愛のままに・・・わがままに・・・








コツコツコツと、靴音を響かせてサンジは、船尾を訪れる。

春島を過ぎ、夏島に向かいつつある船の航路は、このところお天気も安定し、ゴーイ

ングメリー号は、穏やかな日々を過ごしていた。

「・・・・・・・クスッ。 よく寝てる・・・。 一体、どんな夢見てんだろう・・・。 俺の夢?

はは、んな訳ねえか・・・。 ・・・・・・ゾロ。 ・・・・・好きだぜ。」

サンジは、周りに誰もいないことを確認して、眠っているゾロの唇にキスを落とす。

いくらクルー達の暗黙の了解を得てるとはいえ、人前で堂々といちゃつく程、サンジ

は素直ではない。

こうやって、誰もいない時を狙ってこっそりとゾロの傍に近づいて、そっと眠っている

ゾロに口付ける。

・・・・・・それが、最近のサンジの日課。

ゾロさえ知らない、サンジだけの・・・・・秘密の・・・時間。

とてもじゃないが、起きているゾロに自分から口付けるなんて、サンジには出来ない。

ゾロの視線を意識しただけでドギマギして・・・。

それをはぐらかそうと悪態ばかりが口に吐く。

そして、いつものように口喧嘩から乱闘に発展する。

自分では、どうしようもないジレンマ・・・。




昼間も、誰の目も気にせずにこうしてられたらどんなに良いだろう・・・。




そっと触れるか触れないか位の近くでゾロの胸に頭を寄せる。

「・・・・・ずっと・・・こうしてたい・・・。 ・・・・さて、お仕事、お仕事・・・。」

そう呟いて立ち上がると、サンジは再びキッチンに戻っていった。





「・・・・・・阿呆。 気になって、眠れる訳ねえだろ・・・。」

ゾロは瞳を開けるとキッチンの方を見つめて、そう呟く。

それから、サンジの残り香に包まれて、また静かに瞳を閉じた。






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「ふぁ〜・・・・・。 本当に、良いお天気ね。 こんなに良い天気だと、どこかの剣士じ

ゃないけど、お昼寝したくなるわ。」

ナミはそう言って、サンサンと輝く太陽と突き抜けるように青い空を見上げる。

「ナミさ〜んvv 新しくブレンドしたお茶で〜すvv 如何ですか?」

サンジがそう言って、テラスのナミにグラスを持ってきた。

「あら、ありがとう。サンジ君vv ちょうど、喉が渇いてたところなの。 頂くわ。」

「今日のは、ナミさんから分けていただいた蜜柑の葉とこの前の買い出しで手に入れ

たファーストミントとレモングラスを調合して・・・・どうですか? 良い香りでしょ?」

「う〜んvv 本当・・・・とっても良い香り。 本当に、サンジ君って食べ物や飲み物に

関しては、天才的よね。 ちゃんとその人の好みに合わせた物を用意してくれる。 

あ〜、あたし、サンジ君の彼女になれば良かったなvv」

ナミはそう言うとにっこりと笑って、サンジを見る。

「本当ですか、ナミさんvv 俺、全然OKですよvv 俺、ナミさんの彼氏になっちゃおう

かなvv」

サンジもそう言ってにっこりとナミに微笑み返した。

「・・・・・誰が、彼氏だって?」

不意にサンジの後ろで声が聞こえた。

「ク、クソ剣士!! いつここに??」

サンジは、その声にびっくりして飛び退く。

そこには、船尾で寝ていると思っていたゾロの姿・・・。

「・・・・・・さっきだ。 喉が渇いたからキッチンに行こうとしたらてめえが見えたんで

な・・・。 ・・・っで、誰が彼女で、誰が彼氏だ? ん?このラブコック・・・・?」

「ちょ、ちょっとぉ・・・・もう、こんなとこで痴話喧嘩は、止めてよね。 ほんのジョーク

じゃない。 全く、冗談も通じないのかしら・・・この馬鹿剣士には・・・。」

サンジ以外に瞳に入ってないゾロの口振りに、ナミは呆れ顔でそう呟いた。

「サンジーッ!! それ、なんだーっ?! おやつ、まだかーっ!!」

メリーの頭上で、ルフィがそう言って腕を伸ばしサンジの腰に巻き付け、飛んでくる。

「危ねえ!!」

ゾロはそう叫んでとっさにサンジの身体を庇った。 

「うわっ! ルフィ!! それ危ねえから止めろって、いつもそう言ってるだろが!! 

今は何も持ってねえから良いけど・・・。 熱いお茶とか持ってたら、てめえも俺もやけ

どするんだぜ? わかってんのか? このクソゴム・・・!!」

サンジは、ルフィにしがみつかれた格好で倒れ込んでそう怒鳴った。

「っ・・・・痛え!! 本当に、止めろって何度言ってもわかんねえ奴だな!!」

サンジを庇い、思い切り壁に激突したゾロは、そう怒鳴りルフィを睨み付ける。

「あ、わりい、ゾロ。 だって、走ってくるより、早いから・・・。」

ルフィは、悪びれる風でもなくそう言った。

「そもそも、なんでサンジに抱きつく必要が・・・。 ・・・・ルフィ。 よっく、その無い頭

で考えて見ろ。 このクソコックが、怪我したら・・・。 てめえ、飯食えなくなるんだ

ぞ。 それでも良いのか?」

ゾロは、呆れるようにルフィにそう諭す。

「・・・・・そりゃあ、大変だ。 俺、そんなの絶対に嫌だ。 サンジ、ごめん。 もう飛ん

でこない。 これからは、走って来ることにするから。」

「「っておい! そうじゃねえだろ・・・。」」

ルフィのあっけらかんとした言葉に、ゾロとサンジはそう言って呆れた。

「とにかく、ルフィ。 このクソコックに一々抱きつくな。 わかったな・・・。」

ゾロは、眉間に皺を寄せ、もう一度ルフィを諭す。

「・・・・なるほど。 そこが言いたかったのね・・・。」

「なんか言ったか?ナミ・・・。」

「べっつにぃ〜・・・。 ご馳走様、サンジ君。 とっても美味しかったわよ。 じゃあ、

あたし、海図書かないと・・・。」

ドスの利いたゾロの声にナミはそう言って、部屋に戻って行った。

「え〜・・・良いじゃんか、抱きつくぐらい、別に・・・。 サンジは、嫌がってねえし。」

ルフィは、口を尖らせてゾロにそう言う。

「充分に、嫌がってるだろがっ!!」

「いや・・・? ・・・・別に、抱きつかれてもそんなに嫌じゃねえが。 もう慣れたし・・・

今更・・・。」

ルフィにそう怒鳴っているゾロの隣で、サンジは、飄々としてそう呟いた。

「なっ? サンジもああ言ってるし・・・。」

「てめえ・・・・・このクソコック・・・・。」

ニカッと笑ってそう言うルフィに、ゾロはこめかみをヒクつかせサンジを睨み付ける。

「な、なんだよ。 なんでそんなに怒ってんだよ・・・。」

「サンジーッ!! わりい、ちょっと手伝ってくれねえかーっ!!」

ゾロの迫力にそう言って後ずさりするサンジに、格納庫のドアの前でウソップがそう

叫んだ。

「お、おう! わかった! すぐ、行く!! じゃあ・・・。」

サンジは、これ幸いにウソップの元に駆け寄った。

ゾロの視線は、そのまま、格納庫の前のウソップに向けられる。

「ヒッ! 俺・・・なんか言ったのかよ・・・・。」

ゾロの殺気走った視線を一身に浴びて、ウソップはそう呟いて凍り付いた。

「・・・・気にするな。 さっ、手伝ってやるからさ・・・。」

「・・・・・カヤ。 ごめん、俺・・・無事に戻って来れねえかも・・・。」

サンジに肩を叩かれながら、ウソップは、その身に理不尽さを噛みしめ、格納庫へと

入っていった。

「・・・・・覚えてろよ、あのクソコック・・・。」

ゾロは、格納庫のドアを蹴破りたい衝動を必死で押さえ、そう呟く。

それから、キッチンで用意されてある飲み物を飲み、船尾でトレーニングを始めた。

「ありゃりゃ? 俺、何しにきたんだっけ? まっ、いいか・・。」

ルフィはそう呟いて、またメリーの頭に戻っていった。

「・・・・ったく、どいつも、こいつも・・・。 それよりも、サンジのあの態度・・・。 

あー、思い出したらムカついてきた・・・。」

ゾロは、船尾でそう呟きながらウソップ特製ハンマーを振る。




俺だって、昼間も・・・・。

・・・・・・触れてえんだよ。

・・・・・・たわいもねえ話でも良いから、してえんだよ。

・・・・・・傍にいてえんだよ。

けど・・・・・てめえが恥ずかしがって嫌がるから・・・・。

昼間の船の中じゃ・・・・そんな場所ねえし・・・。

・・・・・・場所・・・・・・・・場所・・・・・・・・かぁ・・・・。




「あるじゃねえか! たった一つだけ!!」

ゾロはそう叫んで、ハンマーを放り投げると、船の碇を降ろし船を停める。

振り落とされたハンマーは・・・・・・船尾の床に大きな音と共に穴を開けた。

「な、なんだ、なんだ?! て、敵襲か??」

「どうした?! 何があった??」

格納庫から慌てた様子でウソップとサンジがそう言って、甲板に姿を現す。

「おい、クソコック! その上着と靴を脱げ・・・。」

ゾロは唐突にサンジを睨み付けてそう言った。

「はぁ?? てめえ、頭どうかしたのか? 何で俺が・・・。」

「良いから、言うとおりにしろっ!」

有無を言わさないゾロの迫力にサンジは、言われるままに渋々上着と靴を脱ぐ。

「・・・っで、何してえんだ、てめえは・・・?」

サンジはタバコに火を点けて、そう言ってゾロを睨み返した。

ウソップは、怖々と格納庫のドアに隠れながら、二人の様子を覗き見ている。

ルフィは、この騒ぎをモノともせずにメリーの上で熟睡していた。

ナミは、部屋の前でじっと二人を静観している。

「じゃ、行くぜ!!」

「えっ?! ちょっ・・・」

ゾロはそう言って、サンジを抱えるとそのまま海に飛び込んだ。

「っぷはっ!! てめえ、いきなりなにしやがる!!」

サンジは海面に浮かび上がり、こめかみをヒクつかせそう言ってゾロを睨み付ける。

「・・・昼間でも邪魔されねえ場所・・・見つけた・・・。 思いっきり深く息吸えよ。 

行くぜ?」

「うわっ!! ちょ、ちょっと!!たん・・まっ!!」

サンジの言葉を遮り、ゾロはサンジを引き寄せ、そのまま海の中に潜った。

あまりのことに事態が呑み込めてないサンジ。

海中で、まあるく見開かれた蒼い瞳に、ゾロは一人苦笑して・・・。

そんなサンジの顎に手を掛け・・・・・その唇を自分ので塞いだ。

そっと、ゾロの背中におずおずと回されたサンジの腕・・・。

キラキラと海中で漂う金糸・・・。

思わぬ口付けに照れて俯いたサンジをゾロは、ギュッと抱き締めて・・・・。

海中での甘い一時を分かち合った。





「ナ、ナミ・・・・。 あいつら、全然、海面に出てこねえぞ・・・。 大丈夫なのか?」

「・・・・・放っておきなさい、ウソップ!! 飽きたらそのうち戻ってくるわよ!!

・・・ったく、大きな音立てて、船停めて・・・・コレ・・・? やってくれるじゃないの、

あの馬鹿ップル!! ウソップ! 海ばかり見てんじゃないわよ! 船尾の甲板・・・

穴開いてるわよ。 修理しときなさいよ!! ったく、やってられないわっ!!」

ナミは、ウソップの言葉にそう怒鳴り散らし、また部屋に戻っていく。

「なんで、俺が、ナミにどやされなきゃならねえんだよ・・・。 どうみても理不尽だ

ろ・・・。」

ウソップは、いつまでも浮かんでこない海面を恨みがましく見つめ、そう呟いて船尾

の修理に向かった。





この後・・・・・海中の甘い一時を過ごし船に戻った二人に、待ちかまえていた強烈な

春の嵐が吹き荒れたのは、言うまでもなかった。








<END>







<コメント>

どど〜んと・・・馬鹿ップル、万歳!!(笑)
40000HITOVER、本当にありがとうございますvv
サイト開設したときには、こんな数字は夢のまた夢で・・・
こんなに早く訪れるなんて・・・未だに、信じられないことで・・・。
昨今の天気が不安定なのは、ルナのせいか?
などとマジに思う、今日この頃・・・。(笑)
本当に、訪れて頂いてる方々に感謝をvv
こんなものでも、お持ちいただけると言うご奇特な方がいらっしゃいましたら、
どうぞ勝手にお持ち下さい。

それでは、これからもどうぞ、ヘタレサイトですが、よろしくvv

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