Two Heart






あいつの噂は、知っていた。

19歳にして、ただ一人、海に出て、屈強な海賊共を相手に、一歩も引かず・・・・・・・・

海賊狩りを生業として生きる男・・・・・・

海賊達はその残忍な、殺し方から、『魔獣』と言って、恐れ戦いているという。

・・・・・・どんな奴なんだろう・・・・・・・

きっと、やばい目つきのとてつもない大男に違いねえ・・・・・・・

俺は、ジジイのレストランで、コック共の話を聞きかじって、勝手に想像していた。

自分とは、全く違う生き方をする、同年のあいつを・・・・・・・・










+++++++++++++++



ルフィが、ジジイの部屋に砲弾を撃ち込んで、あいつらが、レストランにやってきた。

俺は、レストランにやってきた可愛いナミさんに、目を奪われる。

・・・・・と、その後ろに、むさ苦しい野郎が、ついてきた。

ナミさんのあの様子だと、どうやら、ルフィの仲間達らしい。

ふと、視線に気付いて、見上げると、そこには、緑頭の鋭い目つきで俺を睨み付けている奴

がいる。

・・・・・なんだ? 俺が、ナミさんにちょっかいかけてるのが、気にいらねえのか?

可愛くて綺麗なレディは、皆のものなんだよ。

俺は、無性に腹が立って、無言で、そいつを睨み付けた。

そしたら、そいつは、フンと鼻で笑い、席に着く。

俺は、この場で、蹴り倒そうかと思ったぜ。 本気で。

けど、席に着いた以上は、お客様、ましては、ナミさんの仲間だ。

俺は、感情をグッと殺して、にこやかな、営業スマイルを、ナミさんに送った。



その夜。

俺は、昼間のことが、頭から離れずムカついて、眠れずに、甲板で、タバコを吹かせてい

た。

「ルフィが言っていたコックって言うのは、てめえか?」

いきなり後ろから声を掛けられ、俺は、その声がする方へ振り向いた。

見ると、昼間の緑頭のむかつく野郎。

てめえのせいで、ムカついて、俺は、眠れねえんだよ!

「なんだ、てめえは・・・・・・」

俺は、感情を抑えて、緑頭を睨む。

「・・・・・てめえ、俺達と来るのか?」

あいつは、俺の顔から、視線を逸らさず、そう聞いた。

「・・・・・いや、そのつもりはねえ・・・・・ 俺は・・・・・ここから、離れねえ・・・・・」

その視線が、俺の見られたくねえ弱い部分を見透かされそうで、俺は、耐えきれなくなって、

海を見た。

「・・・・だろうな。 てめえには、無理だ。 そんな華奢な身体つきじゃ、海賊共の、良い餌食

だ。 その方が、無難だぜ。」

あいつは、また、俺をあざ笑うかのように、そう言う。

「ふざけんな、てめえ! 無理かどうか、俺とやり合ってから、でかい口叩きやがれ!」

俺は、そう怒鳴りながら、あいつの鳩尾に即行、蹴りを食らわした。

「グッ。」

あいつは、腹を押さえてうずくまる。

俺は、たたみかけて、その背中にまた、蹴りを放った。

「フー。 アブねえ脚だぜ、全く。 ・・・・普通なら、吹き飛ばされてたな。 しかし、相手が悪

い。」

あいつは、俺の蹴り出した脚を掴むと、ニヤリと笑って、そう言った。

「俺の名は、ゾロ。 ロロノア・ゾロだ。 てめえ、何て名前だ。」

「・・・・サンジだ。 てめえも、なかなかやるな。 だがなあ、今ので、俺の蹴りを見きったと思

うなよ。 俺は、十分の一も出してねえんだから・・・・」

俺も、ニヤリと笑って、そう言った。

まあ、確かに、マジ蹴りでなかったにせよ、そこそこ本気で蹴ったんだがなあ・・・・

それをあいつ・・・・・・・・・クソッ、むかつく。

ロロノア・・・・・こいつが、あの、ロロノア・ゾロか?

・・・・・・・負けたくねえ。

なんでか知らねえが、こいつだけには、負けたくねえ。

俺は、あいつを睨み付ける。

あいつは、フッと笑って、つかんでた脚をぐいっと引き寄せた。

俺は、バランスを失って、あいつに、倒れ込む。

「てめえ、なにす・・・・」

そう言って、間近で見たあいつの瞳に・・・・・・心臓が、震えた。

俺は・・・・・・瞳が離せなくなってた。

俺の想像してた魔獣のような奴とは違う・・・・・・

真っ直ぐで、曇りのない先だけを見据える深緑の瞳・・・・・

少し翳りのある・・・・・それでいて、力強い輝きをたたえるその瞳・・・・・・

・・・・・その瞳が、優しく見えるのは、俺の錯覚・・・・・・か・・・・・

あいつの手が、俺の髪に触れる。

「??・・・・・なんだ?」

俺は、その手の感触にとまどい、奴に声を掛ける。

「いや、すまん。 悪かったな・・・・・邪魔した。」

あいつは、そう言って、自分達の船に戻っていった。

あいつに触れられたところが、妙に、熱い。

・・・・なんだろう・・・・・この感じ・・・・・

今まで感じたこと無い・・・・・けど、嫌な感じじゃねえ。

俺は、心に表れたその感情を、うまく理解できなかった。








+++++++++++++++++



俺は、何をしようとしていた?

初めて逢った奴なのに・・・・・・・

なんで、あいつのことが、こんなに気になる・・・・・・・



レストランに入って、真っ先に瞳に映ったのは、金色・・・・・

・・・・・・あいつの髪の色・・・・・・

顔に似合わない口の悪さ・・・・・・でかい態度・・・・・・・

どれをとっても、気にいらねえ・・・・・・・・

睨み付ければ、少しは、びびるかと、そう思って睨み付けた。

でも・・・・・あいつは、真っ向から、俺の瞳を睨み付けてきやがった。

・・・・・・久しぶりだ。

俺の瞳を見ても、怯まずに、睨み付けてくる野郎は・・・・・・・

俺は、少し愉快になった。

ルフィに聞けば、あいつを仲間にすると・・・・・・そう、言っていた。

・・・・・・面白い・・・・・・あんな奴が、仲間になるのは・・・・・・悪くねえ。

・・・・・しかし・・・・・あいつは、ルフィの誘いに乗るのだろうか・・・・・・

・・・・・馬鹿な・・・・・何を俺は、考えてんだ。

あいつが、この船に乗ろうが乗るまいが、俺には、関係のないこと・・・・・・

・・・・・・乗ろうが・・・・・乗るまいが・・・・・・・俺には・・・・・・




クソッ。 眠れねえ。

俺は、部屋を出て、甲板に出る。

ふと、レストランの方を見ると、甲板に昼間見た、金色の髪。

キラキラと月に輝いて・・・・・・

気が付いたら、俺は、あいつの後ろにいた。

黒いスーツが、ますますあいつの身体を細く感じさせる。

同じ男なのに、俺の腕の中にすっぽりと、入りそうなほど、細い身体・・・・・・

確認してみてえ。

その金色の髪の毛に・・・・・・・・・触れてみてえ。

・・・・・馬鹿な・・・・・・・俺は・・・・・・何考えてる・・・・・・・・・

・・・・・・・・月だ。

・・・・・・この月のせいだ。

・・・・・月が、俺を狂わせる。

俺は、あいつを振り向かせたくなって、声を掛ける。

案の定、あいつは、俺に食ってかかってきた。

あの蹴りの威力とスピードには、驚いたが、負けるわけにはいかなかった。

俺は、闘いを生業に生きる者だから・・・・・

掴んだ足首の細さに、俺は、息をのんだ。

よくもまあ、こんな細い足から、あんな強烈な蹴りが繰り出せるモノだと。

確認してえ・・・・・・俺の心に溢れる想い・・・・・

俺は、感情のままに、掴んだ足を引っ張り、あいつの身体を引き寄せた。

サラサラと頬を掠める金色の髪・・・・・・・

見上げたあいつの海のような蒼い瞳に、俺の心に動揺が走る。

深い深い海の色・・・・・・

昼間見た遠浅の海の色とは違う・・・・・・蒼い瞳・・・・・・

・・・・・・・同じ瞳のハズなのに・・・・・・

陽の光と月明かりで、全然違う色を放つ・・・・・蒼い瞳・・・・・・

・・・・・・・・手に入れたい。

・・・・・・・俺の心に現れた欲望・・・・・

・・・・・・初めてだった。

・・・・・・こんな激しい思いに捕らわれたのは・・・・・・・

俺は、あいつの瞳に・・・・・・・・・捕らわれてしまった。

無意識に手が、あいつの髪に触れる。

考えていたとおりの柔らかな感触。

・・・・・・手に入れたい・・・・・・・・・

そんな俺を、あいつの声が、現実に引き戻した。

・・・・・・馬鹿なことを考えるな。

・・・・・これは、月に煽られた馬鹿な感情・・・・・

・・・・・あいつと俺では、住む世界が違う・・・・・・・

・・・・・たとえ同じであったとしても・・・・・・・

・・・・・俺には、決して敵わない・・・・・・願望・・・・・

・・・・・それもこれも、皆、この月のせいだ。

俺は、月のせいにして、自分の心に溢れる感情を押し殺した。
















+++++++++++++++++



ウソップの言葉に、俺は、言葉を失った。

「ルフィが、あいつを好きだと?! 本気で、モノにする・・・・・そう言ったのか?!」

俺は、ウソップの胸ぐらを掴んで、立ち上がる。

思わず、腕に力が入って、もう少しで、ウソップを絞め殺すところだった。

俺は、キッチンに走った。

冗談じゃねえ。 たとえルフィでも、あいつだけは・・・・・・・あいつだけは、渡さねえ。

「ルフィーッ! てめえに、サンジは、渡さねえ!」

俺は、そう言って、キッチンに入った。

サンジの腰には、いつものようにまとわりつくルフィの姿。

「何だ〜、ゾロ。 お前もサンジに、何か作って貰いに来たのか??」

ルフィは、サンジの腰から腕を放さず、首だけ俺に向けて、そう言った。

「・・・・ルフィ。 離れろ。 ・・・・・そいつに、触れるな。」

俺はそう言って、和道一文字の鞘に手を掛ける。

「やだ。 俺、サンジに何か作って貰うまで、絶対に離れない。」

ルフィは、きっぱりと、そう言いきった。

「ルフィ・・・てめえ・・・・」

カチャリと、鞘から、音がした。

「ちょっと、待てよ。 ゾロ、てめえ、何、言ってるんだ、さっきから・・・・・ ルフィ、そこにしが

みついてると、何も作れねえゾ。 いい加減、離れろよ。 作ってやるから・・・・・ ゾロ、てめ

えも、そんな顔してねえで、そこに座れよ。」

サンジは、そう言ってルフィから離れると、てきぱきと料理し始めた。

「良し! できたっと。 ほらっ、ちゃんと、味わって食えよ。」

サンジはそう言って、料理を盛った皿をルフィの前に置いた。

料理を作ったときのあいつは、本当に、いい顔をする。

「・・・・・・話がある。 ちょっと、いいか?」

俺はサンジの正面に立って、そう言った。

「ああ、なんだ? ここじゃ、まずい話か?」

俺は、サンジの言葉に、後ろにいるルフィを見る。

ルフィは、別に、こちらを気にするようでもなく、ガツガツと料理を食べていた。

俺は、スーッと大きく息を吸い込んで、サンジの腕を掴む。

「サンジ、てめえが好きだ。 誰にも、渡したくねえ。」

俺は、そう言って、ギュッとサンジの痩躯を抱きしめる。

・・・・・そう、ずっと、俺は、こいつを、こういう風に抱きしめたかったんだ。

「えっ?! あっ、あ・・ ちょ、ちょっと・・・・・」

サンジは、俺の突然の告白に驚いて声も出ない。

・・・・・・・・・・当然だな。

・・・・・・・・・毎日、目が合えば、喧嘩して、罵り合ってばっかりだものな。

・・・・・・・・おまけに、野郎同士だぜ。

・・・・・・・けど、俺は、言ったこと、後悔しねえ。

・・・・・・あの時、ウソップから、言われた時のあの気持ちは、もう、味わいたくねえから。

・・・・・たとえ、こいつが、ルフィを好きだったとしても・・・・・・・

・・・・たとえ、ルフィとこいつが、両想いだとしても・・・・・・

・・・まあ、今になって思えば、女好きのこいつが、ルフィを好きになるなんて事、ありえねえ

よな。

つい、ウソップの言葉に、我を忘れっちまった。

・・でも、こいつが誰を好きだろうと、黙って、指を銜えて見てるなんて、俺には、できねえ。

「てめえの気持ちが、どうであれ、俺は、てめえが、好きだ。 ・・・・・それだけ、伝えたかっ

た。」

俺は、そう言って、サンジから離れると、キッチンの扉に、向かう。

「ちょっと、待てよ、てめえ。 ・・・・・返事は・・・・・・・返事、いらねえのか?」

サンジは、そう言って、俺の腕を掴んだ。

・・・・・・・返事??

・・・・・・そうか・・・・・・・普通は、告白したら、返事貰うよな。

・・・・・正直、そこまで、考えてなかった。

・・・・この場で、振られるのも・・・・・・・きついな・・・・・・・

・・・俺、立ち直れるか・・・・・・・・

・・・参った・・・・・・

「・・・・・・・・・」

俺は、何も言えなかった。

聞きたくなかった。

「おい! 聞いてんのか? 言うぞ。 ・・・・/////お、俺も、好きだ。

サンジは、ボソリと言うと、俺の腕を掴んだまま、俯く。

「えっ?! ・・・・・今、何て・・・・・・」

俺は、自分の耳を疑った。

・・・・・・・今、好きだって聞こえなかったか??

・・・・・・俺、耳、悪くなったのか・・・・・・

俺は、サンジの言葉が信じられなくて、じっと、あいつを見る。

「あー、もう、そんな瞳で見るな! だいたい、てめえから、言ったんだろうが・・・・・

クソッ。 そうだよ、俺は、てめえに、惚れてるんだよ! わかったか、このクソ剣士!!」

そう言って、真っ赤な顔をして、俺を睨み付けている。

「・・・・・本当なのか? 嘘じゃねえだろうな・・・・・」

俺は、サンジの身体を、もう一度、胸に引き寄せた。

いきなり、サンジが、俺に、噛みつくようなキスをした。

「何度も、いわすな・・・・・/////わかったか、このニブチン野郎。」

「サンジ!!」

引き寄せた腕に思わず、力が入る。

「・・・痛て・・・・痛てえよ、馬鹿。 少しは、加減しろよ、てめえ。」

そう言って、笑うサンジの顔は、とても綺麗で・・・・・・・・・

俺は、感情のままに、サンジの唇を奪った。

思っていたよりも、柔らかい唇・・・・・・

触れるだけと思っていたのに、唇から、離せなくなる・・・・・・

「んんっ・・・・ん・・・・ふ・・・ん・・・ん・・・・」

サンジの甘い吐息が、俺の耳を擽って、俺は、ますます口付けを深くする。

「なあ、ちょっと、いいか?? 俺、ずっと、ここにいても、良いのか??」

食事を済ませたルフィが、テーブルに肘をつき、俺達をじっと見て、そう言った。

・・・・・・・・・そうだった。

・・・・・・・・ルフィが、いたんだった。

・・・・・・・すっかり、忘れてたぜ。

・・・・・・けど、ルフィ、サンジのこと、好きだったんじゃねえのか?

・・・・・それにしては、落ち着きすぎてやしねえか?

・・・・もしかしたら、俺達・・・・・・・・あいつらに、填められた??

・・・あいつらというのは、当然、ウソップとナミ。

・・ウソップが、こんな小賢しいこと考えるわけがねえ。

・・・あの魔女が・・・・・・・やりやがったな・・・・・・・

・・・・じゃあ、あいつ、俺達の気持ち、気が付いてやがったのか??

・・・・・侮れない奴だ・・・・・・さすが・・・・・・魔女・・・・・・

・・・・・・だが、感謝する。

「ああ、てめえは、そこにいていいぜ。 俺達が、出てくから。」

俺はそう言って、サンジを肩に担ぎ上げると、キッチンを出て格納庫に、向かう。

途中、蜜柑畑のナミと目があった俺は、ニヤリと笑ってやった。

ナミは、呆れ顔で、俺達を一瞥して、そのまま、船尾に足を向けた。

「なっ、何処に行くんだよ。 下ろせよ。 なあ、ゾロって! おい! ゾロ!」

サンジは、俺の肩の上で、ジタバタもがいている。

「てめえが、先に仕掛けたんだ。 続き、ヤル。」

俺は、サンジにそう言って、格納庫の扉を開けた。

「うわあっ!! 待て、早まるな。 まだ、昼だぞ。 おいって! 嘘だろ?! 

なっ、ゾロ・・・・・ヤッ・・・・んんっ・・・・・」

俺は、うるさいサンジの口を唇で塞いでやった。

・・・・・・・ずっとずっと、こうしたかったんだ。

・・・・・・やっと手に入れた。

・・・・・時間なんて・・・・・・・関係ねえよ・・・・・・








<END>



<コメント>

一応、5000HIT記念駄文のゾロ視点です。
なんか、この前、5000HITだったのに・・・・
予想以上の御来者数に、ただただ、驚いておりますです。
もう、あわわって感じです。(笑)
けど、凄く、嬉しいですvv
こんなモノしか、ないんですが・・・・・お気に召しましたら、
ゴミ箱の底にでも、敷いてやって下さい。
本当に、ありがとうございますvv
10000人の方々へvv感謝を込めてvv

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