SPEAK REASON







「サンジ君・・・・・ちょっと・・・・・」

キッチンで、夕食の支度を始めていたサンジに、ナミは、キッチンのドアから顔だけ覗かせて

そう言った。

「なんですか? ナミさんvv」

サンジは、支度している手を止めて、いそいそとナミの元に近づく。

「ん・・・・ここじゃあ、ちょっと・・・・ 食事の用意が済んだら、部屋に呼びに来てくれ

るかしら。 その時に話すわ。」

ナミは、テーブルに座って居る他のクルー達に瞳を向けると、そう言ってにっこりと笑い、

自分の部屋に戻っていった。

「・・・・・ナミ、どうしたんだろ。 なんか、いつものナミらしくなかった。」

「・・・・気を付けろよ、サンジ。 お前、なんかまた、ナミにやらされるんじゃねえ

か・・・」

テーブルにいたチョッパーとウソップは、そう言ってサンジの顔を見る。

「ははは、まさか。 でも、ナミさんにこき使われるなら、それで本望だぜvv 

ナミさ〜んvv 一緒に、メイク・ラブしましょ〜vv」

「「おい、おい・・・そうじゃねえだろ、ラブコック・・・」」

瞳からハートを飛ばし、おどけるサンジに、ウソップとチョッパーは、間髪入れず、ツッコミを入

れた。

それから、夕食の準備も整い、サンジは、言われたとおり、ナミを呼びに部屋に向かう。

「ナミさんvv ロビンさんvv お食事の用意できましたvv」

「あら、結構早かったのね? じゃ、先に行ってるわ。」

ロビンはそう言って、先に一人でキッチンに向かった。

「うん、あたしもすぐ行くから・・・・・・サンジ君・・・・あのね・・・・」

ナミは、ひそひそとサンジに耳打ちする。

「え?! そ、そんなこと・・・やだな。 ぜ、全然、考えてませんよ。 ・・・・けど、

大好きなナミさんの為だ。 ・・・・ご協力します。 けど、俺にも、下さいねvv」

「はいはい、そう言うことにしといてあげるわ。 じゃ、今夜、お願いね。」

ナミはそう言って軽くウィンクすると、キッチンに向かった。

「・・・・・なんで、ナミさん、知ってるんだろ・・・・俺、誰にも言ってねえのに・・・・」

サンジは、ボソリと小さな声で呟いて、慌ててナミを追い掛けてキッチンに走っていった。








その夜。

「サンジ君、この後、どうするの??」

「後は、このココアパウダーをふるいかけて、終わりです。」

「わかったわ。 やった、これでOKねvv サンジ君、本当にありがとうvv」

ナミは、出来上がったトリフを丁寧にラッピングして、サンジの頬にお礼のキスをする。

「はぁいvv お役に立てて光栄で〜すvv けど、もったいないなぁ。 これ、あいつに

でしょ? こんな上品なもの、あいつ、一口で食っちまいますよ、きっと。 俺は、もち

ろん、一つずつゆっくりとナミさんの愛を確かめながら・・・・・・」

サンジはそう言って、軽くウィンクした。

「はいはい、ごまかしてもダメよ。サンジ君vv ソレ、さっき見てたけど、砂糖、殆ど入

ってないでしょ?? それに、ブランデー入りだし。 一体誰の為のなのかしら?? 

そんな酒呑みで甘いの苦手な奴は、うちの船には、たった一人しかいないわよ。 

うふふ、食べてくれると良いわねvv」

「・・・・まいったなぁ、ナミさんには・・・・ けど、俺、正直、どうやってやろうかと、

そればっかり考えてて・・・・いくら付き合ってるからって、やっぱ、バレンタインにチョ

コをやるのは、レディの特権だし。 あいつは、甘いモノは全然駄目だし。 そう考え

るとね・・・」

ナミの言葉に、サンジはそう言って苦笑する。

「あら? バレンタインなんて、女と男って決まってる訳じゃないわよ。 愛する人に、

愛を伝え合う日なんだから・・・だから、サンジ君も、頑張って、ねvv ゾロ、きっと喜

んで食べてくれるわよ。 じゃあ、おやすみなさいvv」

ナミはそう言うと、手にラッピングを終えたチョコを持って、にっこりと笑って、キッチンを出てい

った。

「・・・・・だと良いんだけどね・・・・・」

サンジは、出来上がったチョコを綺麗にラッピングして、テーブルの上に置いた。

「はぁ・・・いよいよ明日・・・・いや、もう、今日か。 ・・・・・どうやって渡そうか。 

男部屋でそっと・・・・・いやいや、それじゃ、皆の視線が集まる。 それよりも、何て

言って渡すんだ?? 好、好きってか?? うぎゃぁ・・・そんな恥ずかしいこと言える

か! 絶対に、無理だ。 ・・・・そうだな、明日のおやつをチョコにすることにして、

さりげなくあいつに、皆のついでに作ったから・・・・・そうついでにって、強調してやれ

ば良いじゃねえか! よし! 練習しとこう・・・・

『おい、てめえの分も甘く無えの作っといたから・・・』

いや、

『てめえの分も、皆のおやつを作るついでに、作っといてやったから・・・』

・・・・作っといてと言う言い方が、まずいよな。 如何にも、作り置きしてた印象を与

えちまう。 もっと、さりげなく、たった今、皆のおやつと一緒についでに作ってやった

と思わせねえと。 

『おう、皆の分作ったら、材料が余っちまったから、てめえの分も作ってやった。 

ありがたく食え。』

・・・・・うん、これだな、この台詞でいくか・・・・・・よし、もう一度、おさらいだ・・・・・・」

サンジは、一人キッチンで、チョコ渡しの予行演習を明け方近くまでやっていた。






翌朝。

「いけねえ!! もう朝になっちまった。 皆が、起きてきちまう。 早く、隠さねえ

と・・・・・」

サンジは、慌ててチョコを手に持つと、シンクの上の棚に置いた。

それから、何事もなかったように、朝食の準備に取りかかる。

直に、クルー達がキッチンに揃い、いつものように、朝食も終わり、クルー達は、それぞれ、

自分達の時間を過ごしていった。

昼食もいつもと変わらずに終わり、いつもと変わらないクルー達の中で、サンジとナミだけ

は、そわそわと落ち着かない。

刻々と、おやつの時間が近づいてくる。

「?? ナミ?、サンジ? 二人とも、どうしたの?? なんかさっきから、そわそわし

て時計ばかり気にしてるみたいなんだけど・・・・・なにかあるの??」

「え? あ、別に・・・・サンジ君、あたし、行ってくるわね。」

「ああ、ナミさん。 ・・・・いってらっしゃい・・・・」

「?????」

ナミは、チョッパーの言葉に意を決したようにサンジにそう告げると、船頭のルフィの元に向

かった。

サンジは、夕食の食材を取りに、倉庫へ向かうついでに、船頭にいるナミとルフィの様子を伺

う。

二人とも、楽しそうに、メリーの頭の上で笑い合っていた。

「フッ。 良かったですね、ナミさんvv」

サンジは、瞳を細めてそう呟くと、倉庫へ行って食材をとり、また、キッチンに戻った。

「さてっと。 チョッパー、今日、何の日か知ってるか?」

「えっ? 今日、何の日なの?サンジ??」

「今日はな、バレンタインデーと言って、好きな人に告白して良い日なんだ。 だいた

いが、女の人が、チョコとか渡して、好きな男に告白するんだよ。」

「へー。・・・知らなかった。」

「っというわけで、今日のおやつは、チョコレートだ。 俺の愛情たっぷり入ってるから

な。 心して食えよ。」

サンジは、チョッパーにそう説明してにっこりと笑った。

「うん、サンジの作るモノは、美味しいから、楽しみだ。 あ、ウソップにも、知らせてこ

ようっと・・・・」

チョッパーはそう言って、キッチンを出ていく。

「・・・・・・はぁ・・・・・愛情たっぷりねえ・・・・チョッパー相手だと、こんなにすらすら言

えるのに・・・・・自分の性格が恨めしいぜ・・・・・」

サンジは、誰もいなくなったキッチンでそう呟いて、テーブルに俯した。

「・・・・・なにやってんだ? 具合でも、悪いのか?」

急に近くに聞こえたゾロの声に、サンジは、慌てて飛び起きる。

「な、なんでもねえよ・・・・な、何か用か?」

サンジは、平静を装い、そう言うと、シンクの方へ向かった。

「いや、喉が渇いたから、飲みに来たんだが・・・・・てめえ、朝からなんか変だぞ。 

悩み事か何かあるのか? あるんだったら、俺に話してみろよ・・・ん?」

ゾロは、そう言ってサンジを後ろから抱き締める。

背中に触れるゾロの体温に、サンジの心臓が、ドクンと震えた。

「ば、馬鹿!! 誰かが、入ってきたらどうするんだ! な、なにもねえよ! 早く、

離れろよ!!」

サンジは、自分の心臓の音がゾロに聞こえそうな気がして、ドキドキしている自分が恥ずか

しくて、身を捩ってそう怒鳴った。

「・・・・なにも、そんなに拒絶することねえだろ。 本当、可愛くねえ奴だな。 

・・・・酒、勝手に貰っていくぜ。」

ゾロは、サッとサンジの背中から離れると、酒棚から酒を1本取り出す。

サンジは、背中から消えた温かさに急に寂しさを覚えて、ゾロの方を振り向いた。

「ん? なんだ? なんか言いたいことでもあるのか?」

ゾロは、サンジの視線に気が付いて、サンジの方を見つめる。

二人の時にしか見せないゾロの優しい瞳に、サンジは、胸の奥が、キュンとして・・・・・

気が付けば、シンクの上の棚から、チョコの箱を取り出していた。

「?? なんだ、それ?? 俺に、くれんのか??」

「あ、ああ。 き、今日のおやつのチョコがな、あ、余ったから、てめえにも、つ、作っ

てやったんだ。 ああ、ついでだぞ、ついで。」




・・・・・間違ってないよな・・・・・ちゃんと、言えてるよな、俺・・・・・




サンジは、昨晩から何度も練習した言葉を、どもりながらゾロに伝える。

ゾロは、そんなサンジの言葉に、ポカンとした表情で、サンジを見つめ、そして、いきなり、

笑い出した。

「な、なにが、可笑しい!! てめえ、失礼だぞ!!」

「プッ、ククク・・・ だってよ、今日のおやつって、まだ、作ってもいねえじゃんかよ。

全然チョコの匂いしねえし、チョッパーが、さっき嬉しそうに、ウソップに、今日のおや

つは、チョコだって話してたぜ。 ついでに、今日が、何の日かって、てめえから聞い

たことも喋ってたぞ。 ・・・・・これ、俺のために、わざわざ作ってくれたんだろ?」

サンジの言葉に、ゾロは、こみ上げてくる笑いを必死で堪えながら、サンジを抱き寄せた。

「う、うぅ〜・・・・・//////」

サンジは、恥ずかしさで顔を真っ赤にし、俯いたままゾロの胸に顔を埋める。

「ククク・・・・てめえは、本当に、素直じゃねえな。 ・・・・けど、そこも、俺は、結構気

に入ってるし・・・・」

ゾロは、苦笑しながらそう言って、サンジの顔を上に向け、こつんと額を合わせた。

「わ、笑うなよ! だから、嫌だったんだ・・・・柄にもねえことしたって・・・わかってん

だから・・・・・」

サンジは、そう言って、プイッと横を向く。

その仕草が、妙に可愛らしく映って、ゾロは、サンジの顎に手を掛けると、そっと唇を重ねた。

シンとしたキッチンに、二人の鼓動だけが、重なっていく。

スッと、ゾロの手が、サンジのシャツの裾から入り込もうとしたとき、急にキッチンのドアが、

勢い良く開いた。

「サンジ! ねえ、チョコ、まだ?? ルフィだけ、ずるいんだよ。 ナミから先に貰って

てさ。 俺だって、早く、食いたい!! ・・・・・・・あれ??ゾロ? なにしてんの?」

キッチンにそう言って現れたのは、チョッパーだった。

「あ、いや・・・・なんだ、その・・・・・」

サンジは、その声に弾かれたように慌てて、ゾロから距離をとる。

ゾロは、チッと舌打ちすると、チョコの箱を手に持ったまま、酒瓶を持ってキッチンを出ていっ

た。

「???ゾロ?? ・・・・・・あーっ!! 今、ゾロ、チョコ持っていったでしょ??

なんで?? サンジが、ゾロにチョコ上げたの?? えーっ!!なんで?? ねー?

なんで、サンジが、ゾロにチョコ上げるの?? ねえ、どうして??」

チョッパーは、ゾロとすれ違い様に、チョコの匂いを嗅ぎつけて、サンジにそう尋ねる。

「あ、さ、さて、おやつ、作ろうかな・・・・・チョッパー、皆には内緒にしてくれ。 

そしたら、チョッパーにだけ、大きなチョコにしてやるから、な?・・・・・」

サンジは、チョッパーにそう耳打ちすると、軽くウィンクした。

「ほ、本当か?? 約束だぞ。 わかった、俺、だれにも言わない!」

チョッパはそう言って、にっこりと笑う。

「・・・・・はぁ。 とりあえず、皆には、バレずに済みそうだ・・・・」

サンジは、そう呟いて、急いでおやつを作り出した。

「皆!! おやつできたぜーっ!! 野郎共には、ほれ、チョコだ。 ナミさんとロビン

さんには、こちらのクラッシックショコラをご用意いたしました。 さあ、召し上がれvv」

サンジは、そう言って、皆に、おやつを分ける。

「あれ?? ルフィのチョコが大きいのは、わかるが、なんで、チョッパーのも、そんな

にでかいんだよ。 なんで、俺だけこんなに小せえんだ?? こりゃ、えこひいきだ

ろ・・・・」

ウソップが、皆に配られたチョコを見て、ボソリと文句を言った。

「嫌なら、食わなくても良いぜ。」

サンジが、ショコラを切り分けたナイフをちらつけせながら、ウソップにそう言う。

「いえ、もういいです・・・・・」

ウソップは、そう言うと、チョコを持って、船尾に向かう。

そこで、ウソップは、信じられない光景を目の当たりにして立ちすくんだ。

そこには、あの大の甘いモノ嫌いのゾロが、にこやかな顔をして、チョコらしきモノを口に運ん

でいた。

「見、見なかったことにしよう・・・・・」

ウソップは、視線を逸らし、そのまま、男部屋へと駆け出していった。








それは、2月14日。

恋人達が、愛を囁き合う、バレンタイン・・・・・・

とびっきりの甘いチョコと甘い気持ちが、ゴーイングメリー号にも、たっぷりと注がれたのでし

た。







<END>





       
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<コメント>

ありがとうございますvv おかげさまで無事に30000打、突破することができました。
コレも皆様のおかげです。 本当に、ヘタレな駄文ばかりで、申し訳ないっす。
日ごろの感謝を込めて、ご奇特な皆様に捧げます。(殴)
宜しければ、こそっと、お持ち下さい・・・・・(汗)
これからも、拙サイトですがよろしくお願いします。(ペコリ)
では、ハッピー・バレンタインvv
いや、一応、30000打記念駄文のつもりっす。(笑)
では★