するとこなんだ。 

お前は?」

「俺は、これからグラビア撮影。 なぁ、明日、ちゃんとわかってるよな? 約束忘れてないよ

な?」

「まさか、当然だろ? 任せとけって。 でっかいバースディーケーキ持って行くから。 

それと、部屋に入り切れないほどのプレゼントも持ってさ。」

「えへへ。 嘘ばっかし。」

「ククク。 まっ、楽しみにしとけよ。」

サンジとゾロは、そう言ってにこやかに笑い合う。

「ゾロ! ほらっ!! 時間押してんだぞ。 早く!」

「あっ、いけね。 今、行きます。 じゃあな、サンジ。 明日5時には必ず部屋に行くから。」

「うん! 待ってるから。」

マネージャー兼社長に急かされて、ゾロは、サンジにそう言うとバタバタとスタジオを後にし

た。




へへへ。 ゾロと話せちゃった。

最近、お互いに忙しくてなかなか逢えなかったけど・・・・・

明日は、特別。

ゾロと二人きりで過ごす・・・・・・・・・・・・・・・・俺の誕生日。




「サンジ君、そんなとこでまどろんでる暇ないわよ! こっちも急がなきゃ・・・」

「はい!」

ナミに急かされて、サンジも足早にスタジオに消えていった。














++++++++++++++++++++




「おっしっ! あとは・・・・・ ゲッ!! もう後1時間で、5時じゃねえか。 急がなくっち

ゃ・・・・」

早朝から部屋の掃除をし、夕食の買い出しと下ごしらえを済ませ、サンジは慌ただしく、テー

ブルにセッティングする。

午前中から煮込んだスープ。

子羊肉のポワレと舌平目のムニエルのフォアグラソース。

生ハムとバジルのミモザサラダ。

そして・・・・・・フランスから直輸入して貰った自分の年のワイン。

全ては、この日のため。

朝から、フランス料理の本と格闘し、何度も作り直して。

日頃、料理を作る暇もないほど忙しいサンジにとって、簡単なサラダを作るのも大変で。

使い慣れてない包丁や食材に悪戦苦闘を繰り返し。

無駄になった食材に心から詫びを入れゴミ箱へ。

血が滲む左手には絆創膏の指。

それでも、やっとなんとか自分の納得のいく味を出して。

満足げに、飾られたテーブルに手抜かりはないかを何度もチェックした。

「うっしっ! 後は、俺が着替えるだけ・・・・やっぱ、パーティースーツかなぁ・・・」

サンジは、もう一度シャワーを浴び、いそいそとスーツに身を包んだ。

・・・・・・時計は、5時ジャスト。

「そろそろ、来るよな。 よし、もう一度テーブルの上のチェックだ。 えへへ、我ながら良い出

来だよな。 『おっ、サンジ、これ美味いなぁ。 サンジって料理上手いんだなぁ。』とか言って

くれたりして・・・・でへへ・・・・参ったなぁ。 どうしよ、そんなに誉められたりしたら。」

もうすぐ訪れる筈の楽しい二人の時間を思い描き、サンジは時計に瞳をやり、玄関の音に

耳を澄ませる。







・・・・・・6時。

「・・・・おかしいなぁ。 どうしたんだろ、ゾロ。」

ソファーで時計を眺めていたサンジに、電話のベルが鳴る。

「はい、もしもし・・・あっ、ゾロ。 どうした?」

サンジは、慌てて受話器を握る。

「もしもし、ごめん、サンジ。 収録が延びちゃって・・・・・今から行くから。 もう少し、待って

てくれ。」

ゾロは、申し訳なさそうにそう言ってサンジに謝った。

「うん。 仕方ないよ、仕事なんだから。 けど、なるだけ早く来てな。 俺、待ってるから・・・」

ゾロからの連絡にサンジはそう返事をし、電話を切る。

「『今から、行くから。』だって。 えへへ、もうすぐだ。 もうすぐ、ゾロが・・・・」

サンジは、嬉しそうにそう呟いて、冷めた料理を温め直す事にした。





「・・・・・サンジ、何て言ってた? 遅れたって怒ってなかったか?」

電話をかけ終えたゾロの後ろで、心配そうな社長の声がする。

「あ、ああ。 大丈夫でした。 俺に何かあったんじゃないかと心配してましたけど。 怒って

なかったようです。 それじゃあ、俺、今からあいつのとこに行くんで、今日は、これで・・・・」

「ああ、サンジにおめでとうって伝えといてくれよな。」

「はい、わかってますって。」

ゾロは、社長にそう言って笑うと廊下を駆け出す。

「ねぇ!! ロロノア君! ちょっと待って!! お願いよ! 私を助けて!!」

背中に叫ぶ声を聞き、ゾロは、立ち止まり振り返る。

よく見ると、今より全然人気がなかった頃から、よく目を掛けてくれたプロデューサーのロビン

だった。

元々無名に近い新人のゾロが、人気を博したのも、ロビンの作ったドラマの主役に抜擢され

たからと言っても過言ではない。

「どうしたんですか? ロビンさん。 そんなに慌てて・・・・」

「お願い、私を助けて! お願いよ、ロロノア君!!」

ゾロの言葉にロビンは切羽詰まった声で懇願した。







・・・・・・6時30分。

ピンポ〜ン・・・・

玄関のチャイムが聞こえた。




あっ、ゾロだ!

ゾロが来た!!




「はぁ〜い。 ちょっと、待ってて。 今、開けるから・・・・・いらっしゃい、ゾ・・・・」

「済みません、宅配便です。 はんこお願いします。」

ゾロだと思ってうきうきと玄関を開けたサンジに届いたのは、宅配便の荷物だった。

「毎度ありがとうございました!」

「・・・・・なんだ、社長からか。 ・・・・何だろ? うわあ、すっげえ。 ドンペリだ、ドンペリ。

早速冷やして、ゾロが来たら開けて一緒に飲もうっと。」

サンジは、社長からのプレゼントのドンペリを自分の買ってきたワインと共に冷やし、テーブ

ルに置く。

プルルルル・・・ルルルル・・・・

「あれ? 今度は、誰からだろ?」

サンジはそう呟いて、受話器を取った。

「もしもし・・・・」

「あっ、サンジか?」

電話の相手は、もうすぐ来るはずのゾロからだった。

ゾロの声が少し沈んでいるのを、サンジは、すぐに感じ取った。

「あ、あのさ・・・・・・WFNテレビのロビンさん、サンジも知ってるだろ? そのロビンさんが、

手掛けてるドラマの今夜の放送分のテープが、手違いでおしゃかになっちゃって・・・・ 

それで、急遽、生ドラマすることになったんだ。 それで、俺・・・サンジ?? サンジ、ちゃん

と聞いてる?」

「あ、ああ。 っで、何時からの生放送なんだ?」

「それが・・・・・23時からの1時間ドラマなんだ。 それで・・・・・・俺に出てくれないかって。 

ロビンさんには、デビュー当時から何かとお世話になってるし・・・・俺、断れなくて・・・・

・・・・・・・・サンジ??」




・・・・・・・23時からかぁ。

・・・・・・・もう無理だよな・・・・今日は。

悪い予感・・・・・・・当たっちゃったな。




「あ、ああ。 なんだ、そんなことか。 そんなことだろうと思って、さっき、ナミさんやビビちゃ

ん達を呼んだんだ。 そんなに心配するなよ。 こっちは、楽しくやってるからさ。 

・・・・・・・・・だから、ゾロは・・・・・ゾロは、安心してドラマに集中しろよ。 ビビちゃん達とゾロ

が出るドラマ見てるから。 じゃあ、俺、皆が呼んでるから・・・・・・・・電話、切るな?」

「ごめん、サンジ。 今度は、必ず・・・・・」

「良いって! それより早く、スタジオ戻れよ。 じゃあ、な、ゾロ・・・・・・」

サンジは、明るい声でそう言って、受話器を置く。




・・・・・・・馬鹿だよな。

・・・・・・・一人ではしゃいで・・・・・俺・・・・

・・・・・・・本当、馬鹿みてえ。




「っ・・・・・・ふぇ・・・・・・ヒック・・・・ック・・・・」

シンと静まり返ったリビングにサンジの嗚咽だけがいつまでも聞こえていた。







「本当に、ごめんなさいね。 貴方が、収録の遅れでまだ居るって聞いたものだから。 

それに、この主役を演じるの、貴方しか浮かばなくて・・・・・ 無理言って、ごめんなさい。 

今後、私に出来ることが有れば、喜んで協力するから。」

ロビンは、すまなそうにゾロにそう言って、頭を下げる。

「いえ、そんなに謝らないで下さい。 いつもお世話になってるのは、こっちの方だし。 

困ったときは、お互い様です。 さっ、頭を上げて下さい。」

「本当に、ありがとう。 ロロノア君。 じゃ、悪いけど、よろしくね。」

ゾロとロビンは、そう言いながらスタジオに向かった。

「ゾロ!! なにやってんの!!こんなところで!!」

スタジオに入る一歩手前で、ゾロは、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「あれ?? ナミ? なんでここに?? サンジのところにいるはずじゃ・・・・・」

「シーッ!! 黙って!! ちょっと、こっちに来て!!」

ナミは、自分の姿を見て驚いているゾロの腕を掴むと、階段の脇に連れていく。

「なぁ、なんでサンジのところにいるはずのお前がここに居るんだ?」

「それは、こっちの台詞よ!! なんであんたが、この時間、ここにいるのよ。 今日、サンジ

君、あんたと二人きりで誕生日お祝いするって言ってたのに。 そのあんたが、なんで収録

なんか呑気にやってるのよ!」

「えっ?! さっき電話したとき、サンジ、お前とビビを呼んで誕生パーティーして騒いでるか

ら、俺に、安心してドラマに出ろって・・・・・・」

「馬鹿ねえ。 そんなの、あんたに心配掛けないように吐いた嘘に決まってるじゃない。 

サンジ君が、この日をどんなに楽しみにしてたかわかる? あんたと二人っきりでお祝いする

って・・・・・凄く楽しみにしてたのに、他の人なんて呼ぶ訳無いわよ。 この一ヶ月、それこそ

寝る間もないくらい頑張って・・・・・自分の誕生日を一日オフにするために。」

「あア??」

「まさか、あんた、知らなかったの?」

「だって・・・・サンジ、たまたま、誕生日にオフが取れたからって・・・・・」

「本当に、あんたって、馬鹿? あの売れっ子のサンジ君に、そうそう丸一日のオフなんか取

れる訳無いじゃない。 ここ一月、スケジュールを詰めに詰め込んで・・・・・ようやく手に入れたん

だから。 あんたと二人きりの時間が欲しくて、ね・・・・・あんたも馬鹿だけど・・・・・サンジ君

は、もっと馬鹿よね。」

「・・・・・・・・・・。」

ゾロは、ナミから聞いた真実に言葉を詰まらせた。

「ロロノア君、悪いんだけど、急いで貰えないかしら・・・」

ロビンが、スタジオのドアから顔を出してゾロを呼んだ。

「はい、今行きます・・・・・ありがとう、ナミ・・・・」

「フゥ・・・・・ちゃんと謝ってフォローしときなさいよ。」

ナミは、スタジオに走るゾロの背中にそう言って、テレビ局の廊下をゾロと反対の方向に歩き

だした。







・・・・・・・・23時。

「ヤバッ!! いつの間に俺・・・・・・」

肌にヒンヤリとした冷気を感じ、サンジは、慌てて身を起こす。

どうやら、あのあと、泣き疲れてそのままうたた寝をしていたらしい。

瞳の端には、まだ、乾かない涙の跡。

サンジは、袖で涙を拭うと、ゾロが出演しているドラマを見るために、テレビのスイッチを入れ

た。

それは、刑事モノで、アクションを得意とするゾロには、正にはまり役だった。

「・・・・・本当に、生き生きとしてて。 格好良いよ、ゾロ。 いつもどんなことにも、全力投球

で・・・・・・・格好良すぎるよ、ゾロ。」

サンジは、テレビの中のゾロにそう呟く。

サンジは、一人部屋の中でゾロのドラマを見続けた。

そして、ドラマはエンディングを迎え、ゾロが、画面にアップで映る。

「・・・・・・これから、行くから。 絶対に、行く!! ・・・・・待ってろよ!!」

ゾロは、ドラマのラストシーンで見えない巨大な組織に向かってそう叫ぶと、ヘリに乗り込ん

だ。

そこで、ドラマは終わる。

「えっ?!」

サンジの心臓が、ドクンと震えた。




・・・・・・・・今、俺・・・・・・ドキドキした。

ドラマの台詞だったのに。

俺に言われたのかと・・・・・・・そう思っちゃった。

あはは・・・・・どこまでも、馬鹿な俺。







・・・・・・・・・・・23時50分。

「はぁ・・・・・今日も、後10分。 俺の誕生日も、あと、10分で終わりか・・・・」

サンジは、テレビを消して、壁の時計をじっと見つめる。

何気なく、チラリと窓を振り向いたとき、窓の外にヒラヒラと舞い散るものが見えた。

「えっ?! こんな時期に・・・・・雪? もう春が近いのに・・・・・」

サンジは、その光景を確かめるように、窓に近寄った。

「・・・・・・なに? ・・・・花びら?」

そう呟いて窓を開けたサンジに突風が吹き込む。

バッバッバッバラバラバラバラバラ・・・・・

「サンジーッ!!」

もの凄い音と共に、ゾロの声が聞こえた。

サンジは、その声のする方を仰ぎ見る。

ベランダの上空には、ヘリの梯子に片手を掛けたゾロの姿。

その左手には、ピンク色のバラの花束。

ゾロは、テレビと同じ刑事の格好のまま。

そして、ヘリの風に雪のように舞い散っていたのは、そのバラの花びらだった。

「誕生日、おめでとう。 サンジ。 遅れて、ごめん。」

ゾロは、そう叫ぶと、さっとサンジの部屋のベランダに飛び降りる。

「・・・・・・馬鹿。 ここ、14階だゾ・・・・・」

サンジは、涙声でそう言ってゾロの胸に顔を埋めた。

「・・・・いらっしゃい、ゾロ。」

「お邪魔します。」

ゾロは、サンジの言葉にそう返事して、サンジを抱き締め返す。

「・・・・5分前。 ・・・・・ギリギリ、セーフだな。」

ゾロは、腕時計を見つめ、サンジを抱き締める腕にそっと力を込めた。







HAPPY SWEET BIRTHDAY

ずっと、ずっと、この腕の中で。

君を幸せにしたいんだ。

それが俺にしか出来ないことと。

そう、自惚れても良いだろうか。







その日、サンジにプレゼントされたのは、銀のチェーンに繋がれた一本の鍵。

いつでも逢えるようにと、はにかみがちにゾロから手渡されたそれは。

その日から、いつもサンジと共にある。

そう・・・・・・それは、二人が愛を紡ぐ、幸せの鍵。







HAPPY SWEET BIRTHDAY

ずっと、ずっと、胸の中で。

俺が望む幸せは。

君の心と、この腕の中。

それは、もう、君だけにしか出来ないから。

そう、期待しても良いんだよね。







「・・・・・・・・一緒に、暮らそう。 サンジ。」

ゾロが囁いた言葉が、午前0時の時を告げた。








<END>







<santan−top>




<コメント>

パラレル1本目は・・・いやぁぁ・・・・・とうとう書いちゃったよ。 俳優ゾロサン。 
ああ、ソフトクリームに練乳掛けて口の中、うにゅうにゅしてるような、この甘さ。(笑)
今回は、これでもかって言うほどに、気障なゾロを書いてみました。
もう自分の発想のクサさに・・・・(-_-;)
まあ、俳優ゾロならではの・・・・気障さか?
こちらも、お楽しみ頂けたらと、幸いです。
では★