月下美人






「・・・・・暑い。 なんで、俺はこんなクソ暑い夜に、むさ苦しいてめえとこんなとこ歩いてなきゃ

ならねえんだ・・・? 俺の計画では今頃、ナミさんとvv」

暗い夜道、サンジはそう呟いて盛大な溜息を吐く。

その隣りには、同様に不機嫌な顔をしたゾロ。

「うるせえよ、クソコック! それは、俺の台詞だろ。 大体、なんで俺が・・・!!」

「なんだと?! てめえが音も無くキッチンに入ってくるからじゃねえか! 頭から血を流して

よ!!」

サンジは眉をヒクつかせ、そう言ってゾロの胸倉を掴んだ。

「プッ! ククク・・・・・『ギャーーッ!出たーーッ!!』ってか? 大方、ナミでもビビらせて自分

にしがみつく事計算して怪談話してたんだろうが・・・てめえで驚いてどうすんだよ。 馬鹿だ

ろ、てめえ・・・。」

ゾロはサンジの腕を軽く払いのけ、そう言ってゲラゲラと笑う。

「やかましい!! 一番の山場で入ってくるてめえが悪い! おかげで、俺が罰ゲームする羽

目になっちまっただろうが!」

「だからって・・・・なんで俺も、なんだよ。 てめえ一人で罰ゲーム受けりゃあ良いじゃねえ

か。」

「うるせえ!! てめえのせいだからな!! 同罪だ、同罪!!」

ゾロの言葉に、サンジは分が悪いと判断したのか、そう吐き捨てるように言うとさっさと先を歩

き出した。






小一時間ほど前、サンジはキッチンでナミ達と暑気払いと称して怪談話をしていた。

ただ話をするだけでは面白くないと言うナミの提案で、話の最中に叫び声をあげた者が罰とし

て、島の中心の森の中にある月下美人の花を摘んでくる事となった。

その条件を聞いて真っ青になったのは、この二人。

ウソップとチョッパーである。

「・・・・・チョッパー・・・もしも、俺が罰ゲーム受ける羽目になったら・・・一緒について来てくれる

よな・・・?」

「えっ?! お、俺?? と、当然だ! だけど・・・・ウソップも俺について来てくれよな・・・?」

「ああ、わかった。 二人なら・・・・怖くねえもんな・・・。」

「・・・・・うん・・・。」

密かに、自分達の未来が見えたウソップとチョッパーは、そう会話して涙を湛える。

しかし、皆の予想に反して、一番初めに叫び声を上げたのは、キッチンに入ってきたゾロを見

たサンジであった。

罰ゲーム本命と目されていたチョッパーとウソップはと言うと、声を上げる間も無く白目を剥い

て気を失っていたのだった。







「・・・・・・・なぁ、黙ってねえで、なんか喋れよ。」

黙々と歩いてくるゾロにサンジが、そう言って振り向いた。

「あ? なんで? ・・・・・・・・怖いんだろ?」

「ば、ばっか野郎!! なんで俺が・・・・怖い訳ねえだろ・・・ふざけんな!! 退屈だから

だ!」

サンジは慌ててそうごまかして、煙草に火をつける。

退屈なのは確かにそうなのだが、今夜は雲がかかっていて月明かりさえわずかにしか届か

ない。

生温かい風が髪を撫で、サンジの背中に冷たい汗が流れる。

「ふー・・・・ん。 退屈ねえ・・・? あ、知ってるか? 振り向く時は、右から振り向けって、俺

の故郷ではそう言われてたぜ。 ・・・・・・・・左から振り向くと死者が見えて、連れて行かれち

まうって、さ・・・。」

ゾロはそう言って、サンジを見てにやりと笑った。

「あ・・・・はは・・・・はは・・・。 またまた・・・・俺をビビらせようとしても、無駄だぞ。 そ、そん

な手には引っ掛からねえからな・・・。」

そう言いながらも、サンジは動揺を隠せない。

「まっ、信じる信じねえは、てめえの勝手だがな。・・・気をつけろよ、振り向く時は・・・。」

ゾロは、サンジの態度に笑いを堪えながら、ポンとサンジの頭を小突くと先に歩き始めた。

「ま、待てよ!! 俺が先に歩く!!」

サンジは慌てて、ゾロを追い抜く。

「ほら、ぼやぼやせずに・・・・」

そう言って振り向いたサンジの動きがピタリと止まった。

「ん・・? どうした、クソコック?」

ゾロがそれに気が付き、そう声をかける。

「・・・・・・・・・・ゾロ、俺・・・・・・振り向いちまった・・・・・・・俺、左から振り向いて・・・・うぎゃあ

ーっ! ゾロォーッ!!」

サンジは、そう叫ぶや否や、ゾロにしがみついた。

ぶるぶると身体を震わせて、全身を擦り寄せるサンジ。

「お、おい! クソコック・・・てめえ・・・あの、なんだ・・・その・・・」

そんなサンジの予想外の反応に、ゾロは慌てた。

頬に触れるサンジの髪から、微かに甘い香りがする。




クッ・・・・ヤベッ。




気が付くと、ゾロはサンジに口付けていた。

「ふぁ・・・・ん・・・んんっ・・な、なにすんだよ!エロ剣士!!」

慌ててゾロを押しのけて、サンジがそう言って睨みつける。

「てめえが、悪い! 怖いんだろ? 忘れさせてやるよ・・・。」

ゾロは、サンジの耳元でそう囁くと、そのまま木の幹にその痩躯を押し付け身体を密着させ

た。

「な、ば・・・・馬鹿野郎・・・・んな事・・・誰も・・・頼んじゃ・・あ・・・んんっ・・・」

サンジの批判めいた声は、途中でゾロの唇で塞がれ、甘い吐息に変わる。

ゾロは、サンジの身体から抵抗感が無くなったのを確認すると、慣れた手つきで衣服を脱が

せ、その肌に手を這わせた。

「クッ・・・こんなとこで、さかってんじゃねえ、クソ剣士・・・・あっ・・・」

「良いから、てめえは黙ってろ・・・。」

サンジの言葉に、ゾロはそう言い返しながら、ギュッとサンジの雄を握り込む。

そして、上下に扱き始めた。

「うっ・・あ・・・・ああっ・・・・クッ・・・ハァ・・・クソッ・・・」

ゾロに愛撫され、サンジは堪らずゾロの頭を胸に押し付けた。

「クッ・・・・俺も余裕ねえ。 挿入るぞ・・・。」

ゾロはサンジにそう告げると、サンジの身体を抱え上げ、一気に突き入れた。

「ヒッ・・・あ・・・ああっ・・・んーっ・・・・んん・・・・あ・・・ふぁ・・・」

内側から張り裂けそうな痛みと背中を突き抜ける甘い痺れにサンジは、髪を振り乱し身体を

仰け反らせる。

「あっ・・はぁ・・・ん・・・クッ・・・ヤッ・・・ゾロ・・・!!」

「クッ・・・・キツ・・・力抜けって・・・・」

「あ・・ハァ・・・無理言う・・な・・・ずり落ちちま・・・あっ・・・ん・・・ああっ・ ・・」

「ッ・・・・しっかり捕まってろ・・・。」

ゾロはサンジの身体を抱きかかえ幹に押さえつけると、性急に腰を打ちつけた。

「ッ・・・クッ・・・あ・・・・は・・・・んっ・・・!!」

ゾロの耳元にサンジの吐息がかかり、嬌声が耳を擽る。

わずかな月明かりに照らされた白く紅潮したサンジの肌が、一層なまめかしく映える。

「・・・・・月下美人、か・・・・。」

ゾロはそう呟くと、何度もその白い肌に口付けを落とした。

「んっ・・・・ハァ・・・・ゾロ・・・・もう・・・・あっ・・・」

「ッ・・・クッ・・・・ヤベえ・・・・サンジ・・・・」

ゾロは、その姿態に煽られるようにますます動きを早める。

「ああっ・・・・ん・あ・・・・ダメだ・・・・あ・・・クッ・・あああっ・・・!!」

グッとサンジの指がゾロの背中に食い込み、ビクンとその身体が仰け反った。

双方の間にサンジの精が迸る。

「ッ・・・・クッ・・・・・」

ゾロもまた、こみあげる射精感に耐え切れず、サンジの中から抜くと精を吐き出した。

「ん・・・ハァハァ・・・・馬鹿・・・野郎・・・こんなとこでいきなりさかりやがって・・・・少しは、俺の

身体も考えろよ。 ・・・・掘るぞ、てめえ・・・。」

力の入らなくなった身体をゾロに預けて、サンジはそう言ってゾロを睨む。

「ククク・・・・そりゃ無理だな。 俺、てめえみてえに、艶っぽい声出せねえし・・・」

「なっ、ばっ、う、うるせえ!! てめえが!てめえが!!」

「・・・・・・気持ち良かったんだろ・・・? 怖さもぶっ飛ぶほど・・・・。」

真っ赤な顔をしてそう怒鳴るサンジに、ゾロはそっと口付けて口角を上げた。

「う゜・・・・。 あー・・・クソッ!! 良いからさっさと退け!! ナミさんに捧げる月下美人を摘

んで早くお届けしなくては・・・!!」

サンジは、速攻でゾロの腹にお見舞いすると、衣服を身につけ歩き出す。

ゾロは顔を顰め、蹴られた腹を撫でながら、サンジの後に続いた。

暫く歩いていくと、月明かりに照らされた月下美人の野草群を見つけた。

「あっ、あった、あった!! オイ、ゾロ、あったぜ・・?」

目的の花を見つけ、サンジがそう言う。

それから、一呼吸置いてゾロの方を右側から振り向いた。

「プッ・・・・ククク・・・・・てめえ、まださっきの事、気にしてんのか?」

「ちくしょーっ!! それもてめえのせいだろうが!!」

恨みがましく自分を見るサンジに、ゾロは苦笑してその身体を引き寄せる。

「ばぁか・・・・。 誰がてめえを連れて行かせるかよ。 例え相手が死神だろうと、な・・・。」

そう囁いて、ゾロはそっとサンジの髪を顔を埋め、その痩躯をしっかりと抱きしめた。

「・・・・・クサイ台詞言うんじゃねえよ・・・。」

サンジは、耳まで赤くなった顔をゾロの肩に押し付けて、そっと背中に腕を回す。

「・・・・・・・・・・・相変わらず、暑苦しいわよ、お二人さん・・・?」

いつの間に来ていたのか、二人の後方に、数人の影。

「・・・・・ナミ・・・・?!」

「ナミしゃん・・・?!!」

いきなり現れた人影と声にギョッとして、硬直するゾロとサンジに、ナミがにっこりとして現れ

た。

「ロビンがね、月下美人は一晩で枯れちゃう花だし、実際に見た方が感動するわよってそう言

うから・・・・・・あんた達の後、ついてきちゃった。 ・・・・皆で。」

「皆・・・・皆ですかーーーッ!! い、いつから・・?」

ナミの言葉に、サンジは、裏返った声でそう尋ねる。

「あら、やだ、初めからに決まってるじゃない。 まさか、こんな場所でナニ始められるとは思っ

てなかったけど、そんなに時間掛からなかったようだし・・・・あら、本当、綺麗ね〜vv 幻想的

で素敵vv」

そう言ったナミの言葉に真っ青になって意識を失いかけたサンジを横目に、ナミは、ロビンと共

に月下美人の花に駆け寄った。

ルフィもその後に続く。

「サ、サンジーッ!! オイ!大丈夫か??」

慌ててチョッパーがサンジを支える。

「許してくれ、ゾロ、サンジ・・・。 俺達には、ナミに逆らう度胸はねえんだ。」

その後方で、ウソップが涙ながらに、二人にそう訴えていた。

「なぁ、ナミ、その花食えんのか?」

「・・・・・・そろそろ開花する頃ね・・・。」

「あっ、本当・・・・・うわぁ、綺麗〜vv」

月下美人の幻想的な開花を楽しんでいるロビンとナミを瞳の端に映し、サンジはそっと涙ぐ

む。




終わった・・・・・俺の輝かしい青春は、あの月下美人と共に・・・

一晩で・・・・・・・終わった・・・。




・・・・それは、残暑厳しい夏島での出来事。





<END>


 



<コメント>

毎度毎度変わらないご愛顧、本当にありがとうございます。<(_ _)>
一年経たないうちに、このような大それた数字に到達できるとは・・・。
相も変わらず馬鹿ップルvv
少しでもお楽しみいただけると幸せです。

遅くなりましたが、祝70000打vv 皆様に感謝の気持ちを込めてvv
こんなものでよろしければ、どうぞ勝手にお持ち下さい。
                                         2003.08.28.


<kikaku>