恋愛革命




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好きだって気が付いた時にはもう遅くて・・・

ただただその腕にすがり付いていた。


好きにはいろんな好きがあって・・・

それが恋だと知ったのは、つい最近の出来事だった。


愛する事も愛される事も知らなかった。

ただ、楽しく毎日を過ごす事だけを考えて生きてきた。

初めて逢った時には、こうなるなんて想いも寄らなかった。

互いに別な恋人が居て・・・

単純に友人だとその程度の想いしかなかった・・・・・

筈なのに・・・・

いつから変わってしまったのか?


せめてあいつが俺の気持ちに応えなければ・・・

こんな想いを持つ前に、きっぱりと諦めてしまえたものを・・・


背徳の二文字が俺を苛む。

いっそバラしちまおうか。

彼女を瞳の前にして、そんな想いばかりが募る。



けど・・・・・

彼女を泣かせる事は死んでもできねえとも思う。

幸せにしてやりてえとも、思っている。



けど・・・・・

何もかも放り出して、あいつの傍に居てえとも・・・。



俺の中で犇めき合い悲鳴を上げる二つの心。

逃げる事も、離れる事も、捨てる事も出来ない・・・心。



俺は・・・・どうしたらいい・・・?

繰り返し自分に問いかけても・・・

その答えは・・・・見えてこない。




*************************************




俺だけのモノにならないのは、逢った時点でわかっていた。

それでも、俺は欲しかった。

無理を承知で会う約束をさせて・・・

断られるのわかってて好きだと言った。

それぞれに、ちゃんと・・・相手が居たのに・・・

それでも・・・・俺は・・・・

「ごめんな・・・・サンジ、お前に辛い想い抱かせちまって・・・」

そっとその柔らかい金色の髪を撫でる。

「良いんだ、ゾロ。 俺が自分で選んだ道だ。 

てめえなら・・・・てめえとなら、何処までも落ちる覚悟できてる・・・」

そう言ってサンジがにっこりと俺の腕の中で笑う。

「サンジ・・・」

「ゾロ・・・」

愛していると言ったのは俺が初めてだと・・・・

男を愛したのは俺が初めてだと・・・・

そう言って優しく微笑んだ。

その顔を見ていたら・・・・・・・・

胸が痛んだ。




ごめんな・・・・サンジ。

お前が悩み苦しんでいるのわかってても・・・

この温もりを手離す事ができねえ。




いつものように、退社後の少ない時間をサンジと過ごした。

それだけで充分だった。

しかし、逢う度にサンジの表情がだんだんと翳っていって・・・

堪らなくなった。

サンジは・・・・もう限界だと・・・・そう感じた。

俺は会社の仕事を理由に、サンジに何も告げず、

単身、外国へと旅立った。







数年後・・・。




「久しぶり・・・・・元気・・・・だったか?」

たまたま昼食を取る為に入ったカフェで、サンジと再会した。

「・・・ああ。 お前も元気そうだな。」

何事も無かったかのような普通のやり取り。

「俺さ・・・・・彼女と結婚したんだ。」

「・・・そうか。 おめでとう・・・。」

サンジの言葉に、そう返事した瞬間、頬に強い痛みを感じた。

ポタッと口の端が切れ、中で鉄の味がした。

「・・・・馬鹿・・・やろ・・・・・・今頃・・・現れんじゃね・・・・」

サンジは俺に震えた声でそう吐き捨てるように言うと、そのまま店を出て行った。

・・・・・・・・泣いていた。

睨みつけた瞳が・・・・・・・悲しそうに泣いて・・・いた。

思わず身体が動いた。

逃げるその痩躯を追いかけて、後ろから抱き締める。

言葉が出なかった。

人前にも関わらずぐしゃぐしゃな顔で、俺の胸を手でドンドンと叩くサンジ。

俺達はまた・・・・・・繰り返してしまった。



こんな関係がいつまでも許されるわけなどないのに・・・。



そうこうしているうちに・・・・

あいつの奥さんが俺に逢いにやってきた。

言われた言葉はただ一つ。

『壊さないで・・・』

そりゃそうだろうな・・・・。

俺だって、反対の立場ならそう思うし・・・。

しかも、浮気相手が俺じゃあなぁ。

そう思うとその奥さんが可愛そうになってくる。

俺さえ、いなけりゃ幸せなままだったのだから。

「・・・・わかった。」

俺はそれだけ言って席を立った。




それ以外、俺に何を言える?

道理に反した俺達の関係を・・・・

誰が認めてくれるって言うんだ。

独り身の俺はまだ、良い。

けど・・・・・サンジは・・・・




そう考えて、俺はあいつを呼び出した。

にこにこと屈託のないいつもの笑顔を変わらないサンジ。

俺は、それを今、また自分の手で失くそうとしている。




・・・・・ごめんな、サンジ。

けど・・・・・・

これが一番、てめえにとって良いことだと・・・・

幸せになると信じてる。

 

「・・・・・だから・・・これっきりにしようぜ、サンジ・・・」





*****************************************************




『これっきりにしよう。』

・・・・そう聞こえた。

『好きな奴が出来た。』

って・・・はっきりと・・・・聞こえた。

・・・・笑えなかった。

偶然の再会に有頂天だった俺・・・。

幸せだったあの頃を取り戻したようで・・・

何もかも忘れて、のめりこんでいた俺・・・。

「あ・・・・・そう。 おめで・・・と・・・」

涙さえ出なかった。

泣けるほど、心に余裕なんかなかった。




なんで逢っちまったんだろ・・・。

なんで・・・・

なんで・・・・・

なんで・・・・・・




「じゃあ、俺は、これで・・・・」

スッとゾロが席を立つ。




待てよ・・・・

行くなよ・・・

行く・・・な・・・・

また俺を・・・・・・・・・・・・

捨てるのか・・・・?




喉まで出掛かってる言葉が口迄出てこない。

黙って家に帰った。

いつもと同じように微笑むナミさんの顔も見れない。

彼女は気付いているんだよな、きっと・・・。

返事もそこそこに自室に籠って眠った。

眠れない・・・・

全然眠れない・・・

明日から・・・・どう生きるんだろ・・・

どうやって・・・・息してたんだろ・・・

それさえも・・・・忘れた。

今はただ・・・・何も考えず・・・・瞳を閉じよう。





***************************************************




サンジをカフェに残し、俺は駅に向かう。

早く独りになりたかった。

誰もいない部屋で・・・・・

時間が過ぎるのを待っていたかった。

これがサンジにとって一番の幸せなのだと・・・

自らに言い聞かせながら・・・・。

ボーっとしたまま電車に乗った。

電車に揺られ、瞳を閉じる。

艶やかに笑うサンジが・・・・そこに見えた。

キキキーッとけたたましいブレーキ音が鳴った。

身体が重力に引っ張られ床に叩きつけられた。

真っ暗になった車内。

悲鳴・・・・泣き声・・・呻き・・・

一瞬の出来事で何が起こったのかわからなかった。

起き上がろうとして、むせた。

口の中から血が溢れ出して、息が出来ない。

視界が歪む。

しんと・・・・・・・・なにも聞こえなくなった。

静かだ・・・・・・とても・・・・・・静かだ。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




翌日、俺はいつものように出勤用意ながら、テレビのスイッチを入れた。

黒いスーツで、アナウンサーが事故の模様を伝えている。

次々に報道される事故現場。

「そう言えば、昨夜凄い事故があったそうよ。 

丁度貴方が戻る時刻だったから、あたし心配したんだから・・・・」

「あ、ごめんよ・・・昨日は・・・」

「ううん、良いのよ。 こうしてちゃんと無事に戻って来てるんだし・・・」

朝食をナミさんととりながら、そう会話していた。

その映像と共に、死傷者のテロップが流れる。

『ロロノア・ゾロさん 享年30歳』

カシャンと俺の手から持っていたグラスが音を立てて床に散らばった。



気が付けば・・・・・・ベッドの上だった。

「サンジ君・・・・・」

心配そうに涙を瞳一杯に溜めて、ナミさんが俺を見つめてた。

「ああ、ごめんよ、ナミさん。 ちょっと貧血起こしただけだから・・・。

もう・・・・・大丈夫。」

安心させるように微笑んで、そっとその涙を指で拭った。

「ごめんなさ・・・・・あたし・・・・ごめん・な・・さ・・・・い・・・」

ポロポロと堰を切ったようにナミさんが泣き出す。

「・・・・変だよ、ナミさん。 別にナミさんが謝るような事してないし・・・。

ごめんな・・・・全部、俺のせいだよな。 辛かっただろ・・・・ごめん・・・」

ギュッとナミさんを抱き締めた。

ナミさんの表情で、ゾロがどうしてあんな事を言い出したのか・・・

・・・・・・・・・・・・・・・わかった。

「サンジ君・・・・」

「・・・・・・ナミさん。 俺、そろそろ仕事行くな・・・?」

俺はベッドから立ち上がると、そのまま家を出る。

「・・・・・いってらっしゃい。」

玄関先でナミさんの声が背中に聞こえた。

会社など・・・・・・いけるわけが無かった。

ただ・・・・・・・泣ける場所が欲しかった。

あてもなく歩いていたら、昔、ゾロと来た河原に出た。




・・・・疲れた。

本当、何もかも・・・疲れた。

気にしてない素振りをし続けることと・・・

笑いたくもないのに笑ってしまう自分と・・・

前に進めない・・・・・現実に・・・・

・・・・・・・疲れた。

なぁ、ギュって抱き締めてくれよ。

なぁ、馬鹿だなぁって、笑ってくれよ。

なぁ・・・・・・・・・・・・・・・・

キスしてくれよ。

俺・・・・・泣いちゃうぞ。

泣いて、泣いて・・・・泣き暮らすからな・・・。

それでも良いのかよ・・・。

なぁ・・・・・・・・

ここに来て・・・・・俺に触れて・・・・

まだ・・・・・・残ってる。

てめえの声・・・・・

てめえの仕草・・・・・

てめえの・・・手・・・・・

・・・・・・消えて・・・くれねえ。

なぁ・・・・・見てるんだろ?

なぁ・・・・・聞こえてんだろ?

なぁ・・・・・・なぁ!!


傍に・・・・・・・来てくれよ・・・・。

俺・・・・疲れちまったよ。

なぁ・・・・・

「聞いてるのかよ!!ゾロ!!」

薄蒼の空を見上げて・・・・・・俺は叫び続けた。





***********************************************




好きで好きで堪らないのに・・・

そっと見守る事しか出来ない。

その髪に・・・

その唇に・・・

その肌に・・・

触れることも出来やしない。

もっと早く出逢えていたら・・・

この手を離さずにいたら・・・

そればかり考えていて・・・

どうにもならない事と・・・

わかりきっているのに・・・

それでも、この心は静まらない。

理解してくれない。

ずっと空を仰ぎ見て、泣きそうな顔のお前に・・・

言葉さえ・・・・

掛けてやれない。

苦しくて、切なくて・・・・

それでも尚・・・・・・・・

愛しい。

俺に出来ることは・・・・

お前の幸せを願う事・・・

ただそっと・・・見守る事だけ。




いつまでも愛しているよ。

だから・・・・

幸せになれ・・・。

お前の幸せが・・・・・・

俺の幸せ。


ずっとずっと気付かなくても・・・・

ちゃんと見ているよ・・・

どんなお前だろうと。


だから・・・・

幸せになれ・・・

俺の分も・・・・

幸せになれ。





***************************************************




それから暫くして、俺とナミさんは結局、別れた。

別にゾロの事が原因って訳じゃなくて・・・・

それぞれの歩く道を見つけてしまったからだ。

だから、離婚しても、ナミさんとは相変わらず親しくしているし、

俺の良き理解者であり、相談相手でもある。

夫婦でいた時よりも、今の方が心が通じ合ってるかも知れない。

それに、ナミさんは再婚もして・・・・

今は素敵な旦那様と子どもと幸せに暮らしている。

そして、俺はというと、今日も、この河原に来ていた。

あれからこの数年、休日にはこの河原で過ごすのが、俺の日課となってる。

ここにくれば・・・・ゾロが傍に居てくれてる様で・・・。

「だ、誰か!! 助け・・・て・・・!!」

子どもの声が聞こえた。

ただ事じゃない雰囲気を感じて、とっさにその方向へと走った。

「どうした?!」

「妹が!! 俺の妹が川に・・・急に見えなくなって・・・!!」

「なにぃ?! オイ、坊主。 早くこれで、救急車を呼べ。」

俺は、携帯電話をその子に渡すと、猛ダッシュで川に入った。

川は思ったよりも冷たく、深く、流れも急だった。

何度も、底まで潜り、子どもの姿を探す。

息が続かなくなって、もう一度潜り直そうと思った時、小さな女の子の服が川底に見えた。

今にも川の流れに消えていきそうな女の子の方へ必死で近づく。

水の冷たさも息も限界だった。

必死で女の子の身体を引き寄せ、水面に泳ぐ。

途中、胸に強烈な痛みが走った。

水面に上がると騒ぎで駆けつけてきた大人たちが一斉に俺達の方へ駆け寄ってくる。

「早く、この子を!!」

駆け寄ってきた大人たちの一人に、女の子の身体を手渡す。

「あんたも、さぁ・・・!!」

力強い腕に引っ張り上げられ、俺もなんとか川から脱出出来た。

「あーあ・・・ビショビショだな、こりゃ・・・。」

救急隊員が俺の住所や名前をどうとか言ってたが、そんなもん面倒で・・・

知らん振りして河原を後にした。

家に戻り、シャワーを浴びようとバスルームに向かったら、

またあの痛みがぶり返してきた。

思わず、顔を顰め、床に蹲る。

だんだんと痛みが激しくなった。

脂汗まで浮かんできやがる。

俺はナミさんに連絡しようと、ポケットを探った。

「チクショー・・・・携帯・・・・忘れてきた・・・」

しゃがんでもいられなくなって、ごろりと床に転がる。

ズキンと物凄い痛みが襲ってきた。

息が詰まる。

そのうち、だんだんと嘘のように楽になった。

誰かが、チャイムを鳴らす音が聞こえたが・・・・それさえ、気にならなくなった。













「・・・・・よう。」

「・・・・お疲れ。」

「あ? 言っとくけど、別にてめえを追いかけて死に急いだわけじゃねえからな。」

「・・・・・知ってる。」

「別に・・・・てめえに逢いたかったわけでもねえからな。」

「ククク・・・ああ。」

「・・・・・なぁ・・・淋しかったか?」

「いや・・・?」

「チェッ、なんだよ。 つまんねえ奴・・・。」

「ずっと見てたから・・・・ずっとてめえの事見てたから、淋しくなんかなかった。」

「・・・・・・そうか。」

「ああ。」

「まっ、これからは、また一緒だ。 時間はたっぷりとある。

とりあえず・・・・生前と同じように暮らしてみるか。」

「ククク・・・・地獄でか?」

「ばぁーか・・・・てめえと暮らせれば、何処だって天国だろ?」

「・・・・サンジ・・・」

「ん?・・・・ば、馬鹿野郎/////!! んなとこでキスするな!!」

「あ?俺達が見えてる訳ねえだろ・・・気にするな・・・。」

「ったく・・・クク・・まっ、それもそうか・・・」





「ねぇ、ママ・・・なんでサンジ兄ちゃん、あんなとこに居るの?」

「えっ?!何処??」

「ん・・・あそこの樹の上・・・なんだか浮いてる・・・」

「・・・ねぇ、サンジ君、今何してる?」

「えっとね・・・チューしてる。 緑の髪のお兄ちゃんと・・・・」

「あ、そう。・・・・・ったく、見えないと思ってそんな事してるなんて・・・

そっか・・・・・・やっと逢えたんだ・・・・。」

「あ、お兄ちゃん、こっち見たよ。」

「・・・・・・そう。 サンジく〜ん! さっさとそいつ連れて成仏しなさいよーっ!

子どもの教育上、悪いんだから!」

サンジの告別式の帰り道・・・

ナミはそう叫んで、子どもの手を握ってにっこりと笑った。









<END>




 



<コメント>

だぁぁぁぁーーーっ!! 10万・・・(グハッ!)
なんだかなぁ・・・・全然初めから進歩無い駄文で申し訳ない!<(_ _)>
今回は、パラレル。
10万という節目なので、思い切っていつもと違うアンニュイなものを・・・
と思ったんだけど・・・ダメでした??(汗)
それぞれ単発で日記のSSSとして書いてたものを
いろいろと修正しながら、この季節っぽいイメージで書いたんですけどね。(笑)

なにはともあれ祝100000打☆
これからも、いろいろな話書いていけたら良いなぁと思っています。
お付き合いくだされば、幸甚ですvv
必要ありませんが、DLです。(笑)
煮るなり焼くなりお好きに、どうぞvv

本当にどうもありがとうございました!!
                                       2003.12.25. ルナ             

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